癌の転移に負けない治療方法について
なぜ、がんは転移をするのかその仕組みや、5大がんの転移しやすい体の部位と最新の治療方法を一緒に紹介します。また、これ以上がんを広げないようにするにはどうすればいいのか、その方法もまとめました。
なぜ癌は転移するのか、
いつ転移するのか?
最初に発生した癌腫瘍(原発巣)は、徐々に臓器の組織へと侵食し、やがてリンパ管や血管を通じて全身へと流れていきます。そのほとんどは途中で死滅しますが、何らかの理由でほかの臓器へ生着することで転移が起きます。ここでは、侵食・離脱、そして生着までのメカニズムを詳しく解説しています。
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癌の転移を予防し、転移を増やさないために
できることとは
癌の治療において大切なのは、転移のリスクをコントロールすることです。がんが発生した時点で、転移のリスクは必ず存在します。それならば、転移が起きたり、あるいは広がったりすることのないよう予防することが大切です。
ここでは、主要な癌はどこへ転移するのか、どうやって防ぐべきなのか、解説しています。
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癌の転移先は決まっている?その性質と検査法、そして治療法とは
癌というのは、最初に発生した場所によって、その後転移する臓器や組織がある程度決まっています。血液やリンパの流れによって、転移を起こしやすい臓器というものもあります。
転移元となる臓器によって、癌の性質は異なります。治療の方法ももちろん異なり、手術ができるものやそうでないもの、放射線や抗がん剤にも有効なものとそうでないものがあります。癌が発生しやすい5つの部位(胃、大腸、肺、肝臓、乳)とそれに次ぐ器官を取り上げ、癌の性質や検査・発見方法、そして治療法をご紹介します。
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肺への転移・肺からの転移ともに起きやすい
肺には、全身を流れる血液が流れ込む一方で、肺から全身へと血液が送り出されます。そのため、肺はほかの臓器に比べ癌の転移を起こしやすく、またほかの臓器からの転移も多いと考えられています。
一般に、肺から癌が転移した場合は全身療法を行います。
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化学療法・放射線治療による温存療法
乳癌が転移した場合は、一般には予後が悪いと言われています。乳房内での転移は比較的治療成績はいいのですが、遠隔転移の場合はかなり難しいと考えられています。
また、放射線治療や抗がん剤治療により、乳房内の転移でも切除を避けられる可能性があります。
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ある程度まで転移リスクが予想できる、胃の転移癌
胃癌は、転移先がある程度限られている上に、事前に検査によって転移するリスクを予測することができます。そのため、胃がんが発見された時点で、転移を防ぐような処置がされることが多いようです。
通常はリンパ節、腹膜播種、肝転移が多いため、ここでもその3種類を取り上げます。
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日本人の国民病・肝臓がんの転移の現状とは?
発症件数が多く、日本人の国民病のひとつにも数えられるのが肝臓病。肝臓内では特に転移が多く、切除手術をしてもとりきれずに再発してしまうケースが非常に多いのが特徴です。
ほかの臓器から流れ込んだり、全身へ流れ出す血管が多く集まっているため、転移を起こしやすいという難点もあります。
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比較的治療がしやすい大腸癌。切除手術も可能!
大腸癌は比較的転移が遅く、また治療しやすいと言われています。特に大腸から肝臓への転移は発見がしやすいため、早期発見からの治療が進められるので生存率は上昇傾向にあります。
そのほかの臓器であっても、大腸癌からの転移の場合は比較的切除手術が適応できることが多いようです。
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癌の転移に負けない治療方法について
よく分かる癌の治療方法メリット・デメリット
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根治のためにはもっとも効果的、ただし適応範囲は限定的
癌の治療の基本とされるのは、外科的な手術です。根本的な治療としてはがんの部位を取り除くので、非常に効果的な治療方法です。ただし、病巣の数が多かったり、浸潤が進んでいる場合や、体力に不安がある場合は利用できないなど、適応範囲は狭いのが難点であります。
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メリット
寛解の可能性が高いことが最大のメリット。予後も比較的良好です。また、進行性の癌でも、範囲が狭ければ切除が可能。放射線治療や抗がん剤と併用することで、切除部分を縮小することもできます。
デメリット
検査ではわからないような微小な転移癌があっても、切除手術では対応しきれないのが弱点。わずかな転移があれば、それだけで再発のリスクは存在します。また、身体へのダメージが大きく、身体機能が損なわれる可能性もあります。
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新薬の登場・使い方の向上などで治療成績は飛躍的に向上
外科手術や放射線治療と組み合わせて使われることの多い、抗がん剤治療。かつては補助的な使われ方をしていましたが、最近では抗がん剤の使われ方が向上したため、目覚ましく進歩を遂げています。副作用を抑える薬が登場したため、副作用に苦しむ姿は少なくなっている状況です。
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メリット
抗がん剤は全身に成分が回るため、全身の癌に対して効果が得られるのがメリット。全身に転移が広がり手術や放射線治療では対応できない場合、抗がん剤治療で癌が広がるのを防ぐ力を発揮することができます。
デメリット
抗がん剤は、抗がん剤単体ではがんを治すのが難しいのが大きいデメリットです。抗がん剤の効果が薄い部位もあり、他の治療と併用が必要です。また、副作用は軽減したものの、ゼロではないことに注意が必要です。
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癌の転移・再発を制御し、副作用を抑えながら延命措置ができる
放射線治療は、電離放射線と呼ばれるものを癌細胞にあて、DNAを損傷させることで増殖ができなくなる状態にして死滅させる治療法です。手術ができないケースでも適応でき、しかも手術に匹敵する治療実績がある放射線治療は、今後の発展が期待されています。
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メリット
手術に比べると、からだへの負担は小さくなります。体力が衰えている場合でも適応ができます。また、咽頭がんにおける声帯のように、切除なら損なわれてしまう身体機能が温存できるというメリットもあります。
デメリット
抗がん剤に比べると小さいものではありますが、副作用はある程度存在します。特に、しばらくしてから副作用がでる晩期反応は、わずかながら重い症状になる可能性があります。
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他の治療方法のデメリットを克服し、補完するものとして期待される免疫療法。
私たちのもともと持っている免疫システムを強化し、異物を排除する力で癌細胞を攻撃し、死滅させるというもの。まだ実績の蓄積はありませんが、今後の標準治療の仲間入りが想定されています。
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メリット
リンパ球に対して、癌細胞のみを攻撃するよう指示するのが免疫療法。そのため、正常な細胞へのダメージがないのがメリットです。また、進行がんや転移がんにも適応可能で、誰でも利用できるのが強みです。
デメリット
免疫療法はまだ治療のデータの蓄積が少なく、エビデンスを得られていないのが最大の弱点です。また、抗がん剤との併用によってその効果を打ち消し合ってしまう可能性があります。
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よく分かる癌の治療方法メリット・デメリット
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転移した癌治療の名医がいる
おすすめ病院
癌の転移にも負けない!癌の名医が在籍する病院を紹介
転移を起こした癌は、癌の中でも治療が難しいと言われるもの。転移によって複数箇所の治療が必要になった場合、切除手術ができなくなってしまうほか、検査では見つけられないような小さな転移のリスクが常につきまとうためです。
そんな治療の難しい転移癌と闘うことのできる医師が日本にはいます。そこで、転移癌を得意とする医師の在籍する病院をリストアップしました。
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東京 放射線治療
転移した癌を同時に攻撃できる「トモセラピー」
クリニックC4は、放射線治療のスペシャリストである青木幸昌医師のクリニック。数十か所の癌病変に対しても同時に照射できる「トモセラピー」で、転移した癌をコントロールします。分子標的照射も利用可。
電話番号:03-6407-9407
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全身に転移したがんでも同時照射で治療ができる、放射線治療機「トモセラピー」 |
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千葉 放射線治療
高エネルギーの重粒子を使った、効率的な放射線治療 痛くも熱くもなく、X線の3倍以上のエネルギーで治療ができる重粒子線
重粒子医科学センターは、その名の通り重粒子を照射することでがん治療を行う病院です。重粒子は日本で画期的な治療実績をあげ、放射線治療の最先端として注目されるようになりました。
電話番号:043-206-3306
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痛みや熱さを感じずに治療ができるのが特徴 |
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千葉 総合病院
放射線治療の各分野におけるスペシャリストが多く在籍する病院
放射線治療をはじめとして、さまざまな治療方法が日夜研究されています。抗がん剤治療と放射線治療を組み合わせた治療がメインで、両者のメリットを生かしながら治療ができます。
電話番号:04-7133-1111
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陽子線治療を利用して、正常な細胞に影響の少ない放射線治療ができる数少ない病院 |
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千葉 放射線治療
精度の高いがん診断で見つけにくい転移したがんの発見と治療が可能
PET-CTと呼ばれる検査機器と、放射線治療を組み合わせて癌治療を提供しているのが東京ベイ先端医療・幕張クリニックです。
PET-CT検査は、PET検査とCT検査が同時にできる画期的なシステム。これによって早期発見と早期治療を目指します。
電話番号:043-299-2000
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肉眼ではわかりにくい、癌の転移もPET-CT検査なら高精度で発見可能 |
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東京 免疫療法
癌研究機関との連携で、最先端の転移がん治療を提供することを目指しているクリニック
東京の中心部にある、最先端の癌治療を心がけているのが東京ミッドタウン先端医療研究所です。
同クリニックと同じフロアにある各科や、大学病院、専門機関との連携によってさまざまな治療を提供。特に免疫療法には高い実績があります。
電話番号:03-5413-7920
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免疫療法を使って、全身に転移した癌を制御。延命効果に期待ができる |
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東京 放射線治療
再発・転移した癌でもあきらめずに治療するクリニック
東京放射線クリニックは、放射線治療を中心に取り組むがん専門院。IMRT、SBRTという2種類の放射線照射システムを利用することで、癌の大きさや形に合わせた最適な放射線照射が可能です。
副作用が小さく、晩期障害のリスクも少なくできるので安心です。
電話番号:03-3529-5420
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癌の大きさや形に合わせ、できるだけ少ない照射で治療ができる放射線治療のスペシャリスト |
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東京 免疫療法
免疫療法を利用して、副作用にあまり悩まずに癌治療ができる!
アスゲンがんクリニックは、免疫療法を中心にしてがん治療を行っている、先端医療を取り扱うがん専門院です。
免疫療法の中でも、院長である宇野克明医師が開発した新薬などを使ったAPT分子免疫治療を行っています。他院では利用できない、高い技術が魅力です。
電話番号:0120-621-636
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転移癌のような難しい癌でも根治の実績と先端医療を受けるなら検討の価値アリ |
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東京 免疫療法
がんの治療を何のために行うのか、真の治療を提供するクリニック
ビオセラクリニックは、東京女子医科大学病院の関連施設。免疫療法や温熱療法を中心にして、手術や抗がん剤治療、放射線治療といった標準治療を補完するような治療を提供しています。
電話番号:03-5919-1762
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免疫療法の優れた効果を上手に使い、元気に暮らす時間を少しでも長くしてくれる |
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横浜 免疫療法
免疫療法を専門とする医師が在籍する総合病院
横浜鶴ヶ峰病院は、総合病院の中にがん専門の部署を構えています。各種標準治療はもちろん可能ですが、免疫療法についても知識と経験が豊富な医師が在籍しています。
高い技術力を持ちながら、比較的抑えられた費用で先端医療を利用できるのが魅力です。
電話番号:045-371-2511
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ほかの病院に比べると抑えた費用で免疫療法が受けられる |
転移した癌の治療の名医がいるおすすめ病院
がんの主な治療方法には「手術」「抗がん剤治療」「放射線治療」「免疫療法」の4つがあります。それぞれ異なるメリットやデメリットがあり、治療の進め方や症状により選択できるものが異なります。また、治療方法によっては他の方法と併用することで、効果を発揮するものもあります。そこで、まずはそれぞれのメリットやデメリット、治療方法などをまとめました。
手術
治療方法
体への負担
- ・切除部分のダメージが大きい
- ・切身体機能が失われる場合もある
メリット
- ・根治できるもっとも基本的な治療方法
- ・病巣を一気に切除できる。
- ・転移がなければ寛解の可能性が高い
デメリット
- ・微小な転移には、対応できない
- ・切除部分の回復に時間を要する
- ・わずかでも転移があれば、再発の可能性がある
併用できる治療方法
放射線治療・抗がん剤治療
治療の対象となる癌
切除できるがんであればほぼ対応
抗がん剤治療
治療方法
体への負担
- ・薬の向上で副作用が軽減したものの、ゼロではない
- ・脱毛を引き起こす場合が多い
メリット
- ・治療薬が血液により全身に運ばれるため、全身のがんに対して効果を発揮する
- ・病巣の転移場所が離れている場合に効果的
- ・症状に合わせて、複数の抗がん剤併用が可能
デメリット
- ・抗がん剤治療のみでがんが完治することはほとんどない
- ・すい臓がんや悪性黒色腫など抗がん剤が効かない癌もある
併用できる治療方法
手術・放射線治療
治療の対象となる癌
全身のがんに対して治療可能
放射線治療
治療方法
体への負担
- ・抗がん剤治療に比べると少ないが、副作用がある
- ・晩期反応での副作用は重症化するケースも
- ・一定期間は毎日治療を受ける必要がある
メリット
- ・早期がんであれば、手術同様の治療実績がある
- ・身体機能を温存することができる
- ・通院での治療が可能
デメリット
- ・正常な細胞に副作用が出ることがある(皮膚・粘膜の炎症・白血球の減少など)
- ・一定期間は毎日治療を受けなければならない
併用できる治療方法
手術・抗がん剤治療
治療の対象となる癌
体の機能を残したい場合や、切除できないがん
免疫療法
治療方法
- ・自らの免疫細胞を活発化させ、がん細胞を撃退する(全身療法)
体への負担
メリット
- ・がん細胞のみを攻撃し、健康な細胞を傷つけない
- ・体力がなく他の療法を受けられない人でも対応できる
- ・早期がんなら、免疫療法のみで根治する可能性がある
デメリット
- ・先進治療方法のため、エビデンスが少ない
- ・抗がん剤治療と併用すると効果を打ち消す可能性がある
併用できる治療方法
放射線治療・抗がん剤治療・手術
治療の対象となる癌
進行性のがんや再発予防まで幅広い治療に対応
免疫療法がすすめられる理由
新たながんの治療方法として注目されているのが「免疫療法」です。私たちの体にはあらかじめ、外部から侵入する細菌やウイルスを排除する働きが備わっています。この働きは「免疫」と呼ばれており、体内で作られてしまうがん細胞などにも作用します。
しかし、免疫力が弱っていると、これらの細菌やウイルスを撃退することができません。そこで、もともと持っている免疫力を回復させて、がん細胞に向かって攻撃を行うことで働きを抑制させるのが「免疫療法」です。免疫療法は、がん細胞にのみ作用するため、他の健康な細胞を傷つけることなく治療を進められることが大きなメリットです。また、副作用が少ないため他の治療方法と組み合わせながら、目的に合わせて取り入れることができます。
さらに、免疫療法は早期がんから進行性のがんまで広範囲の症状を緩和することが期待できます。延命治療や体力の回復・生活の質の向上、症状の緩和など患者の状態に合わせて治療を進めていくことができます。このように、体への負担が少なく幅広い症状にアプローチできるため第4の治療方法として注目されているのです。
免疫療法は研究が進められている分野
免疫療法は先端医療として認定を受けていますが、まだまだ研究が進められている発展途中の分野でもあります。治療データが少ないため、有効性が認められている療法は、一部の薬に限られています。そのため、効果がまだ明らかでない治療部分に関しては、自由診療になり保険の対象外となってしまいます。それでも、「特定承認保険医療機関」に指定される施設は増えており、治療方法としての注目度の高さが伺えます。
現在、免疫療法の治療方法としては次の2つが挙げられます。
1つ目は「免疫抑制阻害療法」です。これは、免疫チェックポイント阻害剤を使用してがん細胞によって抑えつけられている免疫細胞のブレーキを解除し、既に体内にある免疫細胞を活用する治療方法です。
2つ目は「サイトカイン療法」や「BRM療法」と呼ばれている免疫療法で、免疫細胞を活性化させる薬を投与することで免疫細胞の働きを活発化し、がん細胞への攻撃を強化する方法です。この方法は現段階では、安全性や有効性が確立していない状態です。今後のさらなる研究に、期待が高まっています。
参考:
『免疫療法 もっと詳しく知りたい方へ』
『『免疫療法 まず、知っておきたいこと』国立がん研究センター がん情報サービス』