身体への負担が少ないIVR治療などの幅広いがん治療を提供
がん診療連携拠点病院として、積極的な診断・治療を行う東京医科大学茨城医療センター。内視鏡的治療や放射線科と連携し、IVR治療など幅広い癌治療を提供しています。医療器具を挿入する穴は数ミリと非常に小さく、縫合の必要も無いため、「手術痕を極力残したくない」という人にも向いているでしょう。胃がんや肝がんをはじめ、さまざまな癌治療を手掛けており、新しい技術を積極的に取り入れている医療機関でもあります。
1985年に筑波大学医学専門学群を卒業、同附属病院や日立総合病院で放射線科医としての研鑽を積み、2001年には筑波大学にて臨床医学系・放射線医学講師に着任。2008年からの重粒子医科学センター病院医長を経て、2010年に東京医科大学准教授に就任しています。放射線医科学講座と茨城医療センターで責任者を務め、教授に就任した今も臨床の現場で患者さんと向き合い続けるドクターです。
放射線医学一筋に歩んできたキャリアで培った知識と技術、臨床経験と高精度な放射線システムを融合し、自信を持って高度ながん治療を提供するのがモットー。現在は先進的な技術が搭載された放射線照射装置を駆使し、短時間かつ正常な組織に極力ダメージを与えることのない身体的負担に最大限配慮した放射線治療を手がけています。
東京医科大学の附属3病院の中でも長い歴史を持つ茨城医療センター。茨城県南部の地域中核病院としての役割を果たすため、急性期医療機能の中でも「救急医療」「がん診療」「小児・周産期医療」「肝疾患診療」といった政策医療に力を入れています。
がん診療では胃がんや肝臓がんをはじめ、多くのがんの治療を行なってきました。とくに高度な放射線治療においては高い治療成績を残しています。また、診療腫瘍科を開設しており、呼吸器内科とともに肺がんや悪性中皮腫をはじめとした呼吸器腫瘍の診療を行ないます。
診療腫瘍科が管理する外来化学療法センターでは、ほとんどすべてのがんに対する化学療法を実施し、抗がん剤治療に関するさまざまな相談に応じています。
目に見えず、匂いもなく、痛みや熱も感じないのに身体の表面や奥に存在するがんを治療することができる、麻酔も不要で大きな傷跡を残すこともない、そんな放射線の強みを最大限に活かした高精度な放射線治療を実践しているのが同センターの特徴です。
通常の一般照射に加えて、三次元的にエネルギーを収束させてピンポイント照射を行なう定位照射ならびに高度変調照射(IMRT)を採用しており、がんの部位や状態に応じて適切な放射線治療を選択することができます。
一般照射は主に耳鼻科領域のがんや食道がん、肺がん、肝臓がん、膵臓がん、胆管がん、乳がん、膀胱がんなどに有効です。定位照射は早期の肺がんなど3cm以下の腫瘍に効果があり、高度変調照射は前立腺がんや頭頚部がん、多発性の脳転移など、一般的に治療が困難といわれる病変に有効だと考えられます。
注目すべきは、複雑な治療プログラムを要する高度変調照射を短時間に実施できること。わずか3分以内で正確に照射できる先進的な高度変調照射機能(VMAT)が搭載されたシステムで、脊髄や直腸など放射線をあてたくない部位を避けて照射することで副作用を大幅に軽減します。
このような高度放射線治療では、毎回正確に放射線を照射することが重要です。そこで、同センターでは毎回の位置ずれを装置に搭載されたCTやX線撮影装置で確認し、短時間のうちに補正することが可能です。同じように、肺がんや肝臓がんにおける呼吸によるターゲットのずれは放射線治療の永遠のテーマともいわれてきた問題。これに対しても毎回の照射前に4次元CT解析を行なって呼吸性の移動を考慮した位置補正を行ないます。今後は腫瘍の動きに合わせた呼吸同期照射も可能となるでしょう。
従来の抗がん剤治療は入院して行なうのが一般的でした。しかし、副作用の少ない抗がん剤の開発や、副作用を抑える薬剤による支持療法の進歩、治療時間の短縮などを背景に、患者さんの生活の質を向上させる意味でも外来化学療法を実施する医療機関が増えてきました。
同センターでも外来化学療法センターが併設されており、2005年のスタートから患者さんは年々増加の一途を辿っています。周辺地域からの公共交通網の未整備もあって通院困難な患者さんは入院を希望されますが、それでも2020年度は外来化学療法の実施件数は延べ2,300件弱に上りました。とくに消化器系のがん患者さんが多く、次いで乳腺、呼吸器のがん患者さんが多くなっています。このほか、婦人科や泌尿器科、耳鼻咽喉科、皮膚科などとも連携し、各診療領域のがん患者さんを受け入れます。同センターにはがん化学療法認定看護師が複数名在籍しており、疑問や不安を抱える患者さんの相談に乗ってくれるでしょう。
外来化学療法センターには電動リクライニングベッドが導入され、それぞれ個人用テレビも設置。飲食可能なスペースやトイレもセンター内に完備しており、患者さんが不便を感じないよう配慮されています。Wi-Fi環境も整っているので、患者さんが治療を受けながら情報収集もできるようになりました。抗がん剤に関するパンフレットや、代表的な副作用である脱毛に関するパンフレットやかつらの見本も用意されています。
リスクマネジメントに力を入れているのも特徴で、同センターの化学療法委員会で正式に承認された薬剤、投与量、投与方法のみがコンピューター上でオーダーできるようになっています。
同センターの呼吸器外科では肺がんに対する外科治療を行なっており、常に先進的な知見を治療に取り入れることで患者さんの負担を軽減するよう心がけています。そのひとつが胸腔鏡下手術(VATS)で、低肺機能の転移性肺腫瘍や末梢型肺がんの手術に導入して肺部分切除や肺葉切除が行なわれています。小型の肺癌に対しては、身体的な負担の少ない完全胸腔鏡下肺葉切除+リンパ節郭清を積極的に実施。胸腔鏡を導入したことで手術負担が軽減され、入院期間の短縮も目指せるようになりました。
消化器内科では、消化管のがんに対する内視鏡的治療を積極的に行なっています。早期の胃がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)や、大腸ポリープに対する内視鏡的ポリープ切除術や内視鏡的粘膜切除術(EMR)は一泊入院で受けられます。
肝臓がんに対しては、外科による肝切除だけではなく、内科独自でもラジオ波焼灼術(RFA)やエタノール注入療法(PEI)を実施。放射線科との連携による経動脈的肝動脈塞栓術(TACE)なども行ないます。このTACEについては、マイクロビーズを用いた塞栓術を受ける患者さんも増えてきました。肝臓がんの進行に伴う閉塞性黄疸に対しては、内視鏡的あるいは経皮経胆道ドレナージやステント留置なども実施しています。
東京医科大学茨城医療センターにおける年間の放射線治療症例数は、2015年度392件、2016年度303件、2017年度266件となっており、緩やかな減少傾向にあるものの、新たに導入された放射線治療装置は高い稼働実績を残しているといえます。
その内訳をみていくと、年間の定位照射症例数は2015年度37件、2016年度27件、2017年度26件となっており、そのほとんどは転移性脳腫瘍に対して実施されたものです。同期間で強度変調回転照射(VMAT)の症例数をみていくと、2015年度64件、2016年度53件、2017年度91件と逆に増加傾向にあり、先進的な放射線治療を選択できるケースが増えていることがわかります。
放射線科外来の初診患者は2013年度で1,156名、翌2014年度は1,226名となっています。
東京医科大学茨城医療センターで放射線治療を受ける流れについてまとめました。
東京医科大学茨城医療センターは以下のような流れで放射線治療を行っています。
電話にて初診を予約。必要書類などの説明も受けられます。
予約時間の30分前までに初診受付にて紹介状の確認を行います。紹介状を持っていない場合は、初回のみ選定療養費が発生します。また、状況によっては待ち時間が発生したり、当日の診察が受けられない可能性があるため注意が必要です。
カウンセリング・診察を経て放射線治療の可否を判断します。画像診断や血液検査などもあわせて行い、病変の大きさ・広がり具合を放射線科など各分野の医師が連携して慎重に協議します。
精密検査の結果に基づき、今後の治療や方向性について患者さんと話し合いながら治療計画を立てていきます。
照射直前にX線による撮影を行い、体位再現性の確認や補修を実施。照射回数は疾患によって異なりますが、前立腺癌の場合は40回程度、頭頸部癌では35回程度です。1回あたりの治療時間は15~30分程度で、照射する部位や範囲によって若干異なります。体外からの照射になるため、ほぼ痛みや苦痛を感じることはないようです。
放射線科医による診察を行い、副作用の確認や治療成績チェックしていきます。
東京医科大学茨城医療センター | |
---|---|
診療科目 | 総合診療科、循環器内科、血管外科、代謝・内分泌内科、皮膚科、形成外科、感染症科、メンタルヘルス科、小児科、整形外科、放射線科、麻酔か、リハビリテーション、病理診断科、臨床腫瘍科、脳神経内科、脳神経外科、眼科、耳鼻咽喉科、歯科口腔、呼吸器内科、呼吸器外科、乳腺科、消化器内科、消化器外科、腎臓内科、泌尿器科、産婦人科 |
診療時間 | 8:30~11:00 |
休診日 | 第2・4土曜、日曜、祝日、年末年始、創立記念日 |
所在地 | 茨城県稲敷郡阿見町中央3-20−1 |
電話番号 | 029-887-1161 |
ベッド数 | 501床 |
年間治療患者数 | ※参考:2017年度 放射線治療症例数:266件 |
対応可能な治療方法 | 手術療法、放射線療法、内視鏡的治療、化学療法 |
設備 | 16スライスMDCT、128スライス Dual-Energy CT、ライナック放射線治療装置など |
URL | https://ksm.tokyo-med.ac.jp/ |