このページでは原発不明がんの症状や治療方法についてまとめました。
原発不明がんとは、ごく簡単に言えば「最初にどこにできたのかが分からないがん」を指します。
一般的ながんの診断は、たとえば胃にできたがんを胃がん、肝臓にできたがんを肝臓がんと呼ぶように、がんが発生した臓器=原発部位にならって、がんの名前がつけられます。そしてその原発部位にできたがんのことを、原発巣と呼びます。
たとえば胃にできたがん=胃がんが肝臓に転移したとしても、それは肝臓がんとは呼ばれません。あくまで胃がんの肝転移という扱いになり、転移先の肝臓でも、そのがんは原発巣である胃がんの性質を示します。
ところが原発不明がんというのは、画像診断や病理検査など、さまざまな検査をした上でも「がんがもうすでに転移している状態であり、どこからどこへ転移したのか、その経過が分からない」という状態で、がんが発生した臓器の判断がつかず、原発部位も原発巣も不明のままとなってしまうのです。
そして「原発巣が分からないからこそ、がんの性質を判断することがきわめて困難になってしまいがち」というのが、原発不明がんのやっかいなところです。
がん全体の中で、こうした原発不明がんの割合は推定1~5%と言われています。[注1]
これだけを見れば、原発不明がんの割合は意外と多そうに思えますが、原発巣がどこなのかは患者それぞれ、さらに転移の経過も患者それぞれだからこそ、患者ごとに病気の状態が異なるため「同様の病態を示す患者の数」はきわめて少なくなります。
患者の数だけさまざまな症例があると言える、それが原発不明がんなのです。
原発不明がんは、原発巣が不明ながんであるだけに、多様ながんの性質を示す可能性があるため、明確に「この症状が出たら原発不明がん」と示せるようなものはありませんが、以下のような症状をきっかけに、原発不明がんが発覚するケースが多いです。
いずれも、がん転移が発生した際に起こりやすい症状であることが分かります。
原発不明がんは原発巣が不明であるために、たとえば「胃がん治療にはまずこの治療法」というような、明確な治療方針を立てることに困難がともないます。
ただ、原発不明がんの中にも「今のところ、女性患者の脇のリンパ節のみにがんが検出されている=乳がんのがん分布に非常に似ている」など、特定の原発巣のあるがんと非常に近い病態を示すものもあり、この場合はその原発巣がんを治療する時と同様の治療法を採用することもあります。例に挙げたケースだと、乳がん向けの治療をするということになります。
しかし、そうした「特定の原発巣のあるがんと非常に近い病態を示す原発不明がん」の割合は少なく、大半の原発不明がんは「がんの病態が、特定の原発巣のあるがんのような特徴を示さない」という状態なのが現実です。
しかも、原発不明がんはすでにがんが転移している状態であり、手術をしたとしてもがんの切除はきわめて困難です。
そのため、原発不明がんの治療の多くは、薬物治療でがんの進行を遅らせたり痛みの症状を和らげたりすることが中心となってきます。
他にも「これ以上の転移を少しでも抑えるため」「がんを少しでも縮小させるため」という目的で放射線治療が適用されることもあります。
2015年以降、次世代シーケンシング(NGS)を用いた網羅的ゲノム解析によって、原発巣の推定や治療の個別化が進められています。
また、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬が、特定のバイオマーカーを有するCUP患者に対して有効であることも報告されており、今後の治療選択肢として期待されています。
原発不明癌の場合、TMN分類の適用が困難なため、ステージなどの病期分類は設定ず、「遠隔転移あり」として進行がんとして扱われることが多くなっています。
一般的に、がんの広がりは「ステージ」で表され、この「ステージ」は治療法を選ぶために用いられます。例えば、がんが局所にとどまっている場合は、手術や放射線療法といった局所療法を行いますし、所属リンパ節への転移がある場合は、局所療法と全身療法を組合せた治療を実施。遠隔転移など局所を超えて広がっている場合であれば、薬物療法といった全身療法を行います。
原発不明がんは、遠隔転移先で発見されたがんであるため、薬物療法を中心とした治療が行われます。
原発不明がんの場合、組織診断と全身への病気の拡がり具合という2つの軸で原発巣を推定していくと、一定数の人たちには、ある特定の治療が効くのではないかという傾向が見られます。原発巣のがん種はそれぞれ別ですが、推定がしやすい人たちでもあり、推定されるがんごとに推奨される治療を行います。
特定の治療が想定される原発不明がんのパターンと、治療方針の具体例として次のようなものがあります。
| 特定の治療法があるケース | 治療方針 |
|---|---|
| 女性、腺がん、腋窩リンパ節にのみ転移 | 腋窩リンパ節転移陽性の乳がん治療 |
| 女性、漿液性腺がん、がん性腹膜炎のみ発症 | 臨床病期Ⅲ病期の卵巣がん治療 |
| 男性、腺がん、多発性の造骨性骨転移、血清中PSA高値 | 転移性前立腺がん治療 |
| 50歳以下の男性、低・未分化がん、縦隔・後腹膜リンパ節転移など体の正中線上に病変が分布している場合 | 性腺外原発の胚細胞腫瘍治療 |
| 扁平上皮がん、上・中頸部リンパ節にのみ転移している場合 | 頭頸部がん治療 |
| 腺がん、CK7-、CK20+、CDX2+のプロファイル | 結腸がん治療 |
| 低悪性度の神経内分泌腫瘍、骨への転移や肝転移が見られる場合 | 神経内分泌腫瘍の治療 |
| 高悪性度の神経内分泌がん | 小細胞肺がんに準ずる治療 |
| 頸部、鼠径など限局するリンパ節転移のみが見られる場合 | 外科切除・放射線治療・化学療法などの局所療法を検討 |
特定の治療の想定が難しい人たちについては、特定の治療ではなく、複数の選択肢から臨機応変な治療を行うことになります。原発不明がんは、局所を越えて広がっている転移がんであるため、薬物療法が主体となるのが一般的な考え方。しかし、抗がん剤治療などの薬物療法を実施した場合と、がんに対する積極的な治療を行わずに症状緩和の治療のみを行うベストサポーティブケアと、どちらが患者の予後を改善するのかという比較試験はこれまでに報告されていないというのが現状です。
原発不明がんは、最初にがんが発生した場所(原発巣)が特定できないまま、検査で転移巣が見つかる状態です。患者ごとにがんの状態や症状が異なるため、決まった特徴や自覚症状だけでリスクを判断しにくい点も特徴といえます。
そのため原発不明がんの予防は特定の臓器に絞るのではなく、生活習慣の見直しや各種のがん検診など総合的な対策を前提に考えることが大切です。
原発不明がんの予防としては、医学的根拠や科学的根拠にもとづいた癌予防や癌リスク軽減に向けた取り組みを日常的に実践していくことが肝要です。ここでは国立がん研究センターなどによる共同研究グループの研究によって認められた、日本人を対象とする癌の予防法や対策について紹介しますので、ぜひ日常生活の見直しや生活習慣の改善の参考にしてください。
「日本人のためのがん予防法(5+1)」としては、具体的に以下のポイントが重要となります。
たばこ(喫煙)は日本人における発がんリスクとして明確に認められている生活習慣の1つです。厚生労働省のホームページで確認できる情報を見ると、日本人の男性患者においてはリスク因子として第1位、女性患者に関しても第2位になっています。
加えて、たばこは患者自身に喫煙習慣(能動喫煙)がなかったとしても、身近な人が吸っているたばこの煙を吸い込むことで癌リスクが上昇するという、受動喫煙の問題もあります。
そのため原発不明がんを含めてあらゆる癌の予防を考える場合、自分や家族の禁煙に取り組んだり、分煙などの対策がきちんと行われている環境で暮らしたりすることが大切です。自分だけで禁煙を維持することが難しい場合、一定の要件を満たせば保険診療で禁煙治療を受けることも可能です。
※参照元:厚生労働省|がん予防 (https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059490_00004.html) ※参照元:がん情報サービス|科学的根拠に基づくがん予防(https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/evidence_based.html#anchor3)飲酒によってリスクが高まる癌としては肝細胞がんや食道がん、大腸がん、頭頸部がんなど様々な種類があり、さらに男性では胃がん、女性では閉経前の乳とも関連性が認められています。そのため、原発不明がんの予防においても飲酒を控えたり、完全に禁酒したりすることは重要だといえるでしょう。
また、かつては「酒は百薬の長」といった言葉によって、少量の飲酒は健康改善に有益であるという考えもありましたが、現在は少なくとも癌予防の観点において飲酒量はゼロにすることがベストとされています。基本的にお酒を飲まないように心がけることが大切です。
過去の研究から、日常的に塩分量の多い食事をとったり、野菜や果物が不足したりといった食生活に関する内容も癌のリスク因子として認められています。
塩分濃度の高い食材や食品を日常的に食べている人は、性別にかかわらず胃がんのリスクが上昇すると報告もあります。基本的に塩分を控えた食事メニューを心がけることが肝要です。
また、野菜や果物には食物繊維やビタミンが含まれており、これらを適切に摂取することで癌リスクを低減できることも報告されています。なお、野菜や果物をきちんと食べることは癌だけでなく、心筋梗塞や脳卒中のリスク軽減も期待できます。
また熱すぎる食べ物や飲み物は口腔内や食道の粘膜を傷つけ、癌のリスクを上げるとされており、適度に冷まして食べることを心がけましょう。
日常的に一定の運動習慣(身体活動)を取り入れることで、多くの癌の発生リスクの軽減に効果があることも報告されています。加えて、身体活動量の多い人は心疾患のリスクも低くなると知られており、無理のない範囲で日常生活に運動習慣を取り入れていくことが大切です。
なお、医学的に推奨されている運動量としては、厚生労働省による「健康づくりのための身体活動基準2013」で示されており、18歳~64歳の人であれば「歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を毎日60分」と「息がはずみ、汗をかく程度の運動を毎週60分」が挙げられています。一方、65歳以上の人に関しては「強度を問わず、身体活動を毎日40分」が目安となります。
※参照元:がん情報サービス|科学的根拠に基づくがん予防(https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/evidence_based.html#anchor3)食生活や運動習慣にも関連しますが、体重が過度に重くなっていたり(肥満)、軽すぎたりすること(痩せ過ぎ)は健康被害のリスク因子です。
医学的に肥満や痩せ過ぎの程度を確認する指標としては「BMI値」が利用されています。
BMI値は対象者の身長(m)と体重(kg)から算出される数値であり、体重を身長の2乗で割って得られる数値となります。例えば、身長170cm(1.7m)で体重62kgの人であれば、BMI値は約21.5となる計算です。
癌による死亡リスクとBMI値には一定の相関があると認められており、健康全体を考えた場合、男性であれば「21~27」、女性では「21~25」が健康維持に大切であるとされていることを覚えておいてください。
※参照元:がん情報サービス|科学的根拠に基づくがん予防(https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/evidence_based.html#anchor3)日本人の癌の原因として、女性の第1位、男性でもたばこに次いで第2位とされるものが「感染」です。
感染には細菌やウイルスに関連したものがあり、それぞれの感染症によって上昇する癌のリスクが変化することも特徴です。
医学的に認められている癌リスクと感染の関係としては、以下のようなものがあります。
上記のリスクに関しては、感染したら必ず癌になるというものではありません。ただし、癌のリスクに関係していることも事実であり、感染状況の把握や適切な予防・治療は癌のリスク軽減にも有益です。
※参照元:厚生労働省|がん予防 (https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000059490_00004.html) ※参照元:がん情報サービス|科学的根拠に基づくがん予防(https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/evidence_based.html#anchor3)原発不明がんの場合、全身のどこにどのような癌が発生しているか患者によって異なるため、言い換えればあらゆる癌のスクリーニングや検査が役に立つ可能性があります。
ここでは癌のスクリーニングや検査について幅広く使用されている方法をまとめていますので、気になるものについてチェックしておきましょう。
血液検査は癌を含めた様々な病気や体調不良についてチェックするための検査であり、特に「腫瘍マーカー」の検査をすることで癌のスクリーニングに活用できることは重要です。
腫瘍マーカーとは、特定の癌が産生するタンパク質などの物質であり、それらが血液中に含まれている場合、その発生源として癌の存在を疑うことができます。腫瘍マーカーには様々な種類があり、それぞれ適合する癌の種類が分類されていることもポイントです。
ただし腫瘍マーカーの有無が絶対的な癌の指標になるわけでなく、あくまでもスクリーニングの1つとして考えることが肝要です。
尿検査や便潜血検査といった検査は、例えば消化器系の癌に関するスクリーニングなどに活用されています。ただし、尿成分の異常が認められたり便に血液が混入していたりするからといって、常にそれらが癌に起因するものとは限らないため、実際に癌かどうかを判断するためにはさらに詳細な検査や診断が必要です。
胸部X線検査は肺炎や肺がんのリスクなどを診断する際に用いられます。血液検査や尿検査などと並んで日常的に健康診断の1項目として受けることの多い検査ですが、一方でX線検査は撮影時にX線(放射線)を使用するため、被検者に対して一定の被曝リスクが生じることも無視できません。
妊娠中の女性などにとって放射線リスクは胎児にも影響する重大なリスクです。胸部X線検査はX線を照射する部位が腹部や骨盤でないため、胎児に対する影響はほとんどないと考えられているものの、必要に応じて防護具を使用するなどあらかじめ医師としっかり相談して検査にのぞむことが肝要となります。
CT検査はX線を使って体内を断面的に撮影する画像診断の1つです。検査用CTを使うことで体内にある癌のサイズや位置、状態などを詳細に診断できるため、癌のスクリーニングとしてCT検査は有用です。また、CT検査は上半身から下半身まで全身をチェックできるため、原発不明がんのように全身の検査が必要な患者においても効果的な診断方法と言えるでしょう
反面、CT検査は全身へ放射線を照射するため、特に妊娠中の女性など一部の人に対しては禁忌となることも重要です。そのためCT検査を受診できない人は、別の方法で画像診断を受けることが必要となります。
MRI検査はCT検査と同様に体内の状況を可視化する画像診断の方法であり、放射線の代わりに強力な磁気を利用することが特徴です。
MRI検査は脳から足まで全身を検査できる画像診断であり、子宮や卵巣、前立腺といった生殖器における癌の有無についてもチェックしやすいことが強みです。
また放射線を使用しない検査であるため被曝リスクがなく、CT検査を受けられない人でも受診できる可能性があります。しかし、MRI検査では必要に応じて体内に造影剤を投与する場合があり、造影剤に対するアレルギー反応の有無などを事前に調べておかなければなりません。
マンモグラフィー(乳房X線検査)は、乳房における癌の有無を調べるために特化した画像診断の方法です。具体的には専用の板で乳房を圧迫し、乳房を薄くした状態でX線撮影を行います。
マンモグラフィーは乳癌検診の方法として有用であるものの、画像診断の性能を高めるために乳房を圧迫して薄くのばすため、どうしても検査中に痛みが生じやすくなります。また、特に若年女性など乳腺の発達している人の場合は痛みが強くなる傾向もあり、それが原因でマンモグラフィーを回避する人も少なくない点は社会的課題です。
もし、痛みに不安がある人や過去のマンモグラフィーで強い痛みを感じたことのある人は、あらかじめ医師へ相談して適切な方法を考えましょう。
PET検査(陽電子放出断層撮影)とは、事前にブドウ糖と似た放射線薬剤を投与した上で、体内にその薬剤がどのように広がっているのかを調べる画像診断の方法です。
PET検査のシステムは、癌細胞は通常の細胞よりエネルギー消費が多く、癌細胞は通常の細胞よりも多くのブドウ糖を取り込むといった性質がベースとなります。
PET検査によって体内の特定の部位に放射線薬剤が集中していると認められた場合、そこに癌細胞や癌組織の存在している可能性が高いと診断されます。
PET検査やPET検査とCT検査を組み合わせた「PET-CT検査」は全身のスクリーニングに有用ですが、放射性物質を使用するため適応の有無を事前に医師と相談することも必要です。
内視鏡を鼻や口から挿入して胃の様子をモニタリングしたり、お尻から内視鏡を挿入して直腸や結腸などの様子をモニタリングしたりする内視鏡検査は、医師が実際に体内の様子をチェックできるために癌を含めた様々な病気の発見に役立ちます。
また、内視鏡検査では状況に応じてポリープなど組織の一部を採取し、その細胞が悪性か良性かさらなる検査(組織診・生検)に応用できることも特徴です。
上述したように、原発不明がんはそもそも癌が最初に発生した臓器が不明なまま、全身の各臓器へ癌が転移している状態です。そのため、癌が生じている臓器や部位によって現れる症状も様々であり、患者ごとに異なる検査や治療が必要となります。
上記の各種スクリーニングによって癌のリスクが認められた場合、改めて担当科や専門医の診察を受けて、より詳細な癌診断に進んでいくことが重要です。
原発不明がんの予防や発見にスクリーニングは欠かせませんが、各種検査には常に一定のリスクやデメリットがある点も理解しておかなければなりません。
偽陰性とは、本来は陽性(悪性)と診断されるべき所、検査結果が誤って「陰性」と診断されてしまった状態です。偽陰性になった場合、癌の存在を見過ごしてしまうことになり、癌の治療開始が遅れてしまうリスクも高まります。
偽陰性はあらゆる検査で起こり得るため、癌のスクリーニングでは常に複数の検査を組み合わせて多角的にチェックすることが肝要です。
偽陰性に対して、本来は癌が存在していないのに、検査結果として「陽性」と診断されてしまう偽陽性の問題もあります。
偽陽性の場合、癌治療の必要のない人が一層の検査を受けることになり、それに伴って合併症や副作用のリスクが上昇する点が問題です。また自分が癌であると思い込むことで、精神的なストレスや悪影響といった問題が生じることも見逃せません。
偽陰性と同様に偽陽性もあらゆる検査で生じ得るため、検査では常に多角的な方法でチェックすることが求められます。
過剰診断とは、検査精度が高くなりすぎた結果、本来は治療の必要のない腫瘍や癌細胞まで検査で発見してしまい、治療の対象としてしまう状態です。
過剰診断になった場合、本来であれば経過観察などに止めておくべき患者に対して、様々な治療を行う可能性が高まり、それに応じて経済的・肉体的負担が強まってしまうことが問題です。
原発不明がんの特徴として、癌の症状を自覚したり、癌組織が発見されたりしている段階では、すでに「最初に癌が発生した臓器」からそれぞれの臓器へ癌が転移している状態にあるという点が挙げられます。
そのため、仮に各種スクリーニングによって癌の存在を発見できたとしても、状況によっては標準治療で根治を目指すことが困難になっているケースも起こり得ます。
ただし、たとえ根治が難しくとも緩和ケアなどによってQOLを高めたり、生存期間を延ばしたりできる可能性もあり、検査結果を踏まえてどのような治療プランを検討すべきか医師や家族ともしっかり話し合うことが大切です。
米国がん学会の発行する「Cancer Research誌」において、原発不明がんの患者に特異的なゲノムプロファイルが血液循環腫瘍DNA(ctDNA)のシーケンシングによって同定されたという研究結果が報告されました。これは2017年8月に発表された研究であり、アメリカのカリフォルニア大学サンディエゴ校の医学部血液腫瘍学部門における研究チームにより発見されました。
本研究では、ctDNAシーケンシングによって検出可能な遺伝子変異を有する原発不明がんの患者のうち、99.7%においてターゲットとなる特異的遺伝子特性が同定されたというものであり、ctDNAに含まれる54〜70の遺伝子を調査したところ、患者の66%において1つ以上の変異が、43.9%において2つ以上の変異があったということです。また特にTP53とKRAS、PIK3CAそしてBRAFおよびMYC遺伝子といった遺伝子の変異が認められました。
参照元:海外がん医療情報リファレンス|リキッドバイオプシーにより原発不明がん特異的遺伝子特性を同定
2022年9月21日、アメリカのFDA(米国食品医薬品局)は局所進行もしくは転移性の、rearranged during transfection(RET)遺伝子融合を有する固形腫瘍の患者に対して、全身治療の効果が認められない場合や治療中にがんが憎悪した場合に、セルペルカチニブを適応とすることを承認しました。
これはLIBRETTO-001試験(NCT03157128)において有効性が示されたデータにもとづいた承認であり、本試験では全身治療の実施中あるいは実施後に憎悪したなどの、十分な治療選択肢がない41人の患者(21~85歳)が参加しており、セルペルカチニブの使用によって奏効を得られた患者の中には原発不明がんの患者も含まれています。
これにより、原発不明がんの患者を含めて、十分な治療法がないとされていたがん患者に対しても新たな治療法を選択するチャンスが得られたと考えられています。
参照元:海外がん医療情報リファレンス|FDAが局所進行/転移性RET融合陽性固形腫瘍にセルペルカチニブを承認
MASTER KEYプロジェクトは、国立がん研究センター中央病院を中心に進められている産学協同の希少がん研究プロジェクトです。患者数が少なく標準治療が確立されていない希少がんに対し、2階建ての仕組みで取り組んでいます。上層は全国の患者情報を登録するレジストリで、症例データを蓄積。下層では、このデータを基盤に医師主導治験や企業治験を副試験として並行実施し、新薬開発を推進しています。
2025年7月18日、都立駒込病院と国立がん研究センター希少がんセンター、愛知県がんセンターは共同して「地域の希少がんを支えるPart4」と題するオンラインの希少がんセミナーを開催。そこで、関東・東海地方における希少がん診療の取り組みと、全国規模で進むMASTER KEYプロジェクトが紹介されました。
都立駒込病院からは、都立病院が連携して希少がんの診断・治療や臨床試験を進める体制を解説し、治験体制を強化している現状を紹介。
一方、愛知県がんセンターでは、サルコーマセンターを中心とした東海地方での診療体制整備や、オンライン治験の活用による患者アクセス改善の実施報告がありました。
cite>参照元:がんナビ|都立病院と東海地方の希少がん診療とMASTER KEYプロジェクト
2025年3月6日から3月8日にわたって兵庫県神戸市で開催された「第22回日本臨床腫瘍学会学術集会」において、大阪大学医学部附属がんゲノム医療センターの西田尚弘氏の研究チームが、血液中の遊離DNA(cfDNA)でHER2遺伝子増幅を確認した複数種の固形がんに対して、抗HER2抗体薬物複合体「トラスツズマブデルクステカン(T-DXd)」が有効かつ持続的な奏効を示したという研究結果を発表しました。
本研究には国内にある7つの医療機関から、合計16種類のがん患者(62人)が参加しており、食道がんや頭頸部がん、前立腺がん、大腸がん、そして原発不明がんの患者などが含まれています。
がん腫の不均一性も考慮しながら主要評価項目などを選定して治験を行ったところ、奏効率(ORR)は56.5%となり、事前設定されていた期待値を上回る結果が得られました。また病勢コントロール率(DCR)も90.3%と、事前設定されていた期待値を上回る結果となっています。
参照元:国立がん研究センター|リキッドバイオプシーによりHER2遺伝子増幅が認められた固形がんに対するトラスツズマブ デルクステカンの臓器横断的な有効性を確認
参照元:がんナビ|cfDNAでHER2遺伝子増幅を認めた様々な癌種の固形癌にトラスツズマブ デルクステカンが持続的な奏効を示す【日本臨床腫瘍学会2025】
2024年5月31日から6月4日まで、アメリカのシカゴで開催された「米国臨床腫瘍学会2024(ASCO 2024)」において、オランダの研究グループが、肉眼的リンパ節転移を有する切除可能ステージⅢの悪性黒色腫に関して、術前化学療法として「イピリムマブ+ニボルマブ」を使用し、さらに治癒的リンパ節郭清(TLND)を実施した後、病理学的著効(MPR)が認められない患者に術後療法として「ニボルマブ」を追加する「サンドイッチアプローチ」を行ったところ、標準治療である「TLND+ニボルマブ」の術後療法よりも有意に無イベント生存期間(EFS)が延長されたという研究結果を発表しました。
これらのデータは国際オープンラベル無作為化フェーズ3試験NADINAにおいて示されており、試験ではリンパ節転移を有するステージⅢの、原発不明がんを含めた悪性黒色腫の患者が対象となっています。
参照元:がんナビ|切除可能ステージIII悪性黒色腫に術前イピリムマブ+ニボルマブでnon-MPRにのみ術後ニボルマブの実施がEFSを有意に改善【ASCO 2024】
2025年8月23日に、令和7年度厚生労働科学研究費(がん対策推進総合研究事業)「希少がん診療・相談支援におけるネットワーク構築に資する研究」班や日本希少がん患者会ネットワーク、また国立がん研究センター希少がんセンター・希少がん中央機関などの共同開催によって、希少がん診療・相談支援ネットワーク構築に関するシンポジウムがオンラインで開催されました。
その中で、九州大学病院希少がんセンターの坂本節子氏の発表が行われ、同センターにおいて2021年から開設している「希少がんホットライン」に寄せられた癌の相談件数及びその内訳が報告されました。坂本氏の報告によれば、2024年度に寄せられた相談件数は231件であり、相談病名の上位として原発不明がんと小腸がんが共に11件と、第3位になっていたということです。
また、特に原発不明がん患者(70代女性)からの相談内容についても報告が行われ、患者にとって薬物療法の副作用などに対する不安や恐怖が大きくなっているという実情が伝えられました。同時に、相談員が適切に対応した結果、2ヶ月後に同じ患者から再度電話があり、薬物療法を受けて良かったといった想いが伝えられたことも合わせて報告されています。
参照元:がんナビ|希少がん診療・相談支援ネットワーク構築に関するシンポジウム(2)ネットワークとしての「希少がんホットライン」2025年10月17日~同月21日の期間にドイツのベルリンで開催された「欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2025)」において、切除可能なIII期悪性黒色腫の患者に対して、術前療法として「イピリムマブ+ニボルマブ」療法を行ったところ、手術と術後ニボルマブ投与のみの場合よりも無イベント生存期間(EFS)を有意に改善できたという研究結果が発表されました。
同発表はオランダの研究グループによって行われており、報告内容はフェーズ3試験(NADINA試験)における観察期間2年の結果にもとづいています。
対象となった患者は、皮膚原発もしくは原発不明の切除可能なIII期の悪性黒色腫となっており、同研究の結果から、原発不明がんの患者の中で切除可能III期悪性黒色腫を伴っている人に対しても、術前イピリムマブ+ニボルマブが有用な治療選択肢になり得る可能性が示唆されました。
また、同研究の影響を調べるために用いられたバイオマーカー検査において、術前療法群のEFSは術後のみ群よりも良好な結果を得られており、バイオマーカー検査の品質向上に向けたデータが得られたこともポイントです。
参照元:がんナビ|切除可能III期悪性黒色腫に術前イピリムマブ+ニボルマブは術後療法のみに比べてEFSを改善、2年の結果【ESMO 2025】2025年6月13日に富山大学や近畿大学、国立がん研究センター希少がんセンターなどがオンライン共催した希少がんセミナー「地域の希少がんを支えるPart3」において、原発不明がんについての治療研究・開発に関する内容が報告されました。
近畿大学病院の林秀敏氏によれば、同病院では希少がんの治療法の開発に力を入れており、院内に開設されている腫瘍内科において、近畿大学医学部のゲノム生物学教室とも連携しながら原発不明がんの治療法を含めた様々な研究が実践されているそうです。
具体的な成果としては、同院腫瘍内科講師の谷崎潤子氏を中心とするチームが、原発不明がんへ免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブを使用した際の安全性や効果に関する臨床試験(多施設共同の医師主導治験NivoCUP試験)を実施しており、その結果によって原発不明がんに対するニボルマブの保険適用が進められたという内容が発表されました。
参照元:がんナビ|国立がん研究センター・希少がんセミナー2025(8)病院間の連携が徐々に進む北陸地方と近畿地方の希少がん診療国立がん研究センターと横浜市立大学、そして近畿大学は2024年12月13日に「PRRT(ペプチド受容体核医学内用療法:peptide receptor radionuclide therapy)」に関するオンラインセミナーを共催しました。
PRRT治療は、放射性同位元素を組み込んだ薬剤を使って、患者の体内から癌細胞のDNAを攻撃する放射線内用療法です。日本では2021年6月に神経内分泌腫瘍(NEN)の治療として「ルテチウムオキソドトレオチド(ルテチウム-177 DOTA-TATE(ドタテート))」を使ったPRRT治療が承認され、同年9月に発売が開始されています。
一方、PRRT治療はヨーロッパを中心に開発された治療法であり、日本で承認される前はスイスのバーゼル大学などで日本人の原発不明がんを含めた複数の癌患者がPRRT治療を受けていたそうです。またバーゼル大学におけるPRRT治療では、80%弱の患者が治療を完遂し、36.9%の患者に効果が認められたとのことでした。
参照元:がんナビ|国立がん研究センター・希少がんセミナー2024(18)神経内分泌腫瘍のPRRT治療の現状と将来展望