いちから分かる癌転移の治療方法ガイド

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骨転移した癌へのトモセラピー(放射線)治療

骨転移で放射線治療を行う目的

手術後の再発予防や、転移した病変に対する症状の緩和、神経圧迫による麻痺予防などを目的に行います。また、腫瘍の局所制御を目的とした根治的照射が検討されることもあります(特に骨転移が1~5か所の寡転移である場合)。

なぜ放射線治療が必要なのか

原発がんが進行すると、腫瘍が血管へ浸潤し、がん細胞が血液を介して全身へ転移します。こうして全身に巡ったがん細胞が骨に到達して発生したものが骨転移です。骨転移があるということは、全身性の病態であると考えられ、通常は抗がん剤などの全身治療が行われますが、局所の症状緩和や局所制御を目的として放射線治療を行うこともあります。

その1つの方法が体幹部定位放射線治療(SBRT:Stereotactic Body Radiation Therapy)です。SBRTとは、病巣に対して多方向から高精度に放射線を集中的に照射する方法で、1回あたりの線量が高く、少ない回数で治療が完了するのが特徴です。この方法は、肺や肝臓の腫瘍にも用いられています。

例えば背骨への骨転移の場合、骨の中にある脊髄は放射線に弱いため、治療時には脊髄を避けながら腫瘍にだけ照射する高度な精度が求められます。SBRTは、2022年時点で、原発がんや他の転移が制御されており、骨転移が1~2か所に限られている場合や、以前照射した部位の再増悪に対して有効な手段とされています。

骨転移における放射線治療の方法

放射線治療を行うためには、まずCTやMRIを用いた詳細な治療計画を策定します。体幹部定位放射線治療では、腫瘍に対し高線量の放射線を少回数で照射します。例えば、12グレイを2回照射(合計24Gy)というスケジュールも行われますが、これはSBRT特有の方法であり、一般的な緩和照射では8Gy×1回、または30Gy/10回などが主流です。

1回の照射時間は約40〜50分で、痛みや熱さを感じることはほとんどなく、通常は入院を必要としません。治療後は画像検査などで定期的に経過を観察します。SBRTでは高線量照射により、治療した部位の腫瘍を60~90%の確率で局所制御できるという報告もあります。

【PDF】参照元:日本放射線腫瘍学会/放射線治療計画ガイドライン2022年版

放射線治療の副作用

重大な副作用が起こることは稀ですが、軽度の副作用は確認されています。以下に主な副作用を示します。

1つ目は皮膚炎です。治療中または治療直後に現れ、照射部位の発赤やかゆみなどが見られることがあります。これは放射線治療の一般的な副作用で、保湿剤や消炎鎮痛剤の使用により、1か月程度で改善するのが通常です。症状がつらい場合は主治医に相談しましょう。

2つ目は晩期障害と呼ばれ、治療後しばらく経ってから現れることがあります。具体的には、皮膚の色素沈着、硬化、発汗の低下などがあり、医師の管理下で適切に対処することが可能です。

【結論】骨転移はトモセラピーで治療できる?

トモセラピーは、強度変調放射線治療(IMRT)に無限回転軌道照射を組み合わせた専用装置で、従来困難とされた複雑形状の腫瘍にも対応可能です。

毎回の治療時にCT撮影を行い、位置のズレを修正することで、計画通りの正確な照射が可能になります。照射中の痛みはほとんどなく、1回の照射時間は5~10分、全体でも20~30分程度と、身体的・時間的負担が少ない治療法です。従来法に比べ副作用も軽減されています。

トモセラピーは単発の骨転移はもちろん、多発性の骨転移に対しても複数部位への同時照射が可能であり、2022年時点においても高精度な治療手段として用いられています。

ちなみに…骨転移はサイバーナイフで治療できる?

サイバーナイフは高精度ロボットアームと小型放射線治療装置を組み合わせたSBRT専用装置で、腫瘍に対して多方向から高精度に放射線を照射できます。正常組織への照射は最小限に抑えられます。

X線モニターにより、治療中の微細な動き(1ミリ以下)も検出でき、ロボットアーム側で位置補正を自動的に行うため、高精度な照射が可能です。呼吸性移動のある腫瘍(肺や腹部)にも追尾照射で対応可能です。

骨転移、とくに脊椎転移などにも高い精度で対応可能であり、2022年時点でも臨床で幅広く使用されています。

ちなみに…骨転移はガンマナイフで治療できる?

ガンマナイフは、脳内病変に200本以上のガンマ線を集中的に照射する治療法で、開頭せずに腫瘍を切除するように治療できるのが特長です。周囲組織への影響を抑えて行うことができます。

頭皮や頭蓋骨、脳組織を貫通する際の影響も最小限で、腫瘍部分のみを凝固・壊死させることができます。特に脳深部の病変や手術困難な高齢者にも適応されます。

ただし、ガンマナイフはあくまで脳病変専用の治療機器であり、肺や脊椎の骨転移には使用できません。頭蓋骨への骨転移がある場合には、適応可能か医師と相談する必要があります。

ちなみに…骨転移はトゥルービームで治療できる?

トゥルービームは、X線画像装置を内蔵した高精度な放射線治療装置です。ベッドに横たわった状態でCT撮影を行い、体内の病巣の位置を確認した上で、金属マーカーなしで正確な照射を実現できます。

サイバーナイフが小さな病巣へのピンポイント照射を得意とするのに対し、トゥルービームは広範囲におよぶ腫瘍への迅速な照射に優れています。

骨転移の治療にも適応があり、特に複数部位への一括照射やVMAT技術との併用で治療効率の向上が可能です。