食道癌は進行が早く、転移しやすい癌と言われています。このページでは食道癌の転移する場合の特徴や治療方法などをまとめました。
食道はリンパ節が発達しているので、発病して早い段階からリンパ節へ転移する確率が高い臓器です。食道の周囲には、重要な臓器が多く、がんが大きくなると近くにある重要な臓器に浸潤する可能性が高くなります。近くにあるリンパ節から、肝臓、肺などの臓器や骨への転移も多く、転移した場所によって危険度が違うのでがんの早期発見が大事になってきます。
食道がんは発病初期の自覚症状がほとんどなく、人間ドックや健康診断で早期発見される確率は約20%と言われています。早期発見できれば内視鏡手術で切除することもできますが、進行が早くステージが進んでしまうと内視鏡手術での切除が困難になってしまいます。病気が進むと食べ物を飲み込んだ時、のど元に違和感があったり背中や胸の奥にチクチクとした痛みを感じたりすることも。
飲酒すると顔が赤くなる体質の人が毎日お酒を飲み続けたり、喫煙、欧米化した食生活を続けたりすると食道がんのリスクが高くなることも分かっていて、女性に比べ男性の方が食道がんにかかりやすく、その数5倍以上といわれています。
食道がんの治療方法は、病気の進行状況によって異なります。内視鏡治療、外科手術、放射線治療、化学療法の4つの治療法があり、さらに2020年代以降は免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)も進行例における治療選択肢として加わっています。ステージ0~1の極めて初期の段階であれば、身体的ダメージが少ない内視鏡治療での適応が可能です。ステージが進むと内視鏡治療が行えず、外科手術・放射線治療・化学療法を組み合わせて治療を行っていくことになります。
現在、食道がんのもっとも一般的な治療法は外科手術となっており、手術の際にはがんを含め食道、リンパ節を含む周囲の組織まで切除。また、食道のどこに発生したのかにより手術法も異なり、様々な検査や深達度などの検査を経てどの手術にするのかを決定します。進行してしまい手術ができないがんに対しては、放射線治療や化学療法でがんを小さくしてから手術を行うこともあります。
重要な臓器が近くにたくさんある食道は、他の臓器に比べ早い段階で転移する可能性が高いがんです。そのため、早期での発見がとても重要。むせるような咳が続いたり、血の混じったような痰などの症状がでたりした後では手遅れになる可能性があります。そうならないためにも早期発見が重要です。少しでも不安に思う症状がでたら専門の医療機関に相談しましょう。
| 病気 | 説明 |
|---|---|
| 0期 | がん細胞が粘膜までにとどまり、リンパ節への転移が見られない場合 |
| Ⅰ期 | がん細胞が粘膜下層までにとどまり、リンパ節への転移が見られない場合 |
| Ⅱ期 | がん細胞が固有筋層までにとどまる、または外膜までに広がり、1~2群リンパ節への転移がある場合に総合的に判断 |
| Ⅲ期 | がん細胞が食道周囲組織に広がっているが切除でき、1~3群リンパ節への転移がある場合に総合的に判断 |
| Ⅳa期 | 食道周囲組織に広がり、かつ4群リンパ節への転移がある場合 |
| Ⅳb期 | がん細胞の浸潤具合にかかわらず、遠隔臓器にまで転移が及んでいる場合 |
食道がんにおけるステージ分類は、「T」で表されるがんの浸潤具合と「N」で表されるリンパ節への転移の有無とその広がり方、「M」で表される肺や肝臓などの遠隔臓器への転移の3つの要素によって決められています。
がんの浸潤具合を表す「T」では、がん細胞が粘膜にとどまっていれば「T0」もしくは「T1a」、粘膜下層でとどまっていれば「T1b」、固有筋層まででとどまっていれば「T2」、外膜まで広がっていれば「T3」、食道周囲範囲に広がっているが切除することができるものは「T4a」、切除できないものは「T4b」です。
次に転移の有無を表す「N」では、リンパ節への転移がない場合を「N0」、1群リンパ節への転移がある場合が「N1」、2群リンパ節への転移がある場合「N2」といった具合に増えていき、「N4」まであります。
最後の遠隔臓器への転移を表す「M」は、転移があるかないかの2択で、遠隔転移が認められる場合は、「M1」となります。
ステージ0期、I期における食道がんの治療方針は、内視鏡検査やCT検査、PET検査などを行い、深達度診断、転移診断を行って決定されますが、中でも重要視されるのが、内視鏡検査による壁深達度評価です。どこまで浸潤しているかということで治療方法が判断され、「T1a」がんでは内視鏡的切除が、「T1b」がんでは手術や化学放射線療法がメインとなります。
ステージⅡ期、Ⅲ期では、治療前に全身の状態を検査し、手術できる状態であれば、手術治療が第一選択の治療法となります。また、2024年に国立がん研究センターなどによって発表された臨床試験結果により、術前に「DCF療法(ドセタキセル+シスプラチン+5-FUの3剤併用化学療法)」を行い、手術の成功率向上や予後改善を図るアプローチも標準治療に加わりつつあります。
手術が不可能である場合や患者が手術を希望しない場合は、化学放射線療法や放射線治療、化学療法の単独治療を行うのが一般的です。
ステージIV期食道がんでは、Ⅳa期では化学放射線療法が、またⅣb期では化学療法が標準治療とされています。ただし、患者のパフォーマンスステータス(PS)が不良な場合は、緩和的対症療法が中心です。
食道癌は初期の自覚症状が乏しく患者自身が気づきにくいからこそ、日常的な癌予防へ取り組むだけでなく、適切なスクリーニング検査によって早期発見に努めることが治療の品質向上や転移・再発のリスク低下にもつながります。
食道癌や転移癌の予防を考える上で、まず食道癌の発生リスクを抑える取り組みと、その他の臓器に発生した癌からの転移リスクを抑える取り組みと、分けて考えることも大切です。
食道癌の原因としては主に喫煙と飲酒が挙げられており、特に扁平上皮癌と喫煙・飲酒は高い相関性があると認められています。また熱いものを飲食することで食道の粘膜へダメージを与えて癌の発生リスクを上げることも懸念されます。
それに対してその他の癌についても生活習慣や感染症による発生リスクの増大が考えられるため、基本的には生活習慣の改善や感染症予防などに努めることが大切です。また、喫煙や飲酒といった行動やまさしく生活習慣や食生活の一部であり、禁煙したり節酒・断酒したりといった取り組みは、食道癌の発生や転移に対するリスク低減に繋げられるでしょう。
スクリーニング検査とはすでに食道癌として診断されたり、転移癌・再発癌の疑いが認められたりしている患者に対して行われる検査でなく、現時点で癌の存在や新しい転移・再発が認められていない人に対して、癌の早期発見や転移癌・再発癌の発見などを目指して行われる検査です。
そもそも初期段階の自覚症状がほとんどないとされる食道癌だからこそ、多角的なスクリーニング検査によって癌の状態がそこまで進行していない時点で発見や対策を追求が大切です。
食道癌のスクリーニング検査としては内視鏡を使った検査や様々な画像診断、あるいは血液検査・腫瘍マーカー検査など複数の方法が考えられます。
上部消化管内視鏡検査とは一般的に「胃カメラ検査」とも呼ばれる検査です。検査を受ける患者の鼻や口から内視鏡スコープを挿入して、食道の様子を直接にカメラで撮影してその状態を医師がリアルタイムでモニタリングします。
上部消化管内視鏡検査(胃カメラ検査)では、食道の粘膜における色の変化や細胞の異常などをチェックし、何かしらの異常や癌の疑いが認められた場合にはその部分の組織を採取。改めて顕微鏡下で癌細胞か否かを診断する病理検査が実施されます。
上部消化管内視鏡検査は食道癌のスクリーニング検査として一般的なものであり、また直接に食道の状態を医師が目で見て診察できる点が強みです。
上部消化管造影検査は「バリウム食道透視検査」とも呼ばれ、バリウムを飲ませた患者にX線を照射して、食道の様子を外からモニタリングする検査となります。
そもそも食道はX線を透過してしまうため、そのままで画像として視覚化することはできません。しかしX線を透過しないバリウムを飲むことでその部分のX線撮影が可能となり、食道を降りていくバリウムの様子から、食道の閉塞や異常などをチェックすることができるようになります。
患者の体表に超音波を発生する器具を当てて、体内に反響させた超音波を専用装置で画像として視覚化することにより、食道の様子などを観察する検査です。超音波検査では検査機を頸部や腹部に当てることで、食道癌からの頸部リンパ節への転移や腹部リンパ節への転移などを調べられます。
患者に空気を抜いてしぼんだ状態のバルーン(風船)を飲み込んでもらい、食道の中でバルーンを膨らませて食道の粘膜に接触させてから引き出すことで、バルーンの表面に食道粘膜の細胞を付着させて採取する検査方法です。
バルーンの表面に付着した細胞は改めて病理検査に回して、細胞の形状や状態を顕微鏡下で観察して癌細胞であるかどうかを診断します。
CT検査はX線を使って患者の体内を画像診断する検査やそのシステムであり、従来のレントゲン検査と異なり、患者の体を様々な方向(360度)から撮影することで立体的な画像データを得られることが特徴です。
なおバリウム食道透視検査の項目で述べたように、そもそも食道はX線を透過するため、通常であればCT検査であってもX線だけで食道の異常や癌の発生・転移などを正確に診断することは困難となります。そのため患者の静脈から造影剤と呼ばれる薬剤を注射して、CT検査によって視覚化しやすい状態を整えてから画像診断をするのが一般的です。
CT検査は食道癌を含めて様々な癌や病気の検査に用いられる手法ですが、上記の理由から造影剤に対してアレルギー反応を起こすような患者については実施が難しくなることもあるでしょう。またX線による放射線被曝の影響も考慮しなければなりません。
MRI検査も画像診断の1種ですが、CT検査と異なり、MRI検査では放射線(X線)でなく磁気を用いて画像データを作成することが特徴です。
MRI検査ではます強力な磁気・磁場を発生させて、患者の体内に磁気を当てることで水素原子と反応させて、それによって生じた電磁波を画像化して撮影データとして取得するという工程をたどります。MRI検査はCT検査と同様に患者の体内を立体的に撮影できるため、食道や各臓器を多方向から観察することが可能です。またMRI検査は放射線を使わないため被曝ダメージのリスクを心配しなくて良いことも重要です。
反面、強力な磁気の影響を受けるため、体内に磁石と反応する物質や物体が存在するような患者にはMRI検査を行えないこともあります。
蛍光とは、特定の物質(蛍光物質)へ光エネルギーを照射した際に対象物質から放出される光であり、その光の波長や特性を調べることで色々な物質の情報を取得することが可能です。
またラマン分光法とは物質へ光を照射した時に物質から放出される、わずかに波長のずれた光(ラマン散乱光)を対象として分析を行う手法です。ラマン分光法では対象物質の分子構造などを調べられることがポイントになります。
食道癌などの癌病変を調べる技術として、食道癌に吹き付けることで蛍光を発生させる試薬を使った蛍光分光法や、ラマン分光法を活用したリアルタイムのスクリーニング検査が研究されています。
参照元:昭和大学|昭和大学などの研究グループが、ラマン分光法を応用した消化管(食道、胃)生組織のがん病変の迅速評価技術を開発 -- 生体のリアルタイム診断実現に向け前進
PET検査とは、ブドウ糖に似た性質の物質と放射性物質を含有する薬剤を患者へ投与して、血液中の薬剤の流れを放射線によって追跡することで、癌の存在や位置を診断する画像診断の1種です。
癌細胞は通常の細胞よりも多くのエネルギーを消費するため、必然的に癌組織では血管が多く作られて血液や血中の糖分も集中しやすくなる特性があります。そのためPET検査によってブドウ糖が大量に消費されている部分を発見することで、癌の発生や転移の可能性を見つけられるのです。
腫瘍マーカーとは癌細胞や腫瘍によって特異的に生産される様々な物質を指しており、それらが血中に存在するかどうか、またそれらの血中濃度を調べることで、癌や腫瘍の存在を検討することが可能となります。
食道癌の腫瘍マーカー検査としては、まず扁平上皮癌において「SCC(扁平上皮がん関連抗原)」と「CEA(がん胎児性抗原)」というタンパク質が利用され、腺癌ではCEAが腫瘍マーカーとして利用されます。
参照元:国立研究開発法人国立がん研究センター|食道がんの検査・診断について
食道癌は一般的に初期症状や自覚症状が少ない癌と言われており、だからこそ癌検診などによって発見された時点では癌が進行しているといったケースも少なくありません。そのため食道癌の早期発見・早期治療を目指すためには、日常的に癌へ対する意識を高め、自分自身でも食道癌を含めた体の変化や違和感をチェックしていく習慣が大切です。
通常、食道癌のセルフチェックとしては食事の際の喉の違和感や発声時の違和感、あるいは体重減少や上半身の痛みといった状態に意識を向けることとなります。
食道癌のセルフチェックや自覚症状の自己確認として、まずは以下のようなポイントを考えてみましょう。
上述したように食道癌は早期の段階で明確な初期症状や自覚症状の少ない癌であり、例えば上記のチェックリストに該当するものがなかったとしても、食道癌のリスクがゼロになるというものではありません。
また仮にいくつか当てはまる項目があったとしても、それが直ちに食道癌の存在を示す証拠にもなりません。
セルフチェックで重要なポイントは、日常的に自身の体の違和感や変化に意識を向けて、気になることがあれば医師へ相談して適切な検査や診察を受けるきっかけにすることと言えるでしょう。
食道癌のリスク因子として飲酒や喫煙といった生活習慣に由来するものが知られていますが、一方で癌には家系や遺伝などによる影響でリスクが高まるものもあります。
癌の遺伝子検査では、患者由来の遺伝子をチェックして、癌の発生リスクに関与する遺伝子の状態(変異の有無)を調べたり、また体質的にどのようなタイプの食道癌を発症しやすいのかを、遺伝子型から検証することが目的です。
癌の遺伝子検査(がん遺伝子検査)とは、患者や被検査者の細胞の中にある遺伝子を科学的に分析して、それぞれの人がどのような遺伝子の型を有しているのか診断する検査です。
癌の発生や増殖に関するメカニズムとして、遺伝子による作用や関与が研究されており、すでに一部の癌や癌のタイプにおいて、その発生リスクと遺伝子の変異型との関連性などを認める報告もされています。つまり個人の遺伝子を確認することで、その人が将来的にどのような癌になりやすいのか先天的・体質的なリスクを検証したり、またすでに癌を発症している患者においてどのようなタイプの癌が存在しているのか予測したりする助けになります。
特定の遺伝子の変異型が一部の癌の発生リスクや転移リスクに関与することが知られています。そのため、食道癌のリスク因子として癌遺伝子の有無を調べることにより、患者の癌の特定や種類の検討に役立てられます。
食道癌といっても実際には細かな分類が存在するように、遺伝子変異のパターンや遺伝子型の組み合わせによって癌の性質や患者の体質に個性が存在することも事実です。つまり、患者それぞれにとって適切な治療薬や治療法を検討する上で、患者の癌の遺伝子型や患者自身の遺伝的体質などをあらかじめ知っておくことは重要なヒントになります。
遺伝子の変異型の組み合わせによっては、従来の治療法で効果を期待できなかったり、他のより有効性を期待できる治療薬へ変更したりすることもできるため、遺伝子検査はスクリーニングとしてだけでなく現在治療中の患者にとっても価値があります。
治療薬の有用性や効果が患者の体質や遺伝子変異のパターンによって影響されるように、治療薬の副作用についても患者の体質や先天的特性に影響されることが知られています。
例えば食道癌や胃癌の治療薬として使用される細胞障害性抗がん薬「イリノテカン」に関しては、体質によって副作用の重篤性や危険性が変わるとされており、そのような副作用のリスクを検証するために遺伝子検査を実施することもあります。
細胞障害性抗がん薬の一つであるイリノテカンを使う前に血液検査を行い、体質によって重い副作用が出る可能性がないか遺伝子検査で調べます。検査の結果によって、副作用が出やすい人は、薬の量を調節して治療を行うことがあります。
引用元:国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス|がん医療における遺伝子検査 もっと詳しく
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/genomic_medicine/gentest02.html
まず遺伝子検査には標準治療の一環として保険診療で受けられるものと、保険適用されず自費によって受けなければならないものに大別されます。また自費診療としての遺伝子検査はクリニックや検査の実施者によってメニューが異なることもあり、どのような結果が出たとしても改めて主治医に相談し、治療や予防に活かすことが大切です。
加えて遺伝子検査は生来の体質にもとづいた癌リスクや癌の家系的な傾向を調べられるものですが、同時に遺伝子検査の結果が常に癌の発生を予言したり、癌の性質を確定したりするものではありません。
そのため、仮に遺伝子検査で癌のリスクが想定されたとしても、それによって過度に不安を抱くのではなく、むしろ改めて早期発見・早期治療を心がけながら健康な生活を守れるように日常習慣のヒントとして活用していきましょう。
保険診療で癌の遺伝子検査を受ける場合、がんゲノム中核拠点病院やがんゲノム医療拠点病院だけでなく全国の病院でも受けることが可能です。
食道癌は癌のステージや転移・再発といった原因などによって治療法が変わりますが、たとえ食道癌の治療が叶って無事に社会復帰できたとしても、治療の内容によってはその後の生活やQOLへ大きな影響を及ぼす可能性は少なくありません。
例えば食道癌の外科治療として食道の一部などを切除した場合、その後の食事や食生活にネガティブな影響を及ぼす可能性があります。
人間にとって食欲は三大欲求の1つとも言われる重要なものであり、食生活の悪化や食事を楽しみにくくなるといったことはその後の人生に長くマイナス影響を与えてしまい、QOLを低下させる原因になるでしょう。また喉の痛みや乾きといった症状が残ることもあり、肉体的な影響だけでなく精神的な影響を受けてうつ状態に陥る場合もあります。そのため食道癌の治療では術後のQOLも考慮したプランニングが欠かせません。
参照元:【PDF】食道癌患者における倦怠感と心理状態およびQOLに関する検討
参照元:がん情報サービス|食道がん 治療
食道癌の治療として咽頭全摘出術などを受けた場合、声帯を失うことで術後に声を出せなくなってしまうことがあります。そのため、そのような場合には従来の声帯を使った発声でなく、別の方法によって声を出せるように訓練(リハビリ)することが大切です。
食道癌の治療後における発声リハビリテーションにはいくつかの方法があります。
食道へ空気を吸い込み、それを吐き出す際に食道を振動させて声を出す方法です。
発声に際して手を使う必要がなく、習得できれば日常生活のQOL向上に役立ちます。反面、習得できるためには十分な練習と相応の時間が必要であり、食道発声を習得できるまでの期間は別の発声方法と併用してリハビリを行うといったことも大切です。
なお、食道発声リハビリをいつから開始するかについては主治医と相談して適切にスケジュール管理をすることが肝要です。
食道と気道を接続するルートを外科的に構築し、肺から吐き出す空気を食道へ送って発声するという方法になります。またシャントによって構築したルートへ器具を設置し、誤嚥を予防するといったものもあります。
シャント発声で誤嚥を防ぐような場合、器具のメンテナンスなどが必要になる反面、食道発声よりも習得の難易度は少なくなるでしょう。
電気の作用によって振動する「電気式人工喉頭(電気喉頭)」を喉に接触させて、口や舌の動きによって発声をコントロールする方法です。
手を使って器具を喉に当てるため片手が塞がってしまったり、人工的な音声になってしまったりといったデメリットがある反面、習得難易度は食道発声よりも習得しやすい方法です。そのため食道発声などをマスターするまでの間、電気式人工喉頭によって日常生活を送るといった使い分けも有効です。
食道癌を治療した場合、術後に喉頭の動きが悪くなって食べ物を飲み込みにくくなったり、気道への誤嚥が発生しやすくなったりといったリスクが高まります。そのため言語聴覚士や看護師などのサポートを受けながら「飲み込み」に関するリハビリテーションを受けることが大切です。
なお、喉頭温存治療を受けた際に飲み込みのリハビリをする場合、自身の状態に適した食べ物を選択しなければならず、食生活や食事の内容についても主治医としっかり相談してください。
癌の予防や再発の予防、あるいは癌治療中のQOL向上など様々な面で適度な運動習慣を取り入れることが大切であると知られています。
癌の症状や適切な治療の内容は癌患者によって様々ですが、基本的に癌の治療を安定して継続するためには最低限の体力を維持できていることが前提となります。そのため、適度な運動習慣を続けることで体力や筋力を維持し、治療に不可欠な心身の状態をキープすることは欠かせません。
加えて、癌治療の影響で体力が低下すると外出が億劫になり、生活面でも精神的にも引きこもりやすい状態になる恐れもあります。無理をして運動したり外出したりすることは危険ですが、日々の暮らしを前向きに続けるためにも一定の運動を取り入れて意識的に生活をコントロールすることが大切です。
ただし、食道癌では治療の内容によって血糖値の低下や倦怠感、動悸、めまいといった症状が発生しやすくなることもあります。自分にとってどのような運動やどの程度の運動量、運動の頻度が適しているのか、必ず事前に担当医へ相談し、医師の管理下で運動習慣を計画していくようにしてください。
食道癌の治療は結果として日常生活に大きな影響を及ぼすものもあり、それぞれの治療の内容や自身の身体の状態に応じて普段の暮らしでも注意すべきポイントが異なってきます。
日常生活を送る上で過度な負担や不安が生じると、治療継続が困難になったり、QOLが低下したりと様々なデメリットへと連鎖しやすくなるため、まずは食道癌の患者として日常的に気をつけたい内容を把握しておきましょう。
食道癌の治療として食道などの摘出手術を受けた場合、手術の前後で食事に関して色々な影響や変化が生じることは避けられません。
具体的に食道癌の手術を受けて食べ物の通り道に変化が生じると、例えば食事量が減ったり食欲が減退したり、その結果として体重が減少するといったケースも想定されます。加えて逆流性食道炎やダンピング症候群といった症状による影響も無視できません。
このようなリスクや悪影響を少しでも軽減できるよう、まず手術後は食事のメニューを見直した上で消化に良い食べ物や胃腸に優しい食品を選びつつ、一度に食べる量を減らし、ゆっくりと噛んで消化器の負担を軽減する意識が大切です。またダンピング症候群により急激な血糖値減少が起きる場合に備えて、糖分を含んだアメなどを携帯しておくといった工夫を凝らすとよいでしょう。
その他にも、食事後すぐに横になると食道から胃液が逆流しやすくなるため、食事は就寝前2~4時間にとるように心がけるようにしてください。
抗がん剤などの薬物療法では、使用する薬剤によって様々な副作用が想定され、その中には食欲不振や吐き気、下痢・便秘といった症状が引き起こされるものもあります。
食道癌の患者はそもそも食事に対する問題が生じやすく、食欲の減退や栄養バランスの悪化といったリスクも想定されます。薬物療法によってさらに食事に対するネガティブな印象が悪化してしまうとQOLが低下するだけでなく治療に必要な体力まで失われるといった恐れが増してしまうでしょう。
薬物療法による副作用は薬剤ごとに予想されており、常に自分の心身の状態を担当医と共有しながら、総合的に適切な治療内容をプランニングしていくことが必要です。
また、どうしても食欲がわかずに栄養状態が悪化しそうな場合、担当医へ相談して食べやすい食事メニューを検討したり、栄養補助のための食品やサプリなどを活用したりといった方法も対策として考えられます。
一方、患者の家族の立場から注意すべき点として、患者にあまり食事を勧めすぎず、あくまでも患者の意思を尊重することを前提としつつ、患者の体調悪化が懸念される際には医師や看護師、栄養士といった専門家へ相談するようにしましょう。
癌の治療中や治療後だからといって、性生活そのものが問題になることは通常ありません。しかし癌や治療の影響によって性欲が減退したり、性機能に問題が生じたりすることで、結果的に性生活でも不満や不安を抱きやすくなるケースもあります。
パートナーとの性生活は患者だけでなくお互いのQOLを考える上でも重要なテーマのひとつ。決して一人で抱え込むことなく、不安や疑問があれば担当医や地域の「がん相談支援センター」などに相談して適切なケアやアドバイスを受けましょう。
なお、抗がん剤などの薬物療法を受けている場合、精液や腟分泌物に薬剤の成分が含有されることもあります。そのため、パートナーへの薬剤の影響を防止できるよう性生活を送る際には適切にコンドームを使用するといった配慮が大切です。
その他、治療中や治療後に妊娠・出産を希望する人、また経口避妊薬などのホルモン剤を使用している人は、あらかじめ担当医へ相談するようにしましょう。
癌患者として生活していく上で、様々な不安や疑問が心に生まれて悩んだり苦しくなったりすることは珍しくありません。また周囲へ心配をかけまいと、ついつい一人で悩みを抱え込んでしまうといった人もいます。
しかしネガティブな感情を自分だけで処理しようとしても、そもそも癌患者として治療を受けたり再発予防に取り組んでいたりする以上、それらが自然に解決されるとは限りません。むしろ信頼できる家族やパートナー、担当医などの専門家へ相談し、より良い生活に向けた解決策や対策を一緒に考えることが大切です。
食道癌の手術や薬物療法、また治療後のケアなどには様々な面でお金がかかります。そのため癌患者や家族のQOLを改善する上で経済的負担の軽減や対策は不可欠です。民間の医療保険や癌保険の他にも高額療養費制度や高額医療・高額介護合算療養費制度、傷病手当金といった各種制度が用意されています。
制度の窓口や相談先については地域の「がん相談支援センター」やソーシャルワーカーから確認できます。
高額療養費制度は月の頭から月末までに支払った医療費のうち、収入や年齢によって設定される上限額を超過した分について、後から払い戻しを受けられる公的支援制度です。
また、手術や高額な化学療法などであらかじめ医療費の支払額が上限を超えそうな場合、事前に手続きすることで医療機関の窓口で支払う費用を上限額までに抑えるといったことも可能であり、患者が高額な現金を用意する負担が不要となります。
高額医療・高額介護合算療養費制度は年間に支払った医療費や介護費の総額に関して、一定の上限を超過した分の払い戻しを受けられる公的支援制度です。
長期的な治療や治療後の介護やケア、また再発予防に向けた取り組みとして継続的な費用支出が必要となる患者やその家族にとって、積極的に活用していきたい制度といえるでしょう。
傷病手当金は企業などに勤める労働者がケガや病気の治療のために、仕事を4日以上休まなければならない場合に受け取れる手当金です。事業主から十分な報酬を受け取れる場合は利用できませんが、支払われる給料が傷病手当金よりも少ない場合は差額を受け取ることができます。
癌治療の一環で長期の入院や休職が必要になるような時に、患者やその世帯の経済的不安の緩和に寄与する制度です。
ここでは実際に食道癌として診断されて治療を受けた人や、現在治療を継続中の人などからの声や体験談をご紹介します。他の患者の声や体験談を知ることで、少しでも前を向けるきっかけになると幸いです。
抗がん剤が5クールを迎えたころ、薬が著効したこともありDrからの励ましの言葉がとても嬉しかったです。また、妻の献身的努力が自分を支えたと思っています。
引用元:アストラゼネカ株式会社 食道がんに関する体験談|がんになっても
(前略)がんを発症するとは思ってもいなかったですが、75歳と言う歳ですから覚悟は決まっています。ただ、終活をどうしたらいいのか回答が自分自身で答えが出ません。
引用元:アストラゼネカ株式会社 食道がんに関する体験談|がんになっても
(前略)健康診断でどこかの場所が引っかかるだろうなと推測してましたが、まさか「食道がん」と診断されるとは想定外でした。今のところ先生の「大丈夫ですよ、ちゃんと治療すれば治りますよ」という言葉を信じています。
引用元:アストラゼネカ株式会社 食道がんに関する体験談|がんになっても
一番心が折れていた時に、高校時代からの友人が「苦しみは強さに、悲しみは優しさにかわるから。お守り送るからいっぱいお願いしてね。大丈夫、大丈夫」と手紙をくれた。また、職場の同僚が「一緒にまた仕事をするからな、待ってるよ」とLINEを送ってくれた。職場復帰を目指していたから、本当にうれしい言葉だった。
引用元:アストラゼネカ株式会社 食道がんに関する体験談|がんになっても
食道がんと告知され、手術後、現在(2008年5月時点)自宅療養中です。<がん>と宣告されて、病気への不安もさることながら、今後自分がどんな状況に置かれるのか不安を感じました。検査や治療、入院生活や自宅療養、社会復帰など、分からないことだらけでした。そんな中、専門書以外にインターネット上で公開されている同じ病気の方の闘病記が大変参考になりました。(後略)
引用元:アストラゼネカ株式会社 食道がんに関する体験談|がんになっても
当時は抗がん剤でつらく、新型コロナウイルスで仕事も危うい状況となる中で、ある方から「コロナ収束まで少し休めという事なんだよ。60歳で還暦なんだし」といわれ、そういえば40年以上色々と働いてきたなと、ふと思いました。
心身共に休んで戻って来い。と言葉をかけていただき、頑張って復帰する気持ちになりました! 高齢及び体力の無い病人として罹らない様に気をつけております。
引用元:アストラゼネカ株式会社 食道がんに関する体験談|がんになっても
「病気は文字通り気の病だ。落ち込まずに病気と闘え」(後略) 私が現在元気に闘病しているのも、症状が良いせいもあるでしょうが、気持ちを明るく持って前向きに闘病しているからだと信じています。
引用元:アストラゼネカ株式会社 食道がんに関する体験談|がんになっても
(前略)診断されて今までを振り返ってみて、さまざまな知識や情報を得ておくことの大切さを痛感しています。そのひとつが、妊よう性の問題です。僕は、妻から「元気になったら子どもを持てるように準備しておこう」と提案されて、がん治療を始める前に精子を凍結保存しました。僕も子どもは欲しいと思っていたのですが、精子凍結のことは全然知らなかったので、妻から言われなければ検討することすらできなかったと思います。(後略)
引用元:岡本拓磨さんの体験談|あやライフ
(前略)術前に予期していたことと違ったハプニングといえば、体重の増減です。手術後には減らなかったのですが、嘔気発作が出てからは14キロも減ってしまい、それがしんどかったです。
嘔気発作については原因不明で対策のしようがないので、自分で食べやすく、嘔気発作が起こりにくそうなものを探すしかありません。自分でスーパーに行って食べられそうなものを探していました。
最初はのどごしがいいので山芋をよく食べていました。他にも野菜ジュースやそうめんなどのどごしが良く、飲み下せるものは良いように感じました。(後略)
引用元:小野正(仮名)さん男性(60)|tomosnote(トモスノート)
営業職だったので、話すことは必須でした。また、接待では食事がつきものですが、食べることが難しく、きつい、と感じました。体力的には問題なく、以前と同じように仕事ができると思っていたものの、無理だとわかり、部署異動を申し出て、半分デスクワークのような業務に変更してもらいました。
引用元:患者団体に聞く!一般社団法人 食道がんサバイバーズシェアリングス 代表理事 髙木 健二郎 さん|オンコロ
外来を診察する 約1ヶ月前に 自覚症状として 食べ物が喉に引っかかるような 違和感があった
一週間ぐらいほっといたけど 気になって インターネットのサイトを 調べてみたら食道がんの初期に入っていた 驚いて 良い病院をネットで探したら 日本医科大学附属病院の 耳鼻咽喉科の 食道がんの手術チームが 腕がいいと言う 評判があったので 予約及び 紹介状がなくて かかってみた(中略)
僕の場合はたまたま ネットで調べたから分かったけど 皆さんはネットで調べなくても何か食べ物を食べた時に 違和感あったら消化器内科か耳鼻咽喉科で 早めの 診察を受けてください
引用元:食べ物が喉に引っかかると思って 検査をしたら 食道 癌だった|caloo(カルー)
(前略)父は病院が嫌いな人で、自分は病気なんてしないといつも言っている人でした。 なので、人間ドック等の定期的な検診を受けずに何十年も過ごしていました。
父は、タバコやお酒が大好きな人なので、絶対になんらかの病気があるのではないかとずっと不安な気持ちでいたのを覚えています。 たまたま人間ドックのチラシが入っていて、父に受けさせようとしましたが聞いてくれませんでした。
たまたま、父から頼み事をされていたので、もしも父が人間ドックを受けてくれたら聞いてあげるという事にして無理やり受けさせました。 父は渋々だったのですが、検査結果では初期の食道癌があると言われ、家族は驚きました。(中略)
皆さんも、定期的な体のチェックをした方が良いと思いますよ。 大切なご家族にも伝えてあげてください。(後略)
引用元:たまたま受けた人間ドックで発見。父の食道癌について|caloo(カルー)
(前略)本人は何でもないと言っていたのですが、飲み込むのが苦しいというのは明らかに異常な状態だと思いました。 私は病院へ行くように説得したのですが、本人は大丈夫だの一点張りで私の言う事を聞いてくれませんでした。
その後、数ヶ月後に母の声が枯れておかしくなりました。 ちょうど親戚の集まりがあったのですが、明らかな声の様子のおかしさで親戚中が唖然とし始め本人も気づいたみたいで病院に行く決心がついてくれたみたいです。
その後、病院に行ってバリウム等を飲んで精密検査を受けた所、食道がんと診察を受けました。 母もさすがに驚いたみたいでショックを受けていました。
すぐに手術日が決まり、手術となりました。 手術は無事成功して、母もすぐに元気になりました。
初期の症状だったみたいで、内視鏡で部分切除だったので声を失う事もなかったので本当に良かったです。 食道がんの自覚症状は基本的にないみたいで、母は先生も運が良かったと驚いていました。 ちょっとした異常があればすぐに病院に行く事が本当に大切なんだなと実感しました。(後略)
引用元:食事中の違和感から見つかった母の食道がん。早めの検診が大切だと実感|caloo(カルー)
(前略)下部咽頭癌及び頸部食道がんの告知を受けたのは平成16年7月下旬、手術は同年10月19日でした。 当時59歳、定年退職約10ヶ月前で第二の人生設計の変更を余儀なくされ強い精神的なショックを受けました。
入院し手術を決断するまでの葛藤は今までに経験したことがなく、手術後は声を失いとことん落ち込みましたが担当医の先生及び看護師さん達や今までにお世話になった家族等多くの人々に対する「感謝」の気持ちから再起を決意しました。(後略)
引用元:Vol.19 感謝の気持ちを忘れずに、希望と勇気を持って一歩一歩前進しましょう|ちばがんなび
(前略)手術跡の傷は残ってしまいましたが、目に見えるのは首筋10センチくらいです。 最初は本人もすごく気にしていましたが、今は慣れたのか、平気で隠そうともしません。 気になる人でも、スカーフまいたりハイネックのTシャツやセーターを着れば見えないと思います。(後略)
引用元:上皮内の食道ガン。退院してから4か月。食事に制約はありますが元気です。|caloo(カルー)
(前略)がんになる前も、いろいろと目標を持ってはやっていたんですけれども、その目標の重みとかが全然変わっていきまして、目標にそんなに期限がなかったと思うんです。
今だと、本当に、いつまでっていう自分の体調のこともあるので、今できることをやっていかないとっていう気持ちもあるんですけれども、この言葉を選んだ理由としては、私自身が、あの新聞記事をきっかけにして、他の目標ができて変わりました。
なので、変わって今があるので、この言葉を出させてもらっています。私自身もそうですし、今、日々、私のところに相談に来てくださるがんの方々も、やはり就職っていう目標ができることで、本当、そのときから、自分、気持ちが前向きになって、何かを始めたりとかして、本当、次会うとき、次会うときで、表情が全く違って変わっていきます。(後略)
引用元:がんノート|#mini #007 岡本記代子さんのがん体験談
私は食道がんの中でも、食道の入り口にできる頸部食道がんのサバイバーです。初発のときはステージⅡくらいと言われました。(中略)再発までの間、非常に元気に暮らしていたんですが、ちょっと喉がおかしい感じになると再発の不安を感じていました。
夏の定期検査を受けたら「同じ場所にがんが再発しているので、これは手術するしかない、手術すれば治る可能性はあるし、食道発声という方法を身に付ければ小さいけれど声が出るようになります」。そういうふうに先生から言われました。
ショックっていうより、覚悟していたものが来ちゃったな、そんな気持ちでした。(中略)仲間の皆さんに出会えたことで本当にいろいろな勇気とか希望をあるいはエネルギーをもらったり、もしかすると交換できたり、そういうこともキャンサーギフトかなと思ってます。
ついでに言えば、命を。みんなが会えたおかげで50歳になってから、実はがんをやったときはせめて50歳まで生きたいな、なんて思ったりもしていたんですが、50歳になってから2人の子どもに恵まれました。
今、上が4歳、下が1歳になっています。これもキャンサーギフトそのものではないですけど、生きていたからこそなのかなと受け止めて、感謝しています。(後略)
引用元:がんノート|#origin #105 村本高史さんのがん体験談
(前略)毎年行われる健康診断の胃X線検査で、喉にバリウムが少し残っている写真があるといわれ、胃カメラによる検査を勧められた。平成6年に食道癌で他界した兄のことが頭に浮かび不安を感じたが、内視鏡検査を予約して帰宅した。(中略)食道癌にかかった原因ははっきりはしないが、若い頃からお酒に弱いにもかかわらず、暴飲していたからだと反省している。妻にも前からお酒をやめなさいといわれていたので頭が上がらない。手術をしてからは、お酒も飲めなくなったせいか、血圧、コレステロール、HbA1cなどが下がり、体調に関する心配がなくなった。癌を早期発見してくれた先生、神の手で手術をしていただいた先生に心から感謝している。
今後は、全日本ベテランテニス選手権80歳の部に出場すること、東京オリンピックの開会式を生で見ることを目標に生きていくつもりである。
(前略)あとから考えれば、判明する数ヵ月程前から、食べ物を飲み込みづらくなって、ゴクン、という音が大きくなってきたかな、と思っていたとのことでした。
何かはおかしいと直感で感じてはいた様ですが、それ以上の行動はしてませんでした(中略)一旦退院したあとに、3クールほど抗がん剤治療のための入院もありました。
吐き気や全身の痛みとの戦いだったとのことで、すっかりやつれ、眉間のシワが深くなり、髪の毛もすっかり失い、まだ60手前の母には本当に辛い日々でした。
癌の移転を抑える為とのことでしたが、本当によく乗り越えられたと思います。(中略)今は半年から1年に一度、ペット検査を受け、体の隅々までしっかり検査をして、経過を見ています。
癌に大事なのは、早期発見と、良い医師との巡り合わせだと実感しました。
引用元:健康診断の胃カメラで発見、ステージ3の食道がんからの生還…|caloo(カルー)
(前略)2回目の検診の際、今度は咽頭から食道にかけての部位に腫瘍らしきものがあるということでした。
更に精密検査をうけると、やはり食道にがんが転移しているとのことです。大きさについては指先程度ということではありましたが、部位が部位なだけに、心配で、結局検査のために再入院、更に食道がんの切除手術を受けることとなりました。(中略)今回の手術についても、内視鏡を使っての切除手術となります。場所が狭くてわかりにくいのか、手術については約3時間半を要しました。切除されたがん細胞については切り口がギザギザではありましたが、そんなにどす黒いものではなく、まだ赤い部分がおおきかったです。手術後2週間の入院にて退院です。(実際は術後の検査も含む)(後略)
引用元:胃がん切除から3ヶ月後、食道へがんが転移。再切除しました。|caloo(カルー)
(前略)食道癌ステージ1で内視鏡手術を受けました
よく発見できたと担当医師も感心するほどの「早期発見」でした(中略)同意しなければ手術は受けられないので、当然同意しますが、事前に見ていた方が良いと思います
確かに、後遺症の記載はされています
同意書には併発症(手術合併症)と記載
私自身も、同意書の中身は全然記憶に有りませんでしたので・・
引用元:食道癌ステージ1で腹腔鏡手術。逆流性食道炎、噴門部狭窄等の後遺症があった (写真あり)|caloo(カルー)
食道癌や食道への転移癌については、標準治療の範囲でも外科治療だけでなく放射線治療や薬物療法、これらを組み合わせた集学的治療などがあります。患者の状態や個々の癌の特性に合わせて適用されます。また外科的アプローチとしても、食道や胃の一部を切除する手術だけでなく内視鏡を活用した低侵襲治療があり、状況に応じて詳細に検討されます。
まずは一般的に検討される食道癌の治療法や、各治療の内容について解説しますので、食道癌の治療における基本情報として参考にしてください。
内視鏡的切除は、文字通り内視鏡を活用して行う治療です。患者の体に執刀医が触れて癌や臓器を切除するという意味では手術(外科治療)の1種ですが、従来の手術よりも患者の肉体を傷つける範囲を小さくできるため、患者にかかる負担を減らして早期の復帰を目指せることも特徴です。
食道癌の内視鏡的切除では、内視鏡を使って患者の食道の内側から癌を切除します。体外から患者の体をメスで切り開く必要がありません。なお、癌を切除する方法としては、内視鏡の先端にあるリング状のワイヤーを患部へ引っかけて切除する「内視鏡的粘膜切除術(EMR)」と、高周波ナイフを使って粘膜下層ごと病変を切除する「内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)」などがあります。
また、切除した癌は改めて病理検査によって詳細分析を行い、状態に応じて術後の化学療法や放射線治療などを組み合わせるケースもあるでしょう。
内視鏡的切除は従来の外科治療と比較して低侵襲な治療ですが、食道の一部を癌と一緒に切除するため、どうしても出血や穿孔といった合併症のリスクがあります。ただし、それらの症状に対しても内視鏡を使って対処することが可能です。
またその他のリスクとして、出血や穿孔による嘔吐や吐き気、不快感、治療後の発熱や痛みといったものも考えられます。
内視鏡的切除だけでは十分に対処することが困難な場合、手術によって食道や胃の一部、リンパ節などを癌と一緒に切除します。外科治療では食道切除と合わせて新たな食べ物の通り道を作る、食道再建手術を併用することも一般的です。なお、再建手術には胃や腸の一部を使用します。
手術の範囲や再建の方法などは、それぞれの癌の状態や患者の体調などを考慮して検討されることが重要です。
胸部食道癌の場合、開胸して胸部食道の全体と胃の一部を切除します。また、頸部から腹部にかけてのリンパ節郭清も同時に行わなければなりません。
2024年に発表された研究結果では、開胸手術に代わり、胸腔鏡(VATS)を用いた低侵襲手術が増えており、手術死亡率が低く、再発のリスクも低いとする研究報告もあります。食道再建では残った胃を引き上げて、残った頸部食道と接続しますが、胃が十分に残っていない場合は小腸や大腸の一部を使用します。
食道癌のサイズが小さく頸部の食道だけに存在している場合、頸部食道のみを切除する手術が行われます。ただし癌が大きい場合や癌の場所によっては食道全体から喉までをまとめて切除することもあるでしょう。
食道再建には胃や小腸の一部を使用しますが、一緒に喉を切除している場合は呼吸用の穴として人工的な気管孔(永久気管孔)も作ることがポイントです。
癌が頸部から胸部にまで広がっている場合、開胸して胸部食道の全体と胃の一部を切除します。また頸部から腹部にかけてのリンパ節郭清も同時に行わなければなりません。
ただし、患者の状態や医療機関によっては腹腔鏡や胸腔鏡といった器具を活用して、切創範囲を低減するといった低侵襲治療への取り組みが行われることもあります。
食道再建では残った胃を引き上げて、残った頸部食道と接続しますが、胃が十分に残っていない場合は小腸や大腸の一部を使用します。
食道と胃の接続部分に癌が発生している場合、まず癌の浸潤の程度を見極めなければなりません。癌が食道側へ大きく浸潤しているケースでは胸部食道癌と同様の手術を行いますが、食道側への浸潤がそこまで大きくない場合は、食道の上部を温存して、食道の下部と胃の上部もしくは胃全体の切除にとどめることもあります。
なお、食道上部を温存する場合は開腹によって手術を行いますが、いずれの場合もリンパ節郭清は同時に実施しなければなりません。食道の再建は胃の残部や小腸、大腸などを活用します。
癌によって食道狭窄が発生し、食べ物の通り道が失われてしまっている場合、狭くなってしまった食道を回避して、新たに食べ物の通り道となるルートを人工的に増設します。
なお、バイパス手術は改めて飲食できるようにするための手術であり、癌そのものを切除することはありません。そのため癌が存在する食道はそのままに、胃や腸を使って迂回路(バイパス)を作成することがポイントです。
なお、患者の臓器を使用せず、筒状の金具(食道ステント)を使用する手術も存在します。
手術によって考えられる合併症としては、まず切り開いた部分の縫合不全による出血や消化液、食べ物の漏出などがあります。また食道癌と一緒に喉を切除した場合、声帯が失われるために発声できなくなることも。特に消化液や食べ物が漏出した場合、それが周囲の臓器を傷つけたり感染症を引き起こしたりして、発熱や痛みが発生することもあるでしょう。また術後に痰が出しにくくなることで肺炎や誤嚥のリスクが高まることも無視できません。
その他の合併症として、声帯を切除していない場合でも、発声に関与する神経に触れることで生体機能が低下して声のかすれ(嗄声)が生じることもあります。ただし嗄声は通常、数ヶ月から半年程度で改善します。
食道癌の治療として放射線照射による治療も一般的な選択肢です。また放射線治療は癌の治療を目的とした「根治照射」と、癌の症状を抑えてQOLの向上を目指すための「緩和照射」に大別されることもポイントです。
なお、放射線治療は単独で行うだけでなく、手術や化学療法と組み合わせて集学的治療の一環として実施されることが少なくありません。
根治照射は手術と同様に癌の治療を目的とした放射線治療であり、患者の体外から体内の癌に向けて放射線を照射します。
根治照射では放射線によって直接に癌細胞を攻撃して治療するため、内視鏡的切除や手術のように食道などの臓器や組織を切除する必要がありません。そのため食道や消化器の機能を温存でき、治療後の食生活やライフスタイルに及ぼす影響も抑えやすくなります。
一方、根治照射の実施には癌が放射線照射で対応できる範囲に収まっていなければならず、広範囲の癌に対しては効果を発揮することが困難です。
癌が広範囲にある場合や、手術や根治照射に患者が耐えられないような場合、癌の疼痛や食道の狭窄といった悪症状を軽減し、患者のQOLを向上させるための放射線照射を行います。
緩和照射は癌の根治を目的としていないため、基本的に緩和照射だけで癌を消し去ることはできません。しかし緩和照射で癌のサイズを縮小させることで癌の症状を軽減し、再び食事ができるようになるといった前向きな効果が期待されます。
また緩和照射は一般的な根治照射と比較して、放射線照射の期間が短くなっており、放射線による被曝リスクなどを軽減できることもポイントです。
放射線照射では健常な細胞や組織が放射線による被曝で損傷し、様々な合併症を引き起こす可能性があります。加えて、放射線治療では治療中と治療後で合併症の内容が変化することも特徴です。
放射線治療中に一般的な合併症としては、放射線を照射した部位の炎症や痛み、嗄声といったものが考えられます。また食事がしにくくなったり、刺激物を食べられなくなったりと日常生活への影響もあるでしょう。その他にも放射線被曝による影響が強くなれば白血球の減少や感染症リスクの向上なども考えられます。
また、放射線治療を終えてから副作用が発生することもあり、これは「晩期反応」と呼ばれます。
晩期反応では、治療中の放射線が心臓や肺に当たっていたことが原因となり、肺炎や心外膜炎、機能低下といった症状が現れることもあります。そのため放射線治療を終えてからも医師による診察や検査を継続しなければなりません。
薬物療法(化学療法)は、一般的に抗がん剤や抗がん薬と呼ばれる治療薬を使用して、癌の治療や症状の緩和を目指す治療です。放射線治療と同様に、根治を目的とした治療と、緩和ケアとしての治療があり、それぞれの目的や患者の既往歴によって使用する薬剤が選択されることも特徴です。また化学療法は手術の前後や放射線治療と組み合わせて、それぞれの治療の効果を向上させることもあります。
なお食道癌に対する化学療法では、主として「細胞障害性抗がん薬」と「免疫チェックポイント阻害薬」が使用されることもポイントです。
細胞障害性抗がん薬は、癌細胞が増殖する機構を阻害して、癌の退縮を目指す治療薬です。癌を直接に攻撃する抗がん剤として考えることができ、薬が患者に上手く適用すれば治療効果も高まりますが、特定の細胞障害性抗がん薬で効果が認められないような場合、複数の薬剤を組み合わせて使用することもあるでしょう。
また化学療法では一次治療や二次治療といった段階的な治療も行われており、最初に使用した治療薬で効果があまり認められなかった場合、さらに強い効果を期待できる治療薬へ切り換えるといったこともあります。
免疫チェックポイント阻害薬は、患者の免疫が癌細胞を攻撃するためのサポートを行う治療薬です。そもそも癌細胞は人体の免疫を回避する仕組みを備えており、これが癌の増殖や拡大を引き起こします。
免疫チェックポイント阻害薬は、そのような癌の機構を邪魔することで、患者の免疫が本来の働きを取り戻す助けを行います。
なお、免疫チェックポイント阻害薬と細胞障害性抗がん薬を組み合わせて使用することも少なくありません。
化学療法では副作用として抗がん剤が正常な細胞や組織を攻撃するため、様々な症状が想定されますが、実際にどのような副作用が発生するかは患者によって個人差があります。一例としては脱毛や倦怠感、吐き気、便秘・下痢、食欲不振、口内炎、皮膚炎といった症状です。
基本的に、それぞれの薬剤にはどのような副作用のリスクが考えられるのか示されており、化学療法をプランニングする際は副作用の内容やリスク、患者の体質、そして過去の薬物療法の既往歴などを総合的に考慮して適切な選定を行わなければなりません。
なお、どうしても副作用が強い場合、使用している治療薬を中止して別の治療薬を検討することもあります。
実際の食道癌の治療に関しては、それぞれの患者や癌のステージを前提として標準治療を考えながら、さらに本人の希望や生活スタイル、生活環境、また体質や年齢といった要素なども含めて総合的にプランニングしていくことが大切です。
ここではステージごとの食道癌の標準治療について概要をまとめていますので、食道癌の治療について考えたり担当医と相談したりする参考にしてください。
参照元:がん情報サービス|食道がん 治療
食道癌が粘膜内にとどまっている0期の状態にある場合、その癌の深達度や範囲などにに応じて初回治療が選択されます。
食道癌の初回治療を判断する基準は以下のような段階で考えられます。
まず、壁深達度評価において癌が食道の粘膜筋板へ達しているかどうかを診断しなければなりません。そしてその上で、癌が食道の全周へ及んでいるかどうかを診断し、この時点で4つのパターンに分類されます。
次いで、癌が粘膜筋板へ達していないものの、食道の全周に及んでいる場合、長径評価が行われます。
一方、癌が粘膜筋板へ達しており、さらに食道の全周に及んでいる場合、全身状態評価が行われるといった流れです。
そして実際の初回治療の方法は各状態を総合的に検証して選択されることも重要です。
基本的に、癌が食道の全周に及んでいなかったり、長径が5cm以下であったりする場合、内視鏡を使った切除となります。粘膜筋板へ達していないものの長径が5cm以上の場合は手術や放射線治療、あるいは化学放射線療法などが選択されます。
なお粘膜筋板へ達しており、さらに食道の全周に及んでいる場合、手術を行える状態であれば手術か化学放射線療法が選択されますが、手術に耐えられない状態であれば化学放射線療法や放射線治療が選択肢です。
参照元:がん情報サービス|食道がん 治療
初回治療で内視鏡的切除を行った時、さらに癌の状態に応じて経過観察や追加治療(手術・化学放射線療法)の有無が検討されます。
その他にも、内視鏡的切除を行った患者で、癌が食道全周の4分3以上に及んでいた場合、術後の狭窄を予防するための治療が行われることも重要です。
癌が粘膜内から進行しているものの、まだ粘膜下層にとどまっているⅠ期の場合、基本的には手術もしくは化学放射線療法が標準治療として推奨されています。
その上で、食道癌Ⅰ期における標準治療の初回治療には大きく2つのパターンがあり、基本的な判断基準としては全身状態評価により、患者の体が手術に耐えられる状態にあるのかどうかがポイントです。
なお、そもそも手術ができない体の状態の患者に関しては、化学療法と放射線治療の併用か、放射線治療による治療が検討されます。一方、手術に耐えられると診断された患者であっても、実際には癌の状態や部位などによって手術でなく化学放射線療法や放射線治療が初回治療の第1候補になることもあるようです。
その他、国立がん研究センターの報告によれば、化学放射線療法は食道癌Ⅰ期の治療において、手術と同程度の効果が期待されると考えられている点は見逃せません。
参照元:がん情報サービス|食道がん 治療
Ⅱ期やⅢ期にまで進行した食道癌の治療に関しては、まず全身状態評価として以下の3つの段階で基準が考えられます。
Ⅱ期・Ⅲ期の食道癌の治療では手術と化学放射線療法が中心として検討され、さらにその両方に耐えられるのか、化学放射線療法であれば可能なのか、どちらも困難な状態なのかといった点で分類されることが特徴です。
なお、手術ができる状態であっても段階的に化学療法を行った後で手術を行う場合や、術後に改めて化学療法が実施されることもあります。
また化学放射線療法によって癌が消失しなかったり再発したりした場合は、救済治療として手術や内視鏡的切除なども検討。手術も化学放射線療法もできない場合、放射線治療や化学療法、緩和ケアといった選択肢が中心になるでしょう。
参照元:がん情報サービス|食道がん 治療
Ⅳ期の治療についてはⅣA期とⅣB期に分類され、切除できない転移や遠隔転移がある場合はⅣB期となります。また、ⅣA期とⅣB期はそれぞれ全身状態評価によって「PS(パフォーマンスステータス)」が診断され、日常生活における制限の有無や程度に応じてその後の治療が検討されることもポイントです。
つまり大まかにⅣ期では以下のパターンへ分類されます。
なお「ⅣA期でPS良好」の場合において、治療後に癌が消失した場合は経過観察と化学療法が主体となり、治療後に癌が残っているような場合は改めて切除や化学療法、緩和ケアなどが検討されます。
食道癌や食道癌の治療に関して、様々な情報やトピックを紹介しますので参考にしてください。
進行または転移性食道扁平上皮がんに対する2次治療として抗PD-1抗体薬であるTislelizumabは化学療法に比べて全生存期間(OS)が優位に改善したことが第III相無作為化試験(RATIONALE-302試験)により明らかになりました。
その一方で、すべての患者が免疫チェックポイント阻害薬(ICI)恩恵にあずかれるわけではなく、一部の患者の身が長期生存できている状況です。したがって、症例選択や奏効の変化、耐性の機序解明、新たな薬剤開発に向けた効果予測因子の特定が早急に解決すべき重要な課題となっています。
今までに、PD-L1発現や腫瘍変異負荷(TMB)などがICIの効果予測因子として提言されている状況ですが、食道のがん安定した成果が得られていません。そのほかのバイオマーカーについても、前向きな検証が行われていない、もしくは臨床現場への導入が難しいことが多い状況です。
本研究では、RATIONALE-302試験で得られた腫瘍サンプルを使用し、ゲノムならびにトランスクリプトームの解析を行い、ICIの効果予測因子の探索・その分子機序の解明を試みています。
RATIONALE-302試験では、ESCC患者512例がTislelizumab群(200mgを3週間ごと)もしくは主治医選択化学療法群に1:1で無作為に割り付けが実施されました。この研究では、バイオマーカー解析に必要な腫瘍組織サンプルが得られた209例(Tislelizumab群が105例・ICC群が104例)を対象としてPD-L1免疫組織化学染色・遺伝子発現解析(GEP)ならびに遺伝子変異プロファイリングを実施し、OSに対しての予測因子解析を行いました。
研究の結果、NOTCH1遺伝子に変異がある患者では、生存期間が(化学療法群の5.3カ月に対し)18.4カ月と劇的に延長しました。NOTCH1遺伝子に変異がない患者では、生存期間が(化学療法群の6.9カ月に対し)6.0カ月と、ほぼ効果が見られませんでした。
この「NOTCH1変異」は、従来の目印(PD-L1発現など)とは関係なく(独立して)効果を予測できる、新しいバイオマーカーとなりうることが明らかになりました。
今回の研究は、NOTCH1変異が進行もしくは転移性ESCCにおいて、Tislelizumabの効果を予測する独立したバイオマーカーとなり得ることを、臨床試験データと前臨床モデルの二つの面から示しています。NOTCH1変異は、免疫活性化型のTME形成に役立ち、ICIの治療効果を高める可能性があります。
これまでのPD-L1発現やTMBにプラスし、NOTCH1変異の評価は、これから個別化治療の指標として重責を担う可能性があり、臨床現場への導入や、今後前向き試験による検証が期待されている状況です。
術前化学放射線療法(CRT)後の計画的な手術は、局所進行食道がんに対する標準治療とされています。術後、腺がんのおよそ1/4、扁平上皮がんの約半数で病理学的完全奏効が得られていますが、3~4割は早期に遠隔転移を起こすため、すべての症例に手術を実施することの本質を問われるようになりました。
そのため、代替戦略として、術前CRT後に頻回に治療効果判定を実施し、遠隔転移がなく局所再発の見られる患者にのみ手術を実施する「積極的サーベイランス」が提唱されています。
また、術前CRT後の治療効果判定法に関して前向きに検証した「preSANO試験」では、9割の潜在的残存腫瘍が検出可能なことが判明しています。
食道手術は、術後合併症の頻度はおよそ6割ほどとされ、健康関連QOL(HRQOL)低下のリスクがあります。臨床的完全奏効が保たれている症例や、サーベイランス中に遠隔転移が見られた症例においては、手術回避による利益を得られる可能性があります。
その一方、積極的サーベイランスは、手術延期に付随して術後合併症が増加したり、効果判定の際に局所再発腫瘍が検出できなかったりする場合に、遠隔転移の出現・非根治的切除を招いてしまい、全生存期間(OS)を悪化させる恐れも。
メタアナリシス(統計的手法を用いて、データを量的に統合)においては、積極的サーベイランスと標準手術のOSは同等だと言われていますが、少数例の検討であり、後ろ向き観察研究を多く含んでいる状況でした。
そのような状況の中、術前CRT後に臨床的完全奏効(cCR)が得られた局所進行食道がんと診断された方を対象に、積極的サーベイランス群と標準手術群を比較する多施設共同クラスターランダム化第III相試験の実施にいたりました。
本試験ではstepped-wedgeクラスターランダム化と呼ばれる方式にて実施されました。
オランダの12施設で行われ、適格基準はオランダの標準治療であるCROSSレジメンに基づく術前CRT後の手術を計画されている18歳以上の局所進行食道がんもしくは、食道胃接合部がんと診断された患者です。
初期段階は、すべての施設で計画的手術を実施し、積極的サーベイランスへの移行時期が施設単位でランダム化され、2施設ごと移行していったとされています。 初回効果判定として術前CRT 6週間後に内視鏡生検を実施し、悪性所見が認められなければ2回目の効果判定として術前CRT 12週間後にPET-CT、リンパ節に対するEUS-FNA、内視鏡生検を実施。遠隔転移と局所の残存腫瘍がなければcCRと判定しました。
mITT解析においては、cCRからの観察期間中央値は38か月であり、積極的サーベイランス群34か月、標準手術群50か月という結果でした。2年生存割合は積極的サーベイランス群74%、標準手術群71%と積極的サーベイランス群が3%高い結果となっています。
ITT解析においても2年生存割合の非劣性が示されたと言われています。また、mITT解析におけるOS中央値は積極的サーベイランス群43か月、標準手術群53か月となっており、両群間に有意差を認められませんでした。
積極的サーベイランス群198例中33例で遠隔転移が見られ、そのうち22例は3回目の効果判定で診断されました。69例がcCRを維持し、96例が局所再発を認められたと言われています。83例の方が待機的手術を受け、cCR判定から手術を行うまでの期間は中央値5.9ヵ月、2例がR1切除、1例がR2切除となっています。
積極的サーベイランス群の83例中68例、標準手術群の101例中85例の中で、最低でも一つ以上の術後合併症が見られたとされています。
局所進行食道がんで、化学放射線療法(CRT)の後に検査上がんが消えた(cCR)と確認された患者において、「積極的サーベイランス(手術なし経過観察)」は、生存期間において「標準手術」に劣らない、新しい治療の選択肢となる可能性が示されている状況です。この方法により、約半数の患者が負担の大きい手術を回避できるというメリットが期待されています。
免疫チェックポイント阻害薬と化学療法を一緒に用いた治療は、胃がんならびに胃食道接合部腺がんに対する一次治療において、患者の生存期間が延長することが判明しています。しかし、局所進行切除可能とされるG/GEJ腺がんについては、周術期化学療法・免疫チェックポイント阻害薬を一緒に用いた治療による効果は、いまだ解明されていない状況です。
局所進行切除可能G/GEJ腺がんと診断されている患者を対象とした、無作為化二重盲検第III相試験「KEYNOTE-585試験のメインコホート」では、手術前にPembrolizumabもしくはプラセボをCisplatin+Capecitabineによる化学療法を併用療法として3コース実施。
手術後に、Pembrolizumabもしくはプラセボ併用化学療法を3コースおこなった後、Pembrolizumabもしくはプラセボ単剤を11コース追加で投与する治療プロトコールにて評価が実施されました。
今までに報告されている中間解析によると、以下のことが判明しています。
主要評価項目は、病理学的完全奏効割合(pCR)・無イベント生存(EFS)・OS・安全性となっており、メインコホートとFLOTコホートを一緒にした集団での安全性についても副次評価項目としています。
2017年試験登録開始の時点において、FLOTはとりわけ、アジア諸国で周術期化学療法の標準治療として普及しておらず、免疫チェックポイント阻害薬と併用することに関する安全性データがない状況でした。
その後、FLOT4試験が行われた結果、欧米において周術期FLOT療法は標準治療となりました。よって試験の改定が行われ、FLOT+Pembrolizumabの併用については、FLOTに特化した安全性評価コホートに組み込まれ、有効性はメインコホート・メイン+FLOTコホートの二つで評価されました。
本試験の最終解析では、メインコホートについての周術期療法としてPembrolizumab+化学療法が、プラセボ+化学療法と比べるとpCRが継続的な改善が見られました。
しかし、上記の差は統計学的多重性調整の対象外でした。
5年間の無イベント生存率(5年EFS)は10%、5年間の生存期間(5年OS)は6%のPembrolizumabの上乗せ効果が見られました。
しかし、あらかじめ設定された多重性戦略に準じて、第3回中間解析でEFSの統計学的有意差が確認できなかったため、最終解析ではEFSとOSの差について、正式な統計学的検定は実施されませんでした。メイン+FLOTコホートにおいても、pCR・EFS・OSのどれも同様の結果だったとされています。
この試験では、pCR(病理学的完全奏効)の改善がEFSやOSの改善についての予測は確認されませんでしたが、これらの評価項目間の関係性を今後さらに検討していく必要があります。
KEYNOTE-585試験は、局所進行切除可能G/GEJ腺がんを対象として、周術期補助療法としての化学療法+Pembrolizumab療法と、化学療法+プラセボ療法を比べた国際共同無作為化比較第III相試験のことです。
第3回中間解析では、Pembrolizumab群がプラセボ群に対しEFSで統計学的な優位性を示さなかったため、化学療法にPembrolizumabを追加する周術期補助療法は、新たな標準治療としての有用性を示すにはいたりませんでした。
今後、免疫チェックポイント阻害薬の有効性をはっきりさせるための追加研究が必要とされており、加えてpCRが生存エンドポイントの有効なサロゲートエンドポイントになりうるかについても検証が必要な状況です。
BeiGene(ベイジーン) Japan合同会社は、2025年3月27日抗PD-1抗体薬である「テビムブラ点滴静注100mg(一般名:チスレリズマブ)」について以下のように発表しました。根治切除不能な進行・再発の食道がんに関して、日本国内で製造販売承認を取得しました。今回の承認は以下の試験結果に基づくものであると言われています。
RATIONALE-306試験(649例の対象者のうち日本人は66例)において、以下の結果が明らかになりました。
化学療法を行ったことがない進行・再発の食道扁平上皮がんに対し、化学療法を単独で行った事例とテビムブラ+化学療法を実施した事例を比べたところ、主要評価項目の全生存期間を有意に延長することが判明しました。
一方、RATIONALE-302試験(512例の対象者のうち、日本人は50例)において、以下の結果が明らかになりました。化学療法を行ったことがある進行・再発の食道扁平上皮がんに対し、テビムブラ単剤を実施した事例と化学療法を比較したところ、主要評価項目である全生存期間を有意に延長することが判明しました。
上記の試験結果を踏まえ、同剤の用法・用量では、フルオロウラシル並びにシスプラチンとの併用で、成人にはテビムブラとして1回200mgを60分かけて点滴静注する(3週間間隔にて実施)」とされていますが、化学療法治療を行った経験がある場合には、同剤を単独での投与も認められています。
参照元:オンコロ|【承認】根治切除不能な進行・再発の食道がんへの適応でテビムブラが薬事承認
食道がんの新薬として抗PD-1抗体薬「テビムブラ」が登場しました。すでに発売されている抗PD-1抗体薬には、オプジーボ・キイトルーダ・リブタヨという薬剤があります。
上記のうち、オプジーボとキイトルーダは、食道がんの一次治療においてすでに承認されています。ヤーボイは、オプジーボと併用することで承認を受けています。
食道がんの治療薬では、4番目の免疫チェックポイント阻害薬になったテビムブラは、二次治療についても同時に承認されました。一次治療において、免疫チェックポイント阻害薬を使用していない場合、二次治療でテビムブラを単独使用できます。
テビムブラの作用機序は、T細胞の「PD-1」を特異的に抑えることで、がん細胞からのブレーキを無効化させ、ヒト本来の免疫反応を活性化させます。結果として、T細胞はがん細胞を攻撃し、死滅させる作用機序を有しています。
T細胞が活性化されると、ヒト本来の免疫力によりがん細胞を攻撃するので、これまで使われてきた抗がん剤と比べ副作用が比較的軽減できることが報告されています。※1
※1参照元:国立研究開発法人国立がん研究センター公式HP/免疫療法
参照元:銀座みやこクリニック|【テビムブラ】久しぶりに食道がんに新薬が登場!(2025年2月)
第Ⅲ相MATTERHORN試験を実施したところ、良い結果が出ているので、アストラゼネカのイミフィンジ(デュルバルマブ)と標準治療とされるFLOT療法と呼ばれる化学療法を併用した周術期治療は、統計学的・臨床学的に有意であることが判明しました。
患者には、手術の前にイミフィンジ・化学療法の術前補助療法を行い、イミフィンジ・化学療法の術後補助療法、その後にイミフィンジの単剤療法を実施しました。
上記試験においては、切除可能である早期・局所進行(ステージII・III・IVA)の胃がん並びに、食道胃接合部(GEJ)のがんと診断された患者において、上述のレジメンと周術期化学療法単独の比較評価を実施しました。
副次評価項目の全生存期間(OS)について、中間解析を行ったところ、イミフィンジをベースとするレジメンには良好な傾向が観察されました。OSは、最終解析にて正式な評価が行われる予定であり、この試験ではOS追跡を継続していく予定とされています。
胃がんは毎年およそ100万人が診断を受けている状況です。
2024年には、アメリカや日本、欧州連合(European Union)において、早期局所進行の胃がんもしくは食道と胃の接合部に発生しているがんで治療を受けた患者はおよそ4万3000人となっています。
2030年までの間に上述の地域において、およそ6万2000人もの人々が診断されると予測されています。
同試験の治験責任医師であるYelena Janjigian氏(ニューヨークのSloan Kettering記念がんセンター消化器腫瘍内科主任医師)は、以下のように述べています。 「根治目的の化学療法や手術を受けてたとしても、胃がんは再発するケースが多く、予後は良くない状況です。
MATTERHORN試験におけるデータは、デュルバルマブを併用した周術期レジメンが、がんの再発リスクの低減を含め、患者の転帰を改善したことを示しています」。
アストラゼネカのチーフ・メディカルオフィサーであり、オンコロジー・チーフ・ディベロップメントオフィサーでもあるCristian Massacesi氏は、以下のように述べています。
「MATTERHORN試験は、切除できる胃がんや食道胃接合部がん患者において、無イベント生存期間の統計学的に有意な改善が見られた最初の免疫療法の第Ⅲ相試験とされています。
イミフィンジによる周術期アプローチは、患者の生活に大きな影響を与えられ、がんに対してより早期ステージに取り組むといった我々のコミットメントを明確に示しています」。
参照元:アストラゼネカ|イミフィンジをベースとするレジメンが、切除可能な早期胃がんおよび食道胃接合部がんにおいて、無イベント生存期間の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示す
切除できる食道腺がん患者の治療において、フルオロウラシル+ロイコボリン+オキサリプラチン+ドセタキセルを使用したFLOT療法による周術期化学療法は、術前化学放射線療法と比べると、3年時点で全生存率を有意に改善したという結果が判明しました。
また、3年無増悪生存率についても良好であり、術後合併症の発現は同程度だということがわかりました。
※上記は、ドイツ・Bielefeld大学に在籍しているJens Hoeppner氏らが行った「ESOPEC試験」にて判明。研究結果は、2025年1月23日号のNEJM誌に掲載されています。
ESOPEC試験は、切除が行えるとされる食道がんの治療において、FLOTによる周術期化学療法の有用性についての評価を目的とする医師が主導となった非盲検無作為化対照比較第III相試験です。
2016年2月から2020年4月にかけて、ドイツにある25の施設にて患者の登録が行われています。対象となった方は、以下の通りです。
試験の概要は、被験者を1対1の割合となるように、下記のように割り付けを行いました。
FLOT群では、術前に2週を1サイクルとする化学療法(FLOT)を4サイクル施行し、術後に同様の化学療法を4サイクル(退院から4~6週後に開始)行った。術前化学放射線療法群では、カルボプラチン+パクリタキセル(週1回[1、8、15、22、29日目]、静脈内投与)と放射線治療(総線量41.4Gy:23分割、1.8Gy/日)を施行した後に手術を行った。
438例を登録し、FLOT群に221例(男性89.1%・年齢中央値63歳)、術前化学放射線療法群に217例(63歳・89.4%)を割り付けを実施しました。FLOT群のうち193例、術前化学放射線療法群の181例は手術を実施。全体の追跡期間中央値は55ヵ月という結果でした。
3年の時点における全生存率は、術前化学放射線療法群は50.7%(95%信頼区間CIは43.5~57.5)で男性89.1%だったのに対して、FLOT群は57.4%と有意に高い値を示しています。
全生存期間中央値は、FLOT群が66ヵ月(36から評価不能)、術前化学放射線療法群は37ヵ月(28から43)という結果でした。また、3年時の無増悪生存率は、FLOT群は51.6%(95%CI44.3~58.4)、術前化学放射線療法群は35.0%(28.4~41.7)という結果でした。
完全切除したのは、FLOT群193例中の182例(94.3%)、術前化学放射線療法群の181例中172例(95.0%)で達成という結果でした。術後の病理学的完全奏効(切除した原発巣とリンパ節に浸潤がんなどがない状態)は、それぞれ192例中32例(16.7%)・179例中18例(10.1%)で得られています。
Grade3以上の有害事象が出現した事例数は、以下をご覧ください。
重篤な有害事象が出現したのは、それぞれ207例中98例(47.3%)、196例中82例(41.8%)です。手術を受けた患者における術後の手術部位と手術部位以外の合併症の頻度については、両群で同程度となっています。術後90日時点で死亡した事例数は、それぞれ6例(3.1%)・10例(5.6%)という結果でした。
参照元:ケアネット|切除可能食道腺がん、FLOTによる周術期化学療法が有効/NEJM
神奈川県立がんセンター副院長兼消化器外科(胃食道)にて部長を務める大島貴氏らの研究グループは、以下について発表しました。食道がんにおける新しい治療法とその効果、安全性について評価した臨床試験の結果を報告しました。この研究報告は学術誌「Nature」にも掲載されている内容です。
我が国において食道がんは一般的ながんの1つであり、新しい治療法の開発が求められている状況です。研究では、エリブリンリポソーム製剤が使用された注射液の抗がん剤と、免疫チェックポイント阻害剤「ニボルマブ」を併用した効果と安全性について報告されています。
免疫チェックポイント阻害剤は、免疫ががん細胞を攻撃するパワーを維持する働きを持ち、免疫細胞の力を回復させる薬剤のことです。
切除不能並びに、事前に治療を受けている食道がんの日本人患者35名を対象に、エリブリンリポソーム製剤が使用された注射液とニボルマブを3週間ごとに投与し奏効率と無増悪生存期間、全生存期間、安全性について評価しています。
研究の結果、以下のことがわかりました。
また主に見られた副作用として確認された症状は、以下の通りです。
E7389-LFとニボルマブを併用した治療法は、切除不能であり前治療歴のある食道がん患者において、抗腫瘍効果を示したという結論がでました。
参照元:メディカルドック|切除不能の「食道がん」に希望の光、研究で判明した抗がん剤治療の“新たな可能性”とは
京都大学などの研究チームは、口腔内の頬の粘膜を調べるだけで食道がんを診断する方法を開発しました。遺遺伝子が変異している情報から、食道がんのリスクである飲酒量を推定し、食道がんの有無について確認しました。
今後、発症前からリスクの正確な予測を行い、早期発見・予防につなげていくこととなっています。研究チームは、海外も含めて新たな検査法として普及していけるよう視野に入れていて、国際特許の出願中です。
食道がんは、飲酒や喫煙により遺伝子の変異が生じて異常な細胞となってしまい、年を重ねるに連れて、その細胞が増殖して、がん化するとされています。
日本人の中には、アルコールを代謝しにくい体質の人が多い傾向にあり、そのような人は、代謝できるタイプと比較して食道がんを発症する割合が8~10倍も高い特徴があります。
研究チームは、食道と頬の粘膜が同じ扁平上皮細胞で構成されていて、細胞の変異も同様に発生していることに着目し、食道がんとの関係性を調べるため、40~94歳の男女を対象として、食道がんにかかっている患者121人とがんではない101人の頬の粘膜を綿棒でこすり採取しました。
がんの増殖に関係する遺伝子やアルコールの代謝に関する5つの遺伝子の変異を28平方ミリの粘膜の細胞で確認したところ、以下のことがわかりました。アルコールを代謝しにくい人で85%、代謝しやすい人で79%の確率で、食道がんの有無について見分けることができました。
今後は、現時点においてがんを発症していない人を追跡調査し、一人ひとりのがんの発症確率を予測できるよう目指しています。
参照元:朝日新聞|ほおの粘膜こすり食道がん確認、簡単に発症を予測 京都大
食道がんの発生機序を解明する重要な研究成果について、近藤雄紀医学研究科特別研究学生や大橋真也医学部附属病院特定准教授、武藤学医学研究科教授らが在籍する研究グループが発表しました。
WHO(世界保険機関)では、健康によいアルコール摂取量はないとしており、日本においても、食道がんの発生を抑えるアルコールはゼロとしています。また、WHOの下部組織IARC(世界がん研究機関)では、アルコール飲料に含有しているエタノール代謝産物アセトアルデヒドは、明らかな発がん物質と認識しています。
食道がんはアジア地域でとりわけ多く発生していて、その理由は、日本人を含めたアジア人には、アセトアルデヒドの代謝能が低いとされる「不活性型2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)」を所有している人が多いことが原因とされています。
そのうえ、食道がんフィールドがん化現象(多発する)ことで知られていますが、このような現象が発生する原因はこれまで明らかにされていませんでした。
この研究では、上記の病態を再現するため、ALDH2機能低下と食道特異的ながん抑制遺伝子TP53機能欠失を備えている動物モデルを作り、長期間アルコールを投与することで食道がんが多発すると科学的に実証しました。
上記研究結果から、以下が食道発がんの重要な3因子であると報告されています。
上記の3因子は、食道においてフィールドがん化現象が発生する要因にもなると発表しました。この研究は、今後食道発がん予防法を開発していくうえで重要な知見になることが期待されています。
参照元:京都大学|飲酒により食道がんが多発する機序の解明―食道発がんに重要な3因子の同定―
日本人の食道癌において、切除が不可能なほど進行した食道癌の治療は細胞傷害性化学療法が中心とされていましたが、現在は免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の導入によって複数の選択肢が承認されています。しかし、免疫チェックポイント阻害薬治療として用いられる抗PD-1抗体ニボルマブやペムブロリズマブ、抗CTLA-4抗体イピリムマブといった薬剤の使い分けや治療法の選択は具体的にどうしていくかが研究段階にあることも事実です。
そのような中、2023年6月に開催された第77回日本食道学会学術集会パネルディスカッション「切除不能進行・再発食道癌に対する治療戦略」において、ICIと化学療法の併用、2次治療以降のニボルマブとイピリムマブの併用、さらにICI治療後のコンバージョン手術における実績などが報告されました。
参照元:日経メディカル|日本人進行食道癌におけるICIの効果と実地臨床での短期成績
食道癌は初期段階の治療法として内視鏡的切除や手術が一般的に行われますが、ステージの変化や癌の状態によっては外科治療でなく化学放射線療法や放射線療法などが初回治療として実施されます。
関西医科大学外科学講座准教授の山﨑誠氏らによる研究チームは、切除できない局所進行食道癌に対する化学放射線療法と化学療法の有用性をそれぞれ比較検証した結果、化学療法のみの患者に対して放射線治療を併用した化学放射線療法の方が再発リスクを低減させ、予後の改善にも効果が認められたそうです。
参照元:時事メディカル|放射線療法でT4b食道がんの長期予後が改善
大阪大学大学院医学系研究科の土岐祐一郎教授(消化器外科学Ⅱ)や巽光朗准教授(放射線医学)などによって構成された研究グループが、食道癌の標準治療の前後にPET-CT検査を実施。腫瘍の糖代謝と体積にもとづく「総糖代謝量」の変化を測定して治療効果や予後の予測を行う検査技術を確立しました。
腫瘍の総糖代謝量は癌の体積に比例するため、総糖代謝量が減少することで抗がん剤による治療効果を検討できる上、さらに減少率が80%以上となった場合は予後の成績が良くなることも示唆されています。
この研究は単に治療効果や予後の分析だけでなく、新しい癌治療の有用性の検証にも役立つことが期待されています。
参照元:大阪大学|PET-CTによる新たな食道がん治療効果判定法の確立
2024年8月に、国立研究開発法人国立がん研究センターと順天堂大学、メタジェンセラピューティクス株式会社などのメンバーが結成した共同研究チームによって、食道癌や胃癌といった癌患者を対象として「腸内細菌叢移植療法」の臨床試験が開始されました。同試験は消化器癌の患者に対する腸内細菌叢移植療法の安全性や有効性の検討を目的としたものであり、免疫チェックポイント阻害薬によって治療効果を得られないような患者に対しても、腸内細菌叢をコントロールすることで治療の奏功割合を改善できる可能性を検証するためのものとなっています。
具体的には、健康な人の便から採取した腸内細菌叢を、内視鏡によって対象の癌患者の腸内へ注入・移植し、腸内細菌のバランスを人為的に整える医療技術です。これを従来の免疫チェックポイント阻害薬による治療と併用することで、より効果的な癌治療を確立できると期待されています。
参照元:国立研究開発法人国立がん研究センター|食道がん・胃がん患者さんを対象とした「腸内細菌叢移植」の臨床試験を開始~免疫チェックポイント阻害薬と腸内細菌叢移植併用療法の安全性と有効性を検討~
外科治療の適用となる進行食道癌について、従来の日本の標準治療では「2剤併用化学療法(CF療法)」が採用されていた中、さらに強力な抗がん剤を加えた「3剤併用化学療法(DCF療法)」や、欧米において標準治療となっている「化学放射線療法(CF+RT療法)」などの治療効果をそれぞれ比較し、新たな日本の標準治療のベースを考える取り組みが行われています。なお、同研究は2024年6月27日に国立がん研究グループや日本臨床腫瘍研究グループから共同発表されました。
本比較試験の結果によって、従来の進行食道癌の標準治療として採用されていたCF療法よりも、DCF療法の方が生存期間を有意に延長できることが示され、DFC療法こそが日本における切除可能進行食道癌の標準治療として相応しいという結論が導かれています。一方、欧米で実施されているCF+RT療法については、CF療法に対して有意な生存期間の延長が示されず、他の病気の死亡リスクを誘発している可能性が示唆されました。
本研究の中間結果が2022年に発表されて以来、日本国内における進行食道癌の標準治療として、従来の2剤併用化学療法(CF療法)でなく、3種類の抗がん剤を活用した3剤併用療法(DCF療法)が積極的に取り入れられるようになりました。一方、化学放射線療法(CF+RT療法)では肺炎や心疾患といった病気による死亡リスクを高める傾向が懸念されていたことも重要です。
このような結果を踏まえて、国立がん研究センター中央病院の加藤健科長は今後の国際的な臨床腫瘍科の分野においても、食道癌の治療法や標準治療について再検討する流れが来る可能性を示唆しており、欧米での検証も進められている事実は見逃せません。
以上のことから、世界的な標準治療を見直す転換点として、同研究の価値が期待されていることもポイントです。
参照元:NHK|食道がん 術前の抗がん剤 1種類追加で生存率高く 研究グループ
2024年の5月31日~6月4日に開催された米国シカゴの米国臨床腫瘍学会(ASCO 2024)において、愛知県がんセンターに所属する室 圭氏が、治療済みの進行胃癌や食道癌に対して「抗ネクチン4抗体薬物複合体エンホルツマブ ベドチン(EV)」を使った治療が抗腫瘍効果を発揮できるという可能性を発表しました。
これは、すでに免疫チェックポイント阻害薬などによる治療を受けている進行胃癌や食道癌の患者に対して、28日間を1サイクルとする期間中にEVを定期投与することにより、癌治療における有意なメリットを得られたという研究結果です。また、これまでに免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けていなかった患者に対しては、さらに効果が上昇する可能性も示唆されました。
なお、試験はオープンラベル多コホートフェーズ2試験であるEV-202試験として実施され、安全性プロファイルについても過去に報告されていた内容と一致しています。
参照元:がんナビ|抗ネクチン4抗体薬物複合体エンホルツマブ ベドチンが既治療の進行胃癌/食道癌に有用な可能性【ASCO 2024】
2023年10月、オンコリスバイオファーマは外科治療としての根治切除術や、化学療法と放射線治療を組み合わせた化学放射線療法を受けられない局所進行食道癌の患者について、ウイルス療法薬テロメライシン(OBP-301)と放射線療法を併用することで抗腫瘍効果を有意に高められる可能性を発表しました。これはフェーズ2試験のOBP101JP試験として実施され、対象者はOBP101JP試験に登録されていた37人となっています。
患者は放射線治療を受けていた6週間の間、内視鏡によって患部へテロメライシンが合計3回投与されました。そしてその結果、局所完全奏効率(L-CR率)が41.7%を示し、事前に有効性を示す閾値として指定されていた30.2%を上回っていることが認められました。
以上の結果から、外科治療や化学放射線療法による改善が困難と思われる局所進行食道癌の患者であっても、ウイルス療法薬と放射線療法を併用することで有効な治療を実施できる可能性が期待されています。
参照元:がんナビ|根治切除術や化学放射線療法が受けられない局所進行食道癌にウイルス療法薬と放射線療法の併用が良好な抗腫瘍効果を示す
MONSTARプロジェクト(SCRUM-Japan MONSTAR-SCREEN)とは、国立研究開発法人国立がん研究センターなどが参加する産学連携がんゲノムスクリーニングプロジェクトであり、2013年に肺癌患者を対象としてスタートしたLC-SCRUM-Japan(現:LC-SCRUM-Asia)と、2014年に消化器癌の患者を対象としてスタートしたGI-SCREEN-Japan(現:MONSTAR-SCREEN)という、2つのプロジェクトが統合されたものです。
そして2024年7月、MONSTARプロジェクトは合計16,144人の癌患者が参加した4つの研究に関して統合解析を実施し、患者の分子プロファイルを徹底的に調査することで、バイオマーカーにもとづいた治験治療の成績や標的治療の生存期間などがまとめられました。なお、治験参加の患者には食道癌や胃癌、大腸癌、胆道癌などの癌患者は含まれています。
解析により、治験治療によって奏功した患者の割合は29.2%、また全生存期間の中央値は14.8ヶ月となり、治験治療で全生存期間が延長されたことも認められました。また、治療効果に優れた治験薬として抗HER2治療薬が挙げられています。
参照元:国立研究開発法人国立がん研究センター|世界最大規模の統合解析により、がん個別化医療による生存期間の延長を確認
2024年7月30日、オンコセラピー・サイエンス株式会社は、同社が塩野義製薬株式会社へライセンスアウトした「がんペプチドワクチン(CPV):S-588410」について、食道癌の患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験結果の公表をアナウンスしました。また、同試験の結果は論文として「Esophagus誌」にも掲載されています。
「S-588410」は食道癌の発現抑制に関連した5種類の拘束性ペプチドで構成される癌特異的ペプチドワクチンであり、第Ⅱ相臨床試験では尿路上皮癌患者に対して良好な抗腫瘍効果や妊孕性が認められていました。そして、今回の研究において改めて食道扁平上皮癌の患者に対する投与が第Ⅲ相試験として実施され、ペプチドワクチンを投与した際の有効性や安全性などの総合評価が行われました。
結果的に、S-588410は免疫反応を安全に誘導したものの、不使用の患者との間で無再発生存期間の有意差は認められませんでした。ただし生存期間延長は部分的に認められ、S-588410は生存期間の延長を叶えられる可能性が示唆されています。
参照元:【PDF】オンコセラピー・サイエンス、食道がん患者を対象とした S-588410 第III相臨床試験結果論文公表のお知らせ
2024年7月に「Annals of Gastroenterological Surgery誌」において、国立がん研究センター中央病院の久保祐人氏らによる研究結果として、食道癌患者に対する術前化学療法と、血中亜鉛濃度(Zn濃度)の関係性や再発リスクについての影響が発表されました。
研究では、2017年8月から2021年2月の期間に、食道癌の完全切除を行った患者を対象として調査が行われました。そしてその結果、術前化学療法後食道癌患者として術前化学療法を受けるケースにおいて、手術前の亜鉛濃度(Zn濃度)が低い患者の場合ほど、癌の早期再発リスクが高まることが明らかにされています。そのため、食道癌患者に術前化学療法を実施する場合、その血清亜鉛濃度を測定してZn濃度が底値であった場合は、あらかじめ亜鉛補給を行って血中亜鉛濃度をコントロールする必要性が示唆されており、またそれによって食道癌の再発リスクをマネジメントできるようになるという可能性も指摘されています。
加えて、食道癌患者の血清亜鉛濃度を測定することで、治療後の再発リスクを検証するバイオマーカーとして利用できるといった可能性が期待されている点も見逃せないでしょう。
参照元:ケアネット|食道がんの術前化学療法前のZn濃度、早期再発に影響
飲酒は様々な癌の発症リスクを高める危険因子として知られており、日本国内でも過度な飲酒や日常的なアルコールの摂取によって食道癌や肝臓癌、大腸癌など色々な癌の発生につながることが指摘されています。そのため日常的な癌予防の取り組みとして、節酒や禁酒といったアルコール摂取量の管理が推奨されていますが、一方でアルコール量の制限が具体的にどの程度の癌予防に寄与しているのか、医学的かつ具体的に検証しているデータは多くありませんでした。
そこでフランスの研究グループは、フランス国内の癌治療歴のあるアルコール依存症患者などを対象として、禁酒治療と飲酒関連癌の発症リスクの相互参照を行いました。
その結果、食道癌については飲酒を継続していた人と比べて、禁酒によって男性患者で36%、女性患者で41%の発症リスク低下が認められ、禁酒することで男女でおよそ4割程度の癌予防効果を得られることが認められました。
今回の研究結果によって、明確な数字や医学的根拠にもとづいて禁酒がアルコール依存症治療としてだけでなく、癌予防にもつながることが改めてアナウンスされています。
参照元:Gooday|大腸がんや肝臓がんのリスクが「禁酒」で大きく減少
国立研究開発法人国立がん研究センターと愛知県がんセンターによる国際共同研究グループは、食道癌や婦人科癌などHER2遺伝子増幅のある固形癌の患者の血液をサンプルとして、血液中の遊離DNA(cfDNA)を調べるリキッドバイオプシー(血液検査)を行うことで、抗体薬物複合体「トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd:Trastuzumab deruxtecan)」の治療効果を改めて検証することに成功しました。
そもそもHER2は癌細胞の増殖に関与するタンパク質として知られており、T-DXdはHER2を標的とした治療薬として胃癌や乳癌などの治療ですでに実用化されています。一方、同様にHER2遺伝子増幅を有するその他の固形癌においてもT-DXdの有用性は期待されていたものの、根本的に患者数が少ないなどの事情から具体的な研究や治療薬の開発は進められていないという実態がありました。
そこで同研究グループは改めて、リキッドバイオプシーを活用した大規模患者のスクリーニングを行った上で、HER2遺伝子増幅を認めた固形癌の患者を対象としてT-DXdを用いた医師主導治験(HERALD試験)を実施し、多くの癌患者において同治療薬の有効性が認められたことが重要です。
これにより、今後は食道癌を含めた様々な癌において、T-DXdを使った治療法や治療薬の開発・実施の可能性が期待されています。
参照元:国立研究開発法人国立がん研究センター|リキッドバイオプシーによりHER2遺伝子増幅が認められた固形がんに対するトラスツズマブ デルクステカンの臓器横断的な有効性を確認
国立研究開発法人国立がん研究センターと慶應義塾大学、そして東京大学による共同研究グループによって、2023年12月、食道癌に対する放射線治療における癌免疫応答メカニズムが解明されたという研究報告が発表されました。
本研究が行われる以前から、食道癌の患者への治療として放射線治療は実施されていましたが、具体的にどのような作用や機序によって放射線治療が癌細胞への治療効果を発揮しているのか明確には解明されていませんでした。そこで研究チームは1細胞解析や空間的トランスクリプトームといった新手法を活用することで、遺伝子レベル・細胞レベルにおける食道癌組織への放射線の効果を解析し、結果として癌免疫応答を発見したということです。
研究の結果、放射線治療によって腫瘍組織において活性化する遺伝子や細胞が発見され、特に放射線治療を行っている間は癌細胞の免疫応答を抑制する細胞や遺伝子が活性化されることも発見されました。また、これらの研究によって発見された遺伝子や細胞を改めて治療のターゲットにすることで、より効果的な食道癌の治療法開発にも役立つことが期待されています。
参照元:国立研究開発法人国立がん研究センター|放射線治療が誘導するがん免疫応答メカニズムを解明
2021年11月、国立がん研究センター中央病院がサポートしている日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)から、食道扁平上皮癌の患者に対する治療法として、化学放射線療法の有効性や今後の治療の可能性が公表されました。
そもそも食道扁平上皮癌の治療法としては、医学的根拠にもとづいた標準治療として手術による食道切除が採用されており、外科治療を受けることが第一の選択肢となっていた点が重要です。一方、食道切除は患者の肉体やQOLに大きなマイナス影響を与える可能性があり、術後の生活における問題点も指摘されていました。
そこで同研究グループは改めて手術を伴わない化学放射線療法が食道扁平上皮癌の治療として有効であるかどうかを検証し、また食道切除を実施した場合との効果差などの比較を行いました。
その結果、ステージ1の食道癌においては、化学放射線療法は食道切除に劣らない治療効果を得られることが明らかになり、今後の治療の選択肢を広げられる可能性が示唆されています。一方、化学放射線療法は食道切除と比較して再発リスクが高くなる可能性も指摘されましたが、その場合も追加治療を行うことで、手術療法と同程度の生存期間を得られている点は見逃せません。
参照元:国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院|臨床病期I期食道扁平上皮がんにおける標準治療を検証化学放射線療法が手術療法に劣らない有効性を示し、新たな治療選択肢に
日本食道学会では、「食道癌診療ガイドライン」において、治療の標準化を行い、5年に1度比較的新しい知見を入れて改訂しています。診療ガイドラインによると、各ステージで適切な治療の実施を推奨しています。
内視鏡による胃がん検診で、ステージ0という早期の段階で食道がんが発見できれば、口から小型カメラ・器具を入れる内視鏡治療にて治療できるのが食道がんの特徴と考えられています。
また、食道がんの治療においては、外科手術の担う役割は大きいとされ、ステージ1から4まで幅広いケースで治療の柱となっています。食道がんの手術は、従来は開胸手術がメインでしたが、胸・腹部に5つの小さな穴を開けて、そこからカメラ・器具を挿入して実施する低侵襲の胸腔鏡手術が増えているのが特徴です。
2024年1月アメリカで開かれた学会で発表された通り、食道がんグループの研究結果によると、開胸手術よりも胸腔鏡の死亡率が0.64倍と少なく、全生存期間に再発がなく、生存できる期間が長いという結果が出ました。これらの研究の結果、日本において、胸腔鏡手術は食道がんの標準治療となったとされています。
上記のほかには、他臓器への転移があるステージⅣBに対する薬物療法においても進化が見られています。
参照元:がんナビ|第25回日本癌治療学会・市民公開講座(2)知って安心!食道がん予防と最新治療法
大阪はびきの医療センター肺腫瘍内科の小牟田清英氏らによる研究チームが、肺癌の治療経過中に生じた嚥下困難によって、食道転移の疑いが認められた症例に関する臨床研究を特定非営利活動法人日本肺癌学会が刊行した「肺癌 64 (2), 102-106, 2024-04-20」において報告しました。
前提として、肺癌から食道への癌転移は極めてレアケースであることが重要です。その上で、対象となった60歳の男性患者はすでに肺腺癌として診断されており、化学療法を中心とした治療を目的としながら経過中となっていました。そしてその期間中に食べ物をスムーズに飲み込めない嚥下困難が発生しました。しかし嚥下困難の原因を確かめるために摂食・嚥下スクリーニング検査やCT検査を実施しても明確な原因となる初見は認められず、その後も改善できない状態が続いたため、改めて嚥下造影検査を実施したところ食道の中部に食道狭窄が認められたという流れです。
そして胸腹部CT検査などを再実施した結果、肺癌だけでなく中部食道粘膜における肥厚といった状態が発見され、最終的に嚥下障害の原因として肺癌食道転移による食道狭窄が診断されることに至りました。
これは、肺癌経過中に嚥下困難が生じた場合、嚥下スクリーニング検査などで異常が認められなくても、肺癌から食道への転移が生じている可能性も考慮すべきという必要性を示唆しています。
参照元:CiNii Research「肺癌経過中に嚥下困難を認め,食道転移が強く疑われた1例」
東京蒲田医療センター消化器内科の井上慶一氏を中心とする臨床チームが、一般社団法人日本消化器内視鏡学会関東支部が刊行した「消化内視鏡の進歩 102 (1), 49-51, 2023-06-30」において、食道狭窄をきっかけに乳癌から食道への癌転移を診断した症例についての報告を論文発表しました。
対象となった患者は74歳の女性であり、乳癌の診断を受けてホルモン療法を行っていました。しかしその治療中に食べ物を上手く飲み込めない嚥下困難や経口摂取困難が生じて、それを主治医に訴えたというのがきっかけです。
検査を行ったところ、頸部食道狭窄が認められ、狭窄部口側には食べ物の残りかすが蓄積していることも発見されました。また食道壁外には異常などの病変がなかったものの、上部消化管内視鏡検査によって食道全周狭窄が発見され、最終的には生検によって乳癌から食道への癌転移が確認されたという流れです。
食道腔内へ露出していない腫瘍や転移癌は、生検を繰り返しても見逃されてしまうケースがあり診断困難な症例の1つとなっていますが、このような場合には穿孔生検や超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診などが有用であると示唆されています。
参照元:CiNii Research「乳癌の食道転移により食道狭窄をきたした1例」
高知大学医学部外科学講座の北川博之氏や横田啓一郎氏などによる臨床チームが、29年前に治療された乳癌からの食道転移を、超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診によって診断した症例に関する研究結果を報告しました。なお、同研究は日本臨床外科学会が刊行した「日本臨床外科学会雑誌 83 (1), 61-67, 2022」においても掲載されています。
患者となったのは68歳の女性であり、29年前に左の乳房に癌が発見され、左乳房切除術を施行されていました。その後、3年ほど前から食べ物を飲み込みにくいといった嚥下困難が自覚症状として表れており、その後は地域の医師の下で食道狭窄の治療としてバルーン拡張術を受けていました。しかし症状が一向に改善せず、ついには経口摂取が不可能となってしまったため、改めて内視鏡下食道粘膜生検を受診したものの悪性初見は認められませんでした。
ところが、CT検査によって胸部食道の全周性壁肥厚や椎体の硬化性変化が確認された後、改めて骨生検によって乳癌の骨転移が診断され、さらに超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診による病理組織検査を実施したところ、乳癌食道転移として確定診断されたという流れです。
以上の結果は、乳癌の既往歴のある患者においては、食道狭窄や嚥下困難が乳癌食道転移の可能性を考慮する理由になり、またその診断には超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診が有用と考察されています。
参照元:CiNii Research「超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診で診断した乳癌食道転移の1例」
防衛医科大学校外科学講座の神津慶多氏や守屋智之氏らによる研究チームによって、乳癌の既往歴を有する患者に対して、化学療法中の胸腔鏡下手術が乳癌食道転移の診断や症状の改善に有用な選択肢となり得るという臨床研究の結果が報告されました。また同研究は日本臨床外科学会による「日本臨床外科学会雑誌 79 (2), 314-319, 2018」にも論文として収録されています。
対象患者は70歳の女性であり、10年前に左乳癌の切除術を受けた後、補助化学療法を受けていました。しかし術後9年が経過した時点で骨上リンパ節再発が認められ、ホルモン療法を受けていたという前提です。
そして切除術後10年目に嚥下困難と経口摂取不可能が発生し、主治医が上部消化管内視鏡検査を行った結果、胸部中部食道に全周性狭窄が認めれました。しかし生検では悪性所見が認められず、また患者の状態からバルーン拡張やステント留置といった対症療法※も困難でした。そこで症状改善や診断確定のために胸腔鏡下食道亜全摘術を行って、摘出したサンプルを病理学的に検査したところ、乳癌食道転移の診断となりました。
全体の考察として、通常、多発転移を伴った再発乳癌では化学療法が中心となりますが、特定の条件下では胸腔鏡下手術も選択肢として有用であるとまとめられています。
参照元:CiNii Research「胸腔鏡下食道亜全摘術を施行した乳癌術後10年目の食道転移の1例」
食道癌の患者に対する治療法として、食道切除術が行われていましたが、これは食道病変部だけでなく周囲のリンパ節の摘出も同時に行うことが一般的でした。しかし、食道を切除してしまうことで患者の術後の生活に与える影響が大きくなり、QOLの低下が大きな問題になっていたことも事実です。加えて、手術そのものが高齢患者にとっては合併症リスクなどを増大させることから、選択できないといった可能性もありました。
そのため、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの医師らによる研究チームが、食道癌の診断や治療・予防に向けた新しいアプローチを研究し、食道を温存しつつ内視鏡を使って腫瘍や異形成細胞を取り除く局所療法やアブレーション治療についての研究結果を報告しています。
なお、食道癌の治療として食道切除を回避した治療法を選択するためには、患者の癌のステージなどを適切に検査することが欠かせないとされており、容積計測型レーザー内視鏡検査(volumetric laser endomicroscopy)などの手法が行われていることもポイントです。
「AMG337」は低分子MET阻害薬として食道癌や胃癌の治療に活用される医薬品であり、c-Metチロシンキナーゼの酵素活性への阻害剤として働く低分子分子標的薬の1種です。
「2015 Gastrointestinal Cancers Symposium (GICS)(2015年1月15日)」において、AMG337MET阻害薬が、MET遺伝子増幅のある胃癌・食道癌や大腸癌の患者に対して、全奏効率62%を達成したことが報告されています。また、その効果の現れ方は迅速なものであり、大半の症例において治療開始からわずか4週間程度で奏効が認められたという点も見逃せません。
なお、研究報告ではさらにMET遺伝子増幅のある固形癌患者に対して、より規模を拡大した第2相臨床試験が実施されていることも報告されており、それらの試験結果によってAMG337の抗癌作用や治療薬としての有意性をさらに検証していく必要性も報告されています。
参照元:海外がん医療情報リファレンス|AMG337MET阻害薬は胃癌および食道癌に目覚ましく迅速に奏効する
米国国立がん研究所(NCI)と米国疾病対策予防センター(CDC)によるプレスリリースとして、2014年12月に、無煙タバコの使用と食道癌や口腔癌、膵臓癌といった癌のリスクとの相関性に関する報告が発表されました。また、同研究はインドのムンバイで開催された国際会議においても同日に発表されています。
同論文では無煙タバコの健康リスクについての指摘が述べられていますが、まず無煙タバコは少なくとも世界70カ国において、およそ3億人超の使用者がいるとされているという前提が重要です。加えて、無煙タバコ製品には様々な発癌物質が含有すると指摘され、その数は30種類を超えているといった点も無視できません。
さらに無煙タバコは国や地域によって製造法や販売法、使用法といったシステムが異なっており、規制や法令についても大きく異なっていることが重要です。しかし、そのような前提を置いても無煙タバコは食道癌などの癌リスクを高めると示唆するエビデンスが報告されており、またその他にも歯周病や白斑性、口腔粘膜病変といった有害事象をもたらすリスクが懸念されます。
参照元:海外がん医療情報リファレンス|少なくとも70カ国で3億人以上が無煙タバコを使用
京都大学の研究チームが、飲酒によって食道癌が多発する原因や機序を具体的に解明したと発表し、研究成果を2025年2月6日付の国際学術誌「Journal of Gastroenterology(オンライン版)」へ掲載しました。
そもそも飲酒によって癌のリスクが高まることは広く知られており、食道癌についても、アルコール飲料に含まれているエタノール代謝産物アセトアルデヒドの摂取が発癌リスクにつながることは明らかとされています。一方、どうしてアルコールの摂取が食道癌の多発化を招くのか、具体的な仕組みや機序は解明されていませんでした。
そこで京都大学は複数のモデル動物を作製して、アルコールの投与と食道癌の多発化の関係を分析し、ついに「アルコール摂取」と「不活性型2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)」、そして「がん抑制遺伝子TP53の機能欠失」の3つが食道癌や扁平上皮癌の多発化の因子として深く関与していることを突き止めました。
参照元:京都大学|飲酒により食道がんが多発する機序の解明―食道発がんに重要な3因子の同定―
2025年2月20日、国立がん研究センターの研究グループが、切除不能局所進行食道扁平上皮癌に対する治療法として、化学放射線療法と免疫チェックポイント阻害薬「アテゾリズマブ」の併用が有効であるという研究結果を発表しました。なお、本研究や試験の結果は「Nature Cancer誌(2025年2月19日19時付)」にも掲載されています。
まず、切除不能局所進行食道扁平上皮癌の治療としては化学治療と放射線療法を併用した化学放射線療法が標準治療として認められており、本研究はそこへさらに「アテゾリズマブ」を組み合わせることで、完全奏効率を高いレベルで得られたという結果を報告しています。
本研究では40人の患者が試験参加しており、結果的に得られた完全奏効率は42.1%となりました。これは、すでに知られていた化学放射線療法単独実施の場合の15~20%と比較して優れた数値を得られており、また全生存期間についても1年が65.8%となり、重篤な有害事象の発生率は5%程度でした。
参照元:日経メディカル|切除不能局所進行食道扁平上皮癌に化学放射線療法とアテゾリズマブの併用は高い完全奏効率を示す
2025年の1月23日から25日にかけて、アメリカのサンフランシスコで開催された「2025 ASCO Gastrointestinal Cancers Symposium(ASCO GI 2025)」において、がん研有明病院消化器化学療法科の福岡聖大氏らによる研究チームが、進行食道癌の1次治療において将来的に有望と期待される治療法に関する研究発表を行いました。
本研究では、進行食道癌もしくは食道癌の患者に対する1次治療として、「抗PD-1抗体zimberelimab」と「FGFR阻害薬フチバチニブ」。そして化学療法を併用した複合療法が、優れた治療効果を発揮しつつ、管理面でも安全性を期待できるということを報告しています。
本治療によって得られた奏効率は58.5%となっており、またPD-L1 CPSの状態に影響されることなく効果を維持できた点も見逃せません。
これにより、今後は進行食道癌や転移性食道癌の治療における選択肢が広がると期待されています。
参照元:日経メディカル|進行食道癌の1次治療に抗PD-1抗体zimberelimab+フチバチニブ+化学療法は安全で有望な効果【ASCO GI 2025】
2025年1月にアメリカのサンフランシスコで開催された「2025 ASCO Gastrointestinal Cancers Symposium(ASCO GI 2025)」において、切除可能な局所進行食道扁平上皮癌における術前療法の1種として、化学放射線療法と「抗PD-1抗体sintilimab」を併用した治療が効果的であるという研究結果が発表されました。なお、同研究の結果は中国で実施されたフェーズ3試験の結果に由来しており、研究の主導者としてUniversity of Electronic Science and Technology of Chinaに所属するXuefeng Leng氏が研究発表を行っています。
本研究では、化学療法として「nab-パクリタキセル・カルボプラチン」を用い、さらにsintilimabを併用した術前化学療法に放射線単独療法を組み合わせた治療が、化学療法+sintilimabの併用療法よりも優れた完全奏効率を得られたことを発表しています。
参照元:日経メディカル|切除可能局所進行食道扁平上皮癌に対する術前療法として化学放射線療法とsintilimabの併用が良好な病理学的奏効を示す【ASCO GI 2025】
理化学研究所の生命医科学研究センター基盤技術開発研究チームの桃沢幸秀氏をリーダーとする研究グループは2022年4月15日、東アジアに多く見られる食道癌や胃癌、胆道癌といった癌に関して、BRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子の病的変化がリスク上昇に関与していることを発見したという研究結果を報告しました。
そもそも同遺伝子は乳癌や卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌などの発症リスクに関与していると知られていましたが、改めて食道癌など消化器系の癌に関しても影響を与えていることを発見したことになります。
理化学研究所や東京大学、愛知県がんセンターなど複数の医療機関が協力した研究グループは、10万人以上の癌患者を対象としてBRCA1/2遺伝子のゲノム解析を実施し、その結果として食道癌・胃癌・胆道癌の3種の発生リスクがBRCA1/2遺伝子の病的変化によって高められることを突き止めました。
また同遺伝子の変異型を持つ乳癌や卵巣癌にはPARP阻害薬の治療効果が認められており、改めて食道癌などに対しても有効性が期待できると考察されています。
※参照元:がんプラス|BRCA1/2遺伝子の病的変化、胃がん、食道がん、胆道がんの発症リスクにかかわることを解明(https://cancer.qlife.jp/news/article18158.html)
2024年には、国立がん研究センターと順天堂大学などによる共同研究チームが、食道がんや胃がん患者を対象に「腸内細菌叢移植(FMT)」と免疫チェックポイント阻害薬を併用する治療法の臨床試験を開始しました。FMTによって腸内環境を改善することで、免疫療法の治療効果を高めることを目指す新しい試みであり、免疫抵抗性がある患者にも有効性を発揮する可能性が期待されています。
参照元:国立がん研究センター|食道がん・胃がん患者さんを対象とした「腸内細菌叢移植」の臨床試験を開始


