いちから分かる癌転移の治療方法ガイド

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がん患者の負担を減らす家事分担

多くのがん患者さんが、治療開始前と同じように家事をこなすことはできません。分担できる家事は家族に割り振って、できるだけ早く患者さんの負担を減らしてあげましょう。

食事の支度や掃除、洗濯、育児など、患者さんにとって負担になる家事は家庭によってさまざま。患者さんが抱えている家事をリストアップして、家族で共有するのも一手かもしれません。家族のがんをきっかけにして家事の分担が進む家庭は少なくはないのです。

病気のときはいつもどおりの家事が難しい

普段はてきぱきと家事をこなしている人でも、病気のときは気力、体力ともに低下しているのでそうはいきません。たとえば、がんであればさまざまな症状により対応が難しい家事があります。

がん患者さんが悩む症状

がんそのものの症状や、治療の副作用などによる症状の多くは家事の妨げになります。がん患者さんを悩ませる症状の例を挙げてみましょう。

手足のしびれ

手足のしびれは、がんの拡大による神経の圧迫や抗がん剤の副作用など、さまざまな原因があります。家事にも影響が出てしまうでしょう。

筋力低下

がんそのものの症状や治療の影響で筋力が低下し、手に力が入らない、腕を上げにくい、重いものが持てないといった状態をきたすことがあります。

疲れやすい

治療による長期間の安静や薬の副作用、栄養不足、貧血などが原因で疲れやすくなることは往々にしてあります。自分が動ける程度がわからなくなることもあるでしょう。

家事分担で負担を軽減

がん患者さんはさまざまな症状に悩んでいます。それまで家事を一手に引き受けていた人に対して、治療開始後に同じことを求めるのは非常に酷です。家族で家事を分担し、がん患者さんの負担を軽減することをぜひ検討してみてください。

家事分担のススメ

「家族ががんになるまで、家事を分担するなんて考えたこともなかった」という人もいるかもしれません。どうすればいいのか悩んでいる人は、以下をヒントにしてみてください。

食事

いつも家族の食事を支度している人ががんになった場合、普段から食事をつくる習慣のない家族にとっては大きな悩みの種になるでしょう。でも、手間をかけなくても十分な栄養は摂れます。

すべて手づくりにこだわらない

無理をして食事をつくるよりも、気楽に食べられるほうが心身にも良いはずです。すべて手づくりにこだわる必要はありません。

最近のレトルト食品や冷凍食品は美味しく、栄養バランスにも優れた商品が多くあります。毎日だと気になるかもしれませんが、週に〇食程度と決めて、積極的に利用してはいかがでしょうか。野菜が足りないと思えば、コンビニやスーパーのお惣菜やサラダでも良いでしょう。

また、缶詰も肉や魚であれば十分に主菜になります。買い置きもできますし、いざというときの非常食にもなるのでおすすめです。

買い物は宅配サービスがあるショップを利用する

食事の支度は買い物から始まりますが、普段から食事の買い物に行く習慣のない人は、意外と重労働であることに驚くかもしれません。とくにお米やペットボトル、まとまった量の根菜などは持ち運ぶのも負担になります。

買い出しに行くのがネックな家庭の場合、宅配サービスがあるショップの利用がおすすめ。外出する必要がないので時間の節約になります。重いものだけの利用でも体力的負担が軽減できるので一石二鳥です。

週に何回でも食事宅配サービスを利用する

大切な家族に手づくりの料理をふるまいたい、そう思っても自分で調理することが難しかったり、小さな子どもを抱えていて食事の支度が大きな負担になったりすることもあるでしょう。そんなときは、自宅に食事を届けてくれる配食サービスを利用するのも一手です。

きちんと栄養士が監修している配食サービスであれば栄養バランスも整っていますし、がん患者さんの状態に応じたメニューを考えてくれるところもあります。毎日とはいわず週に何回かだけでも配食サービスを利用することで、家事の負担をひとつ減らすことが可能です。

ストレスがたまってきたら外食を

日々の家事でストレスがたまってきたと感じたら、ときには外食することも気分転換になります。やはり、好きなものを好きなだけ食べることはストレス解消になるでしょう。体調と相談しながら、家族のサポートを受けつつ食事に出かけてみてはいかがでしょうか。

掃除・洗濯

がんの症状や治療の副作用で、手に力が入りにくかったり、腕を上げにくかったり、重いものが持ち上げられないといった状態になることがあります。そんなときは掃除や洗濯も大変なので、何らかの対策が必要です。

回数を減らす、手間を減らす

まずは単純に、掃除や洗濯の回数を減らす工夫をしてみましょう。どうしてもがん患者さん自身が掃除や洗濯をしなければならないのであれば、身体に負担がかかる化学療法の前日に掃除や洗濯をできる限り済ませておくことです。

しわになりにくい洗濯物はたたむ手間をかけず、かごなどにそのまま入れて保管するのも手間は減らせます。

小さなお子さんの衣類はタンスや引き出しに名札をつけて、自分で取り出せるようにするのもいいでしょう。

家事代行サービスを利用する

治療に専念しているため家事をする時間がない、以前より体力が落ちてしまって掃除や洗濯が大変、といったケースは少なくありません。家族が掃除や洗濯が苦手で頼みにくい、ということもあるでしょう。そんなときは、家政士による家事代行サービスが便利です。

一般的に家事代行サービスは2時間から利用できます。患者さんを看病する家族が家事に手が回らないとき、看病疲れでゆっくり心身を休めたいときなどは頼りになります。

掃除、洗濯でいえばエアコンや水回りの掃除、衣類や布団のクリーニングなどを専門とする家事代行サービスもあるようなので、これらを上手に使用しながら療養生活の負担を減らしていってはいかがでしょうか。

育児

育児中のお母さんががんになってしまったら、治療中の育児サポートも必要になるでしょう。入院中はもちろん、退院後も家族だけでは支えきれない場面も出てくると思います。自身の病気や治療について、どうやって子どもに伝えればいいのか悩んでしまうこともあるかもしれません。

そんなときは、悩みを家族だけで抱えてしまわず、育児をサポートしてくれる機関の利用を考えてみましょう。

ファミリーサポートセンター

市区町村が運営するファミリーサポートセンターは、子どもを育てるすべての家庭を対象とした、厚生労働省による支援事業のひとつです。地域において育児のサポートを受けたい人と、サポートを行ないたい人がそれぞれ登録し、センターがマッチングして相互援助を行なうしくみになっています。

具体的には、保育施設への送り迎えや放課後の託児、お母さんが通院する際や急用時の託児などを請け負ってくれます。一般財団法人女性労働協会のホームページで、お近くのファミリーサポートセンターを検索できるのでお試しください。

※参照元:女性労働協会_サポートセンター検索

緊急保育

定員に空きがあって事前に行政に登録している保育園が、保護者の病気などを理由として一時的に子どもを預かる制度が緊急保育です。保育園に入所可能な月齢ないし年齢であれば、小学校就学前の健康な子どもはすべて対象になります。保護者の入院や通院、保護者が家族の介護にあたるときなどは、この制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

利用条件や期間などは保育園によって異なりますので、各市区町村の担当窓口にお問い合わせください。

Hope Tree(ホープツリー)

子を持つ親ががんになってしまったとき、その事実を子どもに伝えるべきか、どのように伝えればいいのか、この先も子どもを育てていくことができるのか、悩みは尽きないと思います。近年はがん患者さんが増加しており、親のがんを子どもへ告知することは重要な課題として取り上げられるようになってきました。

欧米では、がんをはじめとした親の病気のさまざまなタイミングで、子どもの年齢に合わせた病気の伝え方についての情報が公開されています。その取り組みが日本でも紹介されたことをきっかけとして、「Hope Tree(ホープツリー)」というプロジェクトがスタートしました。

このホープツリーは、医療環境に置かれた子どもや家族に心理社会的支援を提供する専門職「チャイルド・ライフ・スペシャリスト」を中心に、臨床心理士や看護師、小児科医、医療ソーシャルワーカーなどによって結成され、厚生労働省の支援を受けています。子どもも含めた家族全体への支援が大切だという視点から、欧米で活用されているテキストを日本語訳したものを提供するなどの活動を行なっています。がんになってしまった親と子どもを支える家族や、学校の関係者にもぜひ知ってもらいたい情報が多くあります。詳しくはホープツリーのホームページをご覧ください。

※参照元:特定非営利活動法人ホープツリー

ご家族やパートナーも頼れる相談窓口

がん相談ホットライン

日本財団がサポートする日本対がん協会の「がん相談ホットライン」は、がん患者さん本人だけではなく家族やパートナー、友人や知人など、誰でも利用できるサービスです。相談員は看護師や社会福祉士が中心で、治療や副作用のこと、仕事やお金のこと、医療者とのかかわり方など、なんでも相談に乗ってくれます。もちろん、家事の分担に関することも一緒に親身になって考えてくれるはずです。

相談者の言葉に耳を傾け、次の一歩を踏み出せるような支援を目指すのががん相談ホットラインの理念です。相談者の思いや考え、価値観といった「らしさ」を尊重し、問題解決のための具体的な行動も提示してくれるでしょう。

※参照元:日本対がん協会_がん相談ホットライン