がんの治療法の重要な役割を果たしている、抗がん剤治療。具体的にどのような治療を行うのか、またどんな種類のものがあるのか、まとめてみました。
癌は、腫瘍を手術で取り除くだけでは治しきれないことが非常に多い病気。外科手術や放射線治療と組み合わせ、治療効果を高めるために使われるのが「抗がん剤」です。
かつては、手術の補助的な役割を果たしていた抗がん剤治療。現在では使い方の向上や新薬の登場により、目覚ましく進歩を遂げている治療法です。効果が高まっただけでなく、副作用を抑えたり、上手に癌と付き合っていくための効果を生み出したりしています。
ここでは、抗がん剤治療の概要や、その治療法の種類について解説していきたいと思います。
抗がん剤は、血液に乗って全身へ流れた成分ががん細胞を攻撃することで効果が出る薬剤です。点滴や注射、あるいは飲み薬の形で体内に入ります。全身へと成分が行き届くので、がん細胞のある部位を局所的に攻撃するのではなく、全身に対してその効果があると考える必要があります。
抗がん剤は、がん細胞を攻撃するだけでなく、正常な細胞をも攻撃してしまう性質があります。白血球が攻撃されれば抵抗力は落ちますし、毛根細胞が攻撃されれば脱毛が増えます。よく言われる吐き気や嘔吐という作用は、胃や食道の粘膜が傷つくことで起こります。
しかし理解しておくべきなのは、「抗がん剤の副作用はコントロールできる」ということ。以前のように、副作用に悩まされながらがんと闘うようなイメージは、いまは現実的ではありません。副作用を抑える薬が開発されていることもあるので、極端に心配する必要はありません。
しかも、抗がん剤は複数の種類を組み合わせて使います。そのため、ひとつの抗がん剤の副作用が強く出過ぎるようなケースは少ないのです。
コントロールができるとはいえ、副作用のある抗がん剤をなぜ治療に使うのでしょうか。
まず、手術による治療ができない場合は、抗がん剤の効果に期待することになります。手術では切除できない、目に見えないような小さな癌細胞を攻撃することができ、また転移した全身のがんを攻撃できるというメリットがあります。
また、手術や放射線治療の前後に抗がん剤が使われることがあります。
治療の前に抗がん剤を使うことで、がんを小さくし、メインの治療の負担をできるだけ小さくすることができます。快方にも向かいやすくなります。また、治療後の抗がん剤の投与は、取り残しを防ぎ、再発や転移を予防するために使われます。
抗がん剤には日本で認可されたものだけでも100種類以上あり、がんの状態に合わせて組み合わせを考慮しながら投与できるのです。
抗がん剤には、大きくわけて2つの種類があります。ひとつは細胞阻害性抗がん剤、もうひとつは分子標的治療薬です。
細胞阻害性抗がん剤は、がん細胞の細胞分裂を阻害し、最終的に細胞が死滅するよう導くもの。阻害の方法にはいくつか種類があり、それを組み合わせることでより高い効果を生むことができます。
一方、2000年以降に登場し、いまその効果が期待されているのが分子標的治療薬。正常な細胞とがん細胞の違いの部分を利用して、がん細胞だけを攻撃するように作られた抗がん剤です。
がん細胞特有の遺伝子を見つけ出し、その遺伝子のはたらきを阻害することで、がん細胞が増殖できなくなるというもの。この代表格には、乳がんに劇的な効果を示すハーセプチンが挙げられます。
分子標的治療薬にももちろんメリットとデメリットの両面があります。とはいえ、抗がん剤治療の大きな躍進に一役買ったことは間違いありません。
病気の原因になっているたんぱく質など、特定の分子だけに作用するしくみを持つ治療薬を分子標的薬といいます。
従来の抗がん剤はがん細胞を死滅させて増殖を抑えますが、正常な細胞にもダメージを与えてしまうため大きな副作用が生じる場合があります。しかし、分子標的薬はがんの原因にかかわる特定の分子に限って作用するため、がん細胞だけを攻撃することになり、結果として副作用が抑えられると考えられています。
がん細胞の増殖に影響する特定のたんぱく質に対し、選択的に作用する分子標的薬の一種です。
がん細胞の中には、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)というたんぱく質を過剰に発現しているタイプがあります(EGFR陽性)。そこに情報伝達物質が結合すると、細胞に増殖のシグナルが送られてがんが増大していきます。この薬剤は分子標的薬の中でも分子量が小さいため、がん細胞の細胞膜を通り抜けて増殖のプロセスをブロックし、がん細胞が増えるのを抑制します。
2021年6月現在の適応は以下のとおりです。
主な副作用としては発疹や下痢、嘔吐、食欲不振などが挙げられており、重大な副作用として急性肺障害、間質性肺炎、重度の下痢、脱水などが報告されています。
抗HER2抗体という薬剤で、悪性度の高いがん細胞に発現することの多いHER2という受容体とがん細胞を増殖させる因子が結合するのを防ぎ、がん細胞の増殖にブレーキをかける分子標的薬です。
具体的にはHER2受容体に結合し、細胞傷害性T細胞という免疫細胞を呼び寄せてがん細胞を攻撃する働き、同じく結合によって補体(異物を排除する免疫を媒介するたんぱく質)の力でがん細胞を攻撃する働きがあり、HER2を発現させている細胞だけに作用します。逆にいうと、この薬剤はHER2が過剰に発現するタイプのがんにしか使えません。
2019年10月現在の適応は以下のとおりです。
主な副作用としては頭痛や悪寒などが挙げられており、重大な副作用として心障害やショック、アナフィラキシー、間質性肺炎、白血球減少、好中球減少などが報告されています。
抗HER2抗体という薬剤で、がん細胞の増殖に関与する分子を狙い撃ちにする分子標的薬の一種です。
乳がんの中には、細胞の表面にHER2というたんぱく質を過剰に発現しているタイプが存在します(HER2陽性)。HER2が過剰に発現すると、そこに含まれているチロシンキナーゼという酵素の働きが活性化し、細胞増殖のシグナルが過剰に発せられてがんが増大します。この薬剤はHER2の作用を阻害して、がん細胞の増殖を抑える効果があります。
2019年10月現在の適応は以下のとおりです。
主な副作用としては下痢や悪心、発疹、脱毛などが挙げられており、重大な副作用として好中球減少症、白血球減少症、急性輸液反応(投与中あるいは投与後に出現する過敏症)、アナフィラキシーなどが報告されています。
抗HER2抗体のトラスツズマブに、がん細胞を攻撃する細胞毒性物質エムタンシンを結合させた抗体薬物複合体です。トラスツズマブと結合させたことによって、がん細胞へ集中的にエムタンシンを送ることが可能で、副作用を抑えつつがん細胞を攻撃する新しいタイプの分子標的薬といえます。
2021年8月現在の適応は以下のとおりです。
主な副作用としては吐き気や嘔吐、下痢といった消化器症状や疲労感などが挙げられており、重大な副作用として間質性肺炎、心障害、急性輸液反応、肝不全などが報告されています。
HER2チロシンキナーゼ阻害薬という分子標的薬の一種です。がん細胞の増殖を促すHER2が過剰に発現しているがん細胞に対し、HER2に含まれているチロシンキナーゼという酵素に作用して細胞増殖のシグナル伝達を阻害し、増殖を抑制しつつアポトーシス(細胞の自然死)をもたらします。
2020年10月現在の適応は以下のとおりです。
主な副作用としては下痢や悪心、嘔吐などが挙げられており、重大な副作用として肝機能障害や間質性肺炎、心障害などが報告されています。
正常な細胞とは異なり、がん細胞は無秩序に増殖していきます。がん細胞は増殖した分、より多くの栄養や酸素を要するため、それらを取り入れるために新たな血管(新生血管)をつくり出す必要があります。
この薬剤は血管を形成するたんぱく質を選択的にシャットアウトして血管形成を阻害し、がん細胞への栄養供給を妨げて死滅させる作用があります。結果として新生血管を経由したがん細胞の転移も防ぐことができるため、非常に有効な分子標的薬だと考えられています。
2020年9月現在の適応は以下のとおりです。
主な副作用としては血圧上昇や疲労・倦怠感、食欲低下、悪心などが挙げられており、重大な副作用としてショック、アナフィラキシーなどが報告されています。
悪性リンパ腫はリンパ球ががん化し、リンパ節などに腫瘍を生じる血液のがんです。リンパ球にはB細胞やT細胞、NK細胞などがありますが、悪性リンパ腫の中ではB細胞ががん化するケースがもっとも多くなっていると言われています。
この薬剤はB細胞の表面に存在するCD20というたんぱく質に結合する分子標的薬で、免疫細胞を活性化させてがん化したB細胞を攻撃させます。
2021年4月現在の主な適応は以下のとおりです。
主な副作用としては発熱や疼痛、倦怠感、悪心、嘔吐などが挙げられており、重大な副作用としてアナフィラキシーや肺障害、心障害、血圧低下などが報告されています。
免疫調節薬の一種で、従来の抗がん剤とは違った作用機序を持っているのが特徴です。具体的には免疫細胞を活性化してがん細胞への攻撃力を高めるほか、骨髄腫細胞の自然死を促したり、がん細胞に栄養を供給する血管の新生を抑えたりと、複数の作用でがん細胞を攻撃します。また、この薬剤はサリドマイドの誘導体で強い催奇形性を持つため、厳格な安全管理を要するとされています。
2021年7月現在の適応は以下のとおりです。
主な副作用としては便秘や下痢、悪心、疲労感などが挙げられており、重大な副作用として静脈血栓症や肺塞栓症、脳梗塞、骨髄抑制などが報告されています。
損傷したDNAを修復するPARPというたんぱく質の働きを阻害する薬剤です。正常な細胞は別のプロセスで修復されますが、がん細胞はPARPを阻害されるとDNAを修復できずにアポトーシス(細胞の自然死)に至ります。こうしたメカニズムによって、がん細胞の増殖を抑える効果があると考えられています。
2020年12月現在の適応は以下のとおりです。
BRCA遺伝子とは誰しもが持っている遺伝子のひとつで、DNAの損傷を修復して細胞のがん化を防ぐ作用があります。BRCA遺伝子変異陽性とは、その作用に異常をきたしていることを意味します。
この薬剤の主な副作用としては悪心や嘔吐、下痢、疲労などが挙げられており、重大な副作用として骨髄抑制や間質性肺疾患などが報告されています。
細胞の増殖や血管新生に関与するリン酸化酵素を阻害する分子標的薬の一種です。さまざまな酵素を阻害できるため、マルチキナーゼ阻害剤と呼ばれています。
細胞の増殖を活性化させるシグナルを伝達するRafキナーゼ、血管新生を促進するたんぱく質のVEGFRやPDGFRの作用を抑えることで、複合的に抗がん効果を生み出す薬剤です。
2019年9月現在の適応は以下のとおりです。
主な副作用としては脱毛や発疹、血圧上昇、下痢などが挙げられており、重大な副作用では手足症候群や剥脱性皮膚炎、中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群などが報告されています。
がん細胞の増殖に関与する酵素の作用を狙い撃ちする、分子標的薬の一種です。非小細胞肺がんには、細胞の増殖に影響するALKというたんぱく質をつくる遺伝子が変異しているタイプが5%程度存在します。この遺伝子変異は細胞増殖のシグナルを過剰に発信し、がん細胞も増えていきます。この薬剤はシグナルの発信元になっているたんぱく質の働きを阻害し、がん細胞の増殖を抑える効果があります。
2021年4月現在の適応は以下のとおりです。
この薬剤の主な副作用としては悪心や嘔吐、下痢、食欲減退、肝機能検査値異常などが挙げられており、重大な副作用として手足症候群や剥脱性皮膚炎、中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群などが報告されています。
ランマークは、近年の進行がんにおける骨転移の研究が進んだ成果のひとつといえる薬です。正式には抗RANKL抗体製剤と呼ばれ、がんが骨転移を起こした場合などに骨を壊す細胞(破骨細胞様巨細胞)の働きを低下させる作用があり、骨折や痛みの出現リスクを軽減させることが認められています。
2021年7月現在の適応は以下のとおりです。
主な副作用としては低カルシウム血症がもっとも多く、その予防としてカルシウムとビタミンD3、マグネシウムの配合剤を服用します。また、重大な副作用として顎骨壊死(あごの骨の組織や細胞が死滅し、骨が腐った状態になること)が報告されているので、治療前に歯科を受診し、必要な治療を受けておくことが重要です。
イブランスは、癌を増殖させる細胞周期を促進するCDK4、CDK6という酵素の働きを阻害する薬です。HER2陰性の転移・再発乳がんに対し、アロマターゼ阻害薬などの内分泌療法薬(ホルモン療法薬)とイブランスを併用すると、内分泌療法薬だけの治療よりもがんの進行を遅らせることができると考えられています。
2021年4月現在の適応は以下のとおりです。
主な副作用としては脱毛や悪心、口内炎、疲労感などが挙げられており、重大な副作用として骨髄抑制(好中球減少や白血球減少、貧血など)や間質性肺疾患などが報告されています。
細胞の表面にはEGFR(上皮細胞増殖因子受容体)というたんぱく質が並んでおり、これは皮膚などの上皮系の細胞が増殖する際のスイッチの役割を担います。そしてがん細胞は非常に多くのEGFRを持っており、増殖するためのシグナルを発信し続けています。
このシグナルにはRASと呼ばれる遺伝子が関与していますが、それには「野生型」と「変異型」の2タイプがあります。野生型のRAS遺伝子を持つがん細胞であれば、EGFRの働きを抑えることでシグナルを止め、細胞の増殖を食い止められます。アービタックスはこのEGFRを阻害し、がん細胞が増殖するスイッチを切ろうとする薬です。
2021年3月現在の適応は以下のとおりです。
主な副作用としては発疹や皮膚炎、疲労感、悪心、口内炎などが挙げられており、重大な副作用としてアナフィラキシーショックや重度の皮膚症状、低マグネシウム血症などが報告されています。
がん細胞は、VEGF(血管内皮増殖因子)という糖たんぱく質を分泌しています。それが血管内に存在するVEGFR(血管内皮増殖因子受容体)に結合すると、血管を新しく生み出す命令が伝わって、がん細胞に血管が引き込まれます。これを血管新生といい、がん細胞はそこから栄養や酸素を取り込んで成長していきます。
サイラムザはこのVEGFとVEGFRの結合を阻害する薬で、新たな血管をつくらせないことでがん細胞の成長を抑える作用があります。
2020年11月現在の適応は以下のとおりです。
主な副作用として下痢や高血圧、頭痛、口内炎、脱毛などが挙げられており、重大な副作用として動脈血栓塞栓症や静脈血栓塞栓症、アナフィラキシーショック、消化管出血などが報告されています。
スチバーガはがん細胞の増殖に関与する分子をターゲットにした分子標的薬の一種で、マルチキナーゼ阻害薬と呼ばれています。
がん細胞が増殖する因子にはVEGFR(血管内皮細胞増殖因子受容体)やPDGFR-β(血小板由来増殖因子受容体)、c-KIT(幹細胞因子受容体)などがあり、それぞれにチロシンキナーゼという酵素が含まれています。
チロシンキナーゼはがん細胞を増殖させる命令を出したり、アポトーシス(細胞の自然死)を抑制させたりする働きを持っています。スチバーガはこのチロシンキナーゼの働きを阻害し、がん細胞の増殖を抑えてアポトーシスを促します。
2019年9月現在の適応は以下のとおりです。
主な副作用として下痢や食欲減退、口内炎、悪心、発疹などが挙げられており、重大な副作用として手足症候群や高血圧、中毒性皮膚壊死融解症(全身の広範囲にやけどのような水ぶくれやただれなどが起こる皮膚障害)が報告されています。
がん細胞では、細胞増殖を促進するチロシンキナーゼという酵素が異常に活性化しています。そのチロシンキナーゼの一種であるKITと、身体のエネルギー産生に関わるATP(アデノシン三リン酸)という物質が結合すると、細胞増殖のスイッチが入るというメカニズムです。
グリベックは、KITとATPが結合する部分に入り込んでそれを阻害し、がん細胞の増殖を止めようとする薬です。発売当初は慢性骨髄性白血病のほか、手術で腫瘍を完全に取り除いても再発した患者さんに使用されていましたが、現在では再発のリスクが高いと考えられる患者さんにも補助的に投与されています。
2020年10月現在の適応は以下のとおりです。
主な副作用として発疹や筋肉のけいれん、嘔吐、下痢、浮腫などが挙げられており、重大な副作用として骨髄抑制や消化管出血、肝機能障害、重篤な体液貯留などが報告されています。
細胞の分化や増殖にはチロシンキナーゼといういくつもの酵素が関わっており、特にがん細胞では、そうした酵素の働きが非常に活性化しています。ヴォトリエントはチロシンキナーゼの働きを低下させ、がん細胞を成長させる血管やリンパ管の新生を阻害する薬です。がん細胞は栄養補給や転移のルートを絶たれるので、結果としてがんの勢いを弱めることになります。
また、ヴォトリエントは悪性軟部腫瘍に対する初めての分子標的薬です。標準的に使用される抗がん剤に次ぐ二次療法の選択肢としても期待されている薬です。
2020年12月現在の適応は以下のとおりです。
主な副作用としては食欲減退や下痢、悪心、毛髪変色、疲労感などが挙げられており、重大な副作用として肝機能障害や高血圧、出血や甲状腺機能障害などが報告されています。
ザーコリはALK阻害薬と呼ばれる分子標的薬の一種で、非小細胞肺がんの中でも腺がんに特異的にみられるALK融合遺伝子をターゲットにした薬です。
ALK融合遺伝子は、がん細胞の増殖に関与する遺伝子の中でもとくに増殖能力が高いため、肺がん治療における重要な指標として注目されてきました。ザーコリは国内でもっとも早く承認されたALK阻害薬で、一次治療、二次治療の両方で効果が証明されているようです。
2020年2月現在の適応は以下のとおりです。
主な副作用としては視覚障害や悪心、下痢、浮腫、味覚異常などが挙げられており、重大な副作用として間質性肺疾患や肝不全、血液障害などが報告されています。
「RAF(ラフ)」は細胞の増殖に関与するたんぱく質で、それをつくり出す遺伝子に変異が起きると異常なRAFが生み出され、必要以上に細胞が増殖してがんが起こりやすくなると考えられています。その異常なRAFのひとつが「BRAF(ビーラフ)」で、がん細胞の増殖や血管の新生を促すシグナルを発信します。
ビラフトビはBRAFの働きにブレーキをかける分子標的薬です。がんの成長につながるシグナルの伝達経路を阻害することで、がん細胞の増殖を抑制する作用があります。
2021年5月現在の適応は以下のとおりです。
主な副作用としては下痢や悪心、皮膚炎、疲労感などが挙げられており、重大な副作用として手のひらや足の裏の知覚不全、網膜障害などが報告されています。
細胞の増殖をコントロールする遺伝子のひとつに「MET遺伝子」があり、非小細胞肺がんの患者さんの2~4%にMET遺伝子の変異がみられるといわれています。変異したMET遺伝子は異常なMETたんぱく質を生み出し、それが必要以上に細胞を増殖させる命令を出し続けるため、がん細胞もどんどん増えてしまいます。
タブレクタは異常なMETたんぱく質に対して細胞増殖の命令を出させないようにする分子標的薬で、結果としてがん細胞の増殖を抑える効果があります。
2020年8月現在の適応は以下のとおりです。
主な副作用としては悪心や下痢、食欲減退などが挙げられており、重大な副作用として体液貯留や腎機能障害、肝機能障害、間質性肺疾患などが報告されています。
慢性骨髄性白血病は、リンパ球の一種であるB細胞が異変をきたし、末梢血液や骨髄、リンパ節、脾臓などで異常に増殖する血液のがんです。
異常なB細胞の表面にはCD52抗原という糖たんぱく質が発現しており、マブキャンパスはそのCD52抗原と結合することで異常なB細胞を溶解する作用を起こす薬です。
2021年1月現在の適応は以下のとおりです。
主な副作用としては感染症や食欲減退、頭痛、嘔吐、下痢などが挙げられており、重大な副作用として血球減少やアナフィラキシーショック、重症感染症などが報告されています。
スーテントはがん細胞の増殖の抑制に加えて、がん組織の血管新生も阻害するという2つの作用を持った分子標的薬です。
がん細胞の増殖や血管の新生には、チロシンキナーゼという酵素の一種が深く影響しています。そこでスーテントは、複数の種類のチロシンキナーゼの働きを阻害し、がん細胞の増殖や血管新生を促すサインの伝達を妨げます。結果としてがん細胞の成長が抑えられ、予後の改善が期待できます。
2019年10月現在の適応は以下のとおりです。
主な副作用としては下痢や悪心、疲労感、口内炎、味覚異常、皮膚変色などが挙げられており、重大な副作用として骨髄抑制や高血圧、出血などが報告されています。
私たちの身体の中には、異物の侵入を防いだり、侵入してきた異物を攻撃したりする働きを持つ免疫細胞が存在しています。しかし、がん細胞には免疫細胞と結合して働きを弱め、攻撃から逃れるメカニズムを持っているタイプもあります。
がん細胞と免疫細胞の結合を「免疫チェックポイント」といいます。その結合を阻害することで免疫細胞のブレーキを解放し、がん細胞を攻撃できるようにする薬を免疫チェックポイント阻害薬といいます。
がん細胞の表面に存在するPD-L1というたんぱく質は、免疫細胞の表面にあるPD-1というたんぱく質と結合することで免疫細胞の攻撃力にブレーキがかかってしまいます。この薬剤は抗PD-1抗体と呼ばれる免疫チェックポイント阻害薬の一種で、PD-L1とPD-1の結合を阻害して免疫細胞ががん細胞を攻撃できるようにする作用があります。
2021年8月現在の適応は以下のとおりです。
主な副作用としては疲労感や下痢、悪心、食欲減退、関節痛などが挙げられており、重大な副作用として間質性肺疾患や重症筋無力症、心筋炎、横紋筋融解症などが報告されています。
がん細胞と免疫細胞の表面に存在するたんぱく質、それぞれPD-1とPD-L1との結合を阻害する免疫チェックポイント阻害薬です。有名なオプジーボは抗PD-1抗体ですが、この薬剤は抗PD-L1抗体で、同じように免疫チェックポイントを阻害して免疫細胞ががん細胞を攻撃できるようにします。
2021年2月現在の適応は以下のとおりです。
主な副作用としては下痢や悪心、嘔吐、手足の知覚異常などが挙げられており、重大な副作用として間質性肺疾患や膵炎、心筋炎、横紋筋融解症などが報告されています。
がん細胞への攻撃の司令塔となるのはT細胞という免疫細胞ですが、そもそもがん細胞が敵だという情報をT細胞に伝えるのが抗原提示細胞です。しかし、T細胞の表面に存在するCTLA-4という分子と、抗原提示細胞の表面にあるCD80/86という分子が結合すると、がん細胞への攻撃を止めるような指示が出てしまいます。
この薬剤はCD80/86よりも先にCTLA-4に結合することで攻撃中止指示を出させず、免疫細胞を活性化してがん細胞を攻撃させる作用があります。
2021年8月現在の適応は以下のとおりです。
主な副作用としてはそう痒症や悪心、嘔吐、腹痛、疲労感などが挙げられており、重大な副作用として大腸炎や消化管穿孔、重度の下痢などが報告されています。
通常、がん細胞は免疫細胞に異物とみなされて攻撃を受けますが、その攻撃を避けるためにがん細胞はPD-L1というたんぱく質を細胞の表面に発現させます。このPD-L1が免疫細胞の表面にあるPD-1というたんぱく質と結合すると、免疫細胞はがん細胞への攻撃を中止してしまうのです。
テセントリクは、がん細胞の表面のPD-L1と先に結合して蓋を閉じる作用があります。そうなると免疫細胞のPD-1と結合できなくなるので、免疫細胞は通常のようにがん細胞を攻撃できると考えられています。
2021年11月現在の適応は以下のとおりです。
主な副作用としては疲労感や下痢、悪心などが挙げられており、重大な副作用として間質性肺疾患や肝機能障害、硬化性胆管炎などが報告されています。
イミフィンジは、がん細胞を直接攻撃する薬ではありません。免疫細胞ががん細胞を攻撃できるように免疫チェックポイントに作用し、本来の免疫機能が正常に働いてがん細胞を攻撃できるようにする薬です。
がん細胞は表面にPD-L1というたんぱく質をつくり出します。それが免疫細胞の表面にあるPD-1というたんぱく質と結合すると、それが免疫細胞にとって攻撃中止のサインになってしまいます。イミフィンジは先にPD-L1と結合して攻撃中止のサインが出されるのを防ぎ、免疫細胞が再びがん細胞を攻撃させる効果をもたらします。
2021年3月現在の適応は以下のとおりです。
主な副作用として発疹やそう痒症、下痢、発熱などが挙げられており、重大な副作用として間質性肺疾患や大腸炎、重度の下痢などが報告されています。