いちから分かる癌転移の治療方法ガイド

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X線

放射線治療の中でもっとも有名な「X線治療」。ほかの治療とどのように違うのか?副作用はあるのか?気になる人も多いはず。X線に関する基礎知識とがん治療の詳細、新しい治療機器をご紹介していきます。

X線治療について

X線は、1895年にレントゲン博士が発見した光線です。身体の外から照射する放射線治療として知られています。

1895年にがん治療で応用されるようになって以来100年以上その歴史は続いており、現在も「がん治療の中で最も使用されている」と言われています。

X線は、強力なエネルギーによってがん細胞を壊す治療法です。病巣付近の正常な細胞組織まで傷つけてしまうのが難点だと言われてきました。しかし、医療業界の成長は目覚ましく、周りの細胞を傷つけない治療も増えはじめています。

X線治療の特徴と強み

X線の特徴は「強力なエネルギー波」。放射線の中でも高波長なので、物質を透過する性質をもっています。この性質こそ、身体の外から照射してもがんの潜んでいる病巣まで届く秘密です。

X線が身体を通り抜ける際、皮膚下でエネルギーがもっとも強くなります。10cm以降になると次第にパワーは衰退し、身体を通り抜ける頃の威力は30~60%減になります。

身体を通り抜ける特性から、X線写真に使用されているのも有名です。とはいえ、放射線治療とX線写真で使用されるエネルギー量は、まったく違います。がん治療に使用されるX線のエネルギー量は、検査で使用されるX線の1,000倍ほど。超強力な放射線量だからこそ、がんへの効果が期待できるのです。

X線治療の詳細

放射線量について

治療装置によって出力数値は異なります。平均値は20~500Rと幅広いのが特徴です。X線の集中性も治療法によって異なります。

X線が有効とされているケース

もっとも有効だと言われているのは、2~10cmの深さにある頭頚部腫瘍。X線は頭蓋骨をも通り抜けるので、電子線治療では難しいとされている頭頂部のがんにも効果を発揮します。

そのほか、切除手術をなるべく避けたい部位に発生したがん(舌癌、喉頭癌、乳癌、陰茎癌)、悪性リンパ腫、切除手術を行なった際の再発防止策、末期がんの痛みをはじめとする緩和策などにも有効です。

照射方法

X線の照射は「角度」と「周波」がカギを握っています。放射線を照射する装置の角度を変え、病巣に最大限のエネルギーが当たるよう緻密に計算。がんの位置が浅いところにあるなら低周波のX線を、身体の奥深くにあるなら高周波のX線というように、微調整しながら照射が行なわれます。

高周波のX線を照射する治療は、周囲にある正常な細胞まで傷つけてしまう可能性もあるため、高い技術が必要。がんの部位によって、照射回数や照射角度方向は変わります。

きちんとした設備を導入しているだけでなく、がん治療に精通した医師が在籍していることも重要です。

痛みや副作用について

照射中の痛みはほぼ感じません。治療機器や治療する部位、がんの進行具合によって照射時間は変わります。副作用は大きな個人差があるようです。

過去のデータでは、かゆみ、下痢や痛み、吐き気、食欲不振などの副作用が報告されていますが、最近ではそれらも減ってきているようです。ただし、治療法や機器によって放射線量の強さは違うので、事前に医師へ確認をとりましょう。

費用について

X線治療は、嬉しいことに保険適用となるケースが多いです。治療費は健康保険で負担してもらえる場合は、自己負担額が1割~3割になります。併せて高額療養費制度や医療費控除を活用すれば、自己負担額を抑えられますよ。

保険適用にならない場合でも、フォローや補償がしっかりしている場合が多いのが特徴です。

X線治療の詳細から見る「治療を受ける前に確認しておくポイント」は以下です。治療を検討している人は、ぜひ覚えておいてください。

  • 治療が難しい頭頚部腫瘍にも有効
  • 治療機器によって放射線量と照射方法、それに伴う副作用が異なる
  • 設備が整っているクリニックが良い
  • 医師の腕も大きく影響する
  • 保険適用になる可能性が高い

副作用の少ないX線治療機器

ステージ4のがんも対応可能!画期的なX線治療機器・トモセラピー

身体に負担をかけず、がん治療で高い効果を上げている新しい技術を取り入れた放射線治療機器です。

CT撮影後にそのまま放射線照射を行なえるので、的確な照射角度と線量で治療できるのが特徴。機器はCTのような形をしており、治療の際は台に仰向けになるだけでOKです。

はじめに、コンピューター技術で複雑ながんの形状を把握します。360度の中から最も少ない範囲で照射できる角度を算出し、X線の照射を開始。副作用はほとんど見られず、進行が進んでいるステージ4のがん患者でも受けられることがあるほど、身体への負担が少ない放射線機器です。

身体への負担が少ない「粒子線治療」で治療できなかったがんに対応できているケースもあります。

適応するがんの種類

脳腫瘍、頭頸部癌、食道癌、肺癌、悪性中皮腫、直腸癌、乳癌、肝臓癌、子宮頸癌、前立線癌、すい臓癌、悪性リンパ腫、転移性骨腫瘍、胃・小腸癌、大腸癌、泌尿器癌、卵巣癌など

そのほかX線治療機器

サイバーナイフ

ロボットアームを使って、様々な方向からX線を照射できる治療機器です。治療時の固定具はプラスチックマスクのみで、金属具で固定するガンマナイフよりも身体に負担をかけないのが特徴。ロボットアームには高精度の自動追尾システムが搭載されているため、臓器のわずかな動きにも対応しながら照射できます。

脊椎腫瘍や呼吸器付近のがん腫瘍にも照射可能。がん腫瘍をピンポイントで照射できるので、ほかの細胞へのダメージも比較的少ないですよ。

適応するがんの種類

聴神経腫瘍、髄膜腫、下垂体腫瘍、頭蓋咽頭癌、血管芽腫、転移性脳腫瘍、神経膠腫、上顎癌、咽頭癌、副鼻腔癌、眼窩腫瘍、口腔癌、舌癌、歯肉癌、前立腺癌、脊髄腫瘍など

VERO

X線の照射エネルギー量を自由自在に調整できるのが「VERO」。がんの形状を把握できる「IMRT」を搭載しており、大きさに合わせて線量をコントロール可能となっています。

がん腫瘍に対して多方面からX線を照射します。不必要な箇所に高周波のX線が当たることはないので、ほかの細胞へのダメージをごくわずかに抑えられるのがポイント。治療の平均時間は20分程度。治療後に入院する必要もありません。

切除が難しい部位のがん治療を可能にする機器です。

適応するがんの種類

頭頸癌、脊椎腫瘍、肺癌、肝臓癌、前立線癌など

エレクタシナジー

エレクタシナジーは、映像撮影機能を搭載した放射線治療機器です。放射線を照射する装置の先端に、CTが取りつけられています。

6つの軸から算出された情報をもとに、がん腫瘍の位置を映像として映し出すことが可能。照射する放射線は複数あるので、症状やがんの位置によって、適切な放射線を照射できます。

適応するがんの種類

脳腫瘍、頭頸部腫瘍、前立腺癌、肺癌、食道癌、乳癌、子宮頸癌、子宮体癌、直腸癌、悪性リンパ腫など