胃癌の転移

胃癌

胃から転移した癌や、胃に転移しやすい部位の癌について、その特徴や治療方法などをまとめました。

胃癌の転移先や治療法、そして胃に転移した癌の特徴

胃癌が転移を起こしやすいのは、リンパ節や腹膜。次いで多いのが肝臓と言われています。胃がんが発見された場合、まだ転移が発見されてなかったとしても、予防的な治療を施すのが一般的です。

最近では胃がんの転移リスクをある程度予測することができるので、それに基づいた予防治療が行われています。

がんの深さが粘膜および粘膜下層までのものを「早期胃がん」、深さが粘膜下層を越えて固有筋層より深くに及ぶものを「進行胃がん」といいます。がんが胃の壁の内側から外側に向かって深く進むにしたがって、転移することが多くなります。

出典:国立がん研究センター がん情報サービス_胃がん 基礎知識

この2種類の胃癌のうち、進行胃癌のように、癌の深さが深くなるほど転移するリスクが高いとされています。早期胃癌であれば胃癌の治療に集中できますが、進行胃癌であれば、転移を予防する治療も同時に行っていく必要があるでしょう。

ここでは、リンパ節、腹膜、そして肝臓、それぞれへの転移について、その特徴を見ていきましょう。

リンパ節転移

リンパ節への転移は、癌細胞が胃の粘膜に侵食していくことで起こります。

粘膜の表面だけに腫瘍がある場合はリンパ節転移が起きにくく、3%程度の割合と考えられます。しかし粘膜の下層まで癌細胞が達すると、約20%リンパ節転移が起きていると言われています。

粘膜表面の胃がんは、内視鏡手術によって治療が可能です。しかし粘膜下層に達している場合は、原発巣だけでなくリンパ節の切除を行うのが普通です。ひとつでもリンパ節の転移を取り逃せば、再発の危険性はかなり大きくなります。

症状

  • しこり
  • しびれ
  • 腕のだるさ

リンパ節は普段、体を触ったとしてもどこにあるのかわかるものではありません。ですが、胃癌がリンパ節に転移した場合、触った際にわかるようになります。そのため、しこりが代表的な症状だといえるでしょう。

他にはしびれを感じる方もいます。しびれは癌以外の様々な理由でも発生しやすいものなので、しびれが発生したからといって必ずしも胃癌がリンパ節に転移しているとは言えませんが、症状の一つとして押さえておきましょう。

癌細胞が大きくなり、リンパ節を圧迫した場合には腕のだるさを自覚する方もいます。

治療方法

リンパ節転移が疑われる場合の標準治療は、胃を3分の2~すべて摘出し、転移可能性のあるリンパ節をすべて切除します。切除の範囲の決定は、再発や転移を防ぐ意味で非常に重要ですが、まだ定まっていないのが現状です。

腹膜播種

次いで多い転移が、腹膜への播種です。

癌細胞が胃壁へ侵食し、やがて胃壁を突破すると、癌細胞は臓器を覆っている腹膜という組織へ散らばっていきます。これが生着することで転移を起こすものを「腹膜播種」と呼びます。

腹膜播種は肉眼での発見がしにくく、がん性腹膜炎などで自覚症状が出て初めて発見されることが多いようです。しかし、自覚症状が出る時点ではかなり症状が進んでいる状態です。

症状

  • 初期は無症状
  • 腹水がたまる
  • 腸閉塞
  • 黄疸

初期の段階ではほとんど症状が出ません。ですが、進行した場合には次のような症状が見られるようになります。

まず、お腹に水がたまるということ。腹水がたまると呼吸困難の症状が表れるケースも多く、張りや痛みなどを感じることもあります。健康な方であれば腹水が発生した際には腹膜が水分を追う吸収するのですが、腹膜播種になると癌のせいでうまく腹膜が機能できなくなり、水を溜め込んでしまうのです。

また、癌細胞が大きくなった場合には腸管を圧迫することがあるのですが、これにより食べ物の通りが悪くなり、腸閉塞に発展してしまう場合も多いです。腸閉塞が発生した場合には腹部に激しい痛みがあり、吐き気や嘔吐を感じる方もいます。

この他にも肝臓やすい臓に障害が起きるために黄疸が出ることもあり、発症した場合にはかゆみが発生するのも特徴です。

治療方法

放射線や抗がん剤による全身療法でQOLを高めるのが一般的ですが、抗がん剤を溶かした水溶液で腹腔を洗浄する腹腔内化学療法、あるいは広範囲にわたる切除手術による治療も行われますが、治療効果や身体的な負担の面でリスクがあります。

肝転移

胃癌が肝臓に転移した場合の特徴は、複数の発生の可能性が高いことが挙げられます。発見した転移を取り除いても、すぐに再発する可能性が高いようです。

症状

  • 初期は無症状
  • 倦怠感
  • 黄疸
  • 腹部の張り
  • 痛み

初期の段階はほとんど症状がありません。進行しなければ症状が出ないのが厄介な点で、進行した場合には肝機能の低下によりだるさを感じることがあります。運動したわけではないのにだるさが続き、疲れが抜けないと感じる方が多いです。

また、黄疸が現れることもあります。こちらは目に見えてわかる変化の一つです。他にも腹膜播種の項目で紹介したのと同じように腹部の張りを感じることもあり、どれくらいまで症状が進行するかによって感じられる異常は異なります。

最終的には痛みなどの症状も出るようになるのですが、こういったものが見られる段階にまで来るとかなり状態は進行していると言えるでしょう。

治療方法

肝転移を起こしている時点でリンパ節や腹腔播種を起こしていることが多いため、切除手術は避けられる傾向にあります。動脈に抗がん剤を注入する肝動注療法によって、ある程度生存期間を延ばす効果が得やすいとは言われています。

胃への癌転移

ほかの部位から胃への癌の転移は、相対的には多くはないようです。もちろん転移の可能性がないわけではなく、乳癌や子宮頸がんなどからの胃への転移についてはネット上でもたくさんの症例が語れられています。

原発巣によってその特徴が異なるので、治療方法や検査法については医師との相談が必要です。

もし胃癌が転移したら

胃から転移する癌は、再発の可能性が高い肝転移やリンパ節転移、早期で自覚症状が現れにくく進行しやすい腹膜播種などとなるため、迅速な判断によって確実に治療を行わなければ、深刻化してしまうケースも多いと考えられます。転移した癌は治療自体が難しいですが、胃癌からの転移の場合、治療がうまく行われなければ再発のリスクもかなり高くなるでしょう。

そのため、胃癌からの転移が見つかったら、転移した部分を確実に治療することが大切です。そして、そのためには、セカンドオピニオンによって、主治医以外からの提案や、より確実性の高い治療法を知ることも必要でしょう。胃癌からの転移は再発しやすいからこそ、多くの実績を積んだ評判の病院で相談してみることをおすすめします。

転移した胃がんを治療できる病院

癌治療の中でも最も難しいとされているのが「移転した癌治療」だと言われています。それは、転移する確率が比較的低いとされている胃がんも一緒で、医師にはある程度の技術が求められてくるのです。

さらに、癌は長期間の治療が必要な病気なので「病院選び」「医師選び」には後悔したくありませんよね。そんなときは実際にどういった治療を行っている病院なのか、どういった評判がある医師なのかを注目して探してみるといいでしょう。

胃がんに対する研究と論文

胃がん細胞の増殖メカニズム解明で新規治療法開発に期待

胃癌の研究

慶應義塾大学医学部内科学(消化器)教室の佐藤俊朗准教授らの研究グループが、多くの胃がんの細胞増殖が「Wnt」と呼ばれる増殖因子によってコントロールされていることを発見しました。

大半のがんは遺伝子変異による細胞増殖異常によって死に至ることがわかっていますが、胃がんの細胞増殖異常につながる遺伝子異常に関しては解明されていませんでした。

佐藤准教授らの研究グループは新しい培養技術によって36人の患者さんの胃がん細胞を体外で培養・増殖し、胃がんの細胞増殖異常につながる遺伝子異常の調査を実施。

胃の正常細胞はWntとR-spondinという2つの増殖因子によって細胞増殖をコントロールしていますが、多くの胃がんではR-spondinなしでも増殖可能であることが確認されました。

さらに研究グループではこのような胃がんの遺伝子特異を特定し、ヒトの正常胃細胞の増殖異常につながることを実証。その結果、多くの胃がんはR-spondinを不要とする一方、Wntは必要であることを発見しました。

これらの結果をもとに、ヒト由来の胃がん細胞を移植したマウスモデルを用いた実験を行ったところ、Wntを抑制する標的治療薬によって胃がんの増殖を著しく抑えることが確認されたそうです。

多くの胃がんがWntに依存していることを明らかにしたのは今回の研究が初であり、胃がん根治のための新たな治療法の確立に役立つことが期待されています。[注1]

神経ストレスと胃がん進行の関係を解明

東京大学医学部付属病院消化器内科の早河助教らが、神経ストレスが胃がんの進行を加速させるメカニズムを解明しました。

人間の神経細胞は全身に分布していますが、中でも胃腸には1億個以上の多種多様な神経細胞が存在しており、胃腸のはたらきや消化ホルモンの分泌をコントロールしています。

以前から胃がんの発育と神経ストレスには密接な関係があることが指摘されてきましたが、早河助教らはマウスの胃がん組織を詳細に観察し、胃がんが進行する過程でがん細胞が「神経成長因子」を産生することを発見。

これに反応した神経細胞ががん組織に集結し、強いストレス刺激を受けることによって胃がんの成長スピードが速まることを明らかにしました。

この結果をもとに、胃がん進行に関わる神経成長因子を抑制する薬や、神経ストレスを放出する細胞を除去することによって、胃がんの進行を抑えられたとのことです。

現在、胃がんには抗がん剤治療を行うのが一般的ですが、さらに神経細胞との相互作用を抑える薬を使った治療を併用することで、将来的な胃がん治療への応用が期待されています。

神経成長因子をターゲットにした薬は臨床試験および実際の臨床でさまざまな疾患に使われていますが、今後は胃がんに対しても早期の臨床応用が見込まれるでしょう。[注2]

AIによる早期胃がん発見で早期治療に貢献

理化学研究所(理研)光量子工学研究センター画像情報処理研究チームと国立がん研究センター東病院消化管内視鏡科の科長らによる共同研究チームが、人工知能(AI)による早期胃がんの高精度な自動検出法の確立に成功しました。

すべてのがんは早期発見・早期治療によって生存率が向上しますが、早期胃がんは進行性胃がんや大腸がんと比べると形態的特徴が多岐にわたっており、たとえ専門医であっても、内視鏡画像検査では炎症との判別が難しいところがネックでした。

そこで共同研究チームは、機械学習の方法の一種であるディープラーニングを使用し、内視鏡画像から早期胃がんを自動検出する方法を考案。

ディープラーニングとは多層のニュートラルネットワークのことで、画像や動画、テキスト、音声などの分類・識別問題に用いられます。

ディープラーニングを画像注の物体検出に応用する場合、学習データとして数十~数百万枚に及ぶ正確画像が必要となりますが、早期胃がんでは良質な正確画像を大量に用意するのは難しいため、少数の正確画像から小領域をランダムで切り取り、データ拡張技術を屈しして約36万枚まで増加させました。

そのが王をコンピュータに学習させた結果、陽性的中率は93.4%、陰性的中率は83.6%と、いずれも内視鏡専門医の判断に迫るほどの高い的中率をマーク。

早期胃がんの有無だけでなく、その領域まで高精度で自動検出することに成功しました。

AIの学習正解率は一般的に学習データの質と量に比例すると言われているため、より多くの良質な情報を取り入れれば、より高い正解率を出すことが可能とされています。

なお、画像1枚にかかる処理時間は1秒あたり0.004秒(画像の入出力にかかる時間除く)と短く、臨床現場におけるリアルタイム自動検出に申し分のないスピードを実現しています。

今後、さらなる検証を進めれば、将来的に臨床現場での医師の判断をサポートする知能として活躍することが期待されます。[注3]

関連ページ

参考サイト

   
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