肝臓への転移は大腸癌や胃癌からの転移が多く見られます。このページでは肝臓へ転移する癌の特徴や治療方法などをまとめました。
癌が肝臓に転移する場合、大腸や胃、食道などの他臓器からの転移だけでなく、肝臓内で起こる肝臓内転移も見られます。肝臓に転移した癌は症状が現れにくく、初期段階で自覚しにくいのが特徴。そのため、気づかずに生活してしまう方も多いのだそうです。肝臓は全身に血液を送り出す臓器であり、血液の流れに乗った癌細胞が転移しやすくなっています。どの転移がんも黄疸が自覚症状として現れるので、その場合は転移を疑うようにしましょう。
肝臓に転移しても初期段階ではほとんど症状が出ず、気づかずに過ごす方も多くいます。自覚症状として代表的なのが黄疸です。腹部の右上あたりに鈍痛が起こることも。倦怠感も生じやすく、体を動かしていなくてもだるかったり、疲れが取れなかったりする時は肝臓に転移している可能性があります。
初期段階ではほとんど症状が見られないので、進行しなければ症状が出ないのが厄介です。進行すると肝機能の低下によってだるさを感じることがあります。自覚できる症状の一つが黄疸で、腹部に張りを感じることも。かなり症状が進行した場合、痛みの症状が起こるようになります。
肝臓へ転移した場合、病巣が大きくなるまで症状は現れにくいですが、体重の減少や食欲低下、疲れやすくなるなどの症状が出ることがあります。進行すると見られるのが、背中やお腹の痛み、黄疸といった症状です。
肝臓内転移が進行した場合、肝機能の衰えが症状として出るようになります。だるさや脱力感、肌や眼球が黄色くなる黄疸が現れることも。尿の色が黄褐色に変わることもあります。他に、腹水や手足のむくみといった症状も起こりやすいようです。
肝転移は様々な種類のがんで非常によく起こるもので、その症状は、先にご紹介したように原発性のがんが発生した場所によって異なる場合もあります。ですが、どの部分から転移したとしても、症状としてよく見られるものは次の通りです[6]。
肝転移の初期症状は、このようにあまり重いものではありません。それは、肝臓に自己修復能力が備わっていることが原因で、肝転移がかなり進行しなければ大きな症状として現れてこないからです[7]。そのため、複数の箇所に転移しなければ自覚症状を得られないことも多く、発見が遅れがちながんともいえます[8]。
もしも、肝転移が進行して、肝臓の自己修復能力では追い付かなくなった場合、次のような明らかに自覚できる症状が現れます。
これらの症状が見られる場合は、末期の肝癌と診断されることになり、さらに症状が進行すると、進行性の黄疸や「肝性脳症」が引き起こされるようになります[6]。肝性脳症とは、有害物質を無害化する肝臓の機能が衰えることで現れる症状で、認知機能の低下、昏睡状態などに陥る可能性もあるものです[7]。
肝転移の予後を良好とするためには早期発見をし、適切な治療を受けることが何よりも大切です。ですが、自覚症状が出にくい肝転移は、発見しにくいがんでもあります。早めに肝転移を発見するためには、体重の変化などの異変に常に気を配ることも必要ですが、術後に定期的な画像診断を受けることがおすすめです。
肝転移の画像診断は、US、ダイナミックCT、MRI、ダイナミックMRI、SPIO-MRIなどによって行われます。また、血管造影ではCTAP、CTAが用いられており、いずれも高い確率で腫瘍を検出できる性能を誇るものです[8]。術後の経過観察中には、これらの画像診断を受け、早めに肝転移を発見できるようにしましょう。
一番効果があるのは、外科手術で腫瘍を切除することです。腫瘍の数が多くても、正常に機能する肝臓を残せるなら問題なく行えます。残せる肝臓が少ない時は、門脈塞栓という外科的処置を実施。術後に再発しないよう、抗がん剤治療を行う場合も。腫瘍が小さく、数が多い場合にも抗がん剤治療を用います。他に、マイクロ波凝固療法(MCT)や、ラジオ波焼灼療法(RFA)といった治療法も。どちらも局所療法なので、3センチ以内の癌に有効です。
肝臓の量による治療法の選択は、基本的に30%程度残せるようなら通常の切除手術で対応します。ただし、肝転移が複数に渡っている場合は40%以上、軽い肝障害などで肝機能が低下している場合は50%以上という基準を採用。医院によってこの基準には差があるものの、概ねこの程度のラインに沿って治療が行われます。
また、現在の医学の発達により、化学療法と切除手術を併用した治療法の選択肢も豊富になり、切除手術の適応例は徐々に拡大しつつある状況です。様々な化学療法を組み合わせた治療を行うことで、術後の予後も飛躍的に改善してきています[1]。
肝転移を起こしている時点で胃の近くのリンパ節や腹膜にも転移している可能性が高いので、切除手術を避けることが多いようです。肝動注療法と呼ばれる動脈に抗がん剤を注入することで、辛い症状や痛みを取り除き、QOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)を高める治療が行われます。
ただし、胃がんの肝転移の個数が少ない場合は、切除手術を行った後の予後も良好であり、長期的に良い状態を保てることもあるという報告があります。肝転移の個数が3個未満であれば、術後の生存率が高まると言われていますが、まだ十分な検証が行われているわけではありません。
そのような状態なので、現時点では、まず化学療法をメインにした治療が選択されます。この論文は2009年時点のものなので、今後胃がんの転移の際の検証が十分に行われれば、切除手術で良い結果を期待することもできるようになるでしょう。
薬物療法と対症療法が行われています。薬物療法は、癌細胞の破壊を目的に行う治療法です。対症療法は、病気に伴う症状を消す・緩和に向かわせる治療法。根治を目指すのではなく、辛い症状や痛みによる不快を取り除いてQOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)を高めるために行われます。
抗がん剤による治療は、胃がんの肝転移のときと同様に肝動注療法などが用いられることもあり、良好な効果を得られた例も存在します[3]。
もともと、食道がんの肝転移は予後不良のことが多いため、切除手術が用いられることは極めて稀です。ただし、切除手術が延命をもたらした例の報告もあり、この論文によると、切除手術を行った10例のうち、9割が生存となり、最長で7年4か月もの生存が確認されたと言います。しかも、再発もしていないそうなので、今後の検証が進めば、切除手術も選択肢となる可能性もあるでしょう[4]。
肝臓内転移の場合の主な治療法として、切除手術とラジオ波焼灼が挙げられます。がんの進行が初期段階であれば、経皮的エタノール局注療法という治療法を実施。これらの治療が適応できない場合、動脈をふさぐ肝動脈塞栓術や抗がん剤を直接注入する動注療法などが用いられます。腫瘍の数が多い場合には、肝動脈化学塞栓(そくせん)療法が有効です。
肝動脈化学塞栓術に関しては、他の臓器と肝臓内転移の両方が起こった進行性の症状に対しても、放射線療法と組み合わせた治療によって、約4年に渡って再発が見られなかったという事例もあります。放射線療法はラジオ波焼灼との併用も可能であり、比較的治療法の選択肢が多いタイプの転移だと言えるでしょう。
基本的に、他の部分への転移がない肝臓内転移では、切除手術によって有効な効果が認められることが多いため、切除手術が選択肢のひとつとなることもあるようです。
肝転移は他臓器だけでなく、肝臓内転移が見られるのが特徴です。肝臓は全身に血液を送り出すための臓器なので、血液の流れに乗った癌細胞が転移しやすいと言えます。転移した場合、初期段階ではほとんど症状が現れません。進行してから黄疸やだるさなどの症状が見られます。
治療法は転移が起こった部位によって異なりますが、切除手術や抗がん剤治療、薬物療法、対症療法といった様々な治療法が導入され、進行の度合いや腫瘍の数によって適切な方法が選択されます。転移した癌を治療するには、技術や実績を持った医師を探すことが重要です。
[1]参考:日本臨床外科学会『(PDF)大腸癌肝転移に対する外科治療update』
[2]参考:日本臨床外科学会『(PDF)胃癌肝転移に対する手術適応の検討』
[3]参考:一般社団法人 日本消化器外科学会『(PDF)食道癌肝転移例の検討』
[4]参考:一般社団法人 日本消化器外科学会『(PDF)食道癌術後遠隔臓器再発に対し集学的治療の一環として切除を行った2例』
[5]参考:一般社団法人 日本肝臓学会『(PDF)集学的治療が奏効したリンパ節転移を伴う Stage IVb 肝細胞癌の1例』
[6]参考:MSDマニュアル『転移性肝癌』
[7]参考:公益財団法人 長寿科学振興財団『肝がん末期』
[8]参考:日本消化器外科学会『(PDF)転移性肝癌の画像診断』
| 病期 | 説明 |
|---|---|
| ステージⅠ | 「腫瘍が1つである」「腫瘍の大きさが2センチ以下である」「脈管侵襲がない」の3つの項目のうち、全てが合致する場合 |
| ステージⅡ | 「腫瘍が1つである」「腫瘍の大きさが2センチ以下である」「脈管侵襲がない」の3つの項目のうち、2項目が合致する場合 |
| ステージⅢ | 「腫瘍が1つである」「腫瘍の大きさが2センチ以下である」「脈管侵襲がない」の3つの項目のうち、1項目が合致する場合 |
| ステージⅣ | 「腫瘍が1つである」「腫瘍の大きさが2センチ以下である」「脈管侵襲がない」の3つの項目のうち、どれにも当てはまらない場合 |
| ステージⅣ A期 | ステージⅣのうち、リンパ節転移はあるものの、遠隔転移は認められない場合 |
| ステージⅣ B期 | ステージⅣのうち、遠隔転移がある場合 |
上の表で解説してありますが、肝臓癌の進行度を判断する基準は「癌の数」「癌の大きさ」「脈管への侵襲の有無」の3つの項目です。これらのうち、どれだけの項目に該当するかによって判断。また遠隔転移があるかどうかでA期とB期に分けられます。
肝臓癌の治療には様々な選択肢があり、肝機能の状態やがんの数、大きさによって治療方法を選択します。主な治療方法としては次にあげる「肝切除」「ラジオ波焼灼療法(RFA)」「肝動脈化学塞栓療法(TACE)」「化学療法」「放射線療法」などです。
肝臓を部分的に切除し、がんを取り除く方法です。がんの数が1個の場合は、がんの大きさがどれぐらいであっても手術が第一の選択肢。がんが2個以上の場合は、手術以外の方法で治療されるケースがほとんどです。がんが4個以上の場合は、手術の対象にはまずなりません。
手術療法は、医師が病巣を直接、見ながら行うので、がんを確実に取り除くことができます。ただし、お腹を切ってがんを切除するため、患者への負担が大きく、入院期間も2~3週間程度となるのが一般的です。
肝切除を行った場合、肝臓を切除した面から胆汁が漏出する「胆汁漏」や、出血、肝不全といった合併症を引き起こすリスクが生じます。胆汁漏に関しては通常、ドレーンを装着したままにすることで症状を軽減できますが、状態によっては再手術が必要なケースもあるため注意が必要です。
出血が続く場合は輸血と止血が必要になり、止血のために再手術を行います。特に重大な合併症としては肝不全が問題となっています。肝臓の機能が失われてしまうため、そもそも肝不全が発生しないように手術プランを検討する時点で十分量の肝臓確保を考えることが大切です。
超音波による画像を元に、がんの位置を確認しながら、体外から細い針を刺し、その先からラジオ波を発生させ、熱でがんを焼き固めてしまう治療法。針を刺すだけで済むため、開腹する手術に比べて負担は軽くて済みます。1回の治療時間は、最大でも12分程度で、入院期間も3~5日ほど。がんの数が多かったり、大きかったりした場合は、2~3回に分けて治療することもあります。日本に導入されたのは15年ほど前ですが、現在では早期肝臓がんのスタンダードな治療法として有名です。
ラジオ波焼灼療法(RFA)の合併症としては、一般的に以下のような症状が考えられます。
発熱や腹痛に関しては、術後の経過と症状の程度などを観察しながら適切なケアを行わなければなりません。治療後は数時間程度の安静をとり、その後も症状を自覚した場合は速やかに担当医へ相談します。
腹痛の原因が不明な場合や、出血や腸管損傷が合併症として認められた場合、輸血や再手術が必要になるケースもあります。加えて、肝臓機能の低下や機能不全などが認められた場合も迅速な対応が不可欠です。
その他のリスクとして針を刺した部位の火傷や痛みなどがあります。
肝障害の程度が軽度~中等度で、がんの数が4個以上の患者が対象となる治療法です。治療法は、まず太ももの付け根からカテーテルを入れ、肝動脈に送り込みます。そして、造影剤に抗がん剤を混ぜたものを注入。さらに特殊なスポンジで動脈を塞ぐというものです。がんへ流れる血液をせき止め、がんをいわゆる「兵糧攻め」するかたちで、多くのがんを死滅させることができます。
塞栓療法の副作用としては、治療後の発熱や吐き気、腹痛、食欲不振、胸痛といったものが考えられます。また症状の程度によっては肝機能障害が考えられることもあるため、治療後に異変や違和感を自覚した場合はすぐに担当医へ相談し、診察を受けてください。
塞栓療法の副作用や発生リスクは、癌のサイズや規模、治療によって塞栓した範囲や患者の肝臓の状態など様々な要因によって変化します。あらかじめ担当医から想定される副作用などについて説明を受けて備えておきましょう。
治療後は数時間~半日程度の安静を必要とします。
標準治療として、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬といった抗がん剤を使用する化学療法(薬物療法)も考えられます。化学療法が適応となるのは、一般的に肝障害が軽度~中等度で、癌の数が4個以上の進行肝臓癌などが考えられます。状況によっては手術前の準備として化学療法を行ったり、放射線療法と化学療法を組み合わせた集学的治療が実施されたりすることもあるでしょう。
化学療法の具体的な実施法としては点滴によって抗がん剤を投与する他にも、肘や手首、鼠径部などの動脈からカテーテルを挿入し、肝動脈まで到達してから細胞障害性抗がん薬を注入するといった肝動注化学療法(TAI)もあります。
化学療法の副作用は、どのような方法の治療を選択するかによっても異なります。
例えば全身薬物療法の場合、使用する分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬ごとに副作用が考えられ、どの薬物を使用するか選択する際に副作用リスクや患者の状態などが総合的に検討されます。また肝動注化学療法(TAI)の場合、カテーテルを挿入する際に動脈を傷つけたり、出血が生じたりといったリスクも想定されるでしょう。
化学療法を行っている最中の合併症には発熱や吐き気、痛み、脱毛など様々な症状があり、特に外来化学療法を受ける際には日常生活を踏まえて担当医と治療内容を相談してください。
放射線療法は、高エネルギーの放射線を使ってがん細胞を死滅させる治療法。肝臓がんの場合、放射線が肝臓に悪影響を及ぼすケースが多いため、あまり実施されてきませんでした。ところが最近、「陽子線」や「重粒子線(炭素イオン線)」を用いた新しい放射線療法が実用化され、肝機能を低下させることなく、肝臓がんを治療できるようになっています。
肝臓に対する放射線照射では、放射線によるダメージが肝機能を低下させたり肝障害を引き起こしたりすることで、治療期間中に吐き気や食欲不振、倦怠感といった副作用を生じることが考えられます。ただし一般的にこれらの症状は治療終了によって改善していくとされています。
なお、その他にも消化管出血や肝炎ウイルスの再活性化といった副作用リスクも考えられるでしょう。また化学療法と併用する場合、化学療法や放射線療法の副作用の症状が増強されるといったケースもあります。
がんはどのように予防していけばいいのか、スクリーニングについて知りたいと思っている方もいるのではないでしょうか。がんを予防するためには、バランスの取れた食事を心がける、適切な体重の維持、定期的ながん検診を受けるなど、日頃から健康管理を意識することが大切です。
肝細胞がんについては、現在日本で推奨されているがん検診はないといわれているため、気になる症状のある方は早めに医療機関を受診する必要があります。アルコールの飲み過ぎをはじめ、脂肪肝の原因となる肥満や糖尿病にも注意しなければなりません。生活習慣に問題のある方は、改善していきましょう。
この章では、予防やスクリーニングに関する情報を解説しますので、チェックしてみてください。
国立がん研究センターがん予防・検診研究センターより発表された「がんを防ぐための新12か条」は、以下の通りです。この新12か条は、日本人を対象とした疫学調査や現時点で妥当な研究方法で明らかになっている証拠を元にまとめられたものです。
肝細胞がんにおいては、肝炎ウイルスの感染予防が重要とされており、B型肝炎ウイルスは、ワクチン接種をすると感染予防につながります。また、肝炎ウイルス感染を早期の段階で知ることも、ウイルス感染者の肝臓がん発生予防に重要です。地域の保健所や医療機関にかかって、検査を受けることが大切です。
さらに、 B型肝炎やC型肝炎ウイルス感染が判明した場合には、肝細胞がんを予防していく必要があります。肝炎を進行させないように、ウイルスの排除や増殖を抑える薬を使用した抗ウイルス療法を受けることが推奨されています。
がん検診は、がんを早期に発見し、適切な治療を行って、がんによる死亡を減少させることを目的に行われているのが特徴です。肝細胞がんについては、現在日本で推奨されているがん検診はないと言われています。気になる症状がある方は、早めに医療機関を受診するようにしてください。
肝臓癌の発生リスクや悪化リスクを低減するために、まず喫煙習慣の見直しや禁煙といった取り組みは欠かせません。
日常的な喫煙習慣は肝臓癌に限らず様々な癌の発生リスクを上昇させる危険因子として認められており、当然ながら肝臓癌のリスクを低減したい場合は、たばこの本数を減らす、禁煙するなどが大切です。
また喫煙によるリスクを回避する上で無視できないポイントが「副流煙対策」です。
たばこの煙を吸い込むことによる癌リスクは、自分でたばこに火を付けて吸っている時だけでなく、他の人が吸っているたばこの煙を吸い込むことによってもリスクが上昇するため、注意が必要です。そのため自分が吸わないというだけでなく、他の人の吸っているたばこの煙についても吸い込まないよう副流煙に対する意識も備えておきましょう。
飲酒もまた癌の発生リスクを高める要因として知られており、特に日本人は欧米人などに比べてアルコールを分解する酵素を持っていない人も多く、飲酒による癌リスクへの影響は気をつけておきたいポイントです。また特にアルコールは肝臓に負担をかける物質であり、肝臓癌の予防やリスク軽減には飲酒習慣の見直しが欠かせません。
基本的に、アルコールを全く飲まずにいられるのであれば、それが対策としては最善と考えられます。しかし日常的な飲酒習慣によってストレスを軽減したり、他の人と一緒にお酒を酌み交わすことでQOL(生活の質)を高めたりといったケースもあるでしょう。
そのため、どうしてもお酒を飲む場合は、アルコールの度数の低い酒類に変えたり、飲む量を減らしたりといった配慮が大切です。また自身の体質がそもそもアルコールに対してどの程度の耐性を有しているのか、あらかじめ医師に相談してチェックしておくといったことも有効です。
生活習慣の悪化は癌の発生リスクを上昇させますが、飲酒に限らず食事全般についても日常的に配慮していくことが大切となります。
例えば日頃から塩分や油分の多い食事をしている人の場合、減塩メニューを採用したり、カロリーを控えて栄養バランスを考えた献立にしたりといった工夫も効果的です。
また肉類や穀類に偏った食事をするのではなく、食物繊維やビタミンを含んだ野菜や果物についても意識的に食べるようにしましょう。ただし、現在治療中の人や持病によって継続的に薬を服用している人の場合、禁忌となる食品や食材があるため、実際にどのようなメニューが適しているのかは医師や栄養士などへ相談することも大切です。
その他にも熱い食べ物は消化管の粘膜に負担をかけるため、なるべく冷ましてから食べるようにしてください。
健康的な生活習慣を意識する上で、日頃から適度に体を動かすといった身体活動も重要なポイントです。
ことさらに激しい運動や筋力トレーニングを行わなくても、意識的に階段を利用したり、近い距離であれば車を使わずに歩いたりと普段の生活で「体を動かす」という習慣を取り入れることが肝要です。また日頃の生活に体操など簡単にできるものを取り入れても良いでしょう。
身体活動の習慣化は癌のリスクを低減させるだけでなく、筋力や心肺活動の維持にも寄与して健康寿命を延ばすためにも大切となります。なお、手術後のリハビリや機能回復訓練として専門家の指導を受けながら行う運動などもあります。
癌のリスク因子として「過体重」も無視できません。過体重とは文字通り体重が重すぎることであり、肥満やメタボリックシンドロームといった状態は癌を含めて様々な疾患や症状の要因になり得ます。
一方、体重が軽すぎたり、急に体重が減少したりする場合も注意が必要です。
適切な食事や十分な栄養をとれておらず体重が減少すると、体内の生体機能や免疫機能が低下して感染症へのリスクを上昇させたり、様々な病気を引き起こしたりする恐れが高まります。また特に、急に体重が減少していくような場合は速やかに医師へ相談してください。
肝臓癌では肝炎ウイルスやピロリ菌などへの感染も重要なリスク因子となります。そのため肝炎ウイルスに感染していないかチェックしたり、ピロリ菌に感染している場合は除菌治療を検討したりといった取り組みが大切です。
またその他にも癌対策として子宮頸癌ワクチンの定期接種といった取り組みも推奨されており、まずは自身にどのような感染リスクや対策が関係するのか医師に相談して適切な問題解決へ取り組んでいきましょう。
※B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルス感染による肝硬変・慢性肝炎を指摘された方、肝炎ウイルスを伴わない肝硬変のある方は、3~6か月間隔で腹部超音波検査などの定期的な検査を受けるようにしましょう。
肝がんのスクリーニング検査は、標準的なものはないといわれていますが、以下のような検査法が候補として挙げられます。
(※現在研究されている段階です)
超音波検査は、超音波を肝臓に反射させることによって生じたエコーを用いた検査法のことです。このエコーをもとに、ソノグラムと言われる肝臓の画像が描出されます。がんが発生した場所によっては検査が困難だったり、皮下脂肪が厚い場合はしっかりと検査が行えなかったりする場合があります。
がんのある部位や患者さんの状態によっては、血管から造影剤を注射して行う造影超音波検査を採用するケースもあります。
CTは、肝臓をさまざまな角度から撮影することによって、精細な連続画像を作成する検査です。この画像は、X線装置につながっているコンピュータによって作成されます。肝臓をよりはっきりと映し出すために、静脈内から造影剤を注射したり、患者さんに造影剤を内服してもらったりする場合もあります。
腫瘍マーカーは、腫瘍によって作られ、体液や血液、組織の中から検出されることのある物質のことで、バイオマーカーとも呼ばれています。特定の腫瘍マーカーの値で高値が出る場合は、体内に特定の種類のがんが存在していることを意味するケースがあります。
肝がんを検出するための腫瘍マーカーは、α-フェトプロテイン(AFP)が広く用いられているのが特徴です。しかしAFPの値は、他のがんや妊娠、肝炎によっても上昇する場合があります。現在、肝がんの早期発見につながる特異的な腫瘍マーカーの研究が進められています。
上述したスクリーニング検査を使用して、肝がんの発見や診断に役立てます。
スクリーニング検査に関する判断は、困難な場合があります。すべてのスクリーニング検査が役立つわけではなく、そのほとんどが検査に伴って害が生じるリスクがあります。スクリーニング検査を受けたい場合、不明な点を担当医にしっかりと確認しておきましょう。検査にはどのような害を伴う可能性があるのか、また、その検査ががんで死亡するリスクを低下させることが証明されているのかを把握しておく必要があります。
ここでは、肝がんのスクリーニングに伴うリスクについてご紹介します。
検査結果が偽陰性となる可能性があります。。偽陰性の検査結果(実際にがんが存在していても存在しないと判定された)を受けた場合は、例え症状があったとしても、医師の診察を受けるのが遅くなってしまうことがあります。
検査結果が偽陽性と出る可能性もあります。実際にがんが存在していなかったとしても、スクリーニング検査の結果が異常と判定される場合もあるということです。偽陽性の検査結果(実際にはがんは存在しないのに存在すると判定された)は、不安を抱える方も多いです。さらに、通常偽陽性では、確定診断をするための検査(肝生検など)が実施されるため、さまざまなリスクもあるのが特徴です。
参照元:がん情報サイト肝がんを診断するための手技においては、合併症が生じる可能性があります。スクリーニングの検査結果が異常と出た場合には、肝がんの診断のために肝生検と呼ばれる検査が行われます。肝生検では、以下のような重篤な合併症が発生するおそれがあります。(※発生頻度はまれだと言われています)
肝生検は、1泊2日入院して行うことが多い検査です。
針を刺す予定の部位と肝臓の表面に局所麻酔をします。この時に痛みを感じる場合があります。また、麻酔を行っても、針を刺した部位や肩、みぞおちに痛みが見られることがあるため、心配な方はあらかじめスタッフへ相談しておきましょう。緊張や苦痛を和らげるために、鎮静剤などの薬剤を注射する場合もあります。
肝生検後はベットの上で、数時間安静で過ごします。検査後に、以下のような症状が見られた際にはスタッフに必ず伝えるようにしてください。
上記以外にも気になる症状が見られる場合、近くのスタッフに相談するようにしましょう。退院後も腹痛やお腹の張りがある場合には、医療機関を受診するようにして下さい。
参照元:慶応義塾大学病院まず覚えておくべきポイントとして肝臓が「沈黙の臓器」とも呼ばれるように、肝臓癌には特異的な初期症状がないという点が重要です。つまり肝臓癌ではセルフチェックによって何らかの明確なサインを発見することはできません。
ただし、肝臓癌の前段階となる慢性肝炎や肝硬変においては特定の症状が現れることもあり、そのようなサインを認めた場合は肝臓癌になりやすい状態になっている可能性を意識して医師へ相談したり、癌検診を受けたりといったことも考えられます。
肝臓癌は初期症状や自覚症状に乏しくセルフチェックの難しい癌である反面、いざ明確な癌症状が現れた時点では進行している恐れのある癌であり、まずは日頃から自身の体の違和感や状態について意識を向けておくことが大切です。
肝臓癌のリスクに関連する可能性のあるサインとしては以下のようなものがあります。
上記のような症状がどれか1つでもあれば肝臓癌や肝硬変、肝炎になっているというわけでなく、気になるものがあれば医師へ相談したり健診を受けたりするきっかけにしてください。
癌は生活習慣だけでなく体質や先天的な身体特性などによっても発生リスクが変わると知られており、そのような生まれつきの体質についてチェックするための方法として遺伝子解析や遺伝子検査といった技術が活用されています。
遺伝子検査では検査を受ける人の組織や血液の細胞から遺伝子を採取し、癌リスクに関与していると思われる遺伝子(癌遺伝子)について変異の有無や遺伝子型を調べるための検査方法です。
癌の遺伝子検査によって体質的に癌になりやすい人だと分かれば、あらかじめ癌リスクを低減できるよう生活習慣に気を配ったり、定期的な癌検診によって早期発見・早期治療を目指したりすることができます。また予防治療にも役立てられる他、すでに癌を発症している人に対しても、遺伝子型に合わせた治療法や治療薬を選定することで、より効果を期待できる個別化治療の品質を追求できることが強みです。
癌の遺伝子検査は、癌の標準治療の一環として保険適用で受けられる検査と、その他の予防目的などとして自費診療で受ける検査に大きく区別されます。前者に関しては、癌治療として医師が必要と認めた場合、保険診療として受けることができ、現在は全国の病院でも対応しています。
自由診療の遺伝子検査についてはクリニックなどで実施されていたり、市販の検査キットを活用して遺伝子型を調べたりするといった方法があり、いずれの場合も遺伝子検査の結果からリスクなどが認められた場合、改めて主治医へ相談して適切な予防法や治療法を検討していくことが望ましいでしょう。
がん遺伝子検査においてターゲットとなる遺伝子は、すでに様々な研究などで特定されている癌遺伝子となっており、肝臓癌に関連した癌遺伝子としてはp16やAPC、TERT、CCND1といったものが知られています。
既知のがん関連遺伝子(p16、APC、TERT、CCND1、RB1など)のゲノム構造異常[4]に加えて、新規のがん遺伝子(ASH1L、NCOR1、MACROD2、TTC28など)のゲノム構造異常、HBVとアデノ随伴ウイルス(AAV)[5]の肝臓がんゲノムへの組み込み[6]、遺伝子発現に影響を及ぼす可能性のある非コード領域や非コードRNA[7](NEAT1、MALAT1)の変異も多数検出しました。
引用元:国立研究開発法人国立がん研究センター|肝臓がん300例の全ゲノムを解読
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2016/0412/index.html
肝臓癌に限らず様々な癌に関与する癌遺伝子の特定や研究は日進月歩で行われており、それぞれの癌遺伝子によってどのような特徴を持った癌が発症しやすくなるのかについても合わせて研究が進められています。
また、既知の癌遺伝子が遺伝子検査によって検出された場合、その被検査者には特定の癌に関するリスクがあると考えられ、その人物がすでに癌を発症している患者であれば癌の確定診断に寄与することもあるでしょう。
加えて、癌遺伝子は肝臓癌の発生や進行・転移にも関与していると考えられており、肝臓癌の術後生存率なども癌遺伝子の分子分類によって差を生じさせているという点は重要です。
これらは、肝臓がんの発生や進行に深く関与すると考えられます。また、これらのゲノム情報によって肝臓がんは6つに大きく分類され、肝臓がん術後生存率はこの分子分類によって異なることが分かりました。本成果は今後、がんのゲノム配列情報に基づいた肝臓がん治療の個別化や新規の治療法・予防法開発へ発展する可能性があります。
引用元:国立研究開発法人国立がん研究センター|肝臓がん300例の全ゲノムを解読
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2016/0412/index.html
癌遺伝子の分子分類によって癌のリスクや悪性度といった特徴が変化するということは、患者の癌遺伝子を知ることでどのような癌の治療薬や治療法を選択すべきか検討材料を得られるということです。
肝臓癌の化学療法や集学的治療では、患者の個別化治療の品質を向上させるために遺伝子検査が実施されており、特定された癌遺伝子の分類に合わせて有効性を期待できる治療薬を選択したり、逆にリスクがあると懸念される治療法を除外したりといった判断に寄与しています。
例えば切除不能な肝臓癌へイリノテカンといった治療薬を使用することで、癌を切除可能な状態にするといった治療がありますが、一方でイリノテカンでは体質によって副作用のリスクがあることも無視できません。
※参照元:日経メディカル|切除不能肝転移大腸癌にイリノテカン、UFT、ロイコボリン、5FU肝動注の併用で6割強で肝転移切除可能に(https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/200802/505427.html)
このような場合、あらかじめがん遺伝子検査を行って患者の遺伝子タイプを知ることにより、イリノテカンなど特定の治療薬のリスクについても適切に判断しやすくなります。
細胞障害性抗がん薬の一つであるイリノテカンを使う前に血液検査を行い、体質によって重い副作用が出る可能性がないか遺伝子検査で調べます。検査の結果によって、副作用が出やすい人は、薬の量を調節して治療を行うことがあります。
引用元:国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス|がん医療における遺伝子検査 もっと詳しく
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/genomic_medicine/gentest02.html
遺伝子検査は癌遺伝子の有無や類型を知る上で効果的ですが、一方、遺伝子検査の結果が即座に癌の確定診断につながったり、将来の癌発症を予知したりするといったことはありません。
遺伝子検査は個々の体質的な特徴から適切な予防法や個別化治療の内容について検討するための材料であり、仮に自分や家族に癌遺伝子が認められたからといって、過度に不安を抱いてストレスを強めるといったことは避けましょう。
また自由診療のがん遺伝子検査では医学的根拠が認められていないものもあり、適切な遺伝子検査を受けるためにはまず主治医などへ相談するようにしてください。
肝がんの場合、根治的治療が行われても再発が避けられないケースが多く、長期にわたって治療を繰り返さなければなりません。したがって、それぞれの治療法は、生存率だけではなく患者のQOL(quality of life)を考慮して評価しなければなりません。
肝がんの手術後の注意点として、食事療法や生活上の制限はないとはいわれています。一般的には、1か月ほどはゆっくり過ごし、体を少しずつ慣らしていきます。体力が回復して、肝機能が安定してくると、少しずつ通常の生活に戻ることができるため、焦らずにできることから試していくことが重要です。
食事は、術後3日ほどで摂取できるようになります。肝切除の範囲が小さいと、肝機能の回復も早いため、栄養管理も心配はいらないといわれています。しかし、切除範囲が大きい場合には、食事摂取ができるようになるまで時間を要するケースもあります。
QOLの維持・向上に資する要素にはさまざまありますが、非常に大事な要素の1つが食事です。
点滴で栄養補給をする場合もありますが、肝臓の機能を回復させるためにも、徐々に口から摂取していくことが重要です。
肝がんの患者や治療後のケアとして、食事療法や食生活の改善は重要である一方、日々の暮らしの満足度やQOLの観点から食事について考えた場合、「食事を楽しむこと」も欠かせません。
塩分過多や脂肪過多といった食生活を回避し、バランスの良い食事メニューを考えて体に必要な栄養をきちんと摂取することが大切です。一方、食事による栄養管理が義務的に感じられると食事そのものがストレスになりかねないため、食欲がわかない時にはあまり無理をせず、食べやすい食事や食べたいメニューを口にしてみるといった心構えも忘れないようにしましょう。
少量しか食べられない時は、主食や主菜を優先することも工夫のひとつです。
肝がんの手術を受けた場合、安静期間を終えても術後1ヶ月ほどはゆっくりと過ごすようにします。その後、術後の状態が改善して体力も徐々に回復してくれば、心身の状態を踏まえた上で散歩や軽い体操といった運動をスタートさせ、体を動かす時間や運動量を増やしていくことも大切です。
また術後ケアの観点だけでなく、適度な運動は脳内物質の生産や分泌を促して、メンタル面に良い影響を与えることも指摘されており、無理のない範囲で日常的に運動習慣を取り入れれば心身の健康を高める効果も期待できるでしょう。
肝がん治療と運動の関係について考えた際、まず足腰といった下半身の筋力維持を意識することがポイントです。太ももやふくらはぎといった下半身の筋肉を健康な状態に維持することで肝障害の悪化予防につながることが知られており、さらに歩いて行動しようという気力の増進にもつながります。
とはいえ急に激しい運動をすることは転倒やケガなどのリスクも招きます。これまであまり運動してこなかった人はまず散歩やウォーキングといった軽度な運動から始め、慣れてくればジョギングやサイクリングなどへ移行するとよいでしょう。
また筋力トレーニングとしてその場で屈伸を行うスクワットの他、ケガの危険を抑えながら心肺機能の強化にもつながる水泳もおすすめです。
ただし、疲労感が強い時や痛みを感じる時は無理をしてはいけません。また肝機能が低下している時は必ず担当医へ相談して運動の計画を一緒に考えてもらうとよいでしょう。
肝がんの患者に対して、手術前などから適切な運動療法を実施することで肝機能障害によるインスリン抵抗性が改善され、術後運動の早期再開にも良い影響を与えることが報告されています。
ただしこれらの運動療法やリハビリテーションを適切に実施するためには、個々の患者の状態や癌の病態に合ったプログラムを適切に考案することが欠かせません。また、運動療法は栄養療法など複数のサポートと組み合わせることが肝要になるため、担当医にも相談しつつ専門機関や有資格者による支援を希望することも有効です。
参照元:一般社団法人日本肝臓学会|6.肝癌患者に対する肝臓リハは?
肝がんの患者や治療を終えた元患者の体験談や口コミを見ると、家族や友人など「人とのつながり」に支えられたという声がしばしば認められます。
肝がん患者にとって治療に伴う合併症や副作用、再発や転移に対する不安はとても大きなストレスであり、家族に心配をかけまいと一人で抱え込もうとする人も少なくありません。
ですが、患者本人が癌を治したいと考えるのと同じように家族もまた患者のことを思っています。そのため、むしろ不安や弱気を抱いた時には素直に話し合えるよう、普段から家族とコミュニケーションをとって心の対話を習慣づけておくこともQOL向上につながります。
肝臓癌の患者に限らず、癌患者や家族にとって治療費や検査にかかる費用といった「お金」は重要な問題です。
早期発見の癌と治療であれば比較的少額の負担で済むことも多い反面、発見時の状態や術後の予防などによっては継続的に費用が発生することもあり、癌が進行すれば入院や休職が必要になるかも知れません。
そのような癌患者や家族の不安や負担を軽減するため、民間の癌保険への加入の他にも公的な支援策として癌検診の一部を補助したり支払った費用の一部を助成したりする制度も用意されており、まずは自身が暮らしている地域においてどのような自治体の取り組みが行われているのか地域の医療機関や「がん相談支援センター」などへ問い合わせてみることも大切です。
肝がんで治療を受けている方の体験談や生の声が聞きたい方もいることでしょう。ここでは、肝がんと診断された方の体験談をご紹介します。薬物療法、手術療法を受けた際の声をまとめましたので、チェックしてみてください。
(前略)B型肝炎ウイルス感染から肝細胞がんに移行する例はそれほど多くないと聞いていたことや、肝細胞がんは比較的高齢の方の病気だと思っていたこともあり、告知を受けたときは、「まさか」と信じられない気持ちと、「なってしまったのか」との気持ちが交互に訪れ、頭の中が真っ白になるというのはこういうことかと思うくらい何も考えられない状態でした。(後略)
引用元:肝臓がん情報サイト『かず様の発症 / 診断に関する体験談』
入院は1週間程度で、多少身体的負担はありましたが、大きく切らねばならない開腹手術よりは負担は少なく済んだと思います。退院1週間後に新幹線で九州に出かける予定があったので、それを楽しみに多少の痛みは乗り切りました。さらに1ヶ月半後には、イギリス旅行にも出かけましたが、これには先生も驚いていました(笑)。
引用元:肝臓がん情報サイト『Renn様の肝切除 / 焼灼に関する体験談』
(前略)TACEの効果がなかった部分には、ラジオ波焼灼療法(RFA)をすることになりました。仕事に配慮していただき、12月の冬休みに入ったタイミングで治療し年内に退院しました。
翌年3月末に仕事を退職し、5月に2回目のTACEをしました。このときは退院後の倦怠感が強く、家の中で横になっていることが多かったです。やる気はあるのですが、体が動かなかったんです。そのときも夫が家事をよくやってくれて、助かりました。TACEはその後にもう一度行い、同年に経皮的エタノール注入療法(PEIT)を実施したのが最後の治療です。長時間同じ姿勢を保つ必要がありましたが、治療をしながら先生と話をしたりもできましたので、それほど辛いと感じませんでした。
引用元:肝臓がん情報サイト『かず様のTACEに関する体験談』
抗がん剤の治療を始めてみると、想像していたよりも副作用が少なく、仕事への影響も殆どありませんでした。嬉しいことに治療効果もあって、がんが縮小しました。多少の副作用はありますが、それぞれに対策を講じていただき、ごく普通に生活できています。仕事や生活との両立が叶うこの治療をずっと続けられることを願っています。
引用元:肝臓がん情報サイト『からくり様の薬物療法に関する体験談』
抗がん剤の治療では、医師と相談の上、副作用があるときは休むようにしています。当時、仕事が週の半分は在宅勤務だったため、治療と仕事の両立もでき、日常生活が戻ってきて気持ちもだいぶ落ち着いてきました。(後略)
引用元:肝臓がん情報サイト『Kana様の薬物療法に関する体験談』
一番最初に 肝臓の病気を見つけたのは10年ぐらい前かな 健康診断で 肝臓機能が低下しているから病院で検査を受けてください と健康診断の時 言われた
若かったし 何大したことないんじゃないかなと思って しばらく放置していた(中略)ICU に6日ぐらい入ったけどそこら中管だらけで 自由に動くことができなかった 後で女房が教えてくれたけどもし 肝臓自体が 癌になつていたら 余命宣告が 出されていて 6ヶ月ぐらいと言われた 手術時間が長かったのは良い方向に 向いていると判断できた 手術後の 経過も良くて 手術をした 日から 2週間で 退院することができた 今では元気よく 仕事にいつているいる 1ヶ月に1回の 通院も じきに終わり 半年に一回 で済むようになる 癌と言われた時には ショックを受けたけど いい先生に巡り合って命拾いをした
皆さんもこれを読んでくれたら 健康診断で 指摘されたらすぐに言ってください そうすれば 眼科を防ぐことも 可能と思います くれぐれも言いますけど 健康診断で指摘されたら 必ず早めに 病院に行ってください
引用元:Caloo
以前からC形肝炎ウィルスに感染していることはわかっていたので、定期的に肝臓の超音波診断(エコー)を専門病院で受けていました。半年前の超音波検査でついに9mmの腫瘍が発見されてしまいました。先生からは手術して1/4ほど肝臓を切除することを勧められました。しかし、セカンドオピニオンを受けてみたいと思い、主治医の先生にお願いしてセカンドオピニオン用の紹介状を書いていただきました。(後略)
引用元:Caloo
(前略)癌をある程度大きくしてから焼き切るようで、3ヶ月ほど手術まで待ちました。その間にも小さい癌はできているようで気になっていました。結果、いくつか大きな癌はとることができましたが、取りきれないものもあり、次回に何とかするとのことでした。カテーテル手術自体はそれほど負担はありませんでしたが、終わったあとの3日間、常時強い吐き気に襲われ、何も食べれず胃液も全て吐いてしまって、透明の液体を吐き続けていました。吐き気で寝ることもできないので睡眠薬で寝て、何度か点滴の薬を変えてもらって数日後に落ち着きました。(後略)
引用元:Caloo
初めて受けた人間ドックのエコー検査で、肝臓に直径6cmもある巨大な「腫瘤」が見つかり、至急専門医の精密検査が必要とのことで、大学病院の肝臓内科を紹介されました。(中略)この「腫瘤」を見つけた病院では、恐らく「良性腫瘍」であることは大体判っていたと思われますが、その時に患者を安心させるようなことは一切言わず、「癌」であれば余命半年などと脅されたものでした。
私はこの「腫瘤」の発見から「確定診断」に至るまでの間は最悪のことを想定し、今後の生活や将来のことをいろいろ考えさせられ、その不安から夜も寝られない日々が続いたことは言うまでもありません。(後略)
引用元:Caloo
乳がんが骨に転移してまる5年、肝臓に転移して3年。これまでは様々なホルモン治療で来ましたが、いよいよ耐性がきたようで、血液データも悪化し、MRIでみても肝臓の腫瘍が大きくなっていました。本人には、痛みなどの自覚は、ほとんどないのですが…。(中略)乳がんの治療も6年目。ステージ4で絶望的な生存率を告げられた身とは思えないほど、以前と変わらない生活を送れています。もちろん仕事も続けていますし、子育てもがんばっています。
転移がわかって落ち込んでいる人に伝えたいのは、医者は「最悪、こういうこともありえます」という可能性の話をしている、ということ。だからあなたもこうなります、と言っているわけではないのです。
あわてて仕事をやめることもないし、投げやりにならなくても、こうして新しい薬の恩恵も受けられます。だから、大丈夫です。私もがんばります。このレポートを読んでくれたあなたも、前向きにいきましょう!
引用元:Caloo
(前略)一家の大黒柱が40代でがんを発病することによる家族の苦労は並大抵ではないと思う。
特に妻には10年間の闘病中、大変苦労をかけた。いまでも気が休まらないと思う。
長男は私の闘病中一家の支えとして家族をまとめ上げてくれた。生体肝移植の時は長男も次男も肝臓の提供を申し出てくれたが、私はどちらとも決めかね両方とも検査し、医者に判断してもらい数値的に適合する方を選んだ経緯がある。
長女は生まれたばかりの双子の子供を抱え、千羽鶴を折ってよく見舞いに来てくれた。家族に「ありがとう」とまず感謝したい。(後略)
引用元:がん・バッテン・元気隊
自分が行動することで変わる事ができる。胆管がんをきっかけに身の回りの状況が大きく変わったが、一つ一つの出会いや機会を無駄にせず、前向きに行動することで可能性を広げていく。(後略)
引用元:がんノート
(前略)松崎でございます。通称マッチャキと呼ばれています。僕は、肝細胞がんというがんで、ステージは一応4のBという、いわゆる最終段階ですけど、なぜか生き返ってこんな状況でおります。2009年の12月から、40歳の時にがんと宣告されて、つい先日、金曜日まで入院して、色々と治療中でございます。よろしくお願いします。(後略)
引用元:がんノート
(前略)「行動すれば変わる」というのは1年たった今でもすごく大事なことで、僕が元気でいれる理由はこれなんです。僕が変わると言っていたのは、僕の体調や、キャンサーペアレンツの活動、僕を取り巻く家族との接し方や、仕事等たくさんある。僕が行動してきたからこそ、いいように変わってきたということが改めて感じる1年だったと思うので、伝えたいメッセージは一年前と変わらないです。いろんな状態とか状況とか、メンタルとかあると思うんですけど、何かアクションすることでプラスに変わっていくことのほうが多いと思う。だから僕は改めて、行動をするということは大事なんだろうと感じています。行動したからこそ、こういうような出会いもある。改めてこの1年後も行動すれば変わると思っています。(後略)
引用元:がんノート
(前略)薬の副作用なのか、原因はわかりませんが、治療のせいで髪の毛が抜けたこともありました。髪の毛って本当に大事で、バッサバサ抜けていくのが辛くて、泣きました。副作用って怖いと思ったし、すごく悔しくて、嫌で。外出するのも嫌になり、人と会いたくなくなり、私は誰かと会うことによって生きる喜びや幸せを感じていたので悪循環に陥ってしまいました。
そのとき、母校の先生が、どうしたら私を元気づけてあげられるだろうと考えて、私と同じように丸坊主にしてくれたんです。元々ショートヘアの体育会系の女性の先生です。Facebookで「弘子を応援するために、丸坊主にしました。イエーイ」というコメントが添えられた先生のものすごくいい笑顔の写真をみて、丸坊主でも笑うとこんなに素敵なんだ、外見だけでなく内面の美しさって大事だったんだな、と実感しました。そして先生を始め、いろんな方が、いろんな友達が落ち込んでいる私を心配してくれているんだと思うと、自然と立ち直ることができました。(後略)
(前略)07年(5月)肝がん2ヶ所再発。胆のうにかかる為切除後、肝臓治療・・・諦めつつ、両親、子供達、家内には、すまない。9月、発熱の為 緊急外来、肺炎になり、入院15日後退院検査日、マーカー高くなり、12月より、抗がん剤治療始まる週1、年明け2回、検査始まり、諦めになりつつ、いろいろ悩む。昨日ささいな事で、妻に暴言をはき、頑張っている妻を悲しませて、そんな自分に怒り、ストレスの為、体調悪くし、夜になると考えてうつ病。
毎回高齢の両親が気にかけ、励まされ、皆様に感謝するように。子供達には、色々我慢し頑張る姿を見せられ励みに。妻には、毎日励まされ、気をかけ、子供達の為頑張るように、声をかけ、仕事しながら子供達の世話をし、私の世話と明けくれる、姿・・・
4年前のある日、高熱が出て開業医に行ったら「大きい病院に行って下さい」と言われて行ったら、検査で「がんです」と言われた。結局そこの病院で「手術できない」と言われて大学病院で手術した。それから、4年経った。現在3ヶ月ごとの検査で今のところ再発していない。(後略)
非小細胞型肺がんステージⅣの診断。
主治医は私より4~5歳年下の女医さん。
分子標的薬から始まり、2種類使いましたが耐性のため使えなくなりました。元より肺がんの症状は全くなく左頚部のリンパ節腫大くらい。後で考えると「腫瘍関連血栓症」のためと思われる心筋梗塞を起こしてしまいました。早く処置した甲斐あり2週間の入院ですみ、仕事(自営業)も復職できましたが、この頃より腰痛と右脚のしびれに悩まされ、MRI で骨転移が脊髄圧迫しており腰椎椎弓切除術で1カ月入院して放射線治療。このあたりより疲れやすくなりました。
CTで肝臓の転移が見つかり、抗がん剤治療中。自営業なので店じまいも考え始めています。
私は担当医の先生から、大腸がんの手術後の説明の中で、リンパ節への転移がみられ、遠隔転移の可能性が高いことを告げられました。翌年に肝臓、翌々年に肺への転移がみつかり切除、その後化学療法を受けました。入退院を繰り返す中で、症状を特段感じなくても、がんの再発・転移が進行していることを、身をもって体験する事となりました。(中略)私自身は、予想以上に体調が回復してきたな、と感じてきましたので、もう大丈夫だと思い、特にそれ以上の情報を収集しませんでした。今は、一般向けに再発・転移に関する読みやすい書籍もあります。医療者との意思疎通の上でも、基礎的な理解は、助けになると思います。
最初にがんになったとき、私は絶対に治すんだと心に決めて、大きな手術もつらい抗がん剤治療も必死で耐え抜きました。十分すぎるほど頑張ったつもりでいました。
がんの再発がわかったとき、その頑張りが否定されたように感じました。(中略)あれから4年。逃げ出す勇気もなかった私は医師の指示どおりに治療を受け、肉体的にも精神的にもつらい思いをしましたが、日々を生きる中には楽しいことや笑えることも少なからずありました。抜けた髪はロングまで伸びました。今では、つらい経験をした分を取り返すつもりでいます。
初発から6年たったときにがんが再発した。特に問題なく5年を経過し一安心していた中での出来事だった。
「複数臓器に遠隔(えんかく)転移しているので、手術はできない。根治(こんち)することは不可能で、延命を目指しての治療」と医者から言われた。
その後、セカンドオピニオン、サードオピニオンと見解を求めたが、どれも同じものだった。初発のときとは比べものにならない大きなショックを受けた。初発のときには考えなかった死を意識した。残された家族はどうなるのかとこれほど心配したことはなかった。それでも、何とかなると少しだけの希望は持ちたいと思った。それから9年、がんで失ったものは多い。でもそれ以上に得たものがある。そう感じられる今がある。
再発を知ったときは、かなりのショックを受けました。CTには、素人目にもわかるほど、多数の転移巣(てんいそう)が映っていました。がんの再発がどういうことを意味するのか、理解していたこともあり、初めてがんの告知を受けたときとは比べものにならないほどの大きなダメージを受けました。(中略)今、私のスケジュール帳には、仕事・患者会活動、もちろん遊びにいくこと、いろいろ毎日予定がぎっしり。再発する以前にもましてアクティブな自分であることを嬉しく思います。それは、普段は意識していなくても、がんという病気になったことを契機に、自然と「今」を、「自分」を大切にして生きようと思っているからかもしれません。私は今、がんとともに生きている自分が、一番好きです。
がんの治療は日進月歩。今日使えなかった薬が明日は使えるようになっているかもしれない。今日できなかった治療が、明日はできるようになっているかもしれない。今日より明日はずっと、きっとよい日と信じて、私は、前向きに歩いていきたいと思います。
(前略)前職もがんに理解のある職場でしたが、今の職場も変わらず恵まれた環境で働かせてもらっています。平日に通院する場合でも、遠慮なく有給を使っていいよと言われていますし、実際お言葉に甘えることもあります。
仕事内容にも職場にも満足しているので次の転職は今のところは考えていませんが、ライフステージの変化やまた他に興味のあるテーマに出合えたときには転職するかもしれません。
罹患前にあった、ずっとこのままでいいかなという考え方はなくなってしまいましたね。転職の直接的な理由はがんとは全く関係ありませんが、がんに罹患していなかったら転職をしようとは思わなかったはず。私の場合、がんをきっかけに自分の仕事や働き方にちゃんと向き合えるようになりました。
(前略)当初、婦人科系の疾患を中心に検査を行ったのですが悪いところが見つからなくて…。でもどこかに必ず異常があるはずと全身のCTを撮ってもらったら、肝臓があやしいと。さらに調べた結果、私の肝臓には膿が溜まっているらしく肝膿瘍(かんのうよう)と診断されました。(中略)母との対話を通して辿り着いた答えは、「もっと前向きに生きたい」。ネガティブなことに捉われるんじゃなくて、がんと向き合って前向きに生きたいと思えるようになりました。(中略)何でも話ができる親友の存在は闘病中のみならず、治療後の人生にとっても大きかったですね。
治療は、標準治療を基本として担当医と相談して決めます。身体の状態や年齢、本人の希望、生活環境などを総合的に検討したうえで決定します。肝細胞がんにかかった人の多くは、がんと慢性肝疾患という病気を抱えています。そのため、まずは肝予備能をChild-Pugh分類を使って評価し、治療法を選択していきます。
肝障害度もしくは肝障害度分類は、肝予備能を判断する指標として肝癌診療ガイドライン第3版まで採用されていた分類法です。ただし、現在でも肝臓の切除手術を行う場合は肝障害度によって分類されることが重要な点です。
肝障害度分類では「ICG(インドシアニングリーン)」という色素を用いて肝機能に関する検査を行います。手術によって肝臓をどの程度まで切除するのかといった計画は、同色素を使った肝機能診断にもとづいて策定されます。近年はChild-Pugh分類やALBIスコアなど、他の肝機能評価法も併用されることが増えてきました。
肝障害度では大きく「A・B・C」の三段階で評価を行い、また腹水の有無や血清ビリルビン値の数値などによって各項目が分類されます。
例えば腹水については以下のような分類で肝障害度が判断されるという仕組みです。
この他にも複数の検査結果を相互参照して多角的に肝障害度が判定されます。
Child-Pugh分類は肝予備能の指標として肝癌診療ガイドライン第4版から採用された分類法です。肝障害度分類ではICGが用いられましたが、Child-Pugh分類では同色素は使われず、肝性脳症の程度や腹水の量、血清ビリルビン値や血清アルブミン値といった検査結果を変数として計算式に当てはめ、その結果を「Child-Pugh分類/スコア」としてグレードA~Cの三段階で分類します。
Child-Pugh分類では、スコアにもとづいてグレードが判定され、Aであれば軽度の肝硬変、Bであれば中程度の肝硬変、そしてグレードCは重度の肝硬変(非代償性肝硬変)といったように判断されることが特徴です。
ここでは、比較的新しい臨床試験や治療法について解説していきます。予後が極めて不良と言われている中期進行肝がんにも治癒をもたらす可能性のある治療法や、切除不能な肝細胞がん患者さんの生存期間の延長効果が示されたものなどをご紹介します。
近畿大学医学部内科学教室主任教授である工藤 正俊氏を中心とする研究チームは、国内6施設と香港1施設との共同研究において、切除不能な中期進行肝がん患者を治癒に導く治療法の開発を行いました。研究チームは、アテゾリズマブとベバシズマブと呼ばれる2種類の薬剤を用いた研究を実施。
研究の結果、7施設に入院中の中期進行肝がん110症例中、免疫療法後の切除、ラジオ波または免疫療法と選択的TACEを併用して38例(35%)が根治、このうち薬物治療を終えた後も再発が見られない患者は25例(23%)という結果が出ています。
腫瘍が縮小した症例は切除などで根治でき、また縮小しなかった場合も肝動脈塞栓療法(TACE)を複合免疫療法と併用し、TACEで狙ったがんだけではなく、その他の部位に見られるがんも治癒に導けることを証明しました。
将来的に、中期進行肝がん患者に対する標準治療法になることが期待されているだけではなく、予後が極めて不良と言われている中期進行肝がんにも治癒をもたらす可能性のある治療法と言われています。
アストラゼネカでは、第Ⅲ相HIMALAYA試験において最新の結果を発表しました。本試験では、アストラゼネカのイミフィンジ®(一般名:デュルバルマブ)とイジュド®(一般名:トレメリムマブ)の併用療法について記載されています。全身療法による治療歴がなく、局所療法が適応ではないとされる切除不能な肝細胞がん患者さんの治療薬として、4年経過時点で持続的で臨床的に意義のある全生存期間の延長効果が示されました。
今回のHIMALAYA試験の結果は、スペイン・バルセロナで開催された2023年欧州臨床腫瘍学会(ESMO)世界消化器がん会議で発表されました。
新たに発表された4年間の追跡データから、イミフィンジにイジュドのプライミング単回投与を追加したSTRIDE(Single Tremelimumab Regular Interval Durvalumab)レジメンが、ソラフェニブと比べて、死亡リスクを22%低減させたと示されたのです。
2023年8月、楽天メディカル株式会社は独自に開発・創薬した抗CD25抗体-色素複合体「RM-1995」と、医療用レーザー機器(波長690 nm)を活用した光免疫療法(アルミノックス治療)に関して、「肝転移を有する進行または再発固形がん」を対象としたⅠ相臨床試験を日本国内で開始したと発表しました。
この第Ⅰ相臨床試験は、標準治療による対処法がない進行癌や再発固形癌を適用対象としており、RM-1995とアルミノックス治療の単独療法や、ペムブロリズマブとの併用療法における安全性・忍容性などの評価を実施。この結果により薬剤や治療に関する最大耐量や最大投与量を分析し、次のステージである第II相臨床試験での推奨用量を決定していくことが期待されました。同時に肝転移における癌治療の手段としても、今回の治療に用いる機器の安全性評価を実施することが可能です。
また同社の代表取締役社長である三木谷氏も父親を膵臓癌で失った経験を踏まえて、RM-1995やアルミノックス治療の発展や確立を進めながら、新しい癌治療の実現と提供に取り組んでいく方針を発表しました。
参照元:楽天メディカル株式会社
理化学研究所生命医科学研究センターや岐阜大学大学院医学系研究科、東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座などのチームによる共同研究によって、「血中MYCN」が、肝臓癌の再発予防薬として期待されている「非環式レチノイド(商品名:ペレチノイン)」の治療応答性に関連していることが発見されました。これにより、患者の血中MYCNを知ることによって、肝臓癌の再発予防薬の効果を推察できる可能性が高まったとされ、結果的に血中MYCNが肝癌予防に向けた患者層別化バイオマーカーとして有用であると考えられたことが重要です。
2024年2月現在、日本発の肝癌再発予防薬として開発された非環式レチノイドは承認に至っていませんが、血中MYCNの発見によって非環式レチノイドの早期臨床応用がサポートされて個別化医療の研究を前向きに進めることが期待されており、今後の肝臓癌の再発予防薬研究や再発予防治療の実現に好影響を与える可能性が示唆されました。
参照元:理化学研究所|肝がん予防のための患者層別化マーカーを発見-血中MYCNで肝がん再発予防薬の効果を予測-
進行性の切除不能肝細胞癌の治療方法として、「抗PD-1抗体ニボルマブ」と「抗CTLA-4抗体イピリムマブ」を併用することにより、患者の死亡リスクを21%軽減して全生存期間を有意に延長できることが発見されました。
この研究はアメリカのBristol Myers Squibb社によって2024年3月に発表されており、フェーズ3試験である「CheckMate-9DW試験」の結果として得られたものです。また、同研究報告は同年5月末から6月4日にかけてシカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2024)において、ドイツのUniversity Medical Center MainzのPeter R. Galle氏によっても報告されています。
なお、CheckMate-9DW試験には日本の施設も試験実施機関の1つとして参加しており、試験全体で全身治療を受けていない患者668人を対象として、ニボルマブとイピリムマブの併用の有効性が試験されました。
参照元:がんナビ|切除不能肝細胞癌の1次治療でニボルマブとイピリムマブの併用はレンバチニブまたはソラフェニブ単剤よりも死亡リスクを21%低減【ASCO 2024】
参照元:がんナビ|進行肝細胞癌の1次治療でニボルマブとイピリムマブの併用がチロシンキナーゼ阻害薬より有意に全生存期間を延長
アメリカのジョンズ・ホプキンス・キンメルがんセンターのElizabeth Jaffee氏によって、肝細胞癌の標準的な免疫療法へ、個々の患者に合わせてオーダーメイドされた抗腫瘍ワクチン(個別化ワクチン)を併用することにより、肝細胞癌の縮小率が免疫療法のみを実施した患者より約2倍ほど改善することが発表されました。
Elizabeth Jaffee氏らの研究チームは肝細胞癌と診断された患者に対して、免疫療法に個別化ワクチンを組み合わせることで患者の生存率を向上させられると期待しており、またジョンズ・ホプキンス大学医学部腫瘍学分野のMark Yarchoan氏によれば、同研究は個別化ワクチンが抗PD-1抗体への臨床反応の活性化を示すエビデンスになるとも語っています。ただし、同時にこの研究効果をさらに立証するには一層の大規模なランダム化比較試験が必要とも語られており、今後の研究結果が待たれています。
参照元:Care Net|免疫療法+個別化ワクチン、肝細胞がんの新治療法として有望
近畿大学医学部内科学教室の工藤正俊教授を中心とした研究チームは、日本国内の施設と香港の施設で行った共同研究により、切除不能な中期進行肝癌患者に対する新しい治療法を開発しました。
同研究では、中期進行肝癌患者の新規治療法として、アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)とベバシズマブ(商品名:アバスチン)を併用した化学療法を考案し、同治療によって患者の癌を手術可能な状態にまで縮小させ、根治治療を進められることに成功しました。また、治療によって癌が縮小しなかった場合においても、さらに肝動脈塞栓療法(TACE)を併用して複合免疫療法を実施することにより、癌治療について好意的な効果を期待できることを発見しています。
これにより、これまでは手術困難とされていた中期進行肝癌の患者であっても、改めて手術によって癌の根治を目指せる可能性が新たに生まれており、今後の肝臓癌治療の発展性に寄与することが期待されています。
参照元:近畿大学|世界初!切除不能な中期肝がんに対する新たな治療法を開発 先行した免疫療法と根治治療で中期肝がん患者の35%を治癒
国立研究開発法人国立がん研究センターが中心となって結成された日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)が、大腸癌から肝臓へ転移した癌患者に対して、肝臓切除後の術後補助化学療法の有効性や、切除単独療法との効果差などを検証し、2021年9月にその結果を公表しました。
そもそも大腸癌からの肝転移患者に対する標準治療としては肝切除単独療法が設定されており、術後補助化学療法は指定されていません。一方、実際の臨床現場では肝臓切除後の治療として十分な医学的根拠がないまま術後補助化学療法が広く実施されているという現状もありました。そのため同研究グループは改めて、大腸癌の肝転移において、肝臓を切除した患者に対する治療法の有効性を肝切除単独療法と術後補助化学療法を加えたケースで比較検証し、術後補助化学療法が一律に推奨される治療法であるのか医学的に検討したという点が重要です。
結果として、術後補助化学療法を実施することで無病生存期間は延長されたものの、全生存期間の延長は認められず、補助化学療法の一律な実施は推奨されないという事実が明らかになりました。また、これにより日本国内だけでなく全世界的に、大腸癌の肝転移に対する日常診療の内容が再検討される可能性も示唆されています。
参照元:国立研究開発法人国立がん研究センター| 大腸がんの肝転移による肝切除後の新たな標準治療を検証 肝切除後の補助化学療法は生存改善を認めず
東京大学医学部附属病院消化器内科の小俣政男医師を研究代表者として、東京大学医学部附属病院や岡山大学、独立行政法人国立病院機構長崎医療センターなどの共同研究チームが、肝臓癌の再発に関する要因解析と、予後の改善に向けた有効な方法や因子に関する研究を実施し、5年生存率を70%まで向上させるための具体的な取り組みについて検討を行いました。
まず肝臓癌の再発事例について予後解析を行ったところ、画像上で根治が認められた肝癌患者の5年間の累積再発率は72%であり、無再発死亡率11%と比較して優位に高いことが明らかになりました。また、特に治療後AFP-L3高値群の再発率が高いことも明らかとなり、いかに再発を防ぐかが改めて重要であると確認されています。
次いでC型肝癌の治療後6年累積生存率は、IFN著効後発癌例において93%、肝癌治療後IFN著効例で88%と良好な結果を示していることが分かりました。
また治療後1年間の再発率を比較すると、初回肝癌では16%、初回再発癌で21%、2回以上の再発癌では55%となっており、再発を繰り返すほどに再発率が上昇していたことも重要です。
研究では画像上で根治が認められても実際には残存癌や再発リスクが存在しており、遺伝子学・分子生物学的クロナリティー解析の開発によって早期発見を目指すと同時に、C型肝癌治療後のインターフェロン療法により生命予後が改善されることなどが考察されました。
参照元:厚生労働科学研究成果データベース|予後改善を目指した肝臓がん再発に影響を与える因子に関する研究
2023年1月21日付の英国学術雑誌「The Lancet」において、国立研究開発法人国立がん研究センターと日本臨床腫瘍研究グループによる研究報告として、胆道癌根治手術後の患者に対する「S-1補助療法」の実施が、癌患者の生存期間を有意に延長することが公表されました。
なお同研究は全国38施設において、根治手術を実施した胆道癌患者440人を対象としており、S-1補助療法を実施することで、根治手術のみを行う場合とどのような有意差が生じるのか比較検証されています。また胆道癌の患者には胆管癌と胆嚢癌、そして乳頭部癌が含まれており、日本全国で年間2万人ほどの人が罹患するとされていることもポイントです。
研究では胆道癌の標準治療である胆道癌切除を行った患者を、それぞれS-1補助療法を実施するグループと、経過観察のみのグループへランダムで分類し、その後の生存率などを比較しました。そしてその結果、S-1補助療法を行ったグループで生存期間が77.1%、経過観察のみのグループで67.6%と、前者において生存期間の改善が認められています。
この結果から、将来的に胆道癌の標準治療として、胆道癌根治手術だけでなくS-1補助療法の併用が組み込まれる可能性も示唆されました。
参照元:国立研究開発法人国立がん研究センター|S-1補助療法が胆道がん根治手術後の標準治療となることを証明
癌のリスクを増大させる要因の1つとして、日常的な飲酒・アルコール摂取が挙げられていますが、実際にお酒を大量に飲んでいる人が飲酒量を大幅に減らすことで、肝臓癌や食道癌、大腸癌などアルコールに関係するとされる癌の発症リスクを大幅に低減できることがフランスの研究チームによって報告されました。
そもそも過剰なアルコール摂取が癌リスクを増大させることは以前から示唆されており、日本国内においても節酒や禁酒といった取り組みは生活習慣の改善方法の1つとして推奨されています。しかし、飲酒量を減らすことや禁酒することにより、実際に癌リスクがどのように変化あるいは低下するのか、十分に検討されていなかったとして、フランスの研究グループが改めて飲酒量の変化と癌リスクへの影響を検証しました。
研究はフランス国内の医療機関において、2018年1月1日から2021年12月31日までに入院したアルコール依存症患者を対象として、肝臓癌など飲酒関連癌の発症リスクを男女別に推定しています。そして禁酒治療を受けた人については癌発症リスクが男性で42%、女性で38%減少し、特に肝細胞癌では男性48%・女性51%も発症リスクが減少したと発見されました。
参照元:Gooday|大腸がんや肝臓がんのリスクが「禁酒」で大きく減少
2022年に開催された日本胆道学会のサマーセミナー(8月)やウィンターセミナー(12月)において、東海大学医学部付属病院消化器外科の益子太郎氏による発表が行われ、難治性肝内胆管癌の患者であっても根治を目的とした切除手術を実施できる可能性が示唆されました。
まず、胆道癌の中でも肝内胆管癌は特に治療が難しいとされる癌であり、そもそも根治を目的とした切除術を実施しにくいという状況が前提にあります。一方、肝内胆管癌は悪性度が高くて予後も悪く、根治を目指せる唯一の治療法として外科的切除が重要であることも無視できません。そのため、従来の医療技術では肝内胆管癌を難治性癌として扱い、癌患者やその家族にとって残念な結果になることも少なくありませんでした。
そこで東海大学消化器外科では、改めて肝内胆管癌の切除手術を実現するための医療環境などを見直し、術前の3D画像構築・シミュレーションやインドシアニングリーン(IGC)色素を利用した「IGC蛍光法を用いた肝切除」といった方法を考え実践してきました。
また近年は腹腔鏡や手術支援ロボットを活用した低侵襲治療も行われており、さらに術前化学療法についての研究も進められています。そして実際、切除不能とされた症例でも化学療法が奏功して根治切除に進めるケースが30%程度発生しているということでした。
ラホヤ・ソーク研究所とスイスのバーゼル大学や大学病院の研究者による共同研究チームによって、肝臓癌の細胞増殖に関与する物質として腫瘍抑制タンパク質「LHPP」が発見されました。
LHPPは肝臓癌において、細胞増殖を抑制する分子スイッチとしての機能を有しており、また肝臓癌の診断や治療効果の検証をする上でバイオマーカーとして利用できる可能性も示唆されています。
LHPPは健康な肝臓細胞において存在している反面、癌細胞や腫瘍組織においては一切存在していなかったという点が重要です。そのため研究グループは、LHPPの存在が腫瘍細胞の増殖に関与していると考察し、肝臓癌のモデルマウスを用意して、LHPPをモデルマウスの肝臓へ導入してLHPPタンパク質レベルを上昇させることで、モデルマウスの肝臓で腫瘍形成が阻止されることを発見しました。
また、改めてヒト肝腫瘍のサンプルを用いてモデルマウスの実験結果と比較した所、同様のパターンが発見され、やはり人の肝臓癌においてもLHPPのタンパク質レベルを上昇させることで癌の増殖抑制につながることが示唆されました。
同研究は肝臓癌の増殖システムの解明や新しい治療法の開発に関して、様々な可能性を秘めていると期待されています。
参照元:ソークニュース|肝臓がんを標的とする腫瘍抑制タンパク質
2014年、東京大学大学院医学系研究科の研究グループによって、メタボリックシンドロームの抑制や予防に関与するタンパク質が、肝臓癌の細胞増殖の抑制にも関与していることが報告されました。
まず、メタボリックシンドロームの抑制に寄与するタンパク質として「AIM」が存在しています。AIMは同研究グループによって細胞のアポトーシス(細胞死)を抑制するタンパク質として発見されましたが、その後に研究で他にも様々な作用をもたらすことが解明され、例えば細胞中において中性脂肪の蓄積を阻害することも認められており、結果としてメタボリックシンドロームのブレーキになっていることが重要です。
一方、AIMは癌化した肝臓の細胞の表面に存在する場合、癌細胞の除去を促進する作用を持つことも発見され、結果的にAIMが肝臓癌の細胞増殖の抑止にも有効であると示唆されました。また、AIMはそもそも人の血液中に存在するタンパク質であり、AIMを活用することで安全で効果的な新しい肝臓癌の治療に役立てられると期待されたこともポイントです。
参照元:科学技術振興機構|メタボのブレーキに肝臓癌を抑制する働きを発見~新しい肝臓癌治療法の可能性~
理化学研究所生命医科学研究センターがんゲノム研究チームと岩手医科大学医歯薬総合研究所医療開発研究部門による国際共同研究グループによって、肝臓癌をプロテオミクス解析で3パターンへ分子分類できることと、さらに分子分類の結果によって効果的な薬物療法の選択が可能になることが報告されました。なお、同研究は2022年10月29日付けでオンライン科学雑誌「Nature Communications」にも掲載されています。
プロテオミクス解析は、タンパク質の構造や発言、機能性などに関する情報を取得するための解析方法であり、質量分析法やタンパク質の相互作用解析といった技術によって構成され、医薬品の開発や疫病の機序解明などに用いられています。そして同研究グループは過去に蓄積されていた300例以上の日本人の肝臓癌サンプルを活用して、凍結標本259例からタンパク質を検出、さらに高精度の網羅的タンパク質測定手法としてRPPA法を使った大規模タンパク質解析を実施しました。
その結果、日本人の肝臓癌を「R1・R2・R3」の3種に分子分類できることが判明し、さらにそれぞれの分類に応じて、免疫チェックポイント阻害剤の使用や、免疫チェックポイント阻害剤と血管新生阻害剤の併用、あるいはmTOR阻害剤やRTK阻害剤の使用などが薬物療法として最適であるというデータも得られました。
参照元:理化学研究所|肝臓がんの分子分類と治療薬選択-がんのタンパク質/ゲノム統合解析による成果-
大阪国際がんセンター肝胆膵内科の和辻晃氏や池沢賢治氏、大阪国際がんセンター肝胆膵内科の上原宏之氏などによる研究チームによって、胆嚢神経内分泌癌(NEC)に対する治療法としてカルボプラチン・エトポシド併用療法が有用であるという研究結果が報告され、一般社団法人日本胆道学会が発行する「胆道 38 (4), 642-647, 2024-10-31」へ論文として掲載されました。
そもそも肝臓で生産された胆汁の貯蔵庫として機能している胆嚢ですが、胆嚢NECは肝臓周辺の癌の中でも極めてレアケースとされる症例であり、また予後不良の癌として知られていました。しかし本研究において、研究チームは胆嚢NECの患者でありながら長期生存を叶えている50代の男性患者と出会い、その理由としてカルボプラチン・エトポシド併用療法が奏効していたという点を発見しています。
男性患者については健康診断で肝機能異常が発覚し、術前CTで肺転移やリンパ節転移も疑われていたものの、総合評価によって開腹胆嚢摘出術を受けた後に胆嚢原発小細胞型NECの診断が下りました。その後、軽度腎機能障害によってカルボプラチン・エトポシド併用療法が開始されましたが、結果として肝転移や肺転移、リンパ節転移などが縮小し、治療として有用であると考えられています。
参照元:CiNii Research「カルボプラチン・エトポシド療法が奏効し長期生存が得られている胆嚢神経内分泌癌の1例」
高松赤十字病院腫瘍内科や香川大学医学部臨床腫瘍学、広島大学病院遺伝子診療科などの研究者によって構成される研究グループは、高齢男性患者に対する直腸平滑筋肉腫術後の肝転移再発治療の一環としてがん遺伝子パネル検査を実施したところ、Li-Fraumeni症候群の診断に至ったという結果を2024年10月25日刊行の「遺伝性腫瘍(一般社団法人日本遺伝性腫瘍学会)」に論文として掲載発表しました。
本研究で対象となった患者は83歳の高齢男性であり、直腸平滑筋肉腫の手術後に肝転移を発症していたケースとなります。この患者に対してがん遺伝子パネル検査を実施したところ、アレル頻度が異なっている4種類のTP53病的バリアント(変異)として「P152L:53.12%、Y220C:0.9%、G266E:0.39%、F270L:0.16%」が検出されました。加えて、患者には56歳の頃の胃癌や大腸癌といった合計6種の悪性腫瘍の既往歴があり、特にアレル頻度50%以上となったP152Lに関して生殖細胞系列病的バリアントだと推察され、遺伝カウンセリングを実施した後のシングルサイト検査においても病的バリアントが検出されたため、Li-Fraumeni症候群であるという診断結果に至っています。
これは臨床的な診断基準で発見が困難とされる病気についても、がん遺伝子パネル検査が効果的と考えられる契機になりました。
参照元:CiNii Research「直腸平滑筋肉腫術後肝転移再発治療にがん遺伝子パネル検査を実施しLi-Fraumeni症候群の診断に至った高齢男性の1症例」
日本赤十字社唐津赤十字病院外科の古川舜理氏や平木将紹氏、同病院病理診断科の明石道昭氏などによる研究チームが、早期胃癌の治療後に多発肝転移を発症した事例について研究論文としてまとめ、一般社団法人日本消化器外科学会が2024年に発行した「日本消化器外科学会雑誌 57 (9), 419-426, 2024-09-01」において発表しました。
症例の患者は66歳の男性患者であり、比較的早期の段階で胃癌と小腸消化管間質腫瘍(小腸GIST)が発見されたため、腹腔鏡下胃全摘術やリンパ節郭清、小腸部分切除術といった手術によって治療を受けました。なお、小腸GISTについては超低リスクであったこともポイントです。
しかしその後、手術から1年で多発性の肝腫瘍への転移が認められ、治療方針の検討のために肝腫瘍生検が行われた結果、神経内分泌癌であることが診断されました。
そして改めて胃切除検体を用いて免疫染色検査を実施した結果、胃癌の一部にsynaptophysin陽性の細胞が認められ、腫瘍細胞の約1割が神経内分泌細胞へ分化したであろうことが考察しました。
このような症例は極めてまれなケースとして想定される一方、胃癌の一部が神経内分泌細胞へ分化して多発肝転移などを引き起こすリスクが存在することも事実であり、今後の診断や治療方針の検討に際しても留意することが必要であるとまとめられています。
参照元:CiNii Research「早期胃癌の術後に少量の神経内分泌細胞成分が多発肝転移を来した1例」
産業医科大学医学部呼吸器病学や国立病院機構福岡東医療センター呼吸器科らの医師による研究グループによって、肝臓癌から肺への転移を発症した症例に対して、免疫染色による診断が有用であったという臨床研究が報告されました。また同論文は2005年に発行された「日本呼吸器学会誌」にも症例発表として掲載されています。
本症例で対象となった患者は80歳の男性であり、2000年の時点で肝細胞癌を発症して治療が継続されていました。しかしその後、2002年9月頃から血漿が一日に数回ほど出現するようになったため、改めて検査を実施したところ、胸部単純X線検査によって左の肺に腫瘍影が認められ、さらに気管支鏡検査によって気管支腔内の腫瘍が発見されました。
そして気管支腔内部からの擦過細胞と抗体を用いた免疫染色検査によって、肝細胞癌からの単独転移であるという診断が確定されました。
本来、気管支腔内転移の確定診断として、細胞診は組織診に劣ると考えられていますが、気管支腔内転移は出血しやすく組織を切除しての生検自体がリスクになることも少なくありません。そのような中で、患者の肉体に対する負荷を軽減した細胞診と免疫染色検査によって、転移癌の確定診断が行えたことは低侵襲かつ効果的な治療を考える上で有用であると考察されています。
参照元:【PDF】「孤立性肺転移を生じた肝細胞癌によるendobronchial metastasis の1例(日呼吸会誌 43(7),2005.)」
2025年の1月23日から1月25日にかけて、アメリカのサンフランシスコで開催された「米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO-GI)」において、切除不能な進行肝細胞癌の患者に対する第2相試験として日本で実施されたRACB試験の結果が発表されました。
本研究では、当初の診断で切除不能とされた進行肝細胞癌の患者50人を対象として、「テセントリク(一般名:アテゾリズマブ)」と「アバスチン(一般名:ベバシズマブ)」の併用療法に加えて、外科的切除の実行可能性が研究されました。
試験の結果によると、「テセントリク+アバスチン+外科的切除」によって得られた完全奏効率はRECIST評価で0%、部分奏効率は13%となり、mRECIST評価にもとづけば完全奏効率は2.2%、部分奏効率が26.1%となりました。また、併用療法後の手術による切除率は24例の48%となり、手術による関連死亡は発生していません。
本研究から、当初の診断では手術不能と判断された肝細胞癌患者であっても、手術による治療を行える可能性が考えられるとされています。ただし、一方で有害事象に対する注意は依然として重要である点も無視できません。
参照元:オンコロ|切除不能肝細胞がんにおけるテセントリク+アバスチン併用療法および外科的切除を用いた集学的治療の検討
2025年1月21日付の医学誌「The Lancet Oncology」において、切除不能な進行肝細胞癌および転移性肝細胞癌に対する、「抗TIGIT抗体チラゴルマブ」と「抗PD-L1抗体テセントリク(一般名:アテゾリズマブ)」、そして「抗VEGF抗体アバスチン(一般名:ベバシズマブ)」の3剤併用療法の有効性や安全性に関する比較検証の試験結果が報告されました。
同研究では、切除不能局所進行/転移性肝細胞癌の男性患者46人と女性患者21人を対象として、「チラゴルマブ+テセントリク+アバスチン」の3剤を併用したグループと、「テセントリク+アバスチン」の2剤を併用したグループで客観的奏効率を比較検証しています。なお、患者の年齢中央値は65.0歳となりました。
期間中央値で20.6ヶ月の時点の比較を行ったところ、3剤併用グループの客観的奏効率が43%、2剤併用(チラゴルマブ非使用群)グループで11%となり、チラゴルマブを併用しているグループの方が良好な結果を得ています。また有害事象に関しても、チラゴルマブ併用群で発生率が53%、非併用群で56%となっており、治療の安全性に関してもチラゴルマブの併用は患者にとって有用であると示唆されました。
参照元:オンコロ|切除不能局所進行/転移性肝細胞がんに対するテセントリク+アバスチンへのチラゴルマブ追加、良好な奏効率を示す
アメリカの研究者による研究グループが、持続的な貧困(経済的困窮)と肝疾患との関連性について、「The American Journal of Gastroenterology誌(2024年12月号)」で研究結果を発表しました。
同研究によれば、複数の世代にわたって経済的に困難な生活環境が生じている地域に関して「貧困の罠(poverty trap)」と指摘し、貧困の罠で暮らすことが肝疾患や肝臓癌による死亡リスクを増大させているという分析結果が報告されています。
貧困の罠における生活が肝疾患リスクや死亡リスクを増大させる理由として、生活環境や仕事環境、また地域の文化的特性などが様々なファクターとなって肝疾患患者の治療や健康状態に悪影響を与える可能性が示唆されました。そして結果的に、貧困の罠で生きる人ほど肝疾患の死亡リスクが高いという結果が得られ、死亡率の改善や地域格差の軽減には医学的アプローチだけでなく、経済的サポートによる介入が必要であると指摘されています。
参照元:日経メディカル|持続的な貧困は肝疾患による死亡と強く関連
2025年1月23~25日の期間で、アメリカのサンフランシスコで開催された「2025 ASCO Gastrointestinal Cancers Symposium(ASCO GI 2025)」において、武蔵野赤十字病院消化器内科の髙浦健太氏らによる日本人研究者チームが、80歳以上の肝細胞癌の患者に対する「ラジオ波焼灼療法」の有用性について研究発表を行いました。
本研究は、国内の単施設レトロスペクティブ研究として実施されており、80歳以上の肝細胞癌の患者のうち、腫瘍のサイズが3cm以下かつ個数が3個以下の患者に対して、ラジオ波焼灼療法は有効な治療法になり得る可能性を示唆しています。
この結果から、従来は治療法の選択肢から外れていたアプローチも選択して考えられるようになり、患者やその家族にとってより良い判断材料を与えられる未来を期待されています。
参照元:日経メディカル|3cm以下、3個以下の肝細胞癌にラジオ波焼灼療法は80歳以上でも有望な治療選択肢【ASCO GI 2025】
2025年1月に開催された米国サンフランシスコの「2025 ASCO Gastrointestinal Cancers Symposium(ASCO GI 2025)」において、日本の近畿大学の工藤正俊氏らによる研究チームが、切除不能肝細胞癌の1次治療として複数の治療法を実施した場合における、全生存期間(OS)について研究結果を発表しました。なお、本研究はフェーズ3として「CheckMate 9DW試験」の結果が報告されたものとなっています。
まず、対象となった患者は切除不能肝細胞癌(HCC)の患者であり、またその1次治療として、「抗PD-1抗体ニボルマブ+抗CTLA-4抗体イピリムマブ」併用療法を行ったグループと、「マルチキナーゼ阻害薬レンバチニブ」もしくは「ソラフェニブ」の単剤療法を行ったグループが比較検証されています。
結論として、前者の併用療法であっても、後者の単剤療法であっても、24週時点で奏効が認められている患者や病勢の安定が得られた患者においては、病勢の進行が認められた患者に対して全生存期間が優位に延長していたことが認められました。
この結果から、併用療法でも単剤療法でも、奏効した場合においては共に全生存期間の好意的な延長を期待できると示唆されています。
参照元:日経メディカル|切除不能肝細胞癌の1次治療でニボルマブとイピリムマブの併用、マルチキナーゼ阻害薬単剤のどちらでも奏効した患者ではOSが延長【ASCO GI 2025】
切除不能肝細胞癌(HCC)の患者に対する1次治療として、抗PD-1抗体「ニボルマブ」と抗CTLA-4抗体「イピリムマブ」を併用した治療法に関する報告が、2025年7月2日から7月5日にかけてスペインのバルセロナで開催された「ESMO Gastrointestinal Cancers Congress 2025(ESMO GI 2025)」において、複数の研究グループによりそれぞれ報告されています。
まず、日本の近畿大学の工藤正俊氏による研究チームは、HCCの1次治療として「ニボルマブ+イピリムマブ」の併用療法が、「デュルバルマブ+トレメリムマブ」の併用療法や「アテゾリズマブ+ベバシズマブ」の併用療法などよりも有効性が高くなったという研究結果を発表しました。これはHCC患者の治療法の検討について重要な情報となることが期待されています。
一方、スペインのClinica Universidad de Navarra and CIBEREHDのBruno Sangro氏による研究チームは、「ニボルマブ+イピリムマブ」併用療法をHCC患者の1次治療として実施した結果、健康関連QOLを維持するとともに、レンバチニブ/ソラフェニブ投与と比較してQOL低下リスクを軽減したという結果を報告しました。
※参照元:がんナビ|切除不能肝細胞癌の1次治療でニボルマブとイピリムマブの併用はデュルバルマブとトレメリムマブ、アテゾリズマブとベバシズマブの併用よりも有効な可能性【ESMO GI 2025】
※参照元:がんナビ|切除不能肝細胞癌の1次治療でニボルマブとイピリムマブの併用はレンバチニブ/ソラフェニブ投与より健康関連QOL低下のリスクを低減 【ESMO GI 2025】
スペインのバルセロナで2025年7月に開催された「ESMO GI 2025」において、アメリカのカリフォルニア・ロサンゼルス大学のRichard S. Finn氏が、切除不能局所進行もしくは転移を有する肝細胞癌(HCC)の患者の1次治療に関して、「アテゾリズマブ+ベバシズマブ」の2剤併用療法よりも、さらに「抗TIGIT抗体tiragolumab」を投与した治療法の方が有効であったという研究結果を報告しています。
臨床試験では「アテゾリズマブ+ベバシズマブ+tiragolumab」を使用したtiragolumab併用群と、「アテゾリズマブ+ベバシズマブ」を使用したアテゾリズマブ+ベバシズマブ群の、それぞれの患者グループが用意され、それぞれの奏効率や病勢コントロール率などが比較検証されました。
結果としてtiragolumab併用群で優位な結果が得られた他、安全性プロファイルについても適切な評価が認められています。
※参照元:がんナビ|進行肝細胞癌の1次治療でアテゾリズマブとベバシズマブに加えて抗TIGIT抗体tiragolumabの投与が有効な可能性【ESMO GI 2025】
中国の研究グループが2025年7月にスペイン・バルセロナで開催された「ESMO GI 2025」において、中等度~高度かつ全身治療未治療の切除不能肝細胞癌(HCC)の患者に対する治療として、オンデマンド肝動脈化学塞栓療法(TACE)に「アテゾリズマブ+ベバシズマブ」併用療法を組み合わせた治療法が、TACE無増悪生存期間(TACE-PFS)の改善に寄与したという研究結果を発表しました。
臨床試験では中国と日本のHCC患者を対象として、それぞれ「TACE+アテゾリズマブ+ベバシズマブ」の併用群171人と、TACEのみを実施した群171人の比較を行った結果、アテゾリズマブ併用群においてTACE-PFSの改善が認められたということです。なお、日本人患者におけるハザード比は0.59となっています。
※参照元:がんナビ|腫瘍量が中等度から高度の切除不能肝細胞癌へのオンデマンドTACEとアテゾリズマブ・ベバシズマブ併用はTACE無増悪生存期間を有意に延長【ESMO GI 2025】
スペインのバルセロナで開催された「ESMO Gastrointestinal Cancers Congress 2025(ESMO GI 2025)」において、中国の研究グループによる報告として、FGFR19過剰発現の進行肝細胞癌(HCC)に対する有効な治療法に「アテゾリズマブと経口FGFR4阻害薬irpagratinib(ABSK-011)」併用療法が期待できるという研究結果が発表されました。
臨床試験の対象となった患者の背景は、年齢が31歳から75歳(中央値56歳)で男性84.8%となっており、具体的には1次治療として15人、免疫チェックポイント阻害薬既治療の患者として18人を対象に「アテゾリズマブ+irpagratinib」併用療法が実施されました。
結果的に、1次治療として投与された患者群では奏効割合50%、既治療患者では52.9%となっており、病勢コントロール率に関しては1次治療群91.7%、既治療患者群70.6%とされています。
※参照元:がんナビ|FGFR19過剰発現の進行肝細胞癌にアテゾリズマブと経口FGFR4阻害薬irpagratinibの併用が有効な可能性【ESMO GI 2025】
2025年6月6日に開催された厚生労働省薬事審議会医薬品第二部会における癌関連のトピックとして、複数の治療薬の審議品目承認が了承された他、切除不能肝細胞癌(HCC)の患者に対する「ニボルマブ+イピリムマブ」の併用療法の適応拡大が了承されました。
ニボルマブ+イピリムマブ併用療法に関してはCheckMate 9DW試験の結果にもとづいており、未治療のHCC患者に対してニボルマブ+イピリムマブ併用療法を実施したところ、レンバチニブあるいはソラフェニブの単剤投与を実施した患者群よりも有意にOSが延長したというデータが根拠になっています。
この結果、HCC1次治療として従来の「アテゾリズマブ+ベバシズマブ」と「デュルバルマブ+トレメリムマブ(STRIDEレジメン)」に加えて、「ニボルマブ+イピリムマブ」という3つめの選択肢が登場しました。


