子宮頸がんにおける放射線療法の目的・方法・副作用などについて説明しているページです。子宮頸がんは、子宮の入り口の子宮頸部と呼ばれる部分から発生するがん。子宮の入り口付近に発生することが多いため、婦人科の診察で観察や検査がしやすく、発見されやすいがんとされています。また、早期に発見すれば比較的治療しやすく予後が良いとされているがんですが、進行すると治療が難しいことから早期発見が極めて重要です。
子宮頸がんは、手術を行うのが困難なステージまで進行してしまっていても、放射線治療を行うことで治療が可能です。放射線治療は、子宮頸がんに対して有効性が高い治療法のひとつです。2020年以降では、進行したがんの場合に細胞障害性抗がん薬と併用して行う化学放射線療法(CCRT)が標準治療とされています。また、術後に再発リスクが高いと判断された場合や、初回治療で放射線を行わなかった患者が再発した場合にも、放射線治療は重要な治療選択肢となります。放射線治療の主な目的は以下の3つに分類されます。
根治とは、放射線治療単独、あるいは薬物療法など他の治療と併用してがんを治癒させることを指します。根治を目指す治療では、原則として数週間から数か月にわたる治療期間が必要となるのが一般的です。定位放射線治療(SRT)は通常、子宮頸がんには適応されませんが、特殊な症例に対しては短期間で終了する治療として選択されることがあります。
緩和とは、進行がんや再発により発生する痛みや出血などの症状を軽減することを目的とした治療です。がんが周囲臓器へ浸潤していたり、全身に広がっている場合には薬物療法が基本となりますが、放射線治療も併用されることで症状の緩和に役立つことがあります。
摘出手術や薬物療法により、肉眼的に見える腫瘍が消失しても、顕微鏡でしか確認できないような微小ながん細胞が残っている可能性があります。このようなケースでは、術後補助放射線治療(アジュバント照射)として予防的に放射線を照射し、再発を抑える目的で治療が行われます。
子宮頸がんに対する放射線治療は、骨盤部への外部照射(EBRT)と、子宮・膣内に線源を挿入する腔内照射(ICBT)を併用するのが標準的です。外部照射は、子宮頸部の腫瘍だけでなく、骨盤内リンパ節など転移の可能性がある部位を含めて広範囲に照射します。腔内照射では、腫瘍に集中して放射線を照射することで、病巣部への効果を高めます。手術後に放射線治療を行う場合には、通常、骨盤部への外部照射のみを行いますが、膣への浸潤が認められる場合には腔内照射を追加することがあります。
外部照射では、治療前に皮膚マークを付けてCT撮影を行い、CT画像に基づいて治療範囲と放射線量を決定します。現在(2025年時点)では、多くの施設で強度変調放射線治療(IMRT)を導入しており、従来の4方向照射よりも正常組織への影響を抑えながら効果的な照射が可能です。1回の治療時間は約10分で、週5回(月曜~金曜)、合計25~30回の通院治療が行われます。
腔内照射では、子宮と膣内にチューブを挿入し、その中に放射線を出す線源を配置して照射します。子宮頸部から直接放射線を照射するため、病変に高線量を集中させることが可能です。治療回数は1週間に1回を目安に、通常3回程度行います。チューブ挿入時には痛みを感じることがありますが、治療自体に痛みはありません。チューブを挿入後、レントゲンとCTで位置を確認し、照射計画を立ててから治療が始まります。照射時間は10~20分程度で、挿入から取り外しまでを含めて約1時間で終了します。
放射線治療による主な副作用は下痢です。症状の程度は個人差があり、軽症の場合は経過観察となりますが、重症の場合には下痢止めや点滴などが行われます。そのほか、食欲不振や腹痛、膀胱への影響として頻尿、残尿感、排尿痛が見られることがあります。また、白血球数の減少もみられることがありますが、通常は軽度で処置を必要としません。これらの副作用は治療終了後、数週間以内に回復することが多いです。
閉経前の女性では、放射線により卵巣機能が低下し、更年期様症状が現れる場合があります。必要に応じて、卵巣を照射範囲外へ移動する「卵巣移動術」が検討されます。また、晩期合併症として、治療後1~2年経過してから直腸や膀胱の粘膜に障害が起き、血便や血尿などの症状が生じることがあります。
トモセラピーは2002年に開発された放射線治療装置で、日本国内でも導入施設が増えています。子宮頸がんに対しても、特に術後補助放射線治療に用いられることがあります。CT装置のように患者の周囲を回転しながら、複数方向から細いビームを照射することにより、治療対象部位には高線量を集中させ、正常組織への線量を低減することが可能です。また、毎回の治療前に位置確認画像を撮影して位置ずれを補正できることも特徴です。
サイバーナイフはロボットアームに搭載された放射線照射装置を用いて、複数方向から腫瘍に集中的に放射線を照射する定位放射線治療専用装置です。正常組織への影響を最小限に抑えながら腫瘍に高線量を照射できるため、一部の再発症例などでは使用されることがあります。ただし、子宮頸がんに対する標準的治療としては広く適応されていないため、適応は限定的です。
ガンマナイフは脳腫瘍や脳転移の治療に特化した定位放射線治療装置であり、子宮頸がんの原発巣や骨盤内病変に対して使用されることはほとんどありません。
トゥルービームはアメリカのバリアンメディカルシステムズ社によって2010年に開発された放射線治療装置で、現在では日本国内の多くのがん治療施設に導入されています。特に強度変調放射線治療(IMRT)や定位放射線治療(SBRT)に対応しており、子宮頸がんの治療にも幅広く使用されています。呼吸などによって移動する臓器の位置補正機能を搭載しており、照射精度と患者の負担軽減の両立が可能です。また、高出力による短時間照射も可能で、治療効率の向上にも貢献しています。