脳腫瘍

ここでは、脳腫瘍における放射線療法(トモセラピーなど)の目的、方法、副作用などについて解説しています。

脳腫瘍で放射線治療を行う目的

どのような種類の脳腫瘍であっても治療をする上での原則は、手術での摘出によって腫瘍を全て取り除いてしまうことを目指します。しかし、手術が難しい場合もあり、その際に用いられるのが放射線療法や化学療法といったアプローチです。放射線治療とは、放射線のエネルギーを活用して脳腫瘍を小さくしたり癌細胞の増殖を抑制させたりる治療方法のこと。放射線治療には「根治目的の治療」と「緩和目的の治療」の2種類があります。

根治目的

最初から脳に発生する原発性の脳腫瘍はもちろん、他の場所から転移したり再発したりしたものでも、局所にとどまっている状態であれば放射線で治療を行うことが可能です。また、「摘出手術で脳腫瘍が完全に取り切れない」「全て摘出できたと思われたが組織検査で悪性腫瘍と認められた」「小さな病巣が頭蓋の中にいくつも見つかった」といった場合にも行われることがあります。

緩和目的

緩和目的とはその名の通り、脳腫瘍によるさまざまな症状を緩和するために行われる放射線治療のこと。脳腫瘍が脳内で進行するのを抑制し、症状を和らげるのを目的とします。脳腫瘍を完全に消失させることを目的としないため、放射線量は根治照射と比較して少ないケースがほとんどです。照射量を減少させることによって、「治療期間が短縮できる」「副作用を軽減することができる」「同じ部位への再照射ができる」といったメリットが生まれます。

脳腫瘍における放射線治療の方法

脳腫瘍の放射線治療の方法は大きく分けて5種類。それぞれの方法について確認していきましょう。

全中枢神経系照射

脳や脊髄、その周囲にある脳脊髄液を十分に含むような形で行う照射方法が「全中枢神経照射」。脳脊髄液を介して播種しやすく、かつ放射線治療の効きやすい腫瘍に対して行われるのが一般的です。対象となる腫瘍としては、髄芽腫・頭蓋内胚細胞腫瘍(高悪性度)・上衣芽腫などが挙げられます。

全脳照射

脳内に多発する特徴を持つ腫瘍や広範囲に広がってしまった腫瘍に対して行う照射法が「全脳照射」です。全脳照射の対象となる腫瘍には脳原発悪性リンパ腫や転移性脳腫瘍などがあります。

全脳室照射

頭蓋内胚細胞腫瘍の中の胚腫に対して化学療法と併用して放射線治療を行う場合に使われる照射法が「全脳室照射」。ただし、胚種であれば必ず全脳室照射が行われるわけではなく、進行の範囲によっては全中枢神経系照射や全脳照射を実施することもあります。

拡大局所照射・局所照射

腫瘍が周囲の臓器へ浸潤しやすい場合に行われるのが「拡大局所照射」や「局所照射」といった照射法。浸潤のしやすさがそれほど強くない場合には、拡大局所照射ではなく局所照射となるのが一般的です。この違いは、画像で腫瘍と考えた部位からどの程度の距離までを照射範囲とするかによります。距離の違いは10ミリ程度です。グレード2~4の悪性神経膠腫、グレード2・3の上衣腫、グレード2・3髄膜腫といった多くの悪性の原発性脳腫瘍がこの照射法によって治療されます。

定位放射線照射

良性の腫瘍か、悪性の腫瘍であってもそれほど浸潤していない場合に対して行う照射法が「定位放射線治療」。さまざまな方向から照射することによって、腫瘍の周囲にある正常組織への影響をなるべく避けることができる、いわゆる狙い撃ち照射です。他の照射法と比べると、小さい腫瘍に対して適応されるのが一般的。大きい腫瘍には照射する回数を増やすか、局所照射に切り替えて治療するかを判断しなければなりません。定位放射線照射は下垂体腫瘍・聴神経腫瘍・頭蓋咽頭腫・転移性脳腫瘍などにこの照射方法が適応となります。

放射線治療の副作用

放射線治療の最中から治療直後に至るまで、重い副作用がみられることはほとんどありません。ただし、頭痛や吐き気・嘔吐、めまい、全身の倦怠感といった軽い症状が出ることはあります。また、放射線治療の範囲にある部分の脱毛は必ずといってよいほど見られ、日焼けのようになる放射線皮膚炎も、治療の後半になると多くの人に表れる症状。また、皮膚炎の延長として、外耳道炎や中耳炎が見られるというケースもあります。皮膚炎や外耳道炎、中耳炎は、塗り薬や点耳薬などによって、放射線治療の終了後に徐々に改善させられます。治療中から治療直後の副作用には個人差があるようです。

治療が終わってから6か月以後に生じる副作用、いわゆる「後遺症」は、照射した部位によって大きく異なります。放射線治療の方法が進歩したことにより、後遺症が起こる可能性は数%以下と低い数値。しかし、起こった場合の症状としては放射線脳壊死、ホルモン分泌低下、視覚障害、聴力障害、顔面神経障害をはじめとする神経障害、水頭症など、かなり深刻です。治療前に担当医によく説明してもらい、分からないことや不安なことがある場合はきちんと聞くようにしましょう。

脳腫瘍はトモセラピーで治療できる?

2008年に実施された診療報酬改定によって、強度変調放射線治療が保険適用に変更。これがきっかけで脳腫瘍をはじめとする、さまざま癌治療で放射線治療が重要な役割を果たすようになりました。

ヘリカル回転式のIMRT専用装置のトモセラピーは当初、頭頚部がん・前立線がんへの応用が行われていましたが、現在は悪性神経膠腫や悪性リンパ腫といった悪性脳腫瘍の治療に対しても用いられています。

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ちなみに…脳腫瘍はサイバーナイフで治療できる?

サイバーナイフは主に原発性および転移性脳腫瘍の治療で使われており、痛みや熱さなどの苦痛を感じることがほとんどない治療装置です。

サイバーナイフとは、集中的に放射線を腫瘍に投与するピンポイント照射の専用装置のこと。ロボットアームの先端部分に取りつけられた放射線治療装置が体の周りを自由自在に動くことで、集中照射を実現します。可動域の広いロボットアームを動かして、場所を変えながら放射線を照射することができるため、正常組織に与えるダメージを抑えた治療が可能。1回あたりの治療時間は30分程度。治療効果や副作用の状態を確認しながら、1度で治療を終了したり複数回に分けて治療したりといった判断が行われます。

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ちなみに…脳腫瘍はガンマナイフで治療できる?

定位的放射線治療装置として最も普及していることで知られるガンマナイフ。脳腫瘍や脳転移した癌に対しても定位手術的照射が行えます。ガンマナイフの特徴は、複数個の脳転移が見られる場合でも1日の治療で全ての病巣に照射できること。5個以上の転移性脳腫瘍を1日で定位照射できる放射線治療機器は2020年現在はガンマナイフのみです。また、ガンマナイフの単独治療では、全脳照射で起こるような頭髪の脱毛はほとんど起こらないことが知られています。

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ちなみに…脳腫瘍はトゥルービームで治療できる?

トゥルービームは脊椎骨転移や食道がん、肺がんなどで多く使用されていますが、脳腫瘍で使われるケースは多くありません。

アメリカの医療機器メーカー・バリアンメディカルシステムズ社が開発した放射線治療装置がトゥルービームです。放射線治療装置に内蔵されたエックス線画像装置を用いて、高い精度の放射線治療を行うことができます。従来の放射線治療では、一定方向から均一の放射線を照射していたため、周りにある正常な部分にまで多くの放射線があたってしまい、腫瘍に充分な量の放射線を与えることができませんでした。しかし、トゥルービームはコンピュータで照射する方向をコントロールし、放射線の量、強さを緻密に変化させながら治療することが可能です。

   
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