家族やパートナーが癌の宣告を受けたとき、または転移や再発を医師から告げられたとき、あなたならどうしますか?
どうにかして励ましてあげたい、でもかける言葉が見つからない。そんなふうに悩むかもしれません。ただ、大切なのは傾聴、まずは相手の話をじっくりと聞き受け入れていくことです。
本人にとって家族やパートナーの存在は心強いものですが、それでも自分の未来を思うと心は揺れ、気持ちを落ち着かせることは困難です。大切な人との衝突や誤解が生じることもあるでしょう。それでも、根気よくまっすぐ本人と向き合わなければなりません。
ここでは、癌患者本人との向き合い方やかけるべき言葉など、コミュニケーション面についてお伝えしていきます。
本人との対話の内容は、どうしても治療や目の前の生活に関することになりがちかもしれません。ですが、少し先のことを考えてみることも大切です。
「退院したら、少し遠くまでドライブしようか」「今の治療が終わったら、美味しいものを食べに行こう」、こんなひと言が具体的な未来のイメージにつながります。大切なのは、あなたと一緒にその未来を実現する、そう本人に思ってもらうことです。
本人の希望となり、それでいて重荷にならず、生きる力を生むような言葉をかけてあげましょう。
本人が思いを話してくれたら、まずはそれを許容しましょう。自分の考えや価値観を返すことは避けるべきです。たとえ家族やパートナーであっても、他人が考える癌患者のイメージを押し付けられるのはつらいものです。
話を聞きながら、そうだな、そのとおりだなと、本人の考え方を認めてあげることが大切です。
傾聴とはただ単に話を聞くことではありません。本人が話してくれる内容に関心を持ち、それを前向きに受け入れながらさらに深く話を聞いていくことです。本人が伝えたいことや気持ちを汲んで、あなたの言葉で答えたときに深いコミュニケーションが生まれるでしょう。
話を聞いていくと、本人に感情移入をすることがあると思います。そこで、共感しているということを本人に伝えましょう。
自分の感情を抑え過ぎないように、「大変だったね」「つらいね」と本人の感情を理解し、共感することです。対話の中で自分の感情にも気づきながら、それも受容することです。
本人を気の毒に思っても、面と向かって「かわいそう」とは言わないでください。大げさに聞こえるかもしれませんが、本人にとっては「憐れまれている」と感じてしまうかもしれません。
つらい闘病中であっても、本人の人生はそれがすべてではありません。楽しいことや幸せを感じることもあるでしょう。それを「かわいそう」でひと括りにしてしまうのは本人には酷なことです。
本人が気を落としていると、励ましたくなる気持ちもわかります。しかし、励ましの言葉が患者さんにとって必ずしも支えになるとは限りません。むしろ追い詰めることにもなるのです。
「がんばってね」「早く良くなってね」という一見前向きな言葉も、本人にとっては「がんばっているのに…」「早く良くなりたいのに…」というマイナス感情を生むことにもつながります。
悪気のない前向きな言葉だとしても、自分が癌だったらどう感じるか、それをよく考えてみましょう。
本人を心配する気持ちはもっともですが、病状や治療に関することを根掘り葉掘り聞くのは避けましょう。本人から自発的に話してくれるのであれば別ですが、こちらから詮索するのは本人にとって苦痛以外の何物でもありません。
興味本位で聞かれていると思われてしまったら、そこで関係は崩れてしまいます。