いちから分かる癌転移の治療方法ガイド

いちから分かる癌転移の治療方法ガイド » 癌の転移に負けない治療方法について » 膵臓がんの症状や転移、治療法について

膵臓がんの症状や転移、治療法について

50~70歳の男性に発症しやすいと言われているのが膵臓がんです。膵臓には消化酵素やホルモンを分泌する働きがあるため、がんを発症すると機能がうまく働かず、がん以外にも糖尿病を発症する場合があります。このページでは膵臓がんの症状や治療法、痛み、転移しやすい部位について解説していきます。

膵臓がんの症状

膵臓は膵頭部・膵体部・膵尾部の3つに区分されます。がんが発症した部位によって症状が異なってくるのが特徴です。

膵頭部にがんができた場合は黄疸が見られ、膵頭部中央部分では黄疸と腹痛、膵頭部の下側だと腹痛が症状として出現。膵体部と膵尾部では、黄疸は見られず腹痛が主な症状として見られます。

膵体部と膵尾部にがんが発症した場合、初期の段階ではあまり症状が現れないため腹痛が起きた際にはかなり進行している可能性も。

また、膵臓がんの場合、がんが小さいうちから膵臓の周囲に広がり、他の部位へ転移しやすいという特徴があります。

膵臓がんの治療法

膵臓がんの治療で中心となるのが外科手術で、膵頭十二指腸切除術・膵尾部切除術・膵全摘術の3つがあります。

しかし、膵臓は血糖値コントロールやホルモンの分泌、消化機能の調整などを担う器官のため、全摘することはあまりありません。

そのため、膵臓を3つの区分に分けてがんのある部位を切除するようになったのです。外科手術のほかには、放射線治療・化学療法(抗がん剤治療)などがあり、併用治療が行われます。

2025年4月現在、切除不能進行膵がんに対しては、FOLFIRINOX療法(5-FU、レボホリナート、イリノテカン、オキサリプラチンの併用)や、ゲムシタビン+ナブパクリタキセル(アブラキサン)の併用療法が標準治療として行われています。これらの化学療法は、がんの縮小や進行抑制、延命効果を期待して使用されます。患者の全身状態や年齢に応じて、治療レジメンは選択されます。

また、がんの遺伝子情報に基づいた個別化医療も進んでおり、MSI-high(高頻度マイクロサテライト不安定性)やBRCA遺伝子変異を有する一部の患者に対しては、免疫チェックポイント阻害薬(ペムブロリズマブ)やPARP阻害薬(オラパリブ)といった分子標的薬が適用される場合があります。これらの治療法は効果がある患者が限られていますが、選択肢として注目されています。

膵頭部がんになった場合は、膵管ががんによって侵されてしまい胆管と合流する部分が塞がれて胆汁をうまく流せないことも。

たまった胆汁を排出できるように、対症療法として内視鏡を使ったドレナージをおこなう場合もあります。

膵臓がんの痛み

膵臓がんはお腹や腰に痛みが現れます。悪性度の高いがんのため、腹痛や腰背部痛が起きている場合進行しているケースも。

がんが小さくても膵臓の周りにある神経や血管、胆管へ浸潤していくため、リンパ節への転移や肝臓への遠隔転移が起きることもあるのです。

その結果、食道や胃腸などの管腔臓器に炎症や閉塞が起こって痛みが生じます。また、感覚を伝える神経に損傷が起こり、神経障害性疼痛が起きることもあるのです。

がんが大きくなった場合は、十二指腸や横行結腸が狭くなり、通過障害が起きて腹部が張ったり、痛みを感じたりします。

膵臓がんの転移先として多い部位

膵臓がんはがんが小さいうちでも周囲の臓器に広がるのが特徴です。転移にはがんの病巣(原発巣)から血流にのって転移する血行性転移、リンパ液にのって移動するリンパ行性転移、がん細胞が腹腔内に散らばる腹膜播種(ふくまくはしゅ)の3つがあります。

とくに膵臓がんの場合は、血行性転移による肝臓への転移と腹膜播種が起こりやすいです。血行性転移によって骨へ転移した場合は、骨転移となります。

肝臓や骨への遠隔転移が分かった場合、ステージⅣと判断されて、外科手術ではなく化学療法や放射線治療を主体とした治療が行われます。

膵臓がんの予防について

膵臓がんの発症には様々なリスク因子が関連しており、例えば血縁者に膵臓がんの患者がいる人では遺伝的に発癌リスクが高くなり、さらに糖尿病や慢性膵炎、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)といった疾病を抱えている人でも癌の発症率が高まることは知られています。

加えて遺伝的な体質や他の疾病の影響だけでなく、喫煙習慣やアルコールの摂取(飲酒)、運動不足や肥満といった生活習慣に関連した事柄によっても、膵臓がんを含めて様々な癌のリスクが高まることは無視できません。そのため定期的な検診や予防医療で医学的に備えるだけでなく、まずは自分が普段から取り組める膵臓がんの予防法について正しく理解し、実践していくことが重要です。

※参照元:国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス|膵臓がん 予防・検診(https://ganjoho.jp/public/cancer/pancreas/prevention_screening.html

生活習慣の改善による予防

現在、生活習慣に関連した癌のリスク因子は複数判明しており、例えば以下のような生活習慣や日常の項目が発がん率の上昇につながるとされています。

言い換えれば、上記のようなリスクについてきちんと対策したり生活習慣を改善したりすることで、仮にどのような体質の人であっても、がん予防として意味があるということです。

たばこを控える・禁煙(分煙)する

国立研究開発法人国立がん研究センターによれば、日本人の発がんリスクを高める要因の1つとして、日常的な喫煙習慣が重大なものとされており、特に日本人男性の膵臓がん予防を考えた際には「禁煙」が効果的とされています。

また生活習慣や日常空間における禁煙対策として、自分の吸うたばこの煙だけでなく、周囲の人の吸っているたばこの煙(副流煙)についての対策も無視できません。

当然ながら喫煙者が吐き出した煙や副流煙にも発がん性物質は含まれており、受動喫煙は厚生労働省の指針においても癌リスクとして判定されています。そのため、家族にも禁煙に取り組んでもらったり、外食時などは禁煙の店や分煙対策が徹底されている店を選んだりするといった工夫も大切です。

※参照元:厚生労働省|生活習慣病などの情報(https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/tobacco/t-03-001

お酒を控える・禁酒する

お酒(アルコール飲料)も癌リスクを増大させる因子の1つです。

かつて「酒は百薬の長」とも言われていましたが、現代の医療業界においては「癌にとって酒は1滴でもリスクになり得る」と考えられており、基本的にアルコールを摂取せずに済むのであれば、がん予防の取り組みとしてそれが最善といえるでしょう。

一方、酒は嗜好品でもあり、お酒を好きな人にとっていきなり断酒や禁酒をすることで別のストレスや心理的負担が発生する恐れもあります。そのため、どうしてもお酒を完全に止められない際には、まず前段階としてアルコール度数の低いお酒に変更したり、1日に飲む酒量を制限したりするといった対策から心がけてください。

※参照元:日本経済新聞|「百薬の長」今は昔 少量飲酒もがんなどリスクに(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC296RL0Z20C23A5000000/#:~:text=%E7%A0%94%E7%A9%B6%E3%81%8C%E9%80%B2%E3%82%93%E3%81%A0%E3%81%93%E3%81%A8,%E3%81%AA%E8%A9%95%E4%BE%A1%E3%81%A0%E3%80%8D%E3%81%A8%E8%A9%B1%E3%81%99%E3%80%82

食生活を改善する・栄養バランスを整える

塩分過多なメニューや糖分・油分の過剰摂取、野菜・食物繊維の不足といった偏った食生活は高血圧や高脂血症のリスクを高めると同時に、癌のリスクも上昇させてしまう身近な要因です。そのため1日の摂取カロリーや栄養バランスを考慮しながら、健康的な食生活を習慣化していくことが日々のがん予防として欠かせません。

また暴飲暴食は肥満リスクを高める他、熱い飲み物や食べ物を冷まさずに急いで食べる行為も口内や消化管の粘膜を損傷して癌リスクにつながる原因とされています。一方、ゆっくり噛んで食べることで少量の食事でも満腹感を得られやすくなり、過剰な食欲の抑制に役立つことは重要です。

過度なダイエットや過食は厳禁として、食材や食品の種類だけでなく食べる量や食べ方についても工夫しながら、楽しく健康的な食習慣を整えていきましょう。

適度な運動習慣・身体活動

国立がん研究センターの研究によれば、仕事や趣味などで普段から体を動かす量が多い人ほど、癌や心疾患のリスクを低下させられることが分かっています。

そのため無理のない範囲で体を動かし、可能な限り身体活動の量を増やしていくことががん予防の取り組みとして大切です。

なお運動量の目安としては、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動基準2013」において以下のような推奨基準が定められています。

※参照元:国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス|科学的根拠に基づくがん予防(https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/evidence_based.html

適正体重を維持する・メタボリックシンドロームの改善

食生活や運動習慣にも関連しますが、太り過ぎは癌を含めて様々な健康悪化の要因になります。同時に、痩せ過ぎも健康に悪影響を及ぼすことがポイントです。

大切なことは「適正体重」を維持することであり、生活習慣の乱れによるメタボリックシンドロームや、過度なダイエットによる健康被害といったリスクに備えていきましょう。

なお適正体重については肥満度の指標である「BMI値」を目安にすることが可能であり、男性であれば21.0~26.9、女性では21.0~24.9が癌リスクを低下させるとされています。BMIの求め方は以下の通りです。

※参照元:国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス|科学的根拠に基づくがん予防(https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/evidence_based.html

感染症や病気に注意する

癌の中にはヒトパピローマウイルス(HPV)やB型・C型肝炎ウイルス、ヘリコバクターピロリ菌などへの感染によってリスクが高まるものもあります。また、その他にも長期の体調悪化や慢性疾患などの病気が癌化の一因になる恐れもあるでしょう。

事実、日本人の癌原因としてウイルス・細菌感染が女性の第1位、男性でも2位となっており、適切なワクチン接種や感染対策は結果的にがんの予防へつながることが肝要です。

※参照元:国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス|科学的根拠に基づくがん予防(https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/evidence_based.html

膵臓がんのスクリーニング・検査について

膵臓がんは早期の自覚症状がない上、進行が速い癌であり、症状が出てから検査を受ければ良いと考えていると、いざ膵臓がんが発見された時点で根治が困難になっているというケースも少なくありません。そのため、自覚症状などがなかったとしても定期的な健康診断やがん検診、人間ドックを受けて、膵臓がんを含めたさまざまな癌のリスクについて意識的に対策していくことが大切です。

膵臓がんの発見や再発・転移のチェックを目指す上で有用なスクリーニング・検査として、一般的に活用されているものを紹介しますので、まずはどのような方法があるのか理解した上で適切な健康管理を考えていきましょう。

血液検査(血中膵酵素)

血液検査は被検者の静脈から血液を採取し、専用の機械で血中のさまざまな成分の濃度を調べることで、体内の健康状態や病気のリスクを分析する検査方法です。膵臓がんを含めてあらゆる癌や病気のリスクを考える際に有用な検査方法であり、膵臓がんのスクリーニングとしては特に「膵酵素」と呼ばれる成分の値を調べます。

膵酵素は膵臓で産生される酵素であり、アミラーゼやエラスターゼ1といった酵素が知られています。

膵臓がんが発生していると、膵酵素が血中に漏出して血中膵酵素の値が増加しやすくなるため、血液検査で過剰な膵酵素値が認められた場合、膵臓がんのリスクを検討することが必要です。ただし血液検査で膵臓がんの確定診断を行うことはできず、そもそも膵臓に異常がなかったり、他の疾患の影響であったりしても膵酵素の値が増減することはあるため、血液検査で異常が示されたからといって過度に不安を抱くことは避けましょう。

腫瘍マーカー検査

膵酵素と並んで、血液検査で調べられるものに「腫瘍マーカー」があります。

腫瘍マーカーとは、特定の癌に関連して発生・増加する物質を指しており、血液中に該当する物質が増加している場合、対応する癌のリスクが懸念されます。

膵臓がんでは腫瘍マーカーとしてCA19-9、SPan-1、DUPAN-2、CEA、CA50といったタンパク質などが同定されており、これらの血中濃度が高まっている場合、膵臓がんの可能性が考慮されるでしょう。

ただし、腫瘍マーカーの有無や値だけで膵臓がんの詳細を確定することはできず、例えば膵臓がんがあっても常に腫瘍マーカー値が高まるとも限りません。そのため、腫瘍マーカーによる検査で気になる点が認められれば、改めて精密検査で詳細を確かめるという流れになります。

※参照元:国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス|膵臓がん 検査(https://ganjoho.jp/public/cancer/pancreas/diagnosis.html

超音波(エコー)検査

超音波検査(エコー検査)とは、人の可聴域を超えた超音波を体の表面に当てて、体内で反響した音波を画像として処理することで、体内の状況を視覚的に調べる検査方法です。超音波検査は癌のサイズや位置などを調べるために幅広く活用されている手法であり、放射線による被曝リスクや造影剤によるアレルギーリスクなどを回避できる点でも有用です。

一方、超音波検査は検査を行う医療従事者の熟練度によって診断の精度が変わってしまい、また膵臓全体を調べる上で限界があるともされています。そのため、日本膵臓学会膵癌診療ガイドライン改訂委員会が策定した「膵癌診療ガイドライン2022年版」において、CT検査やMRI検査といった画像検査を行える場合、超音波検査は省略できるとされている点も特徴です。

※参照元:国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス|膵臓がん 検査(https://ganjoho.jp/public/cancer/pancreas/diagnosis.html

CT検査

CT検査は被検者の体外から放射線(X線)を照射し、被検者の体内を断面図として撮影する画像検査です。CT検査は体内を詳細かつ断面的に視覚化できるため、癌の有無を知るだけでなく、形状や個数、位置など詳しい情報を取得することに役立ちます。

なお、膵臓がんのスクリーニングとしてCT検査を行う場合、癌の細部を映し出すために造影剤を使用します。

超音波検査よりも高精度の画像検査ですが、放射線による被曝リスクや造影剤によるアレルギーリスクなどがあり、妊婦やアレルギー体質のような人は検査を受けることができません。

MRI検査・MRCP検査

超音波や放射線の代わりに、電波と磁力で発生させた「磁場」を使って人体の内部を画像化する検査方法です。さまざまな方向から体内の断面図を撮影することが可能であり、癌と健常な組織を区別して画像化できることも特徴です。

なお、膵臓がんのスクリーニングとしては「MR胆管膵管撮影(MRCP:Magnetic Resonance Cholangiopancreatography)」という手法が用いられます。

MRCPは膵管や胆管の詳細を調べる画像検査であり、MRIを使って撮影した後、コンピュータで画像処理を行って膵管や胆管の状態を視覚化します。MRCPは造影剤や内視鏡が不要になるため、被検者への負担を軽減できる点が特徴です。

超音波内視鏡検査(EUS)

内視鏡の先端に超音波を発信する「プローブ(超音波プローブ)」が付けられた器具を使って、患者の体外でなく体内から超音波を当てて行う超音波検査です。

内視鏡を患者の口から挿入し、消化管の中から超音波を発信して膵臓の状態を確認できるため、体表面から超音波を当てる通常の超音波検査より精密で詳細な画像データを取得することができます。

なお、同時に内視鏡の針で組織を採取する「超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNA)」が行われることもあります。

内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)

EUSに似た検査方法であり、被検者の口から内視鏡を挿入して十二指腸まで進ませた後、膵管と胆管の出口に当たる十二指腸乳頭へ造影剤を注入して、改めてX線を使った画像撮影を行う方法です。

X線撮影の精度を高められる有効な検査である反面、合併症として急性膵炎などを発生させるリスクもあります。

病理診断(細胞診・組織診)

病理診断では、患者・被検者の体から採取した組織を病理医が顕微鏡で確認し、細胞の形状や様子から癌の種類や状態などを判断しており、病理診断は癌の確定診断として重要な工程です。膵臓がんの病理診断には、EUS-FNAやERCPといった内視鏡検査で採取した組織や細胞、また手術の際に切除した組織などが用いられます。

PET検査

癌細胞は健常細胞よりも多くの糖分を必要とし、癌組織では健康な組織と比較して代謝が活発化するという特徴があります。

PET検査は、あらかじめ被検者へ放射性フッ素による処理が行われたブドウ糖(FDG)を投与し、その後に被検者の体内でFDGがどのように集まっているのか、分布状況を撮影する画像検査です。

さまざまな臓器への転移リスクなどを診断する上で有用なPET検査ですが、膵臓がん単体のスクリーニング目的では推奨されていない点に注意してください。

※参照元:国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス|膵臓がん 検査(https://ganjoho.jp/public/cancer/pancreas/diagnosis.html

審査腹腔鏡

膵臓がんの患者の中でも、腹膜播種や肝臓への転移などが疑われる人に適応となる検査です。審査腹腔鏡は患者に全身麻酔をかけた後、腹部に小さな穴を開けて、そこから腹腔鏡を挿入して直接に体内を観察します。

審査腹腔鏡では癌のステージを正確に診断することが可能です。

膵臓がんのスクリーニングのリスク

膵臓がんのスクリーニングではさまざまな検査の結果を複合的に分析した後、癌の確定診断へとつなげます。しかし、検査の方法によっていろいろなリスクやデメリットがあり、癌のスクリーニングを目的として各種検査を受ける際にはあらかじめそれぞれのリスクや課題について正しく理解しておくことが欠かせません。

検査結果が偽陰性の可能性がある

偽陰性とは、検査によって「陽性(癌がある)」と診断されるべきところ、「陰性(癌がない)」と誤って診断されてしまうことです。

スクリーニングの結果として偽陰性になった場合、本来であれば速やかに精密検査や治療を始めなければならないにもかかわらず、データ上は癌でないからと対処が遅れてしまうといったリスクが発生します。

どのような検査方法であっても状況によって偽陰性のリスクは存在するため、膵臓がんのスクリーニングでは単一の検査でなく、複数の検査を組み合わせて精度を高めることが大切です。

検査結果が偽陽性の可能性がある

偽陰性と似た誤診として偽陽性があります。偽陽性とは、癌でないにもかかわらず「陽性」と診断されてしまうことであり、被検者に不要な精神的負担をもたらしたり不要な検査で肉体的ダメージを与えたりと、いろいろな問題を生じさせるため偽陰性と同様に注意しなければなりません。

過剰診断の可能性がある

過剰診断とは、生命に危険を及ぼす癌でなく、本来は即時の治療などが必要ないにもかかわらず、検査によって検出されてしまったり治療が必要だと誤診されたりすることです。

過剰診断によって癌が発見された場合、被検者に「自分は癌だ」と過剰な不安や精神的ストレスを与えてしまう上、肉体的負担のある検査や治療によって合併症などのリスクを増大させてしまう可能性もあります。

がんを発見した場合でも健康状態の改善が難しい場合がある

膵臓がんのように通常の発見が難しく、進行の速い癌では、検査で癌が見つかった時点ですでに根治が難しいケースも珍しくありません。そのため患者の中には検査結果によってうつ状態になったり、希死念慮を強めたりといったリスクもあり、医師や家族などからの心身のサポートが重要となります。

とはいえ、どのステージでも適正な治療や診断のために適切な検査は不可欠であり、検査や結果へ過度に恐怖して絶望感を抱くのでなく、その時点から必要な治療や環境を整えていくきっかけとして前向きにとらえることが肝要です。

患者のQOL(生活の質)に関する情報

膵臓がんの治療をきちんと継続するためには、体の状態だけでなく毎日の精神状態にも配慮して暮らし方を考えることが不可欠です。そのため患者にとってQOLの改善を目指すことは大切な癌治療の一環ですので、まずは膵臓がんの患者や家族が意識すべきQOL改善の方法をポイント別にチェックしていきましょう。

「痛み」は我慢せずコントロールする

膵臓がんに限らず、癌治療において「痛みの管理(ペインコントロール)」は極めて重要なポイントです。

癌に起因する痛み(疼痛)としては、癌そのものによる痛みの他、癌治療の副作用や合併症として発生する痛み、また癌の影響はあるものの癌治療などとは直接的に関係しない痛みと様々なものがあり、それぞれの痛みの原因や仕組みを把握した上で適切な対処法を考えなければなりません。加えて、痛みが突発的に発生するものか、持続的に発生するものか、といった痛みの発生頻度や感覚も注意すべきポイントになります。

疼痛の軽減や緩和が適切に行えない場合、日々のQOLが低下するだけでなく、癌治療を継続する意思も弱まってしまうため、疼痛管理は適切な癌治療を継続し健康を目指すための土台作りとも言えるでしょう。

なお痛みの対処法としては、痛みの程度や内容によって、一般的な鎮痛薬の投与やオピオイドの投与、さらに神経ブロックなど様々なものが検討されます。また緩和目的の放射線治療といった緩和ケアも有用です。

「食べる」ための消化・吸収・血糖サポート

消化器の1つである膵臓で癌が発生した場合、癌や手術の影響によって膵臓の機能が低下したり、その結果として消化不良や高血糖といった消化器症状が生じたりといったケースも想定されます。そのため消化を助ける薬を投与したり、血糖値の投薬コントロールを行ったりといったことが大切です。

また、膵臓がんの患者で消化吸収の能力が低下した場合、食欲不振や栄養不足といった状態にも陥りやすくなるため、栄養士などのサポートを受けつつ療養食を取り入れたり、一度の食事量を減らして食事の回数を増やしたりと、患者に合った方法で適切な栄養管理を行っていきましょう。

「黄疸(おうだん)」や「かゆみ」の改善

膵臓がんの影響で胆管が塞がり、胆汁の流れが滞ってしまうと、肌が黄色くなったり目の白い部分が黄色くなったりといった「黄疸」の症状が現れやすくなります。さらに胆汁の流れが滞ることで感染症のリスクが増大し、胆管炎や発熱といった症状につながることもあります。

黄疸の症状が認められる場合、胆道に貯まった胆汁を排出するための管を挿入する「胆道ドレナージ」が行われることもあるでしょう。なお、胆道ドレナージの方法には複数のものがありますが、患者の体への負担を軽減するために内視鏡とステント(管)を使った「内視鏡的胆道ドレナージ」が一般的です。

ただし、ステントは人工物であり、挿入後の不具合などによっては再治療が必要になることもあります。

治療と並行して心身の苦痛を和らげる

痛みのケアが精神状態の改善や維持に大切なように、癌に対する不安や癌治療に伴う副作用への恐怖、その他にも様々な要因で癌患者や家族には多大な精神的ストレスがかかるため、それらの精神的ストレスや心理的苦痛に対しても適切なケアを行うことが重要です。

精神的ストレスが強まれば日々のQOLが低下し、本来であれば適切な治療によって根治を目指せる癌患者であっても、治療の継続を断念したり、うつ状態になってしまったりといったリスクが増大します。心因性の問題に対しては患者や家族だけで向き合うのでなく、緩和ケアの専門家やカウンセラーの助けも借りながら、癌治療を始める時点から並行してスタートするようにしてください。

経済的な不安を和らげる公的制度の活用

癌治療の継続やQOLを考える上で、肉体や精神の課題と同様に重視される点が「経済的問題」です。癌治療には様々な費用が発生し、それが経済的負担になることもあるでしょう。

お金の不安を解決する方法としては、民間の医療保険(がん保険)の他にも、保険診療を前提とした高額療養費制度の活用など色々なものが考えられます。どのような解決法があるのか、主治医だけでなくがん相談員など専門家にも相談して具体的に考えることが大切です。

膵臓がん患者の声・体験談

周囲の理解とサポートで助けられた

(前略)主治医が自分事と捉え「自分なら切る」とおっしゃっていただき、前に進めた事。あの時に手術をしなければ今は無かったと思います。また、会社に状態を報告した時に、何も考えずに治療に専念するよう声を掛けていただいたことです。

引用元:アストラゼネカ|がんになっても

自分なりに癌を受け入れて前を向いた

すい臓がんステージⅣ。人間ドックで要精密検査。超音波検査で、膵管軽度拡張との指摘。すぐに造影CT検査を実施。すると検査機関の医師から直接電話があり、CTだけだとよく分からないため、MRI検査をする必要があって、翌日なら空きがあるとの事で実施。(中略)私はがんを受け入れ、私なりに楽しみ、先のことを考えながら、今できることをやっておきたいし、後悔はしたくないと決めた。(後略)

引用元:アストラゼネカ|がんになっても

しっかりと体力作りをして自分の人生を大切にした

(前略)本格的な抗がん剤治療が始まりましたが、身体が動く時は変わらず体力作りに勤しんでいました。その結果、次のCT検査で影のほとんどが消え去っている状況です。まだ抗がん剤治療は続くと思いますが、今まで通り、自分の人生に悔いを残さないように過ごしていきたいと思っています。(後略)

引用元:アストラゼネカ|がんになっても

主治医からの愛情を感じられた

(前略)入院し、すでに治療の選択肢がなくなった時、医師から「これからいろんな病状がでてきますが、ひとつずつ、ひとつずつ対応していきましょう」と言われました。夫は「今日の先生の説明には愛情があったな。いつも数値ばかりの説明だから」と。先はないのに、こんな風に思う夫がいとおしいですね。

引用元:アストラゼネカ|がんになっても

奇跡的な手術によって助かった

私はステージⅣの膵臓がんでしたが、数年前に奇跡的に手術ができました。その後抗がん剤は、家内からやめようと言われてやっていません。現在も3カ月ごとに大学病院に通院しています。再発はありません。しかし最近、腸閉塞で2週間入院しました。生きているのが不思議だそうです。

引用元:アストラゼネカ|がんになっても

主治医の励ましで手術治療を決意した

(前略)結構大きいがんだったので、当初抗がん剤だけで余生を過ごしたいと先生に申し出たのですが、「幸いなことに目に見える転移とかはないので、ぜひ手術をしなさい。」と励まされたので快諾しました。(後略)

引用元:アストラゼネカ|がんになっても

多くの人から尊敬される主人を誇りに思う

平成17年春 進行性膵がんの告知を受けました。当時46歳、約3年間がんばってこの春49歳で逝った主人のことです。(中略)仕事上、係ってきた多くの方々から「伝説の人」と言っていただけるだけの主人の力を感じ、誇りに思っています。そんな親の背中を見て、感じながら子供たちが新たな道に向ってがんばろうとしていることを私は感じていられる。そんな夫を持てたことが幸せです。(後略)

引用元:アストラゼネカ|がんになっても

病院の先生の一言が大きな励みになった

(前略)-時期は最初の病院で医師とはなかなか話す機会がなかったけれど看護師や検査技師技師の先生や親戚の人や親友からはとても励みになる言葉を貰ったり、言葉がなくても話を聞いて貰ったりした。その中で今一番励みになったのは女医の先生の一言で「家には絶対帰れるからね」と母に対して言ってくれたときその傍らにいたとき涙ぐみそうになりました。そして先生の自信をみて不安が少し和らいだ気がしました。

引用元:アストラゼネカ|がんになっても

患者の家族として希望を信じる

(前略)患者の家族としては、時に落ち込んだり、また自分を奮い立たせたり・・誰かにあたってしまいそうになる気持ち、とても分かります。色んな感情が湧いてきます。自分も消えてしまいたくなることもあれば、母を思うと胸が引き裂かれるようになることもあります。いつか、今よりもいい状況になることを願うのみです。

引用元:アストラゼネカ|がんになっても

気持ちで膵臓がんに打ち勝った

(前略)身体は調子悪くても、気持ちだけは負けないようにしているのが、こんなに長持ちした秘訣と信じています。一日一日、明日はないと思い、今日だけを生き抜くことを繰り返し、9年間頑張ってきました。来年のことはもちろん考えず、捨て身の生き様は、周囲の人には病気を感じさせないようでした。が、数々の後遺症に悩まされている上、高血糖からの腎障害が始まりました。まもなく、インスリンによる治療が始まります。病気などに負けない、強い精神力と、病気への深い理解を併せ持つことこそ、私の病気攻略法です。(後略)

引用元:アストラゼネカ|がんになっても

膵臓がんの臨床試験や治療法のトレンド

ここでは、比較的新しい臨床試験や治療法について解説していきます。膵臓がんの画期的なナノ治療薬の開発に成功したとされる治療法や、腎臓/膵臓がんに対する新たな免疫ベース治療法、新しいがん治療用ウイルス製剤などの情報についてご紹介します。

膵臓がんの新しい治療法や臨床試験などについて知りたい方は、ぜひチェックしてください。

ノボキュア、2025年ESMO消化器がん学会にて膵臓がんに対する腫瘍治療電場(TTフィールド)の第3相試験であるPANOVA-3試験の最終副次評価項目データを発表へ

ゲムシタビンならびに、ナブパクリタキセルと併用することによるTTフィールド療法にて、複数の疼痛指標で、統計的に有意であり臨床的に意味のある効果が認められました。また、事後解析においては、切除が困難な局所進行膵腺がん患者におけるオピオイド鎮痛薬の使用開始を大幅に遅らすことができたと言われています。

ゲムシタビンかつナブパクリタキセルを併用したTTフィールド療法を受けた方においては、がん悪化の進行に遅れが見られ、生活の質(QOL)がさらに長く維持されました。

上記のデータは、以前報告されているPANOVA-3における全生存期間の延長効果を補うものであり、切除困難な局所進行膵腺がんの新たな治療選択肢として期待される、「ゲムシタビンとナブパクリタキセルの併用によるTTフィールド療法」を支持するものと考えられています。

2025年7月1日、ノボキュアは、切除困難な局所進行膵腺がんを対象とした腫瘍治療電場療法の第3相試験とされるPANOVA-3試験において、最終副次評価項目の結果について発表予定であることを公表しました。

このPANOVA-3のデータは、スペインのバルセロナで開催される欧州臨床腫瘍学会消化器がん学会(2025年7月2日から7月5日に開催)で、口頭発表に採用されています。

患者の生活の質を維持することにつながる

Vall d’Hebron大学病院の腫瘍内科医であり、腫瘍研究所の消化器・内分泌腫瘍グループ責任者でもあるテレサ・マカルラ医学博士は、以下のように述べています。

「PANOVA-3試験でTTフィールドと化学療法を一緒に実施した患者は、化学療法単独の治療群と比べると、全生存期間が大幅に改善したことに併せて、疼痛の進行かつオピオイド薬の使用開始の有意な遅延も確認できました。

膵臓がんは、衰弱を伴う痛みを引き起こすとされています。このような症状を遅らせられれば、患者の生活の質を維持できるでしょう」。

「PANOVA-3における全生存期間および生活の質に対する結果は、切除不能な局所進行膵腺がんに対して期待される標準治療として、ゲムシタビンおよびナブパクリタキセルと併用したTTフィールド療法を支持しています」。

ノボキュアの最高医療責任者(CMO)であるニコラス・ルパン医学博士は、「PANOVA-3の結果は、切除が難しい局所進行膵腺がんにおいて、TTフィールド療法は全生存期間など患者の臨床的アウトカム(各種検査値の改善度)の改善につながる」と述べています。

PANOVA-3の結果

PANOVA-3の主要評価項目とされる全生存期間ならびに、無痛生存期間を合わせた複数の副次評価項目の結果については、2025年に開催された、米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で報告されています。

生活の質に関する結果は、欧州がん研究治療機構の生活の質に関する質問票ならびに、※追加尺度PAN26(膵臓がんに特化した指標)を使用して評価されています。

※PAN26:全体的な健康状態や機能にプラスして、疼痛(原因は不問)や膵臓の痛み、消化器症状などについて評価する指標です。詳しい結果は以下の通りです。

上記結果は、2025年ASCO年次総会で報告されている「統計的に有意な無痛生存期間の延長を補完」するものとされています。

PANOVA-3試験の実施内容

患者は、ゲムシタビンとナブパクリタキセルと併用するTTフィールド療法を実施する集団と、ゲムシタビンとナブパクリタキセル単独を受ける集団のどれかに、無作為に割り振られたとされています。

膵臓がんの現状

致死率の高いがんとして知られており、アメリカにおいては、がんによる死因の第3位・ヨーロッパでは第5位に位置しています。全体的ながんの発症率と死亡率は、横ばいもしくは減少傾向にありながらも、膵臓がんの発症率と死亡率は増加しています。

アメリカでは、毎年約67,000人が膵臓がんの診断を受けていると推定されており、世界全体での発症数は500,000人以上となっています。

膵臓がんの治療は、ステージ分類に応じて、手術や放射線療法、薬物療法などさまざま組み合わせて行います。膵臓がんの局所進行例の多くは、手術不能な段階で診断にいたるため、化学療法が唯一の治療選択肢となっています。

参照元:ノボキュア株式会社|ノボキュア、2025年ESMO消化器がん学会にて膵臓がんに対する腫瘍治療電場(TTフィールド)の第3相試験であるPANOVA-3試験の最終副次評価項目データを発表へ

膵臓がんの画期的なナノ治療薬の開発に成功!~がん細胞のみに抗がん剤を届ける副作用の低い能動的薬物送達システムを初めて実現~(先端生命科学研究院 特任教授 西村紳一郎)

北海道大学大学院先端生命科学研究院の西村紳一郎特任教授と、北海道大学発創薬ベンチャーの遠友ファーマ株式会社の研究グループは、抗接着性の「ナノソーム」と呼ばれる粒径20~50ナノメートルほどの超高性能ナノ微粒子を用いたがん治療用ナノ医薬の基礎的な研究を進めています。

今回、同研究グループは、がんの中でも致死率が高い、難治性のがんである膵臓がんの画期的な治療法の実現につながる「革新的なナノ医薬」の開発に成功したことを報告しました。

膵臓がんは、早期発見が非常に困難であり、発見されたとしても既にがん細胞が浸潤・転移が見られるケースが多い疾病です。

また、大きな効果が期待できる治療法は報告されておらず、患者の5年生存率は10%以下とされる難治性がんです。

今回研究グループは、正常細胞では細胞内のリソソームに限定して存在する「ノイラミニダーゼ-1(NEU-1)」がさまざまながんにおいて、細胞膜の表面にも出現していることに焦点を当てました。

そして、ナノソームから膵臓がん細胞膜のNEU-1をターゲットにする「ナノソーマルイリノテカン」を設計しました。

具体的には、ナノソームの表面にNEU-1をターゲットとする「非可逆的阻害剤」と、細胞内にあるDNAトポイソメラーゼ阻害剤のイリノテカンを一緒に搭載させることにより、抗がん剤を膵臓がん細胞だけに届ける方法である「能動的薬物送達システム」が初めて実現できました。

ナノソーマルイリノテカンをヒト膵がん細胞と共培養を行ったところ、膵がん細胞膜に特異的に出現するNEU-1を介し、搭載した抗がん剤のイリノテカンを膵がん細胞内だけに届けることに初めて成功し、低濃度のナノ医薬(IC50=8.07 nM)は、膵がん細胞を培養を開始してから24時間で完全に死滅させることを証明できたと報告しました。

また、ヒト膵がん細胞塊を移植したマウスに対し、このナノ医薬(5 mg/kg)を4日間隔にて6回静脈内投与を行った結果、移植した膵がん細胞塊の成長は完全に抑制でき、また治療期間内では、副作用によるマウスの体重減少がまったく見られなかったことも報告されています。

上記の研究成果は、2025年7月22日(火)に公開されたAdvanced Healthcare Materials誌にオンライン掲載されています。

今後の展望

同研究グループは、ヒトの膵臓がん細胞塊を移植したマウスを使用した動物実験により、高い治療効果と安全性を証明できた報告していて、がん細胞のみに取り込まれるナノ医薬による副作用があらわれにくい、効果的な膵臓がん治療法の実現に期待されています。

この画期的なナノ治療薬候補を膵臓がんで苦しんでいる多くの方々に、なるべく早く届けることが大きな任務であると話しています。

今後、治験の開催に向けて、ナノソーマルイリノテカンの製造工程を確立するほか、その品質や有効性、安全性の確保、関連する基準に基づいたさまざまな試験の実施など多くの課題を解決する必要があります。

同研究グループは、課題解決に向けて資金調達やナノ医薬の開発実績を持つ製薬企業との共同開発の開始などもあわせて開発を加速しています。

参照元:北海道大学|膵臓がんの画期的なナノ治療薬の開発に成功!~がん細胞のみに抗がん剤を届ける副作用の低い能動的薬物送達システムを初めて実現~(先端生命科学研究院 特任教授 西村紳一郎)

新しいがん治療用ウイルス製剤OBP-702

岡山大学学術研究院医歯薬学域(医)消化器外科学の黒田新士講師の研究グループが、新しいがん治療用ウイルス製剤OBP-702に関する発表をおこないました。

難治性がんの1つとされている膵臓がんにかかっている患者を対象に、第Ⅰ相臨床試験の準備を開始することを発表しました。この試験は、新しいがん治療用ウイルス製剤であるOBP-702の安全性や有効性を検証するものです。

OBP-702とは、先行して開発を進めている第1世代がん治療用アデノウイルス製剤テロメライシン(OBP-301)を改変して作られた第2世代のウイルス製剤です。 テロメライシンでは治療効果が乏しい膵臓がんに対して、治療効果を発揮することが動物実験で確認されています。

上記の臨床試験は、岡山大学病院・愛媛大学医学部附属病院・国立がん研究センター研究所の3施設で実施しました。(※患者への治療は、前2施設で行われています)

標準治療とされるゲムシタビン+ナブパクリタキセルによる治療効果がほとんど見られなくなった膵臓がん患者を対象として、直接膵臓がんにOBP-702を投与し、有効性や安全性を検証するために行われます。

今回行われた臨床試験は、OBP-702の膵臓がんをはじめとする難治性がんにおける新たな治療薬として、承認に向けた第一歩と位置付けられています。

特効薬開発の手がかりは身近にある可能性

20世紀には、はしかなどの感染症がきっかけとなり、がんが小さくなった・治ったという報告が世界中さまざまな場所で聞かれていました。この出来事が、「がん治療用ウイルス製剤開発」のきっかけとされています。

抗生剤の1つであるペニシリンが、パンなどの食品に生じるアオカビから見つかったように、特効薬開発の手がかりは、意外と身近にあるのかもしれないと、黒田新士講師は話しています。

参照元:岡山大学|膵臓がん患者の福音となるか!?新しいがん治療用ウイルス製剤OBP-702 第Ⅰ相臨床試験の準備開始

腎臓/膵臓がんに対する新たな免疫ベース治療法、実現の兆し?

米国国立がん研究所(NCI)が、がん研究ブログにおいて腎臓がんと膵臓がんの新たな免疫療法に関して、2つの小規模臨床試験の結果を考察しています。
同ブログでは腎臓がんと膵臓がんの新たな免疫療法に関する2つの小規模臨床試験がおこなわれ、どちらの試験においても、腫瘍摘出手術が成功している患者において、これらの治療法ががん再発予防に対し有望である結果が得られたと述べています。

用いられた治療法は、免疫系が既存のがんを排除するのを助けるので、治療用がんワクチンと呼ばれます。両試験では、外科治療中に採取された腫瘍サンプルを徹底的に遺伝子解析をおこない、それぞれの患者に合わせた治療薬の開発がおこなわれました。

研究チームは、この解析によって、それぞれの患者のがん細胞に見られる「ネオアンチゲン」という変異タンパク質を特定できたと述べています。

これらの異常タンパク質は、免疫系に対して反応する警報装置のように作用し、がん細胞を排除する必要がある脅威だと警告します。

しかしながら、さまざまな理由により、この警報システムは機能しません。ネオアンチゲンをベースとした今回の治療法は、欠陥部分に介入し、変異タンパク質を有する細胞は、すべて排除しなければならないことを免疫系に認識させるように設計されています。 どちらの研究も、患者は手術後数か月にわたって、個別化治療薬を複数回投与されています。

術後に、この治療を実施することで、身体の中に残存しているがん細胞をすべて死滅させ、将来的に生じるがん細胞を認識して退治できる免疫細胞の小集団を確立することを期待しています。

膵臓がんと腎臓がんの臨床試験

スローンケタリング記念がんセンターで実施された膵臓がん臨床試験が2025年2月19日付けのNature誌で報告されました。臨床試験に参加した16名の患者のうち、8名が治療に対して強い免疫反応が見られ、そのうち6名は最初におこなわれた手術から3年以上経過後も再発は見られてないとの研究結果が報告されています。

ダナファーバーがん研究所で実施された腎臓がん臨床試験には9人の患者が参加し、がんを再発した参加患者はおらず、4人は手術から3年以上経過した後も、がんは再発していないと、2月5日付けNature誌に報告されています。

両試験の参加患者の多くにおいて、患者個別ワクチンに含有される標的ネオアンチゲンを認識できる免疫細胞は、はじめの治療薬投与から数年経過しても血中に存在していたこと。また、どちらの試験においても治療法は安全と考えられ、軽度の副作用だけが報告されています。

上述の研究を実施した研究チームは、治療法の可能性については楽観視できていると述べています。しかし、初期結果を確認するためには、すでに実施されているよりも大きな規模の臨床試験が必要だと強調しています。

腎臓がん・膵臓がんでは遺伝子変異が多くない

免疫療法薬は、腎臓がんの中でも、がんが身体全体に転移した患者の治療に使用されています。しかし、膵臓がんの場合、免疫療法革命はまだ訪れてません。臨床試験において、免疫療法薬は単独もしくは、ほかの治療法と併用したケースであっても、腫瘍を手術で取り切れる患者を含めて、効果は何も確認できていません。

しかし、腎臓がん・膵臓がんの患者における腫瘍では、共通点があり、それは、遺伝子変異が多くないことで、これが問題だと考えられています。

遺伝子変異が多くないということは、がん細胞に免疫系の注意を引きつけるネオアンチゲンが少ないことを意味するからです。

腎臓がん患者9名に再発は見られず

研究チームは、腎臓がん臨床試験の中で、各患者の腫瘍において、強力な免疫反応を引き起こすとされるネオアンチゲンを20種類特定しました。そして、その変異タンパク質の小さな断片(ペプチド)を化学合成させて、それぞれ患者の治療薬に使用しました。

術後すぐ、それぞれ患者に、1か月間・週1回の治療薬投与を実施しました。加えて、およそ12週間後と20週間後にブースター投与をおこないました。5人の参加者には、各治療薬投与の際に免疫チェックポイント阻害薬イピリムマブの低用量投与も実施しました。

NCIのMark Ball医師(※)は、臨床試験に参加したどの患者にもがんの再発は見られなかったという事実は、「励みになり、心が高鳴る」と、述べています。
しかし、Ball医師は「手術可能な腎臓がんの方が、術後に再発せずに数年以上生存することは珍しくはない。したがって、今回の試験で再発が見られなかったのは、その免疫ベース治療法が原因しているのかどうかは不明である」と警告しています。

続けて、「それが治療の結果だという『より説得力のあるデータ』は、治療を受けた患者の免疫系の挙動の解析によるもの」と述べています。

(※)腎臓がんの治療を専門に行っている医師だが、今回の臨床試験には関与していない。

この試験の主任研究者であり、現在(2025年)イェールがんセンターに所属するDavid Braun医学博士は、「がんのどのターゲットが免疫攻撃による影響を受けやすいか特定でき、このアプローチによって長期的な免疫反応を生み出せることを実証できた」とプレスリリースで述べています。

膵臓がん患者では持続的な反応あり

膵臓がん臨床試験においては、スローンケタリング研究所の研究者らと、ドイツのBioNTech社が提携しています。この臨床試験では、mRNA技術を使用してネオアンチゲンが作製されました。

BioNTech社は、患者のワクチン用として最大20個の標的ネオアンチゲンのmRNAを構築。それぞれ患者向けに、autogene cevumeran(オートジーン セブメラン)と呼ばれる最終治療薬を作成しました。

研究へ参加した患者は、オートジーン セブメランを初回投与する際に、免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブを単回投与し、その後、数か月間ワクチンの複数回投与し、最後に4剤化学療法レジメンを短期コースでおこなっています。

膵臓がん試験へ参加した16名の患者のうち8人が治療に反応がありましたが、研究者らは「免疫系が標的ネオアンチゲンを備える細胞を攻撃するよう、うまく刺激された証拠とみなした」と述べています。

治療に反応しなかった8名のうち、がんの再発が見られるまでの期間の中央値は、およそ13か月でした。治療に反応が見られた8名のうち2名は、最終的に再発しましたが、残りの6名はおよそ3年経過後もがんの再発は見られていません。

反応があった一部の患者は、最後の投与から最長4年経過しても、標的抗原を認識できるT細胞を持っていました。

今後さらに大規模な臨床試験で安全性・有効性の解明が必要

どちらの研究においても、参加した患者には軽度の副作用が見られただけでした。とりわけ手術で切除可能と診断された腎臓がん患者のケースでは、安全性が最重要課題だとBall医師は述べています。

進行した腎臓がんの患者は、「延命できるのであれば、ある程度の副作用は我慢しようとするケースが多い」と同医師は話しています。しかし、手術で腫瘍を切除可能な患者の場合、それとは異なるバランスのとり方が必要です。また彼は、「がんが再発する確率が非常に低くなります」と述べています。

上述した免疫療法がこのような患者の日常的治療の一部となるためには、「忍容性・安全性に優れた治療法が必要となるでしょう」と述べています。

参照元:がん治療・癌の最新情報リファレンス|腎臓/膵臓がんに対する新たな免疫ベース治療法、実現の兆し?

未治療の転移性膵癌に「penpulimab+anlotinib」併用療法の上乗せが有効

2026年1月8日から1月10日にアメリカのサンフランシスコで開催された「2026 ASCO Gastrointestinal Cancers Symposium(ASCO GI 2026)」において、中国の研究グループが未治療の膵臓がんに対する治療として、従来の「ゲムシタビン+nab-パクリタキセル」併用療法へさらに「抗PD-1抗体penpulimab+チロシンキナーゼ阻害薬anlotinib」を上乗せしたところ、無増悪生存期間(PFS)が有意に延長されたという研究結果を発表しました。

同研究は2023年8月から2025年6月未にかけて実施され、治療の転移性膵癌患者159人を対象として、「ゲムシタビン+nab-パクリタキセル」のみのグループや「抗PD-1抗体penpulimab+チロシンキナーゼ阻害薬anlotinib+ゲムシタビン+nab-パクリタキセル」併用グループなどに分類してそれぞれの治療効果や安全性などの評価が行われました。結果として、上乗せ療法グループなどにおいてPFSといった評価項目が有意に改善されており、新しい治療の選択肢になる可能性が示唆されています。

参照元:がんナビ|未治療の転移性膵癌に抗PD-1抗体penpulimab+チロシンキナーゼ阻害薬anlotinibがゲムシタビン+nab-パクリタキセルへの上乗せで有望【ASCO GI 2026】

膵臓原発進行神経内分泌腫瘍へのルテチウムオキソドトレオチドの安全性検証

ドイツのベルリンで2025年10月17日から21日にかけて開催された「欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2025)」において、日本の国立がん研究センター東病院肝胆膵内科医長の今岡大氏による研究グループが、日本人の進行神経内分泌腫瘍(NEN)を対象として、「ルテチウムオキソドトレオチド(商品名ルタテラ)」が有効であり安全性のコントロールにおいても対応可能であったという研究結果を発表しました。

治験の背景として、ルテチウムオキソドトレオチドは海外の研究などにより有用性が確認され2021年に承認を受けていたものの、日本人患者を対象とした臨床データが少ないという課題がありました。そこで今岡氏らは日本人の患者を対象として研究を行い、改めて有用性や安全性を検証したという流れです。

また試験対象となった患者(計422人)の年齢中央値は64歳であり、全体の54%が膵臓癌を原発巣としていたこともポイントです。結果として、短期間評価であるものの既存の海外データと同等の安全性や有効性が示唆されました。

参照元:がんナビ|日本人の進行神経内分泌腫瘍に対するルテチウムオキソドトレオチドの有効性と安全性を国内多施設共同観察研究で確認【ESMO 2025】

RLT既治療GEP-NETsでα線PRRTが持続的に良好な奏効率を獲得

2025年10月17日~21日の期間にドイツ・ベルリンで開催された「欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2025)」において、アメリカの研究グループから、放射性リガンド療法(RLT)既治療の進行膵・消化管神経内分泌腫瘍(GEP-NETs)に対する、α線を用いたペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)の有用性や安全性に関する試験結果のデータが発表されました。

同試験は多施設共同オープンラベルフェーズ2試験「ALPHAMEDIX-02試験」のコホート2の部分結果から明らかとされており、α線PRRTとして「212Pb-DOTAMTATE」が採用されています。

212Pb-DOTAMTATEは、高エネルギーで短飛程のα線放出核種を利用し、腫瘍細胞のDNA二重螺旋構造を切断できる強力な抗腫瘍効果を目的として設計された次世代型PRRTとなっており、2024年開催の「多分野NET医療シンポジウム(NANETS)」においてすでに奏効率の良好な結果が報告されていました。

今回の研究では切除不能もしくは転移性のソマトスタチン受容体陽性GEP-NETs患者が対象となっており、従来の臨床試験のデータを補強する形で将来の有用性を示唆していると考えられます。

参照元:がんナビ|放射性リガンド療法既治療の進行GEP-NETsにα線PRRTの212Pb-DOTAMTATEが良好かつ持続的な奏効を示す可能性【ESMO 2025】

ガイドラインの改訂により「膵癌診療ガイドライン2025年版」が発行

2025年7月25日に、2022年版から3年ぶりの改訂を経て「膵癌診療ガイドライン 2025年版」が発行されました。

今回のガイドラインでは新規クリニカル・クエスチョン(CQ)として、家族性膵癌近親者や未発症の生殖細胞系列病的バリアント保有者に対する、膵癌リスクを踏まえたサーベイランスの実施が提案されています。また、がん遺伝子パネル検査に関しても、従来のガイドラインでは実施の有無を考える形でシンプルなCQ実施が提案されていましたが、新たなガイドラインでは膵癌に特徴的な進行速度や生検難易度といった要素も鑑みて、「現時点でのエビデンスは不十分」という記載にまとめられました。

その他にも複数の点で見直しや新規追加などがされており、中でも患者・市民ワーキンググループにより2つのCQが新設された点も2025年版の特徴となっています。

今後の膵癌治療や検査などにおいては、エビデンスレベルの変更なども踏まえて、新しいガイドラインに準拠した体制構築が進められていることも重要です。

参照元:がんナビ|学会ニュース◎日本膵臓学会大会2025 膵癌診療ガイドライン2025年版が発行、未発症の生殖細胞系列病的バリアント保有者や家族性膵癌の近親者に対する膵サーベイランスを提案

術中の標的放射線照射によって膵がんの再発率の低減に成功

アメリカのジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターの研究グループにより、2025年9月開催の「米国放射線腫瘍学会(ASTRO)」の年次総会において、膵がん患者の手術中に標的放射線治療を実施して膵臓周辺の癌細胞を除去した結果、膵臓周辺の再発癌の発生リスクを5%まで減少することに成功したという研究データが発表されました。

研究対象となった膵臓がんの患者は、切除可能境界膵臓がんまたは局所進行膵臓がんの患者20人となっており、術前化学療法と放射線療法を行って、腫瘍を縮小させるといった治療環境が整えられています。また腫瘍切除に関しては医療用ロボットシステムを活用し、精密に対象部位のターゲティングを行える放射線照射が行われたことも重要です。

この術中照射によって膵臓近くにある再発リスクの高い部位への標的放射線照射を実施した所、術後24ヶ月で膵臓周囲の再発が認められた患者は1人のみとなっており、従来の膵臓がんの再発率と比較して有意に少ないことが確認されています。なお、同試験で唯一の再発例に関しては、再発部位は術中照射が届きにくいボルチモア・トライアングルの一部であったことも紹介されました。

参照元:海外がん医療情報リファレンス|術中の標的放射線照射により膵がんの再発が減少

免疫療法薬「ドスタルリマブ」が肝胆膵がんを含めたMMRd変異陽性腫瘍に有用

アメリカのシカゴにおいて2025年4月に開催された「2025米国癌学会(AACR)年次総会」において、メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(MSKCC)を中心とした研究グループにより、免疫療法薬「ドスタルリマブ」などの免疫チェックポイント阻害薬が、一部の癌治療に対して従来の標準治療の選択肢になり得る可能性が発表されました。

研究対象となった患者は、特徴的な遺伝子として「MMRd(ミスマッチ修復機能欠損)」を有している固形癌患者となっており、標準治療としては基本的に手術や放射線療法、化学療法などが指定されている患者となっています。なお、患者総数は103人であり、内訳としては直腸がん49人と、肝胆膵がんなど非直腸がん54人となっていました。

治験の結果、試験に参加した患者のうち直腸がん患者の完全奏効率は100%、非直腸がん患者においても65%(35人)が完全奏効となっており、免疫チェックポイント阻害薬が既存の標準治療の代替治療として有用である可能性が示唆されています。

参照元:海外がん医療情報リファレンス|免疫療法薬ドスタルリマブは、MMRd変異陽性腫瘍に顕著な完全奏効率を示し、手術の代替となりうる

手術用画像認識支援プログラム「EUREKA α」の膵臓強調表示機能

2026年1月29日、東京都千代田区にあるアナウト株式会社は、手術用画像認識支援プログラム「EUREKA α(ユーリカアルファ)」に関して、同年1月28日付けで複数の機能に対する厚生労働省からの承認取得を発表しました。承認された追加機能としては、「胃領域における膵臓の強調表示の機能追加」と「大腸領域における神経の強調表示の機能追加」、そして「疎性結合組織の強調表示の婦人科領域への適応拡大」といった内容などが発表されています。なお、「EUREKA α」は2024年4月時点ですでに、胃・大腸・鼠径ヘルニア領域において疎性結合組織を強調表示する機能が承認されていました。

今回の承認により、胃領域の治療を行う際に膵臓への合併症リスクを軽減することが可能となり、術後膵炎の発生など膵臓に関連する悪影響となる事象の防止を目指す助けになると考えられています。

その他、同システムは手術支援ロボット「Da Vinci Xi」と組み合わせて使用することも可能です。

参照元:がんナビ|手術用画像認識支援プログラムEUREKA αが膵臓や骨盤内臓神経の強調表示について承認

膵臓がんの早期発見・早期治療を目指した研究が複数進行中

2025年12月14日に東京の八重洲会場及びオンライン形式で、全がん対象の癌患者支援団体「NPO法人がんと共に生きる会」が、設立25周年公開講座「がん患者にできることPast,Present,Future~つないだバトン、今、そして未来へ~」を開催しました。そしてその中において、膵がん患者会のNPO法人パンキャンジャパン理事長である眞島喜幸氏が公園を行い、自身が膵臓の全摘手術を受けた経験を持つ癌サバイバーとして2025年6月に国際シンポジウムで話した内容などを語りました。

また眞島氏は全世界で100以上の膵がん患者支援団体が参加する「世界膵がん連盟」の活動についても言及し、日本における「MCED(multi-cancer early detection)検査」の研究や、「PRECEDEコンソーシアム」といった膵がんの家族歴・高リスク因子の特定及び集中的フォローに関する研究などに関してその重要性を説明しています。

参照元:がんナビ|NPO法人がんと共に生きる会25周年記念公開講座(下)今、そして未来へ、社会を変えるがん患者アドボカシー活動のバトン

「オニバイド」が治癒切除不能な膵臓がんの一次治療へ適応拡大

2025年12月16日、日本セルヴィエ株式会社が抗悪性腫瘍剤「オニバイド点滴静注43mg(一般名:イリノテカン塩酸塩水和物)」について、治癒切除不能な膵臓がんの一次治療への効能または効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったことを発表しました。

今回の承認申請は、遠隔転移を併発する膵がんに対する一次治療の有用性を評価した海外第III相試験「NAPOLI-3試験」の結果にもとづいており、患者770名を対象として「NALIRIFOX療法(オニバイド+オキサリプラチン+フルオロウラシル+レボホリナート)」を行ったグループと、標準治療の1つである「GnP療法(ゲムシタビン+ナブパクリタキセル)」を行ったグループとで、それぞれの有効性や安全性を比較したものです。

試験の結果、オニバイドを使用したNALIRIFOX療法群は、標準治療のGnP療法群よりも統計学的に有意な全生存期間(OS)を示しており、安全性プロファイルについても既知のものと一致しました。これにより、オニバイドは遠隔転移を有する膵がんの一次治療の選択肢になり得ることが示唆されています。

参照元:オンコロ|抗悪性腫瘍剤オニバイド、治癒切除不能な膵臓がんの一次治療への適応拡大を申請

術前化学放射線療法の切除可能膵がんに対する有効性

2025年10月16日から同月18日の期間において、神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で開催された第63回日本癌治療学会学術集会のプレナリーセッションで、札幌医科大学や京都大学大学院などによる研究チームが「切除可能膵癌に対する強度変調放射線治療を用いた術前化学放射線療法の有効性の検証」と題した発表を行いました。

切除可能な膵がんの治療については、先行手術もしくは術後化学療法が標準療法とされており、術前療法についてはガイドライン上の記載こそあるものの定まった治療がないという現状です。

そのような前提を踏まえて、研究チームは強度変調放射線療法(IMRT)を使った切除可能膵がんに対する術前化学放射線療法の有効性を検討しました。研究は2013年から2021年にかけて130人を対象に実施し、結果としてIMRT併用群は先行手術よりも有意な治療効果を発揮する可能性が示唆されました。

なお、本研究をさらに進めるため、腫瘍マーカーによって選択された切除可能膵がん患者を対象として、IMRTによる術前放射線療法の効果検討の第2相試験もスタートしています。

参照元:オンコロ|切除可能膵がんに対する術前化学放射線療法の可能性:強度変調放射線治療を使った検討

米国の若年層で膵臓がんなど消化器がんの患者が急増

2025年7月8日の「British Journal of Surgery誌」において、アメリカのダナファーバーがん研究所の専門家チームが、米国の若年層において消化器がんの発生割合が急増していることを指摘しました。なお、対象となる癌には膵臓がんや大腸がん、食道がんの他、症例の少ない癌も含まれています。

調査の結果、2010年~2019年の期間で若年発症消化器がんの新規診断件数は約14.8%増加しており、若年層における患者数こそ40~49歳が最大となるものの、各年齢層で若い年齢になるほど癌の増加率が顕著になっている点も見逃せません。具体的には、1990年生まれの人は1950年生まれの人より一部の癌の発生確率が4倍になっており、どのような原因によって癌の発生率が増大しているのか、若年層における癌リスクについての研究が進められています。

参照元:海外がん医療情報リファレンス|若年の消化器がん患者が米国で急増