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【癌と免疫の関係】マクロファージとは?

マクロファージの役割

マクロファージとは?

マクロファージとは、アメーバ状の細胞であり、大きさは直径15~20μmと比較的大きいのが特徴です。全身の組織に幅広く分布しており、生まれつき備わっている防御機構「自然免疫」において重要な役割を果たしています。

なぜマクロファージが癌に効果的なの?

では、マクロファージがなぜ癌に効果的なのかを見ていきましょう。人間の体内で癌細胞が発生すると、マクロファージはその癌細胞を自分の体内に取り込んで消化しようとします。これを貪食処理と言います。マクロファージの中には、ただ取り込んで消化するだけでなく、その癌細胞の情報を他の免疫細胞に伝えるために、処理した抗原を細胞表面に提示する機能を持つものがあります。この情報を受け取ったキラーT細胞などが活性化され、癌細胞を攻撃・破壊するのです。つまり、マクロファージが癌細胞を認識して処理しながら、他の免疫細胞に情報を伝えなければ、癌細胞は増殖し続けることになり、マクロファージの機能は癌の抑制において極めて重要となります。

進むマクロファージに関する研究

このマクロファージについては、さまざまな研究が現在も進められており、2019年2月には、京都大学大学院工学研究科の秋吉一成教授、三重大学の村岡大輔助教、原田直純特任講師、珠玖洋特定教授らの研究グループによってマクロファージに関する研究成果が国際学術誌に掲載されました。

この研究は、がんの治療に使用されている「免疫チェックポイント阻害薬」に関するものでした。この阻害薬は、肺がんなど一部のがんにおいては顕著な効果を示す一方で、他のがんには抵抗性があるとされているため、どのようなタイプのがんに抵抗性がみられるのか、その解析が進められています。抵抗性のあるがんにおいては、T細胞などの免疫系細胞が適切に機能しないことが知られていますが、その原因について研究が行われました。

その結果、マウスを使った実験により、がん組織内に存在する免疫細胞「TAM(腫瘍関連マクロファージ)」が免疫抑制的な状態にあり、抗原提示機能を発揮していないことが、免疫チェックポイント阻害薬に対する抵抗性の一因であることが明らかになりました。このTAMは、M2型と呼ばれる抑制型マクロファージに類似した性質を持ち、免疫応答を阻害することが報告されています。

2023年以降の研究では、TAMがPD-L1を高発現してT細胞の機能を抑えることや、他の免疫抑制細胞(MDSC、制御性T細胞)との相互作用によって免疫抑制環境を形成することも分かってきています。こうした知見により、TAMを再プログラムして抗腫瘍性のM1型マクロファージへ変換することで、免疫チェックポイント阻害薬が効きやすくなる可能性が示されており、今後の治療成績の向上が期待されています。