いちから分かる癌転移の治療方法ガイド

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温熱療法(ハイパーサーミア)

このページでは、電磁波によって癌細胞を攻撃する治療法「温熱療法(ハイパーサーミア)」について、癌治療としての仕組みや効果、注意すべきポイントなどを詳しく解説しています。

温熱療法(ハイパーサーミア)とは?

電磁波で癌細胞を温めて殺す治療

温熱療法(ハイパーサーミア)とは癌治療の方法の1つであり、体外から電磁波を照射して癌細胞を温めて、癌を攻撃する治療システムです。

癌治療における体外からの照射治療では、一般的に放射線治療などがイメージされますが、ハイパーサーミアでは放射線の代わりに「ラジオ波」という高周波(8MHz)のエネルギーを照射して、癌細胞へ局所的に熱を伝えることが特徴です。[注1]

温熱療法(ハイパーサーミア)は保険適用の治療法

ハイパーサーミアは1990年4月から保険適用の対象であり、医学的にも癌細胞への効果が示されています。ただし、標準治療としてではなく、補助療法としての位置づけが確立しています。[注1]

温熱療法(ハイパーサーミア)のメカニズム

癌細胞は健康な細胞よりも熱に弱い

癌細胞は健常細胞よりも熱に弱く、およそ41.5~44℃程度で死滅します。この性質が温熱療法のカギです。

癌細胞は基本的に体内の臓器など深部に発生することが多く、体外から温水や温風で体温を上げても、標的とする部位に十分な熱を届けることは困難です。しかし、専用の治療機器を使って電磁波を集中的に照射することで、任意の部位だけに熱エネルギーを伝えられるようになり、ピンポイントで癌細胞を攻撃することが可能です。[注2]

電磁波を照射するメカニズム

ハイパーサーミアでは、まず専用のベッドの上に患者を寝かせます。そして、その癌のある部位を狙って体を上下から二極の電極盤ではさみ、電極盤の間に8MHzの高周波(ラジオ波)を流すことで癌細胞へ熱を届けるという仕組みです。

なお、熱エネルギーを浴びることで体表面が先に温まってしまうと、低温火傷や痛みといった合併症のリスクが高まってしまうため、電極などに冷却水を流し込んで体表面を冷やしながら深部だけを温めるといった工夫がされるのが通常です。

熱によって他の健康な細胞も死滅しないのか?

ハイパーサーミアが有効性を期待される理由は、癌細胞と健常細胞で耐えられる温度の高さに差があることになります。

ハイパーサーミアによって温められた癌細胞は熱で死にますが、健常な細胞は死ぬことなく、むしろ熱によって血管が拡張して血流が強まり、より放熱しやすくなります。温熱療法では、癌細胞と健常細胞の温熱耐性の差異を活用することで、癌細胞を選択的に死滅させることが可能となります。

温熱効果によるその他のメリット

細胞や組織が温められて血流が増加することで、正常細胞の代謝が活性化したり、免疫機能が強化されたりといったメリットもあります。また、血流に流れる抗がん剤などの成分が吸収されやすくなり、より効果を発揮しやすくなるといったことも特徴です。

また、2023年以降では、磁性ナノ粒子を用いて局所加温の精度を高める「磁性流体ハイパーサーミア」の臨床研究も進められています。これにより、従来よりも深部の腫瘍に対して正確な加温制御が可能となりつつあります。

有効ながん・不得意ながん

ハイパーサーミアは、脳や眼球といった熱の影響を受けやすい部位を除けば、全身の多くの部位に適用可能とされています。また、癌の進行度や組織型にかかわらず治療対象となることが多いです。[注3]

ただし、ハイパーサーミアでは電磁波で局所的に癌細胞を狙い撃ちするという特性上、具体的に位置を特定できない癌に対して使うことができません。つまり、白血病などの血液の癌に対してハイパーサーミアを使用できません。

また、その他の癌であっても、あらかじめCT検査などによって明確な癌細胞の位置を同定できていない場合、治療の適応外になってしまいます。

なお、術後の再発予防や癌の発症リスクを抑えるために使えないことも理解しておきましょう。

温熱療法(ハイパーサーミア)との併用で相乗効果をもたらす治療法

手術

手術による治療を直ちに行えない場合であっても、ハイパーサーミアによって癌細胞を退縮させて状態を改善できれば、改めて外科治療を行えるかも知れません。

放射線治療

放射線治療によって放射線への抵抗性を獲得した癌細胞にも有効とされています。[注1]

化学療法

ハイパーサーミアと抗がん剤の投与を併用することで、薬剤の吸収力を高めて抗がん剤の効果を向上させられます。[注1]

免疫療法

薬剤の吸収力を高められる上、条件によっては細胞の代謝を促進して免疫機能の活性化をサポートできるため、免疫療法に対しても効果を高められるかもしれません。

温熱療法(ハイパーサーミア)の治療の流れ

医療機関によって違いはあるものの、基本的には以下のような流れとなります。

  1. 事前の診断とCTなどの画像検査
  2. 治療部位の特定と照射プランの検討
  3. 軽装に着替えて温熱治療台へ横たわる
  4. 治療器との密着性を高めるためにゼリーなどを塗る
  5. 電極盤を体に当てて電磁波を照射する
  6. 治療時間は1回40分程度
  7. 照射中は患者の状態を確認しながら水分補給などを行う
  8. 術後の脱水症状を回避するため水分補給を行う

なお、詳細はそもそもの治療の適応性も合わせて主治医と相談してください。

参考サイト