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いちから分かる癌転移の治療方法ガイド » 癌治療のメリット・デメリット

よく分かる癌の治療方法
メリット・デメリット

がんの主な治療法である手術、抗がん剤治療、放射線治療、そして免疫療法の概要とそのメリット・デメリットを詳しく解説しています。

目次

がんと闘うための治療方法、そのメリット・デメリットとは

癌の治療には、主に3つの治療法が用いられてきました。切除手術、抗がん剤治療(化学療法)、そして放射線治療です。

かつては、癌の腫瘍と、目に見えない微小な癌細胞を取り除く手術がもっとも信頼性が高いとされてきました。しかし近年になって抗がん剤と放射線治療の技術が飛躍的に向上し、これらが同じレベルで利用されるようになりました。特に放射線治療は、手術と変わらない治療実績を挙げる症例が現れるまでになっています。

それに加えていま注目されているのが「免疫療法」です。上記の3つの治療法では対処できないケースを補完できることがあり、また副作用が少ないことから、急激に利用される機会が増加しています。

ここでは、免疫療法を加えた4つの治療法について、その概要や治療のメカニズム、そしてそれぞれのメリット・デメリットをご紹介していきたいと思います。

手術

がん治療の基本である、切除手術。がんを治すには、物理的に癌細胞を除去するのが確実であることに変わりはありません。それゆえ、ほかの治療法が発達したとしても、切除手術が基本となっているのです。

切除手術は、がん組織とその周辺を切除し、完全にがん組織を切除することができれば治せるところがメリットです。そのため、早期の転移が見られないがんに対しては、有効的な治療方法といえます。また、移転が見られる場合でも転移を想定しながらリンパ節を広めに切除することで、寛解する可能性を高めることができます。最近では、放射線治療や抗がん剤治療によって切除する範囲を少なくすることで、がんの手術はより負担が少なくなっています。内視鏡手術などを利用すれば、傷も小さくて済みます。

内視鏡手術でがん組織を切除できる場合は、全身麻酔を使用し広範囲を切除しなくても済むため、体への負担を軽減することができるようになりました。

このように、がんを治す可能性を高められることが手術のメリットですが、現実的には再発してしまうケースもみられます。これは、肉眼では見えない細胞レベルのがん細胞が手術では切除しきれず、体内に残ってしまうためです。

このようなケースも考慮して、手術後の治療方法も重要になってきます。放射線療法や抗がん剤治療を取り入れる集学的治療を取り入れて、さまざまな観点から治療を進めていきます。そのため、術後のケアや体力や傷跡の回復にも気を配らなければならないところがデメリットとなります。

ここでは、がんの部位別に手術の方法を解説しています。

がんの手術治療によるメリットは物理的にがんを取り除くことができるため、寛解の可能性が高いという点です。ただし、これは転移がない場合・がん自体が小さい場合の話。転移の有無やがんの侵蝕具合に関しては、CTやMRI検査では完全に把握できるとは言えません。そのため、開腹し執刀医により実際に患部を見てみないと手術治療の成功の可否・根治の可能性はわからないことも少なくありません。

かつては、がんの手術治療は体への負担が大きいことが懸念材料となっていましたが、最近では腹腔鏡手術などの外科手術の技術も進化しています。体に負担をできるだけかけずに手術をすることも可能なケースがありますので、医師と良く手術に関して相談してみるといいでしょう。

一方で、がん手術のデメリットは、わずかに転移していたり、切除手術でがん細胞の取り残しがあったりすれば再発の可能性がある点です。外科手術により、体の機能の一部が何らかの損傷を受けるリスクもゼロではありません。

抗がん剤治療

かつては手術の補助的な役割を担っていた抗がん剤治療ですが、現在では抗がん剤の使い方の改善や新薬の登場によって、その効果が高まっています。

現在、がんを治療する薬は100種類近くあります。その中でがん細胞を弱らせる役割を持っている薬が、抗がん剤です。抗がん剤のメリットは、全身のがんに対して治療効果が期待できるところです。がん治療の目的として挙げられる「患者さんの生命を保つ」という側面からみると、抗がん剤治療はがんの進行を遅らせたり全身状態を改善したりする効果が期待できます。抗がん剤の成分は、投薬後、血液によって全身を巡ります。そのため、手術や放射線治療では治療が難しい、離れたところに転移しているがんや、全身への転移が進行しているがんにも有効な治療方法です。

また、以前のように副作用に苦しむことも少なくなり、手術では治療できない癌をコントロールしながら生活するのに欠かせません。

手術だけでなく放射線治療など、他の療法と組み合わせて相乗効果が期待できるところも抗がん剤治療のメリットです。一方、抗がん剤治療のデメリットとして挙げられるのは、他の薬に比べて薬物有害反応が非常に強いところです。嘔吐や白血球の減少、脱毛などさまざまな副作用が考えられます。また、抗がん剤だけで治すことが難しいところもデメリットの一つです。集学的治療の一環として用いられることがほとんどです。

ここでは、抗がん剤を使う理由やその種類、そしてメリットとデメリットについて解説しています。

抗がん剤治療は、局所(限られた範囲)のみの治療しか行えない放射線治療や外科手術と異なり、全身への効果を期待できる治療方法です。

例えば、がん細胞が原発巣から散り転移をしてしまえば手術で各所を開けて切除することはより難しくなってしまいます。また、手術をした後の再発リスクはゼロではないことを考えると、抗がん剤で全身ががんの再発・転移を防ぐ環境に導くことは大きなメリットと言えるでしょう。抗がん剤は、がんの種類によって適応する薬が異なりますが、複数種類の併用や、放射線治療との組み合わせも可能です。

一方で、抗がん剤のデメリットは何と言っても副作用です。がん細胞を攻撃する抗がん剤は、正常な細胞を攻撃してしまうこともあります。脱毛や吐き気、倦怠感など生活に支障をきたす副作用もあるため、がんとの闘いは抗がん剤副作用との闘いと言える側面があるのも事実です。また、抗がん剤は決して万能ではなく、効かないがんも存在します。あくまでもがん細胞が増殖するのを食い止め、腫瘍を小さくするための治療ですので、その他の治療法を組み合わせることが必要なのも抗がん剤治療のデメリットと言えるでしょう。

抗がん剤治療の費用

近年の抗がん剤の進歩には目覚ましいものがあり、分子標的薬や免疫療法など、従来の細胞傷害性抗がん剤とは根本的に作用機序が異なる新薬が次々に開発されています。それに伴って、治療成績も以前とは比べ物にならないほど向上していると言われています。

患者さんにとって、新薬の登場は治療の選択肢が増えるのでありがたいことです。しかし、その一方で医療費がかさんでしまうこともまた事実。抗がん剤治療と費用の問題は切り離すことが難しいものです。

抗がん剤治療の費用がどのくらいかかるのか、目安をまとめました。

放射線治療

いまやがん治療の方法を選ぶうえで、最初の選択肢になりつつあるのが放射線治療。すでに欧米では主流となっており、その効果と負担・副作用の少なさに期待が集まっています。

放射線の種類や照射の方法・技術が向上し、これまでよりも癌細胞に正確に放射線を当てることができ、またがん細胞を死滅させやすくなっています。

放射線治療は、体外からがん組織がある部位に対して照射する、外部照射が一般的です。外部照明の場合は痛みがなく、短時間で施術が終わるところがメリットです。また、体への負担が少ないため通院での治療も可能です。この他にも、注射や飲み薬で投与する内部照射など、選択肢が増えてきています。

さらに、がんの根治を目指す治療やがんの症状や痛みを緩和するための治療など、幅広い治療に用いることができるのもメリットです。手術後にがん細胞の再発を防止したり、血液がんの治療で行う造血幹細胞移植の前処置として取り入れたりと、他の療法と組み合わせて用いるケースも少なくありません。

抗がん剤同様、手術での治療が難しい場合や、全身への転移を抑制する上では欠かせない治療法です。

放射線治療のデメリットとしては、副作用が起こる可能性があるところです。可能性自体は低いのですが、急性期には治療終了後に、倦怠感や貧血、出血などの症状を伴う場合があります。晩期も副作用が起こりやすいため、細心の注意を払って治療を進めていきます。他にも治療期間中は通常の生活を送ることができますが、毎日通院して継続した治療を受ける必要があります。また、放射線治療は照射した場所に効果が期待できるという治療です。そのため、転移などを念頭に置くと照射できていない部分が出てくる可能性も否定できません。

医療用に特殊な放射線を作り出し、患部に照射することで細胞DNAを攻撃し、がん細胞を死滅させる放射線治療。がんの3大治療法にあげられるくらい、効果がある治療法のひとつです。放射線治療の狙いはがん細胞の根絶と、骨転移などに伴う痛みを緩和するという2つの目的があります。局所にとどまったがんであれば、原発巣から転移したがんでも放射線治療単独で治療することが可能なケースもあります。

また、放射線治療は、手術や薬物療法の補助的な役割として使えるのも大きなメリットです。例えば手術前にがん細胞をできるだけ死滅させておけば、手術の際にがんが取り除きやすくなります。手術後に照射すれば再発リスクを下げることも可能です。

放射線治療のデメリットには副作用が挙げられます。放射線治療による副作用は、治療後数か月以上経ってから現れるケースもありますので、注意が必要です。また、感染や出血しやすくなる副作用などもありますので、貧血や体力が低下している方は注意が必要です。治療は長期間にわたるため、治療による生活への影響もある点もデメリットのひとつです。

放射線治療の費用

がんの三大治療のひとつに挙げられる放射線治療は、治療機器や技術の急速な進歩によって治療適用の拡大と治療成績の向上がみられています。とくに、高度な放射線治療では根治を目指せる方法も実用化されてきました。

ただ、放射線治療の中には保険適用となる治療もあれば、そうでない治療もあります。自由診療や先進医療に該当する放射線治療はどうしても高額になってしまいます。自身が受ける治療はどのような効果が期待できるか、どんな副作用があるのか、それだけではなく費用のこともあらかじめ把握しておきたいところです。

免疫療法

上の3つの治療法に加えて、それらを補完する形で注目されているのが免疫療法です。

もともと体内に備わっている、癌細胞を攻撃する免疫システム。これを強化・回復させることでがん細胞を集中的に攻撃し、治療するというものです。

免疫療法の中で効果が明らかになっているものは「免疫抑制阻害療法」と「サイトカイン療法」「BRM療法」です。「免疫抑制阻害療法」は、がん細胞により弱まった免疫細胞を強めて、もともと持っている免疫力を高める方法です。「サイトカイン療法」と「BRM療法」は免疫細胞を活性化させる薬を投薬することで、免疫細胞を活性化させ、がん細胞を攻撃させる治療方法です。これらの治療方法は、がん細胞だけを攻撃することができるため、正常な細胞を傷つけにくいところがメリットです。また、自分の体内に持っている免疫細胞を使用するため、がんが進行し体力が弱まっている人でも試みることができます。

エビデンスが少なくその評価はまだ定まってはいませんが、すでに先進医療として認定されており、手術や放射線治療、抗がん剤治療での対応が難しい場合でも利用できる点は優れています。

また、副作用や身体的負担がなく、どんな患者でも利用できるというメリットもあります。

一方で、免疫療法は先進医療として研究が進められている最中なので、まだまだ治療効果が立証されていない部分もあります。そのため、予期せぬ副作用が起こる可能性も否定できないため、医師と相談しながら慎重に進めていく必要があります。

また、免疫療法は抗がん剤治療と併用するとそれぞれの効果を打ち消してしまう可能性があります。免疫療法は、他の療法では得られないメリットが得られると期待されている治療方法です。これからより研究が進み、第4の治療方法として確立されることが期待されます。

【参考URL】

参考:『免疫療法 まず、知っておきたいこと』国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター
『免疫療法 まず、知っておきたいこと』国立がん研究センター がん情報サービス』

参考:『手術療法』公益財団法人 がん研究会有明病院
http://www.jfcr.or.jp/hospital/cancer/treatment/operation.html

免疫療法のメリットは、がん細胞のみを攻撃することができる点がまず挙げられます。抗がん剤治療や放射線治療はがん細胞以外の正常な細胞へもダメージを与えてしまいます。こうした観点から、体力が低下し、抗がん剤や放射線、外科手術による治療に耐えられなかった患者さんでも免疫療法なら受けられる可能性が広がりました。免疫療法はまだまだ症例数も少なく、研究も半ばの治療法のため効果に関する正確な統計は少ないのですが、免疫療法は早期がんであれば根治できる可能性が広がると言われています。一方で、抗がん剤の効果を下げるリスクや、治験データが十分にないことなどから確かな確証を基にした治療ではまだまだない点はデメリットと言えるかもしれません。

【癌と免疫の関係】マクロファージとは?

マクロファージはアメーバ状の細胞で、全身の組織に広く存在しています。人間が生まれつき持っている防御機能である自然免疫において、大きな役割を果たしています。

身体の中で癌細胞が発生すると、マクロファージはその癌細胞を自身の中に取り込むことで消化しようとします(貪食:どんしょく)。そして、取り込んだ癌細胞の情報を他の免疫細胞に伝えるために、その目印を自身の表面付近に表します。その情報を受け取ったキラーT細胞など他の免疫細胞が、癌細胞への攻撃を開始するのです。マクロファージが癌細胞を見つけて取り込み、他の免疫細胞へその情報を伝えなければ、癌細胞はどんどん増殖していくことになります。マクロファージは癌細胞を排除する上で重要な役割を担っているのです。

癌に効果を発揮するキラーT細胞とは

キラーT細胞はリンパ球の一種であるT細胞の1つです。人間の身体の免疫システムには自然免疫と獲得免疫の2種類があり、自然免疫は身体の中に異物がないかを常に監視し、発見した場合は真っ先に攻撃します。つまり、身体内に異物が見つかった場合の初期対応を行う免疫ということです。マクロファージや好中球、樹状細胞などがこの自然免疫に該当します。

一方、獲得免疫は生物の中でも人間のような高度な生物にだけ備わっている免疫で、T細胞やB細胞などが獲得免疫の代表です。自然免疫の中でも総司令官的な役割を果たしているのが樹状細胞ですが、樹状細胞は癌細胞などの異物を発見するとキラーT細胞などに攻撃をするよう指示を送ります。そうして始動したキラーT細胞が、癌細胞を攻撃して排除するのです。

【癌と免疫の関係】樹状細胞

樹状細胞は、その名のとおり自身の周囲に木の枝のような突起(樹状突起)を伸ばした形をしている免疫細胞です。主な働きは、異物を自身の中に取り込んで、その特徴を他の免疫細胞に伝達すること。樹状細胞の伝達を受けて活性化された免疫細胞は異物への攻撃を開始するので、樹状細胞はいわば免疫細胞の司令塔のような役割を果たしています。

人間の体内では、毎日5,000個もの癌細胞が新たに発生していると考えられています。健康な状態であれば免疫細胞がこれらの癌細胞を退治していますが、癌細胞は自身が癌細胞であることを隠し、免疫細胞の攻撃から逃れる場合があります。それを防ぐため、癌細胞の特徴をターゲットにして癌細胞を攻撃する必要があります。樹状細胞がその役割を担っており、これを特異的免疫といいます。

【癌と免疫の関係】好中球

5種類ある白血球の1つが好中球で、体内に侵入してきた細菌やウイルスといった異物を駆除することが最大の役割。つまり、身体を感染から守ってくれる免疫細胞なのです。好中球による細菌やウイルスに対する防御力が低下すると感染症を起こし、場合によっては重症化する可能性が高まります。

癌細胞への攻撃力は、免疫細胞の中でもとくにNK細胞(ナチュラルキラー細胞)が優れています。もしNK細胞の攻撃力より癌細胞の増殖力が上だったとしても、健康な状態であれば他の免疫細胞が癌細胞を攻撃します。好中球もその1つで、さまざまな免疫細胞と一緒に癌細胞を排除する働きがあります。細菌やウイルスだけではなく癌細胞も異物として排除し、わたしたちの身体を癌から守っているのです。

【癌と免疫の関係】NK細胞

NK細胞はリンパ球の一種で、身体の中をくまなく巡回してウイルス感染など異常な細胞を発見すると直ちに攻撃します。外部からの指示を必要とせず、単独で攻撃を開始できることがナチュラルキラー(生まれついての殺し屋)細胞と名付けられた理由です。

NK細胞は癌細胞も見つけ次第攻撃します。正常な細胞は表面に特定のタンパク質が現れていますが、ウイルスに感染したり異変をきたして癌細胞化したりするとそれが消えてしまう場合があります。NK細胞はその有無を判断基準にして攻撃するかどうかを見極めているのです。

人間の体内では、健康な場合あって毎日数千個の癌細胞が発生しています。それでも実際に癌を発症しないのは、NK細胞がその排除に大きく関与していると考えられています。

【癌と免疫の関係】B細胞

B細胞はリンパ球の一種で、身体の中に侵入した細菌やウイルスといった病原体を排除する作用を持ちます。具体的には、樹状細胞の指令を受けて必要な抗体をつくり出すという重要な役割を持つ免疫細胞がB細胞です。また、病原体に反応したB細胞は記憶細胞として存在し続け、再び同じ病原体が侵入した場合には迅速に反応することができます。これが予防接種などに応用されているB細胞の特長です。

抗体は攻撃用の武器としての役割もありますが、本来の特徴は数ある異物の中から目印のある異物を見分けられることです。つまり、抗体は癌細胞のみが持つ物質や、正常な細胞よりも癌細胞に多く出現する物質などを見分けて結合することができるのです。この作用によって、癌細胞に結合する抗体を目印に集まってきた免疫細胞が癌細胞を攻撃することができるのです。

マクロファージ活性化療法

マクロファージとは白血球の1種であり、体内に侵入してきた細菌などの異物を捕食して消化し、排除するための免疫細胞です。また、捕食した異物の情報を他の免疫細胞へ伝達して、一層に免疫機能を強化することも特徴となります。

マクロファージは体外からの異物だけでなく、体内で生じた癌細胞を攻撃する免疫系にも関与しており、マクロファージを活性化させて免疫機能を高めることで、癌細胞を効果的に攻撃できると期待されています。

ペプチドワクチン療法

ペプチドワクチン療法は、癌の表面で特異的に存在するタンパク質「ペプチド」を使ってワクチンを作成し、それを患者へ注射する治療法です。ペプチドワクチンを接種すると、癌情報を受け取った免疫細胞が正確に癌をターゲティングできるようになり、癌細胞が減少するという効果を期待しています。

2020年8月に近畿大学医学部と東京大学医科学研究所の共同チームがペプチドワクチンに関する臨床試験を終了しています。

活性化リンパ球療法

活性化リンパ球療法とは、リンパ球(Tリンパ球/T細胞)の機能を人工的に増強させて、癌細胞へ立ち向かわせる治療法です。

活性化リンパ球療法では、まず患者から血液を採取して白血球を抽出し、Tリンパ球(キラーT細胞)を増殖させます。そして一定以上の量に達したところでTリンパ球を再び患者の体内へと戻します。

そして増殖したキラーT細胞が癌細胞を攻撃して、結果的に癌の症状を改善するといった結果を目指す治療法です。

癌に効果があるといわれる造血幹細胞移植

造血器悪性腫瘍や白血病など、血液癌の患者さんに対して化学療法や放射線治療を一定以上行なうと、副作用で他の臓器や骨髄に悪影響を及ぼしてしまいます。しかし、正常な造血幹細胞を移植することで、骨髄の機能回復を図ることができます。造血幹細胞移植が成功すれば化学療法や放射線治療をより多く実施できるため、癌の治療の効果を高めることが期待できます。また、同種移植であれば免疫反応が向上して抗癌効果も期待できるので、悪性リンパ腫や白血病の再発を防ぐことができると考えられています。

造血幹細胞移植が注目されるのは、このように化学療法や放射線治療の上限を上げ、さらに癌細胞の増殖抑制効果を引き出すことが期待できることと、ドナーが見つかれば可能な同種移植によって抗癌効果を期待できるからです。

造血幹細胞移植治療のメリット・デメリット

造血幹細胞移植を行なうメリットは、化学療法や放射線治療を通常よりも多く実施できるようになることです。そのままではこれらの治療は患者さんの身体には負担がかかってしまうほか、化学療法も放射線治療の頻度や量に限りがあります。

デメリットはドナー探しが困難だということ。同系移植と同種移植のいずれの移植法も白血球の型が完全に一致していなければなりません。

血管内治療

血管内治療は、カテーテルという細い管を用いて血管の内側から治療を行なう方法です。 癌の病巣にピンポイントでアプローチすることが可能で、ごく少量の薬剤の注入でほとんど痛みを感じずに効果が得られます。癌を切除する手術とは異なり、痛みや傷が少ないことも注目されている理由の1つです。

癌は異常血管をつくり出すことで栄養を得て成長します。これを血管新生といい、この血管を取り除くか、癌そのものに抗がん剤を注入することで癌の縮小・消失を目指します。

異常血管は癌に栄養を送るだけではなく転移を引き起こすこともあります。カテーテルを癌の病巣近くの血管まで挿入して薬剤を投与すれば、異常血管の血流を止め、点滴による投与よりも高い濃度の抗がん剤を癌組織に直接注入することが可能となります。

血管内治療のメリット・デメリット

血管内治療のメリットとしては、まず使用する薬剤が少量で済むことが挙げられます。さらに治療の特性として痛みが少なく、傷も小さいので身体への負担が軽減され、入院期間も短くなります。

一方、デメリットとしては薬剤の副作用が起きる可能性があります。治療そのものの痛みは少なくても、薬剤の副作用で痛みが出る可能性は否定できません。また、手術と違って癌を切除するわけではないので効果が出るまで時間がかかり、治療を繰り返す必要が出てくる場合もあります。

内視鏡治療

内視鏡治療とは、文字どおり内視鏡を使用して病変部をモニターに映し出し、それを確認しながら手術などを行なう治療法です。とくに早期の癌やサイズが小さい癌に対して行われ、通常の手術よりも傷が小さく済むので身体への負担も軽減されます。

内視鏡治療にはいくつか種類があり、その方法も違います。ファイバースコープを用いて癌の切除を行なうのは同様ですが、どこから挿入するか、そして適応範囲は変わってきます。

代表的な治療に、内視鏡を口や鼻・肛門から挿入して癌を切除する内視鏡的切除と、腹部に小さな穴を開けて内視鏡や手術器具を挿入し、癌を切除する腹腔鏡下手術があります。胃癌や食道癌、大腸癌などが内視鏡治療の主な対象となります。

内視鏡治療のメリット・デメリット

内視鏡治療の最大のメリットは身体への負担が少なく、術後の回復も早いことです。傷跡も目立ちません。入院期間も短縮できるので、経済的な負担も軽減されるでしょう。

デメリットとしては、内視鏡治療では癌が切除しきれない場合があるということです。とくにリンパ節への転移などがあると内視鏡治療だけでは対応が困難です。また、腹腔鏡下手術は高度な技術を要するため、手術時間が長くなってしまうとそれだけ身体的な負担も大きくなります。

癌遺伝子治療

新しいがん治療として注目を集めている癌遺伝子治療は、がん細胞に遺伝子レベルで作用して死滅させるという、これまでのがん治療とはまったく異なるメカニズムを有しています。

治療はもともと人間が持っているはずのがん抑制遺伝子を投与することで、がん細胞の自然死を促します。通常の抗がん剤とは異なり、正常な細胞にダメージを与えないことが大きな特徴で、従来の標準治療と併用することで相乗効果も期待できるようです。

ここでは癌遺伝子治療について詳しくお伝えしていきます。

術後補助化学療法

がんを手術で取り切ったとしても、目に見えないような小さながん細胞が残存していると、それが将来的に再発や転移の原因になってしまいます。それを防ぐために行なわれるのが術後補助化学療法です。

通常の抗がん剤治療と同じく、術後補助化学療法も少なからず身体に副作用をもたらします。治療に際しては再発のリスクと副作用のリスクを比較し、十分に検討した上で受けるべきかどうかを決定することが必要です。

ここでは術後補助化学療法について詳しくお伝えしていきます。

癌に効く代替療法とは

癌に効果があるといわれている代替療法は数多くあり、一例を挙げるだけでも運動や音楽、ヨガ、漢方薬、サプリメントなどさまざまです。痛みや精神症状、または生活の質を向上させるために考えられた治療法ですが、根拠がないまま効果が期待されているものも少なくありません。場合によっては癌治療の妨げになってしまうものもあるので、不確かな情報に惑わされないよう注意が必要です。

代替療法は気軽に始められるものが多くありますが、それで癌が寛解するということはまずありません。基本的に科学的な根拠がある代替療法は存在しませんが、癌治療と併用で効果が期待できるものがあるため、主治医に相談してみましょう。

代替療法治療のメリット・デメリット

代替療法のメリットは、多くの種類があり、比較的どれも手軽に始めやすいということです。そのときの治療の状態によって、自分に合うものを見つけられますし、運動やリラクゼーション、健康食品などであれば、特別な場所に行かなくてもどこでも始めることができます。

デメリットとしては、やはり科学的な根拠がないということが第一に挙げられます。つまり、癌に効くかどうか明言できないということです。同様に、選んだ代替療法が癌治療に悪影響を及ぼす可能性も否定できません。

運動療法

ウォーキングのような有酸素運動や、筋力トレーニングのような運動、器具やプールなどを使った運動まで、運動療法では様々な運動や身体活動が目的ごとに行われます。

運動療法はリハビリテーションの一環として、医師の指導の下で理学療法士といった専門家がサポートしてくれる他、患者自身が自宅で行うものもあり、その内容や運動プログラムは患者によって様々です。

適度な運動習慣は癌の予防や患者のメンタルケアにもつながるとされています。

温熱療法(ハイパーサーミア)

温熱療法(ハイパーサーミア)は1990年に保険適用として承認された治療法であり、8MHzの高周波(ラジオ波)を癌へ照射して、熱の力で癌細胞を退治する治療です。

そもそも癌細胞は健常な細胞よりも熱に弱いことが特徴であり、ハイパーサーミアを効果的に活用することで健常細胞へのダメージを抑えつつ、癌を攻撃することができます。

保険適用ながら標準治療よりも治療の優先度は低く、単独でなく他の治療と複合的に実施されます。

ロボット支援手術

ロボット支援手術とは、手術用に開発されたロボットシステムを活用して、執刀医が遠隔地にいながら患者の手術を行えるようにした医療機器です。

執刀医は画面に映る3Dフルハイビジョン画像を使いながら、手術部位を10倍以上に拡大して手術を行います。そのため肉眼で手術をする場合よりも精密な手術を実現させることができます。

2009年から一部の癌に対して保険適用となっており、対象範囲は年月が経つにつれて拡大されています。