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内視鏡治療

内視鏡治療とは?

内視鏡治療とは、内視鏡を使用し、体内の病変部を映し出してモニター画面を確認しながら切除をする手術によって治療をする方法です。傷跡もほぼ残らず、体への負担が少なく回復も早いことがメリットとして挙げられますが、対象となるがんは早期のものや大きさが小さいものです。

内視鏡治療の種類

内視鏡治療とひとくちにいっても種類があり、方法も変わってきます。カメラを用いてがんの切除をする点は同じですが、挿入する場所や適応できる範囲が異なります。

ここでは、切除のための器具を先端に備えた内視鏡を口や鼻、あるいは肛門から挿入してがんの切除にあたる【内視鏡的切除】と、 おなかに小さな穴を数カ所あけ、器具を挿入し、そこから内視鏡やメスなどを入れがんの切除をする【腹腔鏡下手術】について紹介します。

内視鏡的切除と腹腔鏡下手術の違い

内視鏡的切除はがんに対して内科的なアプローチであり、おなかなどの切開が必要ないため見た目には傷がいっさいわかりません。

一方、腹腔鏡手術は外科的なアプローチであり、おなかに数カ所の切開はあるものの小さな傷であり、ほとんどわかりません。

ただし、どちらもがんの進行具合や病変部の状態によっては開腹手術が必要となる場合があります。

また、内視鏡的切除では粘膜に留まるリンパ節転移のないがんを対象としているのに対し、腹腔鏡下手術ではリンパ節郭清も可能といわれています。

内視鏡的手術の対象となるのは、病期ⅠAでがんが粘膜にとどまっている人、腹腔鏡下手術の対象となるのは、おもに病期ⅠAで縮小手術が可能な人です。 内視鏡的切除は、胃の内側から病変の粘膜だけを切り取るため、粘膜下層よりも深くまで達したがんでは、胃に穴があいてしまう(穿孔)リスクが高く、またリンパ節を切除(郭清)することはできません。そのため、粘膜にとどまるがんで、リンパ節転移のないことが絶対的条件となります。 腹腔鏡下手術はリンパ節郭清も可能です。定型手術のD2郭清も、腹腔鏡下手術で行えます。
出展:日本臨床外科学会
http://www.ringe.jp/civic/igan/igan_08.html(2018年11月9日確認)

内視鏡的切除

内視鏡的切除では、上部内視鏡(胃カメラ)・下部内視鏡(大腸カメラ)を使用します。内視鏡の鉗子口からスネアというループ状の細いワイヤーやITナイフなどの高周波メスを挿入し、病巣部の根元から高周波電流を流してがんを切除します。 対象となるのは早期の癌や腺腫と呼ばれる良性腫瘍など、広がりの浅い小さながんが一般的です。
内視鏡的切除の最大のメリットは、胃や大腸などの消化管の中から操作するため患者さんのおなかにはほとんど傷がつかないことと、切除部が粘膜の一部のみのため術後の後遺症も非常に少ないことです。またその他にも、出血や痛みが少なく回復までの期間も短いことも挙げられます。

内視鏡手術が可能ながん

日本では、リンパ節転移のない早期消化管がんが対象です。

胃がん

内視鏡的切除が可能な胃がんは、胃がん治療ガイドラインによって示されており、原則として「リンパ節転移の可能性がほとんどない病変、腫瘍が一括切除できる大きさと部位にあること」が条件です。 また、大きさについてはこのようになっています。

これまではがんが粘膜内にとどまり、大きさが2cm以下であるもの、またがんの悪性度が比較的良いもの(分化型がん)、明らかな潰瘍を伴わないものに対して行われておりましたが、現在では適応も広がり、大きさの制限もありません。また悪性度の高い未分化型癌においても2cm以下の粘膜がんと想定されれば、適応拡大病変として内視鏡治療の余地があります。
出展:千葉県がんセンター
https://www.pref.chiba.lg.jp/gan/shinryoka/naishikyo/index.html(2018年11月9日確認)
食道がん

原則としてリンパ節転移がほとんどないと想定されるがんに対しておこなわれます。 粘膜層に留まるがんは、リンパ節をはじめとした他部位への転移がほとんどなく、内視鏡による治療が可能です。

大腸がん

がんの深さが粘膜下層浅層までで、かつ腸管外のリンパ節に転移の可能性が少ないものが対象です。
参考:千葉県がんセンター
https://www.pref.chiba.lg.jp/gan/shinryoka/naishikyo/index.html(2018年11月9日確認)

内視鏡的切除の方法

内視鏡手術は、大きく分けて3つの方法にわかれます。 がんの形状や性状、正常粘膜との境界等を内視鏡でよく観察し、茎のある隆起したタイプか、平坦な病変や陥没しているものなのかによって手術の方法が変わります。

内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)

主にきのこのように茎のある隆起したポリープに対しておこなわれます。 ポリープはがんに変化しにくいポリープと、腺腫と呼ばれる良性の腫瘍ではあるもののがんに変化しやすい性質をもつものや、悪性の腫瘍であるがんに分かれます。 ポリープの茎にスネアとよばれる電流を流すループ状のワイヤーをかけてから、徐々に締め、高周波電流を流すことで病変部の組織を切除します。

内視鏡的粘膜切除術(EMR)

茎がないなどのワイヤーが掛けにくい病変をつかむときにおこなわれます。ポリペクトミーと同様にスネアというワイヤーを使用します。 まず粘膜下層に生理食塩水を注入し、病変部を隆起させます。その隆起した病変部を把時鉗子で持ち上げ、ループ状のワイヤー(スネア)を掛け、締め上げてから高周波電流で切除します。

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

ポリペクトミーやEMRがワイヤーを用いるのに対し、このESDではITナイフなどの高周波メスを使用して切除にあたります。この高周波メスは大きく確実に切除したいときに有効です。 この方法は、1990年代後半に日本で開発され、現在ではアジアを中心に世界的におこなわれています。

ESDが開発されたことにより、従来であれば外科的に胃切除を行われる病変が内視鏡的に切除可能になりました。5日前後の入院が必要ですが、患者さんにとっては術前とほぼ同様の生活をおくることができる低侵襲な治療です。 問題点は技術的な難易度がやや高いこと、穿孔や出血などの手術合併症がEMRに比べてやや多いこと、また転移の危険性の少ない癌や腺腫が対象であり、すべての早期癌が対象となるわけではないことが挙げられます。
出展:静岡県立静岡がんセンター
https://www.scchr.jp/ideal-care/minimally-ope/endoscopic-esd.html(2018年11月9日確認)

病変部の切り取る箇所をマーキングしていき、粘膜下層に生理食塩水を注入し病変部を隆起させます。浮かせた病変部の周りについているマーキングを取り囲むようにナイフで切り取り、慎重に粘膜下層から剥離し切除を完了させます。
参考:社会医療法人財団慈泉会相澤病院
http://www.ai-hosp.or.jp/use_admission/usage_guide/disease_guide/disease_guide39.html(2018年11月9日確認)

腹腔鏡下手術

腹腔鏡下手術では、手術においてできる傷が0.5~1.2cmのものが数カ所、切除した病変部を取り出すための3~4cmの傷が1カ所と、大きく傷跡がのこる外科手術と比べて患者の負担が少ないことが特徴です。 傷跡が小さく目立たないことは美容的に患者にメリットがありますが、それだけではなく術後の痛みも少なく回復も早いことが最大のメリットといわれています 。

腹腔鏡下手術が可能ながん

胃がん

腹腔鏡下手術が可能な胃がんは、大部分は早期のものが対象です。 胃がん治療ガイドラインでは、ステージI胃がんに対する腹腔鏡下幽門側胃切除のみが日常診療の選択肢として推奨されています。

腹腔鏡下胃がん手術は全国で年間約2万件が行われており、大部分が比較的容易な早期胃がんを対象としています。胃がん治療ガイドラインではステージI胃がんに対する腹腔鏡下幽門側胃切除のみが日常診療の選択肢として推奨されています。腹腔鏡下胃全摘は食道と小腸を吻合(ふんごう)する手技が難しいとされてきましたが、経験のある術者であれば比較的安全に行えるということが、最近、多施設臨床試験で確認されました。ステージII以上の進行がんに対する幽門側胃切除は経験のある術者であれば比較的安全に行えることは分かっていますが、長期予後に関してはまだ多施設臨床試験の結果を待っている状態です。
出展:国立がん研究センター東病院
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/gastric_surgery/050/040/index.html(2018年11月9日確認)
大腸がん

腹腔鏡下手術が可能な大腸がんは、早期のものが対象です。 適応ステージはステージ0およびステージIとされていますが、2009年度版大腸がん治療ガイドライン(大腸がん研究会編)ではその規制が外れています。ただし、ステージII以降を対象とした腹腔鏡下手術は、術者の技量に応じて可能であるかが判断されるため、選択肢としてはまだこれから、という状態です。
参考:がん研有明病院
https://www.jfcr.or.jp/hospital/cancer/type/colon/004.html(2018年11月9日確認)

腹腔鏡下手術の方法

腹腔鏡下手術では大きくおなかを切らずにすみます。穴の数や場所は病気の種類や場所によって違いますが、およそ0.5~1.2cmの穴を4~5カ所開けます。 開けた穴からポートという筒状の器具を挿入し、ポートから二酸化炭素を送り込みおなかを膨らませることでおなかの中を見やすくします。 おへそにつけた傷から腹腔鏡(内視鏡の一種)を挿入し、内部をモニターに映し出します。別につけた穴より鉗子(先端にハサミや電気メス、ピンセット等がついたもの)を挿入し、モニターを確認しながらがんの切除を行ないます。 切除した腫瘍はおへその傷を3~4cmにしておなかの外へ取り出します。
参考:医療法人山下病院
https://www.yamashita-hp.jp/suijun/geka/about.html(2018年11月9日確認)