前立腺がんの転移

前立腺がん

前立腺から他の部位に転移した癌や、他の部位から転移した前立腺がんについて、特徴や治療法をまとめました。

前立腺がんの転移先や治療法・前立腺に転移した癌の特徴

前立腺がんは他の癌と比べて進行が遅く、死亡率が低いです。他の部位に転移する前に発見・治療ができれば再び起こらないよう完全に治すことも可能だと言われています。

しかし、初期症状がほとんどないのも前立腺がんの特徴。発見が遅れてしまうと、血液やリンパ液に乗って他の部位に転移してしまう恐れがあります。特に多く見られるのは、骨や骨盤リンパ節への転移。ほとんどの癌は末期になってから転移し始めるのですが、前立腺の近くにはたくさんの骨があるため、早期に骨へ転移してしまう可能性があります。

前立腺がんは、前立腺の細胞が正常な細胞増殖機能を失い、無秩序に自己増殖することにより発生します。早期に発見すれば治癒することが可能です。また、多くの場合比較的ゆっくり進行します。 近くのリンパ節や骨に転移することが多いですが、肺、肝臓などに転移することもあります。

出典:国立がん研究センター がん情報サービス_前立腺がん 基礎知識

また、このように、リンパ節や骨以外の部分の転移として、肺や肝臓などへの転移も考えられます。前立腺がんの進行は遅いですが、転移してしまうとその部位で進行が早まる可能性も高いでしょう。

それでは骨・リンパ節・脳、それぞれへ転移した前立腺がんの特徴や治療法を見ていきましょう。

骨転移

前立腺がんの転移先でも多いのが骨への転移です。特に腰椎や骨盤に転移しやすいのですが、時には背骨や肋骨などにも転移します。

転移したかどうかは、骨の癌に集まる性質を持った放射性物質を注射し、特殊なカメラで撮影する「骨シンチグラフィ検査」で骨への転移の有無を調べることができます。

症状

  • 痛みや麻痺
  • 骨折しやすくなる
  • 高カルシウム血症

骨に転移した前立腺がんは、ほとんど初期症状がありません。転移に気づかないまま癌が進行してしまうと癌細胞が骨の中の神経を刺激し、痛みや麻痺といった症状を起こします。なかには、骨のカルシウムが血液中に流れ出る「高カルシウム血症」を引き起こすこともあり、食欲不振や吐き気、意識障害などが起こることも。また、癌が転移している骨は徐々に弱くなっていくので、些細な負荷で骨折しやすくなります。

治療方法

前立腺がんが骨へ転移した場合はホルモン療法や化学療法での治療が一般的です。よく使用される「ゾレドロン酸」や「デノスマブ」といった抗ホルモン剤は骨を破壊する細胞を抑制し、癌の進行を抑えてくれます。

転移先が骨のみの場合「ゾーフィゴ」という放射線医薬品を使った治療も有効です。

ゾーフィゴには、アルファ線という放射線を放出する放射性物質「ラジウム-223」が含まれています。ゾーフィゴを体内に注射すると、ラジウム-223が癌に転移した骨に運ばれ、アルファ線が癌細胞の増殖を抑えてくれます。

リンパ節転移

骨の次に前立腺がんが転移しやすい部位がリンパ節です。特に多く見られるのが、前立腺の周りにあるリンパ節への転移。リンパ節への転移を調べるには、CT検査や腹部エコーなどが使用されます。

症状

  • 下半身のむくみ
  • しびれ
  • 排尿障害

前立腺がんがリンパ節へ転移するとリンパの流れが悪くなり、下半身がむくむようになります。他にもリンパ管が炎症を起こし痺れといった症状が出たり、排尿が困難になったりします。転移がさらに悪化した場合は下半身麻痺を引き起こす危険性もあります。

治療方法

前立腺がんがリンパ節へ転移した場合は、ホルモン療法で癌の進行を抑制する治療法が一般的です。しかし、長期間継続して抗ホルモン剤を使用すると、期待できる効果が徐々に薄れてしまうことも。その場合は、別のホルモン剤を追加したり、他の治療法への切り替えを検討しましょう。

また、前立腺がんが骨盤リンパ節へ転移してしまった場合、遠隔転移する可能性が高いです。その場合は、ホルモン療法と放射線治療を併用することもあります。

脳転移

前立腺がんが末期まで進行してしまった場合、脳に転移する可能性があります。前立腺がんが脳に転移するのはとても珍しいケースです。

症状

  • 頭痛やめまい
  • 麻痺
  • 意識障害
  • 言語障害

前立腺がんが脳に転移した場合、頭痛やめまい、吐き気、麻痺などといった神経障害や言語障害・意識障害を引き起こす可能性があります。

治療方法

前立腺がんが脳に転移した場合、放射線治療を用いて症状を緩和させます。転移した癌の数や症状によって放射線の強さを変えて対応します。

また、脳に転移した癌の数が少ない場合、切除といった外科的処置をとることもあります。

前立腺への転移癌

他の臓器から前立腺に癌が転移するケースはほとんどありません。前立腺に癌が転移した場合、どの部位から転移したのかによって治療法が異なるため、しっかりと検査を受けることが重要です。

もし前立腺がんが転移したら

前立腺がんの転移は骨やリンパ節などの特殊な部位に現れやすいため、麻痺やしびれなどの症状が現れることもあります。転移した癌の治療は難しいとされていますが、癌に加えてこれらの症状が現れると、より一層治療が困難になってしまうでしょう。

転移した癌は根治ができないとする意見もありますが、より効果的な治療法を探すためにも、より生活の質を向上させるためにも、セカンドオピニオンが重要となります。特に、骨転移した場合の生存期間は、治療方法の選択によって大きく変わるとされます。

セカンドオピニオンによって、より有効な治療方法が見つかる可能性もあるため、前立腺がんの転移が見つかった場合は、がん治療や転移がん治療で評判の高い医院で相談してみてはいかがでしょうか。

転移した前立腺がんを治療できる病院

前立腺がんは他の部位の癌と比べ、早期に転移しやすい性質を持った癌です。そのため、前立腺がんに気付いた時には既に転移している可能性も。転移がんは複数箇所で治療が必要になるため、根治は難しいとされています。

転移がんを根治させる可能性を高めるためには、腕の良い医者にかかることが重要です。こちらでは、転移がん治療の名医が在籍する病院を紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

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前立腺がんに対する研究と論文

前立腺がんの早期発見・治療につながる新たな診断マーカー開発の可能性

MRI

がんや炎症によって前立腺組織が破壊されると、PSA(前立腺特異抗原)が血中に漏れ出し始めます。そのため、血液検査でPSA値を測定すれば、前立腺がんかどうかチェックすることが可能となっています。

ただ、PSAはがん特異的腫瘍マーカーではないため、PSA検査のみで前立腺がんを診断するのは難しく、グレーゾーン以上になったらあらためて直腸診やMRI検査を実施し、さらに前立腺針生検などの確定診断を行う必要がありました。

また、PSA値は前立腺がんに罹患した場合だけでなく、前立腺肥大症や前立腺炎といった良性疾患にかかった時も上昇することが確認されています。

さらに近年、養毛剤や前立腺肥大症の治療薬として5α還元酵素阻害剤が発売されていますが、これらを使用するとPSA値が表面上、約半分程度に低下することが判明しています。従来のPSA検査にはこうした問題点があり、前立腺がんの早期発見には限界があると言われてきました。

そこで新たな診断法として期待されているのが血漿中アミノ酸濃度の変化を利用した前立腺がんの診断です。血漿中のアミノ酸濃度は生理学的な代謝状態を反映することが明らかとなっており、肝機能障害やさまざまながんを発症すると血漿中のアミノ酸濃度が変化すると言われています。

そこで前立腺がん患者と、人間ドック受診者の血漿中アミノ酸濃度を測定し、両者を比較。前立腺がん患者を判別する判別式「アミノインデックス」を導き出し、前立腺がんの診断に活用できるかどうかの評価を行いました。

すると、前立腺がん患者の血漿中アミノ酸濃度では、アラニンとヒスチジン、アスパラギン、プロリンといった計4種のアミノ酸が増加する一方、トリプトファンが減少する傾向が確認されました。

アラニンとプロリンについては肺がん患者でも増加することが確認されていますが、トリプトファンについては肺がんや乳がん患者では変化が見られず、アミノ酸の変動はがんの種類ごとに共通性と多様性があることがわかりました。

なお、アミノインデックスはPSA値とは独立した変動であることから、前立腺肥大症との鑑別や、養毛剤などの影響による診断難などに対して有用な診断法となることが期待されています。[注1]

前立腺がんの放射線治療の照射時間を短縮

前立腺がんを含むあらゆるがんの治療では、放射線をがん細胞にあててDNAを傷付け、がん細胞を死滅させる放射線治療が有用です。

放射線の種類や照射方法は複数存在しますが、中でも先進的な放射線治療のひとつとして知られるのがX線を強度変調放射線治療(IMRT)と呼ばれる方法で照射する「トモセラピー」です。

従来の放射線治療に比べて照射野の幅を3段階に設定できるのが特徴で、最大160cmの広範囲治療が可能とされています。

ただ、そのぶん全身照射などの広範囲治療や、一路に大線量を投与する治療の場合、照射時間が著しく増加するのが難点と言われてきました。

そこで愛知県がんセンター中央病院放射線治療部をはじめとする研究チームは、トモセラピーのパラメータ設定による照射時間の短縮検討を開始。

前立腺がんの患者4名に対し、さまざまなパラメータ設定による照射を行ったところ、FW(回転中心における頭尾方向の照射野の長さ)の増加と、MF(左右方向の開口部を制限するMLCの動きの複雑度)の減少におって照射時間を短縮させられることが確認されました。

特にFWの増加は照射時間の短縮に有用であることが明らかになり、前立腺がんの放射線治療の負担軽減が期待されています。[注2]

骨転移を有する前立腺がん患者のQOL改善に成功

前立腺がんでは、骨転移を併発することが多く、しかも転移してからの生存期間が平均約36ヶ月と長いところが特徴です。

骨転移が進行すると、疼痛や骨折といった骨合併症が出現するため、患者の生活の質(QOL)が長期にわたって低下するケースが多く存在します。

そこで藤田保健衛生大学坂文種報徳会病院にて、多発性骨転移を有する前立腺がん患者さんに対し、ドセタキセルおよびビスフォスフォネート製剤の一種である「ゾレドロネート」の投与を行い、患者さんの痛みとQOLの評価を実施。

すると、投与前に比べて身体機能や身体の痛み、全体的な健康感、活力、社会生活機能などのレベルに改善傾向が見られたことが報告されています。

身体的な痛みは長引けば長引くほど患者さんのQOLを著しく低下させる傾向にあります。

化学療法やゾレドロネートの投与によって疼痛が緩和されたことは、骨転移を有する前立腺がん患者さんはもちろん、今後転移する可能性のある前立腺患者さんにとっても有意義な治療法となり得るでしょう。[注3]

参考サイト

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「いちから分かる癌転移の治療方法ガイド」は、独自に調べた内容をまとめたサイトです。
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