本人が認知症のとき

高齢になってから癌になると、同時に認知症を患っている場合も多くあります。本人に判断能力がないと考えられる場合、治療に対する同意は家族に委ねられることになります。そして、実際の治療や闘病生活にも支障が出てくるでしょう。

本人が認知症のときに家族やパートナーはどのようにサポートしていくべきか、ここで考えていきましょう。

認知症は高齢化社会の国民病

内閣府の高齢社会白書によると、65歳以上の認知症高齢者は2012年時点で460万人を超え、65歳以上の約7人に1人が認知症を患っているとされます。これが2025年になるとさらに増加し、約5人に1人、推定700万人に達すると見込まれます。もはや認知症は、高齢化社会における新たな国民病といっても過言ではないでしょう。

そして、現在は国民の2人に1人は生涯で癌になり、3人に1人が癌で亡くなる時代です。認知症も癌も罹患率が上昇していることから、それにともなって高齢で認知症を患うがん患者さんが増加していくことがわかります。

サポートの必要性

認知症を患うと理解力や判断力が低下するため、癌の検査や診断、治療に支障をきたすことが想定されます。適切な治療を受けるためには、家族やパートナーのサポートが欠かせません。

また、近年はがん治療の進歩により抗がん剤治療や放射線療法も通院で受けることが可能になりました。そのため、通院の支援や副作用への対処も家族やパートナーの重要な役割となります。

癌治療は生き方の選択

極論ですが、癌治療は選択の繰り返しです。ステージが進んでいる場合、積極的な治療を行なって根治ないしは延命を目指すのか、痛みなどの症状をできるだけ抑えて残された時間を自分らしく過ごすことを目指すのか、これがまず大きな選択肢となります。生き方の選択ともいえるでしょう。

癌治療は本人の意思を尊重することが重要となりますが、ここに認知症が加わると意思決定が困難になります。認知症でも人間としての尊厳を損なうことなく治療を受けるためには、どのようなサポートをすべきでしょうか。

意思決定のサポート

認知症がそれほど進行していないのであれば、周囲のサポートで本人の意思決定を尊重することが可能です。主治医から治療の説明を受ける場合などは家族やパートナーが同席し、本人が理解し判断できるようにサポートしましょう。

例を挙げると、わかりやすい言葉や本人に馴染みのある表現で説明したり、文章や図で説明したりすると理解が進むでしょう。意思決定の場面では選択肢を少なくし、本人が選びやすくすることも大切です。

本人の代わりに判断する場合

認知症が進行してくると、本人の代わりに家族やパートナーが判断しなければならない場合も出てくるでしょう。治療に関することは主治医や医療スタッフから十分に説明を受け、メリットやデメリットも含めてどのような選択肢があるのかしっかり理解しなければなりません。

そして、本人だったらどうするかを決定します。本人が以前話していたことや近しい人たちの意見も聞きながら、可能な限り本人の希望に合った決定をしてあげましょう。これは本人のことを深く思っている家族やパートナーだからこそできることです。

治療のサポート

きちんと薬を飲んでもらうために

近年では入院せずに通院で癌治療を受けることも多くなっています。そのため、まずはきちんと薬を飲むことが大切です。認知症によって決められたとおりに薬を飲むことができなければ、期待される治療効果が望めなくなってしまいます。

確実に薬を飲むために、よくある方法としては薬の一包化(同じ時間に飲む薬を1つの袋にまとめること)が挙げられます。また、曜日や朝昼晩に分かれた服薬ボックスやチェック表を利用するのもよいでしょう。ホームヘルパーを利用しているなら訪問時に確認してもらうのも一手です。

訪問薬剤指導を利用する

在宅療養を行なっている場合は、薬剤師による訪問薬剤指導を受けることもできます。これは薬剤師が自宅を訪問して本人の服薬状況を確認し、きちんと薬が飲めているか、副作用が起きていないかを判断するものです。もし何か問題があれば指導し、その内容は主治医に報告されます。

薬の問題を家族やパートナーだけで解決するには限界があります。無理をせず、このように専門家のサポートを受けることも大切です。

副作用を見逃さないために

認知症を患っていると、もし副作用が起きてもそれを伝えることができないかもしれません。家族やパートナーはどんな副作用が起きる可能性があるのかを前もって把握しておき、それに基づいて本人の様子を観察しましょう。

本人から副作用についての話を聞くときはわかりやすい言葉でやり取りし、聞き方も「はい」「いいえ」で答えられるようにするなど工夫すべきです。

緊急時の対応

在宅療養中の大きな課題は、緊急時にどうするかということでしょう。とくに認知症の場合は本人が判断できないことが多いため、緊急時の対応が困難な場合も少なくありません。例えば熱が出たら主治医に連絡するようにいわれていても、そのとおりにできずに家族が救急車を呼んでしまうようなこともあります。

家族やパートナーは緊急対応が必要な症状をあらかじめ主治医に確認し、もしそうなった場合はどのように対応するべきか具体的な指導を受けておくべきです。

認知症の治療

癌治療との併用

認知症はその原因となっている病気を治療すれば治ることもありますが、最も多いアルツハイマー型認知症は現代の医学でも治すことはできません。したがって、症状の進行を遅らせる薬物療法が選択されることになります。

国内で使用されている代表的な認知症治療薬は、癌治療に悪影響を与えたり抗がん剤との相互作用で問題が起きたりする可能性は低いと考えられています。とはいえ、すでに認知症の診断を受けて治療を受けている場合には、癌治療の主治医にもきちんと伝えておきましょう。

癌治療の妨げにならないように

理解力や判断力が低下するだけではなく、場所や時間がわからなくなったり、性格が変わったように思えたりするのも認知症の代表的な症状です。不安が強くなったり、意欲がなくなったりする場合も認知症が疑われます。

もし癌の治療中にそのような症状が現れた場合は、認知症専門外来の受診を検討すべきかもしれません。また、癌に伴う心の症状を診る精神腫瘍科が主治医にいる病院にあるのであれば、そちらに相談してみるのもよいでしょう。

大切なのは、認知症が本人の癌治療の妨げにならないことです。認知症に早期対応を行なうことで、本人が適切な癌治療をサポートしてあげましょう。

   
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