慶應義塾大学病院は、癌治療の新しい診療部門として平成21年(2009年)に腫瘍センターを設立しました。腫瘍センターは計6部門(外来化学療法部門、放射線治療部門、緩和医療部門、低侵襲療法研究開発部門、リハビリテーション部門)で構成されており、各部門の専門スタッフが連携して治療に携わっています。低侵襲療法研究開発部門では、内視鏡による非穿孔式局所全層切除(ひせんこうしききょくしょぜんそうせつじょ)と腹腔鏡によるセンチネルリンパ節ナビゲーション手術を融合させた手術を開発して、患者さんに提供。
また、転移した癌の治療を行いながら、癌の症状や治療の副作用による不安、痛み、息苦しさなどを向上させるケアも実施しているそうです。
慶應義塾大学病院の治療方法
放射線
治療
慶應義塾大学病院が提供している
3種類の放射線治療について
1.外部照射
リニアックと呼ばれる装置を用いて、体外から標的に向けて放射線を照射する治療法です。CT画像をもとに、標的となる病変の部位、大きさ、種類などに合わせて照射方法が決定されます。通常は1日1回、平日は毎日治療を実施。治療期間は疾患によって異なりますが、通常1か月~2か月程度かかります。
また、腫瘍部分に放射線を集中して照射できる画期的な強度変調放射線治療(IMRT)や定位放射線治療(放射線を病変の形状に一致させて集中照射することで周辺正常組織を温存して病変のみを治療する方法)も取り入れているそうです。
外部照射が用いられる主な疾患・症状
脳腫瘍・頭頸部腫瘍・肺癌食道癌・乳癌乳房温存手術後・肝臓癌・前立腺癌・婦人科腫瘍(子宮頸癌など)・悪性リンパ腫・転移性腫瘍など
2.小線源治療
放射線源を内蔵したリング状の機械が、患者のまわりを回転しながら放射線を照射します。CTスキャンで癌の位置を特定して、ミリ単位で場所と強度を計算しながら治療を進める流れ。そのため、正常な細胞へのダメージを抑えつつ、複数の病変へ同時に照射できます。病変数が多く、治療が難しいケースでも、小線源治療なら癌病巣をコントロールしながら延命できる可能性があります。
アイソトープ治療
放射線を放出する物質(アイソトープ)を注射などで投与するがん治療です。慶應義塾大学病院は、アイソトープ内用療法として去勢抵抗性前立腺癌に対するラジウム223内用療法を行っています。
慶應義塾大学病院の施術について
放射線施術までの流れ
慶應義塾大学病院は以下のような流れで放射線治療を行っています。
1.放射線治療医による診察・説明
問診・診察を行うのは放射線治療医です。各種画像診断、病理診断等を参考に放射線治療に適応するかを判断して、放射線を照射する範囲、線量、回数、治療方法などを決定します。
治療方法や予想される効果、副作用などの説明を放射線治療医から受けたのち、患者の了解後に治療計画やCT撮影日、治療開始日を決定する流れです。
2.放射線治療計画
治療計画のためのCTを撮影します。必要であれば、頭部を固定するためのマスクや治療体位を維持するための固定具を使用します。
CT撮影データをもとに、治療計画装置上で放射線の照射方法を決定して、線量計算を実施。この作業には通常2日ほどかかります。強度変調放射線治療(IMRT)を行う場合はさらに時間がかかることも。CT撮影後に初回の照射の時間を決定します。
3.放射線治療
外部照射であれば、1回あたりの治療時間は5~15分間程度です。照射中は動かず安静にしましょう。放射線の照射中に痛みを感じることは基本的にありませんが、治療にかかる期間・回数は患者さんの疾患、治療部位、病状等により痛みの感じ方は異なります。
4.治療方針の決定
通常は1日1回の治療を平日に毎日、数週間行います。また、治療期間中は放射線治療の影響等を見るための診察を定期的に実施。照射期間中は必要に応じて診察を行うことがありますが、予約外の場合は、初回に診察した主治医とは別の医師が診察を担当する場合もあるそうです。