がんの代表的な治療法には手術や抗がん剤治療、放射線治療があり、国内ではこれらを三大標準治療と呼んでいます。
しかしながら、それぞれの治療法が劇的な進歩を遂げた現在においても、がんの種類や進行の程度によっては十分な治療効果を得られないことがあります。そこで、より高い治療効果を得るためにこれらの治療法の2つ、場合によってはすべてを組み合わせて行なうことがあります。それを「集学的治療」といいます。
現代の医療は細分化、専門化の一途をたどっており、それぞれの分野に専門の医師や医療スタッフが存在します。次々に新しい治療法が確立されていることから、すべての治療法を同じ医師や医療スタッフが対応するのは困難で、それはがん治療も同様です。
集学的治療では多くの専門家たちがチームを組んで連携し、患者さん一人ひとりに合わせた治療を立案、実行していきます。
それでは、実際の集学的治療の進め方についてみていきましょう。
手術や抗がん剤治療、放射線治療など、さまざまながん治療の専門家たちが、患者さん本人にとっての最適な治療法を検討する会議をキャンサーボードといいます。治療法についてさまざまな意見がある場合や、希少がんなど治療法が確立していない場合にも行われますが、必要に応じて画像診断や病理診断の専門家や、看護師、薬剤師などの医療スタッフも参加します。
担当医は検査の結果などから、その患者さんのがんにもっとも効果が期待できる治療の組み合わせを検討します。年齢や性別、持病や生活環境、そして本人の希望も重要な検討要素になります。治療開始後も定期的な検討を行ない、場合によっては治療方針を変更することもあります。
集学的治療は三大標準治療を組み合わせて行なうとお伝えしましたが、実際には支持療法や緩和ケア、栄養サポートなども含まれます。
がんの症状や治療に伴う副作用や合併症、後遺症の予防や治療のことをまとめて支持療法といいます。具体的には療養生活の質の向上を目指し、仕事を含めたその人の生活と治療を無理なく両立できるようフォローすることを目的とします。
たとえば、抗がん剤の副作用として代表的な貧血や白血球・血小板の減少、吐き気や嘔吐などに対する適切な治療、感染症に対する抗生剤の投与などが支持療法として挙げられます。
患者さんのQOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)を維持するため、がんに伴う心身のさまざまな苦痛を和らげ、その人らしく日々を過ごせることを目指す治療法の総称を緩和ケアといいます。
誤解されがちですが、緩和ケアは末期がんのためのものだけではありません、がんと診断されたときから身体的・精神的な苦痛を和らげるケアを積極的に導入することで、患者さん本人と家族の生活の質を保っていくことができます。
がんの症状や治療の副作用で食事が十分に摂れなくなる場合があり、栄養状態が低下するとがん治療を続けるための体力を維持できなくなってしまいます。
そこで、医師や看護師、管理栄養士、薬剤師などさまざまな医療スタッフによる栄養サポートチームが介入し、治療開始前から食事や栄養管理の支援をするケースが多くなっています。