強度変調放射線治療

IMRT(intensity-modulated radiotherapy)ともいわれる治療法である強度変調放射線治療の特徴についてご紹介します。他の放射線治療と違う点についてもチェックしてみてください。

強度変調放射線治療とは?

コンピューター技術を用いて、できるだけ正常な細胞への照射線量を抑えて病巣に集中的に照射できる治療法となっています。

この治療法の大きな特徴ともいえるのが、照射する放射線量の強度を細かく調整できるということ。これまでの放射線治療では照射する放射線は一定の線量となっていましたが、強度変調放射線治療では一つの放射線の中で強度を変えられるのが特徴です。

その放射線を様々な方向から照射することにより、へこみがあるような病巣に対してもより効果的に集中照射ができます。特に腫瘍の形が複雑なタイプに対して効果を発揮する治療法です。

メリット

正常な細胞への照射量を抑えられるのが最大のメリットです。放射線量を増やせばその分腫瘍への効果は高まりますが、正常な細胞にもたくさん照射をするとデメリットも多くなってしまいます。

特に前立腺癌、頭頚部癌、脳腫瘍の場合はそのリスクが高いとして、思うように放射線治療が進められずにいました。しかし、強度変調放射線治療を用いれば正常な細胞への負担を減らして効果的に腫瘍に働きかけることができます。

正常な細胞に放射線を照射したことに起こる合併症のリスクが少ない治療法としても注目されており、近年多くの病院で取り入れられている方法です。

強度放射線治療をよく使用する癌とその理由

強度放射線治療がよく用いられる各がんについて、順番に見ていきましょう。

前立腺がん

膀胱と直腸に囲まれている関係上、従来の放射線療法では前立腺以外の組織にもダメージがありました。しかし、がんの形に合わせて放射線を照射できる強度放射線治療なら、前立腺だけをターゲットにできると考えられています。

すでに一部の先駆施設より、前立腺がん・頭頸部がん・中枢神経がんにおいては有望な臨床成績が報告されており、その他の多くのがん種で治療成績向上や合併症の軽減が期待されている。

出典:『強度変調放射線治療(IMRT)ガイドライン』公益社団法人 日本放射線腫瘍学会
https://www.jastro.or.jp/customer/guideline/2016/10/imrt.pdf

頭頚部癌

放射線療法は強力ですが、強すぎて重大な副作用が出てしまう場合があります。ピンポイントで照射できる強度変調放射線治療は、副作用を軽減できるのではないかと注目されているからこそよく使われているのです。

視力、脳・脳神経、脊髄の障害は重篤なので、通常はこれが発生しないように放射線の照射範囲や量を設定しますが、腫瘍がこれらの重要臓器にきわめて近接している場合はこれらの合併症は従来の方法では避けることが困難でした。しかし強度変調放射線治療(IMRT)や粒子線治療などの最新の治療技術を用いれば、これらの副作用を回避することが可能になってきています。

出典:『V.放射線治療』一般社団法人 日本頭頚部癌学会
http://www.jshnc.umin.ne.jp/general/section_05.html

脳腫瘍

構造的に複雑であり、より柔軟な放射線の照射が求められる脳腫瘍でも、強度放射線治療が注目の的です。ガンマナイフやマイクロマルチリーフコリメータといった装置よりさらに複雑な形状のがんにも対応できるため、緩和ケア目的でも利用されています。

上衣腫や髄芽腫の再発は化学療法が効きにくく,治療に難渋することもある、その際に再照射することにより,長期生存する症例もあり、試みるべき治療になる可能性がある。また、IMRT の技術も進歩してきており、helical tomotherapy によってつなぎ目なく、全中枢神経照射を行うことができたり、海馬の照射線量を減らして知能障害の合併症を減ずる全脳照射が試みられている。

出典:『小児脳腫瘍の放射線治療』日本小児血液・がん学会
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspho/52/3/52_294/_pdf/-char/ja

デメリット

病巣の位置を正確に把握するためには、事前にX線撮影やCT撮影なども行わなければなりません。そのため、通常の放射線治療に比べると時間がかかるのがデメリットだといえるでしょう。

病院側でも事前に検査したり、分析しておかなければならないことがたくさんあるため、X線撮影やCT撮影を受けてすぐに照射開始となるわけではありません。この点は注意しておきましょう。

1回の治療時間に関しても長くなります。というのも、治療を受けている最中に少しでも動いたりすると照射すべき位置がずれてしまい、正常な細胞に誤って照射してしまうリスクがあるからです。

それから、まだ新しい治療法ということもあり、癌治療ができるすべての病院でこの方法が選択できるわけではありません。照射法の中ではかなり複雑な部類に入るため、技術力のある信頼できる病院を探す必要があるでしょう。

強度放射線治療に用いられる装置:トモセラピー

トモセラピーは、強度放射線治療専用の装置です。装置を回転させながら放射線を照射させることで、健康な細胞にダメージを与えることなく治療できます。再発・転移した癌の制御も助けてくれる治療方法です。そんなトモセラピーの特徴やメリットをまとめています。

トモセラピーの特徴

トモセラピーはさまざまな角度から放射線を照射して癌細胞に働きかける治療機器です。放射線は体の周りを回転しながら照射するので、体全体をターゲットにした治療ができます。一度の治療で複数箇所の治療も可能に。転移した癌(特に多発転移)の治療も行えます。

照射の正確性を上げるために癌病巣の位置を特定するCT撮影と治療を、同じ寝台に寝た状態で受けられます。照射位置・範囲・時間を細かく自動調整しながら病巣のみをピンポイントで治療。特に直腸や膀胱の影響で日々位置が変化する前立腺癌の治療をメインに活用されています。

トモセラピーのメリット

病巣のみに照射

放射線を360度回転させながら、集中的に病巣へ照射してくれます。事前のCT撮影で得られた立体データで、小さな病巣や複雑な形状の病巣など全身をターゲットにした治療も可能。また、立体データの強みを活かして、複数箇所の治療も対応できます。一度に複数箇所の治療を受けられるので、治療回数を減らせるのもメリットの1つです。

合併症のリスクを抑えられる

切らない治療なので、切除手術後に起きるような感染症や麻痺などの合併症のリスクを抑えられるのも特徴の1つ。癌病巣だけを切り抜くように照射する治療なので、周りの正常な組織への影響を抑えられます。治療箇所によっては痛みを抑えるために麻酔を使うこともありますが、トモセラピーではほとんど使わず治療が可能。手術を受ける体力がない方でも受けられる治療です。

寝たまま治療が受けられる

治療はMRIなどと同様にベッドに寝た状態で受けられます。癌病巣のみをターゲットに照射して治療。複数箇所の治療も同時に行えるので、放射線治療時間の短縮にもつながります。

照射する放射線のレベルを抑えられるので、正常な細胞への影響も少なくなります。放射線による副作用も軽減できる治療です。

トモセラピー治療の流れ

治療を行っているクリニックは病院歴や紹介状が必要な場合が多いので、あらかじめ準備しておくとスムーズでしょう。

クリニックでは問診・診察や血液検査などを行い、トモセラピーによる治療が適切か判断してくれます。

検査結果をもとにどのように治療を進めていくか提案し、患者の要望を踏まえながら治療計画を決定。その際にCT撮影を行い、データをもとに治療計画を立ててくれます。

治療時間は20分~1時間で、複数回に分けて実施。病巣の状態によって必要な時間や回数が異なります。

治療終了後、CTやMRI検査などの検査へ。こちらもクリニックによって期間や回数が異なります。

トモセラピーの医療費

治療する箇所や回数などによって変動します。平成22年に保険適用の対象となっていますが、治療回数や転移した癌に対しては保険対象外となる場合があります。治療を受ける前に相場やクリニックの情報確認が大切です。医療費控除や高額療養費制度などの制度を利用すれば、自己負担額を減らせます。

トモセラピーによるがん治療ができるクリニック紹介

トモセラピーを使い、強度放射線治療を行っているクリニックをまとめました。北海道、東京、大阪、名古屋、福岡と、各主要都市の医療機関を掲載。クリニックに在籍する医師やアクセス情報も合わせて紹介しています。

北海道大野記念病院 札幌高機能放射線治療センター

癌治療の特徴

手術療法、放射線治療、化学療法(抗がん剤)の三大療法と免疫療法を組み合わせた集学的がん治療を行っています。さまざまな検査結果や患者の希望や状態に合わせて、効果が期待できる治療方法を提案。癌治療のためにトモセラピーや小型陽子線装置などの医療を提供できる体制づくりをしています。

また、がん治療を行っていく際、患者や家族が受ける苦痛や負担を軽減できるように生活サポートや緩和ケアなどを行っています。

(サイトイメージ)

引用元:北海道大野記念病院 札幌高機能放射線治療センター(https://ohno-kinen.jp/)

癌治療の名医

名医(イメージ)

岸 和史 北海道大野記念病院副院長
札幌高機能放射線治療センター長

和歌山県立医科大学大学院修了。放射線治療に関する国内外の学会やシンポジウムに参加し、セミナーや講座を開くなど、日々癌治療の研究を行っています。

放射線専門医、日本放射線腫瘍学会認定医、日本血管造影インターベンショナルラジオロジー学会専門医、放射線治療専門医、和歌山画像医学研究会幹事、日本血管造影インターベンショナルラジオロジー学会評議員、日本医学放射線学会生物部会幹事、和歌山悪性腫瘍研究会幹事、日本血管腫血管奇形研究会世話人、日本腫瘍放射線学会代議員。

クリニックの特徴

北海道大野記念病院は、癌のほか脳卒中、心臓病と運動器疾患を中心とした高度急性期医療を行っています。1階には札幌高機能放射線治療センターを設置。トモセラピーやサイバーナイフなどの高度医療機器を導入。手術の難しい箇所でも切らない治療で根治を目指しています。

北海道大野記念病院 札幌高機能放射線治療センターの基本情報

北海道大野記念病院 札幌高機能放射線治療センター
所在地 札幌市西区宮の沢2条1-16-1
アクセス 札幌市営地下鉄「宮の沢」駅より徒歩約6分

クリニックC4

癌治療の特徴

放射線治療機器のトモセラピーによる治療がメインです。強度変調放射線治療や画像誘導放射線治療、分子標準照射などを組み合わせて、患者に合わせつつ治療を提案してくれます。放射線を照射する治療なので、手術が難しい箇所に病巣がある人や手術を受ける体力がない人などでも治療可能。トモセラピーの特徴を活かし、他の病院で治療を受けられなかった方の受け入れも行っています。

(サイトイメージ)

引用元:クリニックC4(http://cccc-sc.jp/)

癌治療の名医

名医(イメージ)

青木 幸昌 クリニックC4 院長

東京大学医学部医学科を卒業。「説明と選択の医療、人事を尽くす医療をモットー」にして、あきらめない治療を行っています。

東京大学医学部付属病院放射線科講師病棟医長、英国Royal Cancer Institute留学、放射線医学総合研究所特別研究員(重粒子線)、総理府技官、東京大学医学部放射線医学教室助教授、国際医療福祉大学保健学部放射線・情報科学科教授などを経て、2008年にクリニックC4を開院。日本医学放射線学会専門医、日本放射線腫瘍学会認定医、日本放射線腫瘍学会評議員、第一種放射線取扱主任者。

クリニックの特徴

クリニックC4は放射治療システム「トモセラピー」を使った癌治療専門のクリニックです。「あきらめない」治療をモットーに、手術が難しい癌や再発した癌、転移した癌などの治療を行っています。

クリニックC4の基本情報

クリニックC4
所在地 東京都渋谷区元代々木町33-12
アクセス 小田急線代々木八幡駅・東京メトロ千代田線代々木公園駅1番出口より徒歩6分

愛知県がんセンター中央病院・研究所

癌治療の特徴

放射線治療機器のトモセラピーによる治療がメインです。強度放射線治療部では放射線治療専門医を配置し放射線治療専任で診療しています。トモセラピーを使った強度変調放射線治療や外部照射装置の「シナジー」や「トゥルービーム」を導入し高度放射線治療を提供。体内にカプセルを埋め込む小線源治療、密封小線源治療も受けられます。また、頭頸部癌や子宮癌治療の治療では質の高い治療を行うために、化学療法を含む包括的な放射線治療を行っています。

(サイトイメージ)

引用元:愛知県がんセンター中央病院・研究所(https://www.pref.aichi.jp/cancer-center/hosp/)

癌治療の名医

名医(イメージ)

古平 毅 放射線治療部部長

複数の癌治療の中から、放射線治療が有効な場合もあることを知ってもらうため、わかりやすい説明と患者に納得して治療を受けられるようにする診療を心がけています。

放射線治療専門医、日本医学放射線学会・同代議員、日本放射線腫瘍学会・同理事、日本癌治療学会・同代議員、日本頭頸部癌学会・同理事、日本食道学会・同評議員、日本がん治療認定医機構暫定教育医

クリニックの特徴

クリニックC4は放射治療システム「トモセラピー」を使った癌治療専門のクリニックです。「あきらめない」治療をモットーに、手術が難しい癌や再発した癌、転移した癌などの治療を行っています。

愛知県がんセンター中央病院・研究所の基本情報

愛知県がんセンター中央病院・研究所
所在地 愛知県名古屋市千種区鹿子殿1-1
アクセス 名古屋市営名城線「自由ケ丘(愛知県)駅」1出口より徒歩9分

野崎徳洲会病院

癌治療の特徴

放射線科ではトモセラピーを導入し、さまざまな箇所の癌の治療を提供。放射線を当てる部分を限定できるので、副作用を抑えられる治療です。泌尿器科や放射線科、前立腺センターなどと連携し、トモセラピーを利用した治療を推進。治療精度の向上をはかるため、内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチSi」を導入。

(サイトイメージ)

引用元:野崎徳洲会病院(https://nozaki.tokushukai.or.jp/)

癌治療の名医

名医(イメージ)

小川 和彦 教授

千葉大学医学部医学科卒業。研究・専門分野は放射線治療学、放射線腫瘍学、放射線生物学、分子腫瘍学、分子イメージング、医学物理、放射線科学関連です。

琉球大学医学部放射線医学教室助手、琉球大学医学部附属病院放射線科講師、ハーバード大学マサチューセッツ総合病院放射線腫瘍科研究員、大阪大学医学部附属病院放射線治療部部長などを歴任しています。

日本医学放射線学会専門医、日本放射線腫瘍学会認定医、がん治療認定医

クリニックの特徴

癌の研究、再生医療の基礎研究を行う研究所を設立するなど、癌治療の精度と技術の向上を目指しています。将来の癌治療を担える病院を目指し、全国の患者のために日々技術の習得に励んでいます。

野崎徳洲会病院の基本情報

愛知県がんセンター中央病院・研究所
所在地 大阪府大東市谷川2-10-50
アクセス JR在来線「野崎(大阪府)駅」出口より徒歩18分

共愛会戸畑共立病院

癌治療の特徴

放射線治療と化学療法を合わせた集学的治療で、根治を目指した治療を提供しています。化学療法を併用する場合でも、他の診療科の診断を受けずに治療方法を決定できる体制づくりが特徴。判断する医師・診療所が一緒なので、治療計画をスムーズに立てやすく、診療する医師が違った場合におこるギャップを最小限に抑えられます。

(サイトイメージ)

引用元:共愛会戸畑共立病院(https://www.kyoaikai.com/kyoritsu/)

癌治療の名医

名医(イメージ)

今田 肇 副院長・がん治療センター長

放射線科診断治療、化学療法と温熱療法、高圧酸素治療を併用する集学的治療を提案。週6外来で、いつでも必要な時に受診や検査を行い、リスクを最小限に抑えられるようにスタッフとともに日々診療を行っています。

日本医学放射線学会放射線治療専門医、日本放射線腫瘍学会放射線治療専門医、日本ハイパーサーミア学会指導医、日本がん治療認定医機構暫定教育医、臨床研修指導医

クリニックの特徴

2008年の新病院開院に併せて、がん治療センターも開設。強度変調照射線治療などの放射線治療を導入しています。がん相談支援センターやがん患者サロンを設置し、患者の相談に対応。医師や看護師など、病院全体で患者に寄り添える環境づくりをしています。

共愛会戸畑共立病院の基本情報

共愛会戸畑共立病院
所在地 福岡県北九州市戸畑区沢見2-5-1
アクセス JR九州(鹿児島本線)九州工大前駅出口から徒歩約7分
「いちから分かる癌転移の治療方法ガイド」は、独自に調べた内容をまとめたサイトです。
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