一般的に癌は初期に発見し治療すれば、早い段階で寛解し通常の生活に戻ることができますが、ほとんどの場合初期症状が見られないためにある程度進行してから発見され、長期にわたる治療を余儀なくされてしまいます。
治療後も再発の可能性があるうえ、抗がん剤による副作用などで思うように社会復帰できないと、収入は減ったのに支出ばかりが増える…といった経済的な問題を抱えてしまう人も少なくありません。
費用の問題で思うような治療が受けられない、あるいは費用の心配がストレスとなってさらに症状を悪化させるという悪循環に陥ることもあるため、がん治療に伴う経済的な不安やストレスはできる限り解消したいものです。そこでここでは、癌にかかる費用とそれを補助・支援する様々な制度についてご紹介していきます。
癌の有無を調べたり癌の治療方針を決めるために行われる検査の費用で、血液検査、CT、エコー、レントゲン、MRI、内視鏡、生検などが挙げられます。
初診や再診にかかる基本費用や投薬、注射など診察にかかる費用です。
外科療法により癌の病変部を切除することになった場合にかかる費用です。
癌細胞に放射線を照射して破壊する治療方法が選択された場合にかかる費用です。
抗がん剤を投与し癌の増殖を抑える治療法が必要となる場合にかかる費用です。
抗がん剤とは別に、治療のために調剤薬局などで薬を購入し服用しなければならない場合もあります。
入院にかかる費用です。基本料の他に食事代や個室を希望する場合には差額ベッド代なども含まれます。
癌治療の中には公的健康保険が適用されない自由診療や先進医療もあり、それらを選択する場合には基本的には全額を自己負担しなければなりません。例えば温熱療法や免疫療法、漢方などは自由診療、重粒子線治療や陽子線治療、また抗がん剤の中でも国がまだ承認していないものに関しては先進医療となります。
自由診療や先進医療、また入院時の食事代や差額ベッド代は自己負担ですが、それ以外で直接治療に関係する費用は保険が適用されるため、3割負担となります。とは言え、例えば手術費用で数10万~100万円、放射線治療や化学療法も同程度の費用がかかるため、それだけでも3割負担で100万円はかかってしまうと考えられます。加えて先進医療を受けるとすれば、治療費だけで1,000万円は軽く超える金額になってしまうでしょう。
通院のために必要となる移動手段にかかる費用です。
前述の食事代や差額ベッド代の他にも、寝衣代や日用品、雑誌などの娯楽品にかかる費用があります。
がん保険などに加入している場合、保険金を請求するためには医師による診断書や証明書が必要になります。診断書作成にかかる費用は各病院によって異なります。
抗がん剤による副作用として髪が抜けてしまう場合、医療用ウィッグを購入する必要があるかもしれません。
治療に直接かかる費用と比べれば1つひとつは大金ではありませんが、長期戦を余儀なくされるがん治療においてはこれら細かい費用が積もり積もって意外な出費となり得ます。
まず基本となる治療費が非常に高額であるため、がん治療においては治療費支援制度を利用できる可能性があります。主に次のような支援制度があるので、これらを利用すれば実際にはどの程度自己負担になるのか計算してみてください。
公的医療保険の保障の1つで、1ヶ月あたりの医療費の自己負担が一定金額(自己負担限度額)を超えた場合に、その超過分は保険がカバーするという制度です。
自己負担限度額は、年齢や年収によって異なります。参考までに、以下に70歳未満の場合の医療費自己負担限度額の目安をご紹介します。
年収約1,160万円~ | 252,600円+(医療費-842,000)×1% |
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年収約約770~約1,160万円 | 8万100円+(医療費-267,000)×1% |
年収~約370万円 | 57,600円 |
住民税非課税者 | 35,400円 |
例えば70歳未満で年収が370~770万円に分類される世帯の場合、どれだけ円医療費がかかろうと、月に8万100円+αまで
しか自己負担の必要はなく、残りはすべて保険から支払われるわけです。
高額療養費制度にも一定のルールが定められており、そのルールに則った適用となります。まず大前提として、公的医療保険の保障の1つですから、当然公的医療保険がカバーする医療分野にのみ適用されます。つまり、保険診療内の治療費にのみ適用されるということ。従って自由診療や先進医療を受けて高額を支払ったとしても、高額療養費制度は適用されません。また費用の算出は月初めから終わりまでの1ヶ月毎となるため、医療費が2ヶ月以上にまたがる場合には適用されないことがあります。
他の注意点として、医療機関ごとに別々に計算されること、また同じ医療機関でも入院と外来は別計算、医科と歯科も別計算となることも覚えておきましょう。
例えば、70歳未満・年収370~770万円世帯の誰かが1ヶ月の間にA病院で5万円、B病院で5万円を自己負担した場合、合計金額は10万円です。しかし、それぞれの病院で負担した額は8万100円に満たないため、高額療養費制度を利用することができません。同じように1つの病院で1ヶ月の間に外来診療として5万円、入院で10万円を負担した場合に高額療養費制度が適用されるのは10万円の入院費用に対してのみ、ということになります。
また高額療養費を受け取る権利は、診療を受けた月の翌月から2年後に消滅します。つまり時効があるため、2年以上前の医療費に関しては適用されません。
高額療養費制度には、さらに自己負担額を軽減できる制度が設けられています。
1年以内に3回以上高度療養費制度を利用した場合に、4回目以降はさらに自己負担限度額が引き下げられます。例えば先ほどの例で言うと、70歳未満・年収370~770万円の世帯が高額療養費制度を4回以上利用する場合、その自己負担限度額は8万100円+αから4万4,400円まで、ほぼ半額引き下げられることになります。
ただし、加入している公的医療保険が変わった場合(例:社会保険→国民健康保険)には、1年以内であっても別個と見なされため、通算することはできません。
個人の医療費が自己負担限度額を超えていなくても、同じ世帯にいる家族の誰かが別件で医療費を支払っている場合、合算することで限度額を超えるのであれば、高額療養費制度が適用されその超過分が払い戻されます。ただし、同じ世帯でも別々の公的医療保険に入っている場合には適用されません。
1年間の間に公的医療保険と介護保険の両方を利用した場合に、その負担額を合算し自己負担限度額を超えた場合にその超過分が払い戻されます。
高額な治療を長期にわたって受ける必要のある病気にかかっている場合に、自己負担限度額が引き下げられます。現在この高額長期疾病の特例の対象となるのは、血友病・慢性腎不全・HIV(抗ウィルス剤の投与を受けている場合)の3つで、自己負担限度額は1万円となります。
高額療養費制度を利用すれば超過分は後で払い戻されるわけですが、場合によってはその払い戻しを待つのも厳しい、つまり高額医療費を一時的に立て替えるのも難しいということもあるでしょう。そのような場合に利用できるのが、「高額療養費貸付制度」と「高額療養費受領委任払い制度」の2つです。
「高額療養費貸付制度」とは、払い戻しまでの間、その払い戻し金額の8割を無利子で貸してもらえるというシステム。8割分だけ早くもらえる、と言い換えても良いかもしれません。
一方「高額療養費受領委任払い制度」は、自己負担限度額を超えた金額、つまり払い戻されるはずの金額を、最初から保険者が医療機関へ直接支払うシステムです。このため患者自身が医療機関の窓口で支払う金額は、自己負担限度額内に留まることになります。
1年間で支払った医療費の合計が一定金額を超える場合、その医療費から算出される金額は所得控除になるという制度です。つまりその金額は課税所得に含まれないため、支払うべき所得税が安くなるということ。サラリーマンのように最初から税金分を差し引かれた金額を給料として受け取っている人であれば、医療費控除分は還付金という形で払い戻されます。
医療費控除を利用すれば税金が幾ら免除されるのか、あるいは還付金として払い戻されるのかは、「医療費控除額×所得税率」で計算することができます。そのため、まずは「医療費控除額」を計算してみましょう。
その計算方法は、その年の総所得金額が200万円以上の場合で、
総所得が200万円未満の場合で、
となります。
次に所得税率を計算してみます。その計算方法は、
こうして算出された2つの数字「医療費控除額と」「所得税率」をかけたものが免除額となり、払い戻されるわけです。
医療費控除も、その年に支払ったすべての「医療費」が対象になるわけではありません。
高額療養費制度の対象となるものと比べると、通院費や入院時の食事代・差額ベッド代、また保険診療適用外の治療や薬であっても控除の対象となることが分かりますね。
医療控除の申請手続きは、確定申告を行う2月16日~3月15日までに確定申告と同時に行うと良いですが、払戻金を請求する「還付申告」の場合は、医療費のかかった年の翌年1月1日から5年以内であればいつでも申告可能です。
つまり、これまで過去5年間で医療費控除を受ける権利があったのに申請していなかった場合であれば、今申請しても還付金を受け取ることができるということです。とは言え、申請のためには医療費の支払いを証明する領収書やレシートなどが必要となるため、それらを紛失したせいで申請できなくなる可能性を考えれば、やはり早めに申請しておいた方が良いでしょう。
なお、領収書やレシートそのものを申請時に提出する必要はありませんが、申請から5年間は「証拠」として提示を求められる場合もあるため、きちんと保管しておくことをおすすめします。
その他、「医療費控除の明細書」「源泉徴収票」「確定申告書A」を揃えて必要事項を記入し、税務署に提出します。この際マイナンバーを提示することが求められるため、マイナンバーカードあるいはマイナンバー通知カードと免許証などの身分証も忘れず持参しましょう。なお、郵送による申告も可能ですが、その際には本人確認書類のコピーも添付する必要があります。
18歳未満の児童が小児がんなどの慢性特定疾患にかかっている場合、その医療費の自己負担額の一部が助成される制度です。「慢性特定疾患」は基本的に命を長期に脅かすこと、その症状や治療が長期にわたって生活の質を低下させること、また長期にわたって高額な医療費が必要とされること、これら3つの条件をすべて満たしていると厚生労働大臣が認める疾患のことで、癌の他には慢性心疾患や糖尿病なども含まれます。
なお、18歳未満の児童がこれらの疾患を発症し、18歳になった後も引き続き治療が必要であると認められる場合には、20歳未満まで助成期間が引き延ばされます。
小児慢性疾患医療費助成制度も、生計中心者、つまり保護者の所得に応じて1ヶ月あたりの自己負担限度額を定め、それを超過した金額は免除されるというシステムの医療費助成制度です。
癌にかかった場合、その治療費が高額なだけでなく退職や解雇などにより収入が激減することでも経済的な問題を抱えることになります。そのため、がん治療中や治療後の生活を支援する公的制度が設けられています。
病気や怪我のために働けなくなった患者とその家族の生活をサポートすることを目的とした、公的医療保険が設けている制度の1つです。以下の4つの条件すべてを満たしている場合に、所定の手続きを行うことで公的医療保険から手当金を受け取ることができます。
疾病手当金1日辺りの金額は、支給開始日以前の過去12ヶ月の標準報酬月額を基に、それを30日で割った金額の3分の2となります。つまり計算式にすると、
この「標準報酬月額」は1ヶ月当たりの給料の水準を一定の金額の幅に当てはめたものなのですが、複雑なため、おおまかに「過去12ヶ月の給料平均」と考えて良いでしょう。
この疾病手当金は、支給開始日から1年6ヶ月を限度に、医師が労務不能と認めた期間受け取ることができます。この支給期間中にストップやリセットは存在せず、例え期間中に仕事ができるようになり給与が発生したとしても変わらず支給されます。逆に認められた支給期間を過ぎても仕事に就くことができないとしても、期間が延長されることはありません。
病気や怪我などにより生活に支障が出るほどの障害を抱えた場合に受け取ることができる年金で、国民年金から支払われる「障害基礎年金」と厚生年金から支払われる「障害厚生年金」の2種類があります。それぞれに、原因となった病気の診察を初めて受けた日に国民年金あるいは厚生年金に加入していた人に支払われます。
両者とも、障害のレベルに応じて、障害基礎年金の場合は1級と2級、障害厚生年金の場合は1級~3級に分けられます。1級は日常生活に介助が必要な状態、2級は食事や洗濯など簡単なことはできるものの日常生活に困難がともない就労は難しい状態、3級は職種によっては仕事も可能ではあるものの、著しい制限がある状態です。つまり3級の条件から考えれば、障害厚生年金の場合、仕事をしていても障害年金の対象になる可能性があるということです。
障害基礎年金は基本一律、障害厚生年金は厚生年金に加入していた月数や給与顎によって変動します。
「子の加算」とは18歳未満の子供がいる場合に加算される金額で、第1子・第2子は1人あたり22万4,500円、第3子は1人あたり7万4,800円となります。
さらに1級・2級の場合には障害基礎年金も加算されます。
もしかすると、雇用保険というよりも失業保険といったほうがピンとくる人は多いかもしれません。まさにその失業保険が雇用保険のことです(昭和49年に失業保険法から雇用保険法に改正されました)。
雇用保険では、働く意思と能力があるのに仕事が見つからない状態を失業と見なします。そして、加入期間など一定の条件を満たせば給付を受けることができるのです。
受給期間は原則として1年間で、受けられる日数は離職理由や加入期間などによって変わってきます。
雇用保険の給付を受けるうえで注意しなければならないのは、受給期間を過ぎてしまうと日数が残っていても給付が打ち切られてしまうことです。給付のためには「働く意思と能力」があることが大前提ですから、闘病中ですぐには働けないという場合は失業と見なされない場合があるのです。
そうならないように、治療などの理由で継続して30日以上働けない場合は、事前申請を行なって受給期間を延長しておくべきです。3年間まで延長できるので、当初の1年と合わせて最大4年間は受給資格を持つことができます。
雇用保険は、公的医療保険の傷病手当金と同時に給付を受けることはできません。
ただし、傷病手当金の受給期間は最大1年6カ月ですので、前項でお伝えしたように受給期間を延長する申請をしておけば、時期をずらして両方とも受給することができます。
癌が進行して身体に出現した著しい障害が続くと判断された場合は、身体障害者手帳の交付を申請することができます。身体障害は、その症状によって大きく以下のとおり分類されます。
身体障害者手帳を持っていれば各種福祉サービスや経済的支援を受けることができるので、治療を続けていく上で役に立つと思われます。
癌患者さんの場合は、癌だと診断されてから6カ月以降において何らかの障害が継続するとされれば対象となります。具体的には以下のような場合です。
これらは一例です。また、障害の重さの程度によって、身体障害者手帳は1級から6級まで等級が決められています。
身体障害者手帳を持っていれば、人工肛門や人工膀胱の装具や身体の補装具などの購入費用が軽減されます。また、日常生活用具の給付、各種税金の控除や減免、JR運賃の割引などを受けることもできます。これらは身体障害者手帳の等級によって変わります。
身体障害者手帳を持っていれば自立支援医療制度の対象となり、障害の軽減を目的とした手術を受ける場合の治療が軽減されます。あくまでも身体障害者手帳に認定された障害に対する手術が対象です。
また、身体障害者手帳の中でも1級、2級の重度障害であれば、すべての保険適応治療に自治体から助成を受けることができます。ただし、所得制限があります。
生活保護は、生活が困窮している人に対して最低限の生活を保障し、その人の自立を支援する制度です。原則として、世帯全員のすべての資産を活用し、年金や各種給付金、手当などあらゆる制度を利用したとしても収入が最低生活費に満たない場合に適用されます。
癌患者さんが生活保護を申請する場合は、治療の内容や今後の見通し、仕事の内容などが認定の可否に大きく関わります。治療は根治を目的としたものなのか、治療期間はどのくらいか、治療によって身体にどのような変化が想定されるのか、そういった点を主治医に確認しておく必要があります。
生活保護の申請にあたっては、持ち家も自家用車も資産とみなされます。したがって、通常は売却しなければなりません。
ですが、持ち家の場合は自治体の実地調査の結果次第では、築年数や交通の利便性などから資産価値なしと判断される場合もあります。そうであれば持ち家を売却する必要はなく、住み続けながら生活保護を受給して治療費などを補うことが可能です。
また、自家用車も仕事に復帰するために不可欠であると判断されれば、売却することなく生活保護を受給できます。
生活保護は、所持金が最低生活費の半月分を切ると申請することができます。しかし、約6カ月以内に所持金が底をつくことが見込まれる場合はそのタイミングで申請の相談を始められます。
申請の時期を逃すとそれだけ受給開始も遅くなってしまいます。したがって、治療費の見込みや所持金残高などの状況を自治体の担当者や医療機関の相談員らと共有し、申請の時期を検討しておいたほうがよいでしょう。
介護保険制度は平成12年4月から始まった公的保険で、わが国の少子高齢化の現状を踏まえて社会全体で介護を支えることを目的としています。
通常は65歳以上で要介護状態になった場合に介護保険のサービスを利用できます。しかし、40歳以上で末期癌と診断された場合にも利用できることはあまり知られていないようです。
介護保険のサービスを利用するためには、事前に市区町村の要介護認定を受けなければなりません。役所の介護保険担当窓口に申請し、医師の診断書と身体状態の審査を受けて介護度が判定されることになります。手続きは家族でも可能で、認定されるまで1カ月程度の時間を要します。
介護度の段階に応じて受けられるサービス内容が変わりますが、いくつか例を挙げてみましょう。
介護保険のサービスを利用すれば、自宅療養におけるQOL(Quality of Life:生活の質)が上がることが期待できます。
問題なく日常生活を送っているように見えても、癌患者さんの場合は急速に病状が進行することが少なくありません。ただ、介護保険の認定を受けていれば、家の中での移動や入浴などに介助が必要になったときも必要なサービスを受けられます。早めに申請して認定を受けておけばいざという場合に安心です。
とくに介護は初めてという家族にとっては頼れるサービスだといえるでしょう。
癌患者さんを介護するために仕事を休む必要がある場合には、介護休業や介護休暇といった制度を利用することができます。このほか、家族が得られる経済的支援として介護休業給付金制度があります。
介護休業給付金は、雇用保険に加入している人が一定の条件を満たしていれば、家族を介護するために介護休業を取得した場合に支給される制度です。
ただし、職場復帰を前提とすること、支給前2年の間に賃金が支払われる日数が11日以上ある月が1年以上あることなどが必要となります。
介護休業給付金制度の対象となる家族は以下のとおりです。
また、対象家族が要介護状態にあることが前提です。具体的には、歩行や排泄、食事などの日常生活に対して2週間以上にわたって常時介護が必要な状態とされています。
同一の介護対象家族について介護休業給付金を受けたことがあっても、要介護状態が変わって再び取得した介護休業であれば給付の対象となります。
ただし、初回と合わせた給付の通算日数は93日が限度です。
介護休業給付金の支給額の計算方法は以下のとおりです。
※介護休業期間中の1カ月ごとに8割以上の賃金が支払われている場合は給付金の対象にはなりません。また、支給額には上限が設定されています。
抗がん剤の代表的な副作用である脱毛。外見の変化に悩むがん患者さんを支えるため、兵庫県では医療用ウィッグ購入への補助を開始しています。
とくにAYA世代と呼ばれる若年層や働き盛りの女性は、外見が変化することで精神的にもダメージを受けてしまいます。そうしたがん患者さんに経済的な支援を行なうことで、生活の質の向上を図ろうとするものです。
兵庫県によると、こうした補助は近畿地方において初の取り組みとのこと。
がんを発症する患者さんは県内で年間約4万5千人にのぼりますが、生存率は上昇傾向にあります。その一方で、抗がん剤の副作用で髪が抜け落ちてしまう・手術で乳房を切除するという経験をされた患者さんは、周囲の視線がどうしても気になります。
医療用ウィッグや人工乳房は10万円以上かかることもありますが、それを自費で購入する患者さんも多くいらっしゃいます。
そこで兵庫県は患者さんの経済的・精神的な負担を軽減するため補助制度の導入をスタートしました。ウィッグだけではなく人工乳房なども補助の対象です。
この制度を利用できるのは、前年の所得が400万円未満のがん患者さんで、購入額の半額を上限に補助を受けられます。
ここまでは主に公的な生活補助制度についてお伝えしてきましたが、それだけでは賄いきれない部分もきっとあるでしょう。そこで役立つのが民間のサービス、医療保険やがん保険がその代表です。
医療保険は病気や怪我の種類を問わず、幅広く対応してくれる保険です。がん保険はがんに特化した保障内容ですが、医療保険は病気や怪我全般に対する治療や療養費用を保障するものです。もちろん、そこにはがんも含まれます。
主な保障内容は入院給付金や手術給付金、先進医療特約などです。病気や怪我による入院や手術への備えとしてはもっとも一般的な保険です。
しかし、がんにかかってしまった場合の備えだと考えると、医療保険だけでは少し物足りないかもしれません。
がん保険はがんに特化した保障内容の保険です。仕組みそのものは医療保険と大差ありませんが、保険商品としては独立したものとして扱われることが多く、がんの診断・治療を受けた場合にはもっとも手厚い保障を受けられます。万一の場合の強い味方になるでしょう。
主な保障内容はがん診断給付金やがん手術給付金、がん入院給付金、がん通院給付金、そしてがん先進医療特約などが挙げられます。医療保険と違い、がん以外の病気や怪我に対する保障は一切ないのが普通です。
癌だと診断された時点で、治療を受ける前でも受け取ることができる一時金です。
がん保険のもっとも大きなメリットとされるのががん診断給付金で、がんだと診断された時点でまとまったお金を受け取れる保障です。治療が始まっていない段階で給付され、使用用途も決められていないので、治療費に限らず生活費や交通費にあてることができるため重宝できるでしょう。
癌の三大治療(標準治療)とされている手術、放射線治療、抗がん剤治療を受けた場合に受け取ることができる給付金です。
保険内容によって対象となる治療や給付を受けられる金額・回数などが変わるので注意が必要です。
癌の治療のために入院した場合に、入院日数に応じて給付金を受け取ることができます。
また、近年のがん治療は通院でも可能なケースが多くなってきました。がん保険では通院給付金を手厚く設定している商品も増えているので、治療中の経済的な問題にも対応できるようになっています。
癌患者やその家族を支援する公的制度はいくつかありますが、自分の場合はどの制度をどのように活用できるのか分からない、判断がつかないということもあるでしょう。
全国の各地域にある「がん診療連携拠点病院」内に設置されている「がん相談支援センター」は、そのような場合にサポートしてくれる機関です。癌や治療に関する相談はもちろん、治療費や生活費の心配に関しても専門相談員がしっかり対応してくれます。誰でも無料で利用でき、面談の他に電話やメールなどの方法もあり、匿名でも受け付けてもらえますよ。