【癌と免疫の関係】好中球

好中球とは?

5種類ある白血球の1つが好中球です。全白血球のうち45~75%ともっとも多く、遊走運動(アメーバ様運動)を盛んに行なうのが特徴です。

好中球の最大の役割は、体内に侵入してきた細菌やウイルスといった異物を駆除すること。正確にいうと異物を貪食(どんしょく:取り込むこと)することで、身体を感染から守ってくれる免疫細胞が好中球なのです。好中球による細菌やウイルスに対する防御力が低下すると、感染症を起こし重症化する可能性が高くなります。

なぜ好中球が癌に効果的なの?

正常細胞が癌細胞に変異することは体内で毎日のように起こっていることで、決して珍しい現象ではありません。むしろ当たり前のことだといってもよいでしょう。それがなぜ病気としての癌にならないかというと、免疫細胞がそれを異物と判断して排除してくれるからです。

癌細胞への攻撃力は、免疫細胞の中でもとくにNK細胞(ナチュラルキラー細胞)が優れています。癌細胞が少なければNK細胞の独壇場、その多くがNK細胞によって排除されるでしょう。

仮に癌細胞の増殖力がNK細胞を上回っているとしても、免疫力が正常であれば他の免疫細胞が癌細胞を攻撃します。

好中球もその1つ。さまざまな免疫細胞と一緒に癌細胞を排除する働きがあります。冒頭では細菌やウイルスを駆除するとお伝えしましたが、癌細胞も異物として排除し、わたしたちの身体を癌から守っているのです。

癌と好中球の関係

好中球は免疫細胞であると同時に、炎症細胞とも呼ばれています。これは好中球と同じく白血球の1つであるリンパ球も同様ですが、炎症が起きている部位に集まるからです。好中球は急性の炎症、リンパ球は慢性の炎症に関与するとされます。したがって、これら2つの免疫細胞は炎症の指標にもなり、好中球とリンパ球の比率(NLR)が高くなれば強い炎症が起きているということになります。

癌の進行とNLR(好中球とリンパ球の比率)

癌組織で強い炎症が起きているとNLRは高くなり、それは癌が進行していることを示します。さらにNLRは癌に対する免疫力の程度とも関連しており、NLRが高いと癌の予後が思わしくないというデータも報告されています。

このように、好中球はリンパ球と併せて炎症の程度を示すだけではなく、癌の予後を想定するうえでも重要な因子と考えられています。

癌治療と好中球減少症

血液中の好中球の数は1μl(1mlの1/1000)あたり概ね2,000~7,500個と幅がありますが、何らかの理由で1μlあたり2,000個以下と少なくなってしまう状態を「好中球減少症」といいます。

癌患者さんの場合は、抗がん剤の副作用としてしばしば好中球減少症を起こすことが知られています。好中球は人体を感染症から守る働きがありますが、もし1μlあたり500個を下回ると重症な感染症を起こす危険性が高まるため、極めて厳重な注意が必要です。

抗がん剤の副作用

一般的な抗がん剤は癌細胞を死滅させ、癌の増殖を抑える作用があります。しかし、よく知られているように多くの抗がん剤には副作用がつきもの。それは癌細胞だけではなく正常な細胞にもダメージを与えてしまうからです。代表的な副作用に脱毛がありますが、それは毛根の細胞が抗がん剤の影響を受けるためです。

とくに重篤な副作用は、骨髄中の造血細胞がダメージを受けることによって発生します。骨髄は人体の生命活動に必須な血球をつくる造血機能を持っていますが、当然これには好中球も含まれます。抗がん剤の副作用でその働きが止まってしまうと、体内の好中球が減ってしまうのです。

好中球の減少はいつ起きる?

好中球は抗がん剤を投与してから徐々に減少し、1~2週間でもっとも少なくなると考えられます。その後は少しずつ回復していくのが一般的です。

とはいえ、好中球が少なくなればなるほど、そしてその期間が長くなるほど感染症にかかりやすくなります。抗がん剤治療中は頻繁に血液検査で好中球の状態を調べ、しっかりと感染症対策を取る必要があります。

癌治療で好中球減少は避けられない?

もちろん、あらゆる抗がん剤が好中球減少という副作用を起こすわけではありません。近年では抗がん剤も著しく進歩しており、特定の癌細胞にだけ作用して正常な細胞にダメージを与えることが少ない抗がん剤も開発・実用化されています。

また、抗がん剤の種類によって効果がある癌の種類も違います。それぞれの癌に効果がある抗がん剤の標準治療は決まっており、これは実際の癌患者さんに抗がん剤を投与して効果を確認する臨床試験の結果に裏付けられています。つまり、他の治療法よりも確かな効果があると証明されているのです。

癌治療を積極的に行なう場合は、国内ではまず標準治療が推奨されます。ただし、現在では癌治療も多様性に富み、治療の選択肢が複数ある場合も少なくありません。好中球減少のような副作用の問題も含めて、主治医と十分な相談の上で適切な治療法を選択しましょう。

   
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