肺への転移

肺への転移は、食道癌や子宮癌からも見られます。このページでは肺へ転移する場合の特徴や治療方法などをまとめました。

肺に転移するケースとは

肺転移とは、他の臓器や組織で発生した癌細胞が肺に転移してしまうこと。食道や子宮からの転移が多く見られ、血液やリンパの流れに乗った癌細胞が肺に到達することで起こります。食道癌は進行が早いため、様々な器官に転移しやすい癌。子宮癌は肺とは離れた位置にある癌ですが、血液の流れに乗って転移すると言われています。

肺転移の症状

食道癌が転移した時の症状と特徴

  • 咳が出る
  • 胸の痛み
  • 食欲減退
  • 体重の減少
  • 疲れやすくなる

食道癌が肺に転移した場合は、咳や胸の痛みが出るようになります。咳が出るのは、転移した肺癌が気管支や肺を刺激するからです。胸の痛みは、肺癌が肋骨や肋間神経に刺激を与えることで起こります。食欲減退や体重減少、疲れやすいといった症状が起こるのは、転移性の肺癌が進行して体力がなくなるため。肺だけでなく様々な癌で共通する症状です。

子宮癌が転移した時の症状と特徴

  • 咳が出る
  • 血痰が出る
  • 肋間神経に癌が当たった場合は痛みを伴う
  • 胸に水が溜まり、呼吸困難になる

子宮癌が肺に転移した場合は風邪を引いた時と同じような症状が起こるので、転移に気づかないことがあります。転移によって起こる咳は、癌が肺や気管支を絶えず刺激し続けるため長くしつこいのが特徴です。癌が進行すると血痰や気管支炎になり、胸に水が溜まって肺が小さくなることで呼吸困難を起こすようになります。

大腸癌が転移した時の症状と特徴

  • 咳が出る
  • 胸の痛み
  • 血痰が出る
  • 胸水が溜まる
  • 息がぜいぜいする
  • 肺炎や気管支炎を起こしやすくなる
  • 声が嗄れる
  • 顔や首が腫れる
  • 食欲減退
  • 体重減少
  • 疲れやすくなる

大腸癌からの肺転移は、原発巣である大腸から癌細胞が静脈に侵入。血液の流れに乗って、肺で増殖することで引き起こされます。大腸癌の転移の中でも、肺転移は肝臓に次いで起こりやすいと言われています[1]。

癌細胞が原発巣から剥がれ落ち、血液の流れに乗って転移する血行性転移は、細胞と細胞をつなげるために必要とされる細胞間接着分子E-カドヘリンと呼ばれる部室が、何らかの原因で機能異常や分泌量が減少することで引き起こされるのではないかと考えられています。

細胞間接着E-カドヘリン機能と頭頚部癌細胞株を抗E-カドヘリン抗体SHE78-7で処理す ると,E-カドヘリン陽性細胞は接着特性を失い遊離した。転移の第一段階である癌細胞の原発巣からの離脱には,E-カドヘリンの機能抑制が関連していると考えられた。

出典:(PDF)「癌の浸潤, 転移のメカニズムと早期診断の可能性」頭頸部腫瘍, 1996 [PDF]

大腸から肺へと転移した癌細胞は、肺で増殖するわけですが、転移をしていてもなかなか症状が出にくい点が転移性肺癌の特徴の一つです。例えば、咳が出ていても「風邪かな?」と思いそのままにしていたら、肺癌だったというケースも少なくありません。

癌を経験した方で、1週間以上長引くような咳がある場合には、肺癌が肺や気管支を刺激している可能性もあります。ぜひ、早めに病院で検査を受けましょう。

大腸癌からの転移性肺癌の治療は、他の場所への転移の有無や、肺のどの部分に転移しているかによっても治療方針が異なります。

例えば、原発巣である大腸癌に再発が見られず、肺の摘出可能な場所に癌が広がっているなら、肺の一部もしくは片肺を摘出し、癌細胞を除去する外科手術も検討されます。外科手術と一口に言っても、胸腔鏡手術、胸腔鏡補助手術、開胸手術など複数のアプローチがありますから、医師の判断・説明をしっかりと聞き、必要であればセカンドオピニオンなどを仰いでみてもいいでしょう。

その他、大腸癌から肺へと転移した癌の治療には、外科治療以外に抗癌剤による化学療法、分離標的薬、放射線療法、光線力学療法などが挙げられます。

少し古いデータですが、大腸癌から肺転移を起こす頻度に関する研究報告によれば、大腸癌根治手術後の肺転移は肺転移のみが見られたケースが20.7パーセント、肺と肝臓に転移が見られたケースが51.8パーセント、肺にも肝臓にも転移が見られなかった症例は10.3パーセントだったことが報告されています。原発巣の初回手術時に肺転移を起こしている頻度は、肝転移よりも低いものの、結腸癌からの転移よりも直腸癌からの転移の頻度の方が高いとも報告されています。[2]

このように、大腸癌から肺へと転移することは決して珍しいことではありません。癌治療後は、根治していたとしても経過観察をしっかりとすることで、転移も早期に発見することができるでしょう。

必ず定期健診は受け、ご自身の体調の変化に気をくばるようにしましょう。また、定期健診以外のタイミングでも、何か不安や異変を感じるようなことがあれば、すぐに主治医に相談をするようにしましょう。早期発見につなげることが、肺転移の予後にも大きな影響を与えます。

[1]出典: 大腸癌研究会_患者さんのための大腸癌治療ガイドライン2014年版

[2]出典:(PDF) 「大腸癌肝転移・肺転移の頻度と切除の意義」大腸肛門誌,37,1984[PDF]

肺転移の治療方法

食道癌が肺に転移した時の治療法

主に「薬物療法」と「対症療法」が選択されます。

薬物療法は、癌細胞の増殖や破壊を行うために抗癌剤などの薬剤を投与する治療法です。肺を切り取らず温存できたり、入院せずに通院治療できたりするメリットがあります。

対症療法とは、病気に伴う症状を緩和することが目的の治療法。根治を目指すのではなく、辛い症状や痛みによる不快感を取り除くことで、QOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)を高めるために行われます。

子宮癌が肺に転移した時の治療法

癌の大きさや病巣の数を見て、手術か抗癌剤治療のどちらかが行われます。子宮頸癌の場合、「病巣が3つ以下」「腫瘍の大きさが3センチ以下」の時に手術を選択。これ以上数が多い場合は抗癌剤治療を用いて病気の改善を目指します。

肺転移について

肺転移は食道や子宮をはじめ、様々な臓器や組織の癌が肺に転移して起こる病気です。肺以外の臓器では癌細胞が定着しにくいため、転移することはそんなに多くありません。一方、肺の肺胞には多くの毛細血管が張り巡っており、血液やリンパの流れに乗った癌細胞が流れ込みやすいという特徴があります。そのため、肺は転移の可能性が他よりも高い臓器なのです。

もし肺に転移があると診断されても慌ててはいけません。進行した癌や転移した癌を治療する医師がいます。癌治療のスペシャリストを見つけて、最適な方法で治療をすることが大切です。

肺への転移の場合の痛み

症状としての痛み

がん細胞が血液の流れに乗って肺に達し、肺で生育して出現する転移性肺がんは、症状が出にくい疾患と言われています。

肺がんの症状は、咳や痰、血痰、発熱、胸の痛み、呼吸困難などが挙げられますが、これらの症状は肺がん以外の病気の症状としても見られることがあるため、症状だけで肺がんかどうかを判断するのは難しいと言われています。[1]

肺がんに伴い、初発症状として痛み(胸痛)が見られる割合は、全肺がん患者の約15.8%。全ての方が痛みを感じるわけではないことが過去の研究からも明らかになっています。

初発症状:前例について17.5%は無症状, 9.3%咳嗽,23.7%疾,19.0%血疾,15.8%胸痛,6.3%呼吸困難,5.8%やせ,5.1%倦怠,9.8%熱,4.0%嗅声等である.

出典:『全国集計よりみた肺癌の組織型別臨床統計』肺癌,22(1),1982
https://www.jstage.jst.go.jp/article/haigan1960/22/1/22_1_1/_article/-char/ja/

肺がんの初発症状を調査した別の研究では、胸痛は肺がん患者の方の49%に、骨痛が25%の方に見られたという統計もあります。[2]

また、痛みがある場合でも、肺へと転移したがんのできた場所によっても痛む場所が異なります。例えば、肺尖部(肺の上部)に腫瘍ができている場合、肩や脇の下、腕などの痛みを感じることもあります。また、末梢神経幹が傷つき、灼熱痛と言って、焼けるような痛みを生じるケースもあります。

転移性肺がんによる胸痛の原因は、肺を包む膜や気管にがんが広がり生じる痛みと、肺の周囲にある神経や肋骨にがんが広がることで生じる痛みが考えられます。一般的に、肋骨や神経にがんが広がった場合は鋭い痛みを感じることがあるようです。このようにがんの痛みは、原因もさまざま。がんの進行や腫瘍の大きさなどが痛みと関係しているかというとどうやらそうではないようで、小さいがんだったとしても、骨や神経近くにがんができた場合には痛みを強く感じることがあります。

がん治療に伴う痛み

転移性肺がんの場合、がんの治療はどこから転移してきたがんなのか、他の場所に転移はあるかどうかなど様々な要素をチェックした上で、治療方針が決められます。

体力があると判断された場合には、転移性肺がんも外科手術で腫瘍を取り除くケースがあります。また、化学療法や分子標的薬による治療、放射線療法による治療などが行われることもあります。

手術後の慢性痛や、抗がん剤による副作用など、がん治療が原因で転移性肺がんの治療中に痛みを感じることは大いに考えられます。

転移性肺がんの痛みを取り除くための治療

転移性肺がんに限らず、がんの痛みは治療中約半数の方に、さらに進行がんの患者さんの場合3人中2人が痛みを感じると言われています。

近年、がん治療において痛みの緩和ケアの重要性が認識され、痛み治療に関するガイドラインや患者さんへの情報提供も盛んにされるようになってきました。

がんの痛み治療の中心は、痛み止めによる服薬治療です。WHO方式のがんの疼痛治療法では、痛みを「弱い痛み」「弱い痛みから中くらいの痛み」「中くらいの痛みから強い痛み」の3つに分類。それぞれの痛みの程度に応じた痛み止めを使用します。

最も軽い「弱い痛み」では解熱鎮痛薬を。次の「弱い痛みから中くらいの痛み」にはコデインやトラマドールを。最も辛い「中くらいの痛みから強い痛み」にはモルヒネやオキシコドン、フェンタニルなどの鎮痛剤を用います。[3]

このように、転移性肺がんは、がん腫瘍だけでなく治療中にも痛みを生じることがあるため、がんへの治療に加えて、こうしたがんの痛みに対する治療も非常に重要になってきます。

「肺にまで転移したのだから、痛みは仕方がない。我慢するべきだ」と考えずに、痛みを軽減するための方策を医師と相談して決めていくことで、がん治療の苦痛が緩和され、より良い日常生活が送れるようになるのではないでしょうか?

【参考URL】

参考[1]:国立がん研究センター がん情報サービス『肺がん治療』(2018年1月25日確認)
https://ganjoho.jp/public/cancer/lung/treatment.html

参考[2]:『患者さんと家族のためのがんの痛み治療ガイド第1章』日本緩和医療学会,2014
https://www.jspm.ne.jp/guidelines/patienta/2014/pdf/01.pdf

参考[3]:『患者さんと家族のためのがんの痛み治療ガイド第3章』日本緩和医療学会,2014
https://www.jspm.ne.jp/guidelines/patienta/2014/pdf/03.pdf

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