癌の手術治療のメリットやデメリットについて解説しています。また、手術後の注意点についてもまとめてみました。
癌の病巣を外科的に取り除く、手術。体内から癌細胞を取り除くので、寛解にもっとも効果的と言われる治療法のひとつです。メリットがある反面、もちろんデメリットもあります。また、癌手術には注意しなければならない点もあります。
そこで、ここではがん手術のメリットやデメリット、そして癌手術後の注意点をまとめてみました。
癌治療で手術を行なう最大のメリットは、小さな転移がなければ寛解の可能性が高いことです。癌のかたまりを一気に取り除くことができるので、予後も比較的良いです。癌組織を完全にとりのぞければ、癌は快方に向かいます。
また、進行性の癌であっても、転移の範囲が狭ければ手術による除去が可能です。たとえば、転移が予想されるリンパ節を一緒に切除することができれば、リンパ節への転移があっても快方に向かうことができるでしょう。
からだへの負担が大きいことがデメリットとされてきましたが、切除範囲を小さくする縮小施術や、内視鏡による腹腔鏡下手術、胸腔鏡下手術を利用することで、より負担を小さくすることができます。
がんの手術後の食事や生活についてみていきましょう。
胃や大腸など消化器官の癌を手術した後の食事は、基本的に手術により消化器官に障害が残っていなければ退院後は食事制限が設けられることは原則ありません。ただし、糖尿病など他の疾患がある場合などは、話は別です。医師に手術後の食事についてきちんと確認しておきましょう。
食べ物を消化する働きを持つ胃のがん手術を受けた後は、術後しばらくは胃の機能が低下しています。食事は消化しやすい柔らかく煮込んだものや細かく刻まれたものなどを摂取するように心がけましょう。
また、食事量は1度にたくさん食べるのではなく、無理なく少なめの量を複数回に分けて食べるようにするといいでしょう。胃への負担を軽減するために、よく噛んで食べることも大切です。退院直後から繊維質の多い食べ物や脂っこいものをいきなり食べると消化によくありませんから、繊維の豊富なものや揚げ物など胃への刺激が強いものは少し減らして様子を見るようにしてください。
胃を切除すると、体のカルシウム吸収が低下します。カルシウムの豊富な食材に加えて、カルシウム吸収には欠かせないビタミンDも多く食べるようにしてください。
胃がんの手術後は、ダンピング症候群や胸焼け、便秘・下痢などが症状として残る場合があります。医師の指示を仰ぎながら、よく噛んでゆっくりと食べることを大原則として頭に入れておきましょう。
加えて、食後に冷や汗や動機などの症状が現れる早期ダンピング症候群が見られる場合には、食事中は水分を控え、消化にいいものを食べるようにしましょう。また、血糖値コントロールの不調などで起こることがある後期ダンピング症候群は、食後に見られる症状です。血糖値が下がりすぎて症状が出るため、食後2時間くらいのタイミングでおやつを食べ、糖分やでんぷん質の多い食事は控えましょう。
大腸や直腸のがん手術後は、腸の機能が低下するため。便秘や下痢などになりやすくなっています。食事からこうした症状を100%防ぐことはできませんが、腸閉塞などになりやすい食物繊維の多いメニューや消化に悪いメニューなどは避けましょう。
また、一度に食べる量は少しずつ。よく噛んで、ゆっくり、楽しく食事をするように心がけるといいでしょう。
手術後に便秘がある場合は、朝起きた際にコップ一杯の水や牛乳などの水分を取りましょう、また、生活リズムを整え、便秘が長く続く場合には主治医に相談を。逆に下痢がある場合には、消化管にかかる負担を軽減するために、1回の食事量を少なくして、水分補給を心がけるといいでしょう。
参考:がん研究センター情報サービスHP「がんと食事」
https://ganjoho.jp/public/support/dietarylife/index.html
近年の医療技術の進化・発展により、がんの手術も場合によっては1週間前後で退院できることも多くなっています。
術後に体力を回復させ、日常生活を送るためには、リハビリテーションや運動が大切です。最近ではがん手術のリハビリは、手術後だけでなく手術前から始めることも大切という考え方が主流です。
手術前からリハビリをスタートさせ、高齢の方であれば寝たきりにならないように運動療法を行いながら早期離床を目指します。 術後のリハビリは自己判断せず、担当医や看護師、リハビリスタッフの指示に従いましょう。
参考:【PDF】「手術後寝たきりにならないために∼術前から始めるリハビリの重要性?」国立がん研究センター東病院
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/topics/2017/20171014/20171014_Rehabilitation.pdf
現役世代の方にとって、がん手術の後で仕事にいつ復帰できるのか。職場復帰は可能なのかと言う点について不安を抱く方も多いでしょう。癌の手術を受けた後も、職場復帰をし、仕事とがん治療を頑張る方も少なくありません。
わが国における胃がん手術体験者の職場復帰率は 60 ∼ 75 %以上である 1).しかし,胃がん手術後の ダンピング症状があった人は,手術後 5 年以内が 35.4 % 2),腹部症状があった人は約 8 割あり,栄養 障害のために日常生活に支障を生じている現状があ る 3).胃がん手術体験者は,手術後早期から退院後 の社会生活や仕事復帰に対する不安があり,ストレ スを抱えながら職場復帰している引用元:『胃がん手術体験者の職場復帰に伴うストレスとコーピング』日本がん看護学会誌,20 (1),2006
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjscn/20/1/20_11/_pdf/-char/ja
上記のように、日本で胃がん手術を受けた方の職場復帰率は60~75パーセント以上と報告されています。退院後の生活に関する希望を医師に伝え、可能であれば治療計画やリハビリ計画に反映できるかを相談してみましょう。
癌手術の弱点は、検査ではわからない微小な転移があっても切除できない点にあります。切除手術をしても、わずかな転移があれば再発の可能性があります。たとえば、胃がんは切除手術に成功した場合でも30%は再発をしています。
また、外科手術であるため、治療部分の治癒や全身の回復にある程度の時間が必要です。臓器などを切除するので、からだの機能の一部が失われるというデメリットもあります。
デメリットの項でも触れたように、癌手術後は再発や転移のリスクがあります。そのため、手術後も治ったと安心するのではなく、定期的に検査を受けることが大切です。
CTや超音波検査はもちろん、腫瘍の転移が数値で分かる腫瘍マーカー検査などを受けるのが一般的です。また、場合によっては微小な癌細胞を叩くために、抗がん剤や放射線での治療を行うこともあります。
癌手術は、転移リスクがある限りは100%の完治は不可能です。手術そのものは効果の高い治療法ですが、手術後も引き続き慎重な経過観察が大切です。