放射線治療の費用は、治療の種類、保険適用の有無、治療回数、入院の有無、自己負担割合によって大きく変わります。同じ「放射線治療」でも、一般的な外部照射、定位放射線治療、IMRT、粒子線治療、密封小線源治療、自由診療では、患者さんが実際に支払う金額が異なります。
また、保険診療で受ける場合は高額療養費制度を利用できることがあり、窓口での自己負担を一定額に抑えられる場合があります。一方、自由診療や先進医療の技術料は全額自己負担となることがあるため、治療前に医療機関へ確認しておくことが大切です。
このページでは、放射線治療の費用がどのように決まるのか、保険診療・自由診療・先進医療の違い、治療法別の費用目安、高額療養費制度、費用を確認するときのポイントをまとめます。
放射線治療の費用は、主に以下の要素によって変わります。
放射線治療では、実際に照射する費用だけでなく、診察、画像検査、治療計画、固定具の作成、照射中の診察、治療後の経過観察などにも費用がかかる場合があります。
そのため、「1回の照射費用」だけでなく、治療開始から終了後の検査まで含めた総額を確認することが大切です。
放射線治療の費用を理解するうえで重要なのが、治療が「保険診療」「自由診療」「先進医療」のどれに該当するかです。
| 区分 | 費用の考え方 | 高額療養費制度 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 保険診療 | 診療報酬で定められた点数に基づき、自己負担割合に応じて支払います。 | 対象 | 自己負担割合は年齢や所得、保険種別によって異なります。 |
| 自由診療 | 医療機関ごとに費用が設定され、原則として全額自己負担です。 | 対象外 | 治療費、検査費、診察料、追加費用の有無を事前に確認しましょう。 |
| 先進医療 | 先進医療の技術料は全額自己負担です。診察・検査・入院など保険診療と共通する部分は保険適用される場合があります。 | 技術料は対象外 | 民間保険の先進医療特約が使える場合があります。 |
保険診療であれば、医療費が高額になった場合に高額療養費制度を利用できる可能性があります。自由診療は原則として全額自己負担となるため、費用総額を確認してから治療を検討しましょう。
保険診療で放射線治療を受ける場合、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が一定額を超えると、高額療養費制度によって自己負担を抑えられる場合があります。自己負担上限額は、年齢や所得区分によって異なります。
高額な治療が見込まれる場合は、マイナ保険証の限度額情報の利用や、限度額適用認定証の準備について、加入している健康保険や病院の会計窓口へ確認しておきましょう。
なお、高額療養費制度の内容や自己負担上限額は見直されることがあります。治療前には、厚生労働省、加入している健康保険、医療機関の会計窓口などで最新情報を確認してください。
放射線治療の費用は、治療法や保険適用の有無によって大きく異なります。以下はあくまで目安です。実際の費用は、医療機関、治療部位、照射回数、入院の有無、検査内容、自己負担割合によって変わります。
| 治療法 | 保険適用の考え方 | 費用の目安 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 一般的な外部照射 | 多くは保険診療 | 自己負担割合・回数により変動 | 治療回数が多い場合でも、高額療養費制度により自己負担を抑えられる場合があります。 |
| 定位放射線治療 | 対象疾患では保険適用 | 自己負担割合・部位により変動 | 検査費・診察費・入院費が別途かかる場合があります。 |
| IMRT・トモセラピー | 対象疾患・病状では保険適用 | 照射回数・部位・制度利用により変動 | 自由診療で受ける場合は高額になることがあります。 |
| 陽子線治療・重粒子線治療 | 対象疾患では保険適用。それ以外は先進医療または自由診療となる場合あり | 先進医療の技術料は約300万円前後が目安 | 保険適用疾患は改定されるため、最新情報の確認が必要です。 |
| 密封小線源治療 | 対象疾患では保険適用 | 入院の有無・線源数・治療回数により変動 | 前立腺がんや子宮頸がんなどで用いられることがあります。 |
| アイソトープ内用療法 | 疾患・薬剤により保険適用 | 薬剤・入院管理の有無により変動 | 甲状腺がん、骨転移の痛み、神経内分泌腫瘍など、治療対象により費用が異なります。 |
外部照射は、体の外から放射線を照射する一般的な放射線治療です。多くの場合、保険診療として行われます。
費用は、照射部位、回数、治療計画の内容、診察や検査の有無によって変わります。通常は月曜から金曜まで週5回、数週間にわたって通院することが多いため、医療費だけでなく交通費も考慮しておきましょう。
保険診療で行う場合、自己負担額が高額になると高額療養費制度の対象になることがあります。
定位放射線治療は、病変へ高精度に放射線を集中して照射する治療です。サイバーナイフやガンマナイフは、定位放射線治療に用いられる装置名です。
対象疾患や病状によっては保険適用となります。費用は、治療部位、照射方法、外来か入院か、検査内容によって変わります。自己負担割合が3割の場合でも、実際の支払額は高額療養費制度の利用可否によって変わるため、医療機関で確認しましょう。
また、治療前の画像検査、診察、治療計画に関する費用が別途かかることがあります。
IMRT(強度変調放射線治療)は、腫瘍の形に合わせて放射線の強さを調整し、周囲の正常組織への線量を抑えながら照射する高精度放射線治療です。トモセラピーは、IMRTを行う装置の一つです。
IMRTは、対象疾患や病状、医療機関の体制などにより保険適用となる場合があります。ただし、すべてのがんやすべての病状で保険適用になるわけではありません。保険適用の可否は、がんの種類、部位、病期、治療目的、医療機関の判断によって異なります。
保険診療で行う場合、治療回数が多くても高額療養費制度の対象になる可能性があります。一方、保険適用外の内容で受ける場合は自由診療となり、全額自己負担になることがあります。
自由診療でトモセラピーを受ける場合、費用は医療機関ごとに異なります。例えば、東京都のクリニックC4では、トモセラピー治療費として定額制の治療費、治療計画費、初診・初回相談料、再診料などが案内されています。
自由診療では、治療費だけでなく、相談料、診察料、検査費、診断書費用などが別途かかることがあります。治療開始前に、総額、追加費用、支払い時期、治療を中止した場合の扱いを確認しておきましょう。
参照元:クリニックC4|治療費について
保険適用外の放射線治療を検討する場合は、費用だけでなく治療目的も確認しましょう。
転移癌や末期癌では、標準治療が難しい場合でも、痛みや出血などの症状緩和、生活の質の維持を目的に放射線治療が検討されることがあります。自由診療となる場合は費用が高額になるため、治療内容・総額・追加費用・通院回数を事前に確認することが大切です。
粒子線治療には、陽子線治療と重粒子線治療があります。対象疾患では保険適用となる場合があり、それ以外では先進医療または自由診療として扱われる場合があります。
2024年6月時点で、陽子線治療・重粒子線治療の保険適用疾患は拡大しています。対象疾患には、頭頸部悪性腫瘍、早期肺がん、肝細胞がん、肝内胆管がん、局所進行性膵がん、局所大腸がん術後再発、前立腺がん、骨軟部腫瘍、小児腫瘍などが含まれます。重粒子線治療では、局所進行性子宮頸部腺がん、長径6cm以上の局所進行性子宮頸部扁平上皮がん、婦人科領域の悪性黒色腫なども保険適用疾患として示されています。
ただし、保険適用には病状や条件があります。最新の対象疾患は、医療機関や日本放射線腫瘍学会などで確認してください。
保険適用となる場合、診療報酬で定められた費用に対して、患者さんの自己負担割合に応じた金額を支払います。高額療養費制度を利用できる場合もあります。
先進医療の場合、診察・検査・入院など保険診療と共通する部分には保険が使える一方、粒子線治療の技術料は全額自己負担となります。技術料は施設によって異なりますが、約300万円前後が目安です。
例えば、国立がん研究センター東病院では陽子線治療の費用について、保険診療、先進医療、自由診療で費用区分が異なると案内しています。また、QST病院では、重粒子線治療の先進医療技術料として344万円と案内しています。
参照元:QST病院|費用について
密封小線源治療は、放射線を出す小さな線源を体内または腫瘍の近くに置き、病変へ近い距離から照射する治療です。前立腺がんの小線源治療や、子宮頸がんの腔内照射・組織内照射などで用いられることがあります。
対象疾患では保険適用となる場合があります。費用は、使用する線源、治療回数、入院の有無、麻酔の有無、画像検査などによって変わります。
前立腺がんの密封小線源治療を例にすると、線源の数や入院期間によって費用が変わります。子宮頸がんなど他のがんでは、治療内容や回数が異なるため、同じ費用になるとは限りません。
保険診療で行う場合は、高額療養費制度の対象になることがあります。
アイソトープ内用療法は、放射線を出す薬剤を体内に投与して、がん細胞や特定の組織に作用させる治療です。放射性ヨード内用療法などが代表例です。
甲状腺がんの治療のほか、骨転移による痛みの緩和、神経内分泌腫瘍などに対して放射性医薬品を用いる治療が行われることがあります。
費用は、使用する薬剤、治療対象、外来か入院か、放射線管理の必要性によって異なります。「3割負担でいくら」と一律に決まるものではないため、医療機関で確認しましょう。
トゥルービームは、放射線治療に用いられる装置の一つです。定位放射線治療、IMRT、画像誘導放射線治療など、高精度な照射を行うために使われることがあります。
費用は装置名で決まるのではなく、実際に行う治療法、照射部位、治療回数、保険適用の有無によって決まります。
近年では、MRIと放射線治療装置を組み合わせたMRリニアックや、AIによる治療計画支援なども導入が進んでいます。ただし、最新装置を使うかどうかだけで治療費や効果が決まるわけではありません。治療目的や病状に合った方法を選ぶことが大切です。
放射線治療では、実際の照射費用以外にも、診察、検査、治療計画などの費用がかかります。保険診療と自由診療では、費用に含まれる範囲が異なるため、事前確認が必要です。
| 費用項目 | 内容 |
|---|---|
| 診察・相談費 | 初診、再診、放射線治療医による診察、説明など |
| 画像検査費 | CT、MRI、PET-CT、X線検査など |
| 治療計画費 | 照射範囲、方向、線量、回数を決めるための計画作成 |
| 固定具・マーキング関連費 | 毎回同じ姿勢で照射するための固定具作成や皮膚マーキングなど |
| 照射費 | 実際に放射線を照射する費用 |
| 薬剤費 | 抗がん剤、増感剤、鎮痛薬、副作用対策薬など |
| 入院費 | 小線源治療や内用療法などで入院が必要な場合 |
| 診断書・証明書費用 | 保険請求や勤務先提出用の書類作成費 |
| 交通費・宿泊費 | 遠方の医療機関へ通院・滞在する場合に発生 |
自由診療で放射線治療を受ける場合、費用は医療機関ごとに異なります。保険診療と異なり、高額療養費制度の対象外になることが一般的です。
自由診療を検討する場合は、治療費の総額だけでなく、何が費用に含まれているのか、追加費用が発生する可能性があるのかを確認しましょう。
費用が高額になる治療では、金額だけでなく「何を目的に行う治療か」を確認しましょう。
転移癌や末期癌で放射線治療を検討する場合、がんの制御、痛みの緩和、出血の軽減、生活の質の維持など、治療目的は患者さんによって異なります。自由診療を含めて検討する際は、期待できる効果、リスク、副作用、費用総額を確認することが大切です。
放射線治療では、照射を始める前に診察や検査、治療計画の作成が必要です。どの段階で費用が発生するのかを知っておくと、治療前の見通しを立てやすくなります。
主治医から放射線治療を勧められた場合、放射線治療医の診察を受けることがあります。がんの進行度、体の状態、これまでの検査や治療内容をもとに、放射線治療を行えるか、どのような目的で行うかを検討します。
この段階では、診察料、紹介状関連の費用、画像データの準備費用などがかかる場合があります。セカンドオピニオンの場合は、保険診療ではなく自費扱いになることがあります。
治療時と同じ姿勢でCT検査などを行い、照射範囲や姿勢、放射線の方向を決めます。照射部位によっては、毎回同じ姿勢を保つための固定具を作成することがあります。
この段階では、治療計画CT、固定具作成、マーキング、必要な画像検査などの費用がかかる場合があります。
治療計画システムを使い、がんのある部位、がん細胞が残っている可能性のある範囲、正常組織の位置を確認しながら、照射線量や回数を決めます。
IMRTや定位放射線治療など高精度な治療では、治療計画が複雑になるため、通常の照射よりも費用が高くなることがあります。
治療は放射線治療室で行われます。一般的な外部照射では、1回の治療時間は10〜20分程度で、実際に放射線が照射される時間は数分程度です。治療中に痛みを感じることは通常ありません。
通院治療の場合は、治療回数分の通院が必要です。治療費のほか、交通費、付き添いの負担、遠方の場合は宿泊費も考えておきましょう。
放射線治療の期間中は、照射位置の確認や副作用のチェックを行います。週1回程度、医師の診察を受けることがあります。
副作用が出た場合は、薬剤費や追加検査費がかかることがあります。体調の変化があれば、早めに医療スタッフへ伝えましょう。
治療が終わった後も、効果や副作用を確認するために定期的な診察や画像検査を受けます。治療費だけでなく、治療後の検査費用も見込んでおきましょう。
放射線治療の費用は複雑になりやすいため、治療を始める前に以下の点を確認しておくと安心です。
放射線治療の費用が不安な場合は、主治医だけでなく、病院の会計窓口、医療相談室、がん相談支援センターなどに相談できます。
がん相談支援センターでは、治療や療養生活の相談だけでなく、医療費、仕事、生活に関する不安について相談できる場合があります。通院中の病院に限らず、地域のがん診療連携拠点病院などにも設置されています。
多くの放射線治療は、対象疾患や病状に応じて保険適用されます。ただし、すべての治療が保険適用になるわけではありません。治療法、がんの種類、病期、治療目的によって異なるため、医療機関に確認しましょう。
保険診療として行われる放射線治療は、高額療養費制度の対象になる場合があります。自由診療や先進医療の技術料は対象外になることがあります。
自由診療の費用は医療機関ごとに異なります。数十万円から数百万円規模になる場合もあります。治療費、治療計画費、検査費、診察料、追加費用を含めた総額を確認しましょう。
対象疾患では保険適用となる場合があります。対象外の疾患では、先進医療や自由診療となる場合があります。保険適用疾患は改定されることがあるため、最新情報を確認してください。
先進医療の技術料は原則として全額自己負担であり、高額療養費制度の対象外です。ただし、診察・検査・入院など保険診療と共通する部分は保険適用となる場合があります。
変わります。通院の場合は入院費がかかりませんが、交通費や付き添いの負担が発生します。入院が必要な治療では、入院料、食事代、差額ベッド代などがかかることがあります。
契約内容や治療内容によって異なります。陽子線治療や重粒子線治療など先進医療として行う治療では、先進医療特約の対象になる場合があります。治療前に保険会社へ確認しましょう。
転移癌に対する放射線治療でも、痛みの緩和や病変の制御などを目的に保険診療で行われる場合があります。ただし、治療法や病状によって自由診療となる場合もあるため、医療機関へ確認しましょう。
放射線治療の費用は、治療法、保険適用の有無、治療回数、入院の有無、自己負担割合によって大きく変わります。保険診療であれば高額療養費制度を利用できる場合があり、自己負担を抑えられる可能性があります。
一方、自由診療や先進医療の技術料は全額自己負担となることがあるため、治療前に総額や追加費用を確認しておくことが大切です。放射線治療を検討する際は、費用だけでなく、治療の目的、期待できる効果、副作用、通院回数、生活への影響も含めて主治医や相談窓口へ確認しましょう。