いよいよ時代は、唾液を用いて癌のリスクを評価する技術が実用化されるまでに進展しました。慶応義塾大学先端生命科学研究所から生まれたベンチャー企業・サリバテック社は、先進的なバイオテクノロジーを駆使して唾液で癌のリスクを測定できる検査キットを開発しました。その名は「サリバチェッカー」。2017年の発売以来、全国の医療機関で導入が進められており、サリバテック社による2023年4月3日のプレスリリースによると、同年1月時点で約1,700カ所の医療機関での検査で対応可能です。
唾液には身体の中で生成される代謝物が多数含まれており、これらの中には癌細胞の存在により濃度が変化する可能性のある物質が存在します。サリバチェッカーは、これらの代謝物を専用の測定装置で分析し、人工知能で解析することで、臨床研究データと照合して癌のリスクを評価する仕組みです。
血液検査などと違って痛みや負担もなく検査できるので、定期的なセルフチェックに適したスクリーニング検査だといえるでしょう。
唾液は「身体の鏡」と呼ばれることもあるほど、血液や尿と同じように健康状態を示す多くの情報が含まれています。
唾液の成分の大半は血液由来です。癌細胞が増殖して生み出されたポリアミンなどの代謝物は血液を通じて唾液中にしみ出しますが、サリバチェッカーはこれらの代謝物を分析・解析するのです。
サリバチェッカーの開発元であるサリバテック社では、代謝物の研究を進める中で、血液・尿・唾液など人体から採取できる体液の成分を比較してきました。その過程で、同社の社内研究(2016年~2019年)では、健康な人とがん患者を比較した際、特定の代謝物において唾液が最も明瞭な濃度差を示したという結果が得られたと報告されています。ただし、これらの知見は企業内データに基づくものであり、第三者機関による大規模な追試や国際的なガイドラインでの評価は現時点(2025年5月)では行われていません。
また、唾液は血液検査や尿検査と比べて採取時の身体的・精神的な負担が少なく、専用の環境を必要とせずに採取できるという利便性があります。そのため、検査の受けやすさや継続性といった点で、スクリーニング目的には一定の利点があると考えられています。
さらに、唾液を用いたバイオマーカー研究は世界的にも進展しており、がんだけでなく生活習慣病や心疾患などへの応用が期待されています。ただし、これらの疾患に対する唾液バイオマーカーの有用性は現在も研究段階にあり、確立された診断法としてはまだ臨床応用前の段階であることに留意が必要です。
唾液を採取するだけなので、簡単で痛みもありません。身体的にも気持ち的にも負担を感じずに、複数のがんのリスクをチェックできます。
サリバチェッカーは、少しの唾液をストローで容器に取るだけです。時間もたったの数分で済みます。血液検査のような痛みもなく、検査の後で体調を崩すこともないでしょう。その点では安心して検査を受けられます。
サリバチェッカーは、1回の唾液検査で膵臓癌、肺癌、大腸癌、乳癌(女性のみ)、口腔癌、胃癌の6種類のリスクを調べることができます。もちろん、癌の種類ごとにリスクを測定します。
サリバチェッカーは遺伝子検査のような生涯を通じた遺伝的可能性の検査ではありません。あくまでも検査を受けた時点の身体の代謝物と臨床研究データベースに基づいて算出された、リアルタイムの癌のリスクがわかるのです。
検査結果はグラフやチャートで示されるため、定期的に受けることで経時的な変化を管理することが可能です。
ただし、本検査はがんの診断を目的としたものではなく、リスク評価の一手段であるため、結果の解釈や必要な対応については医療機関に相談することをおすすめします。
サリバチェッカーは、申し込みから結果通知まで最寄りの医療機関が窓口になります。
感染症が気になり「自宅で検査がしたい」という方には、自宅用の検査キットを注文すれば医療機関の窓口へ足を運ぶことなく唾液検査ができます。※「検査結果」は1か月以内に医療機関から通知されることになるようです。
サリバチェッカーを受けることができる医療機関で、検査の申し込みを行ないます。
医療機関で唾液を採取しますが、その際には食事制限などの注意事項があります。
検査の2日前から、豆類やナッツ類、シジミを原材料としたサプリメントや健康食品の摂取を控える必要があります。豆腐や納豆などの豆を主原料とした食品も同様に控えましょう。ただし、しょうゆやみそなどの調味料は問題ありません。
検査前日は21時以降の飲食、薬の服用を避けます。検査当日も同様で、ガムや飴、うがい薬の使用、喫煙もいけません。
衛生検査所で唾液成分を測定します。およそ2~3週間で医療機関に結果が届きますが、本人に通知されるまでの期間は医療機関によって異なります。
もし癌のリスクが高いという結果が出た場合は、検査を受けた医療機関に相談しましょう。リスクが低い場合でも、定期的にサリバチェッカーを受けて癌のリスクの状態を確認するのがおすすめです。
サリバチェッカーは、次のような人におすすめの検査です。
上記のうち、「便に血が混じる」という方は、サリバチェッカーによる検査と並行して、医療機関の受診をおすすめします。