認知行動療法は精神療法(心理療法)の一種で、その人の思考(認知)と行動に働きかけて気持ちを楽にするためのケアを指します。
認知とは物事の受け止め方や考え方という意味ですが、私たちはストレスを感じると悲観的な考え方に陥りやすく、問題解決ができなくなるような心の状態にまで自分を追い込んでしまいます。認知行動療法ではそういった考え方のバランスを整え、より建設的にストレスに対応できる精神状態を生み出していきます。
たとえば、主治医からがんの再発を告げられたとしたら、あなたはどうしますか?
これまでの経験や知識から、とっさに「今度こそ死んでしまうかもしれない、家族に何と説明すればいいのか…」と考え、恐怖と不安に陥るかもしれません。
しかし、それは現時点での確定した事実ではありません。少なくともその時点では、がんの再発という事実はありますが、治療の可能性や将来の希望が完全に断たれたわけではないはずです。
認知行動療法の第一歩は、恐怖や不安に陥ったきっかけや思い込み(自動思考)を認識することです。そして次に、それが事実なのかどうか、その考え方は自分にとって有益なのかどうかを見直していき、最初に感じたマイナスな考え方よりも柔軟かつ合理的な考え方を引き出していきます。その結果、「自分は再発がんでも適切な治療を受ければ長く生きられるかもしれない」「まだ様々な治療の選択肢はある」「家族と一緒に過ごす時間をより大切にしたい」というように、違う考え方が生まれてくるでしょう。
このように、認知行動療法では専門家との面接を通じて、考え方の癖や思い込みなどで偏った精神状態のバランスを回復させる方法を学んでいきます。近年では、対面だけでなく、オンラインでの認知行動療法も提供されています。
それでは、認知行動療法の具体的なプロセスをみていきましょう。
まずは患者さんをひとりの人間として理解することがスタートです。専門家が患者さんの悩みや問題点、強みなどを多角的に分析して治療方針を立案し、それを患者さんと共有、協力しながら面接を進めます。患者さんの目標や価値観を明確にすることも重要視されます。
次に、行動的なテクニックを用いて生活のリズムを整えていきます。具体的にはその人の毎日の生活を振り返り、
これらを無理のない形で、優先順位をつけながら行なっていきます(行動活性化)。小さな目標を設定し、達成感を積み重ねていくことがポイントです。
一定の身体活動を通じて自信を取り戻すことができれば、他者との関わり方にもプラスの影響をもたらします。そうしてさまざまな症状に影響する問題を解決に向かわせる適応力を高めていきます。
気持ちが大きく動揺したり、心がつらくなったりしたときに頭に浮かぶ考えを「自動思考」といいます。前述の例では、がんの再発を告げられたときに死を意識したことを指します。
認知行動療法では、その自動思考が現実とどのくらい食い違っているのかを分析し(思考記録など)、思考のバランスを整えて認知の偏りを修正していきます。具体的には、自動思考に対して「それに対する反論は?」「もっと現実的な考え方は?」といった問いかけを行い、別の考え方を探索していきます。
こうしたプロセスで成果を上げるためには、専門家との面接の場はもちろん、宿題(ホームワーク)を用いて日常生活の中でも意識していくことが大切です。日々の出来事や考えを記録したり、面接で学んだ対処法を実践したりすることで、治療効果を高めることができます。