子宮頸癌・子宮体癌からの転移、子宮癌への転移についてまとめました。
子宮癌は子宮頸癌と子宮体癌に分かれます。そのため、どちらを発症したかによって転移しやすい場所が変わるのです。
一般的に、子宮癌の検診で検査される癌は子宮頸癌の方ですが、次のように、子宮体癌は子宮頸癌よりも奥の方にできるため、遠隔転移や骨への可能性が高いとされているため、子宮癌検診を受けている方でも注意が必要です。
腟の一番奥にある子宮の入り口を「子宮頸部(しきゅうけいぶ)」といい、その部分にできるがんを「子宮頸(頚)がん」。そして、子宮頸部の奥にあり、妊娠した時に赤ちゃんが育つ場所を「子宮体部(しきゅうたいぶ)」と呼び、そこにできるがんを「子宮体がん」といいます。
子宮頸癌は子宮の入り口にできる癌のことで、転移しやすい場所は骨盤内にある臓器や器官です。骨盤内には膀胱・直腸・腹膜などがあり、これらが転移しやすい場所となっています。
子宮の内膜に発症する子宮体癌も、膀胱や直腸など、子宮頸癌と共通した転移先がありますが、肝臓・肺・脳といった遠隔転移も少なくありません。また、骨盤などの骨自体にも転移することがあります。
子宮癌は早期発見されていれば切除で治療可能ですが、発見が遅れると放射線や抗癌剤治療が必要になります。
「子宮癌の治療後に異変を感じた場合はすぐに骨盤への転移を疑うべきだ」というほど、子宮癌の転移が一番多いと言われているのが骨盤周辺です。骨盤内にはリンパ節もあるので、流れに乗って骨盤から近い膀胱・直腸へ、また肺や肝臓などへと遠隔転移してしまう恐れがあります。骨盤転移の疑いが出たら、すぐに治療を行いましょう。
骨盤内に転移すると起こるのが不正出血です。膀胱や直腸に転移した場合は血尿や血便などの症状が出てきます。
癌による圧迫によって症状が出るのも子宮頸癌の特徴です。神経を圧迫すると下半身がしびれて下半身まひを起こすきっかけに。尿管を圧迫すると、量が急激に増えた尿により腎臓に圧力が加わるため、腹部に激しい痛みが起きる「水腎症」を起こす可能性があります。
子宮体癌が骨盤に転移した場合も、不正出血や下半身の痛みなどが現れます。
骨盤内の転移が見つかった際、長期生存が期待できる治療法が「骨盤除臓手術」という手術です。骨盤除臓手術は、子宮・卵巣・卵管などをすべて切除する手術法で、症状に応じて膀胱や直腸などもすべて切除する場合があります。長期生存が期待できますが、後遺症のリスクも高くなる治療法です。
骨盤除臓術以外の方法としては化学療法と放射線療法があります。化学療法は主に抗癌剤を使用して癌を小さくする治療法。放射線療法は病巣をピンポイントで攻撃する方法で、腫瘍のサイズが小さかったり腫瘍の場所が限られた場所にしかなかったりした場合に効果的です。放射線療法と化学療法を同時に行う「同時化学放射線療法」が行われる場合もあります。
子宮癌からの遠隔転移で多いのが肺です。肺に転移するということは血流に乗って流れてきた癌細胞が全身に及んでいる可能性が高いことを表しており、癌の進行がかなり進んでいる状態といえます。
肺に転移した場合の症状は風邪の症状にも似ているため、転移に気づきにくいです。転移による咳は癌が気管支や肺を長く刺激し続けるので、しつこく長く続くのが特徴です。それ以上になると血痰や気管支炎になり、胸に水が溜まることで起きる呼吸困難の症状へと進行していきます。
子宮癌が肺に転移した場合は、病巣の数や癌の大きさによって手術か抗癌剤治療のどちらかで治療を行います。子宮頸癌の場合は病巣が3つ以下で腫瘍の大きさが3センチ以下であれば手術を行います。それ以上や数が多い場合は抗癌剤治療を用いて改善を目指します。
子宮癌は骨に転移することがあり、骨に転移した癌は「転移性骨腫瘍」と呼びます。もっとも多いと言われているのが太もも部分の大腿骨(だいたいこつ)です。
転移してすぐは症状がほとんど出ませんが、腫瘍が大きくなると骨の組織を圧迫し、強い痛みが出たり、痛みが長く続いたりします。骨への転移は日常生活に大きく関わる障害になりやすいので、早めの治療が必要です。
子宮癌が骨に転移すると、転移した部分がもろくなってしまい、転移した部位には強い痛みを感じます。部位によっては別の症状を引き起こすこともあり、脊髄に転移した場合は脊髄まひを起こす可能性があります。
骨に転移した場合に有効的な治療法は放射線療法です。放射線療法は部位の痛みを緩和させ、骨折が起きるリスクを低くすることができます。
骨粗しょう症の治療によく使われる「ビスフォスフォネート製剤」による治療も、骨転移が見つかった際に用いられる治療法です。ビスフォスフォネート製剤には骨が破壊されるのを防ぐ効果があります。ほかにも痛みを緩和させるために、鎮痛剤のモルヒネを使った緩和治療や症状に応じた対症療法が用いられています。
子宮頸癌は、ほとんどが性交渉によりヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することで起こります。子宮体癌は排卵の障害により女性ホルモンの一種であるエストロゲンの刺激が絶えず続き、子宮内膜が増えることで癌の発生につながります。ほかから転移して子宮癌になるということはほとんどないといっていいでしょう。
しかし、まれに別の癌から転移して子宮癌になることも確認されています。ある癌センターでは昭和59年から平成元年までの間に4例の転移性子宮癌があったことを報告(※1)しています。内訳は胃癌が2例、大腸癌の一種であるS状結腸癌が1例、卵巣癌が1例でした。
子宮癌の治療法は癌の進行具合によって異なります。初期の場合は切除や全摘出手術で癌を克服することが可能です。しかし癌が進行していくにつれて、放射線治療や抗癌剤治療などの体力の消耗を伴う治療へと変わっていきます。そうなる前に子宮癌の進行を食い止めなければなりません。
※1参照元:J-STAGE/転移性子宮癌の4症例 子宮外臓器原発の悪性細胞が子宮頸部および内膜細胞診に出現した症例の検討も加えて
子宮癌の転移は非常に厄介で、子宮癌の治療を行ったとしても、骨盤に転移していれば様々な臓器に転移する可能性があります。転移した癌の治療は原発癌よりも困難になる上、骨折や脊髄麻痺など、重篤な症状を引き起こすため、生活の質が著しく損なわれてしまいます。
もしも子宮癌が転移していたら、より良い治療法を知るためにも、セカンドオピニオンを受けるのがおすすめです。転移した癌でも適切な治療を受けることで、症状を和らげることができるだけでなく、今後の生活のしやすさは大きく向上するでしょう。
特に、子宮癌は生存率が高い癌であると言われているため、適切な治療を受けることで、これからもその方らしく生きていける可能性もあります。まずは、癌治療で評判の良い医院に相談してみましょう。
子宮癌は初期症状が出にくい病気です。定期的に診察を受けている人であれば初期の段階で治療が可能でしょう。しかし癌が進行してしまったときに発見して、実は転移してしまっていた、ということもありえるのです。
でもあきらめてはいけません。進行した癌や転移してしまった癌の治療を行う医師がいるのです。癌治療のスペシャリストを見つけて治療しましょう。日本には癌治療の実績が豊富な医師がたくさんいます。
HPVワクチンとは、子宮頸がんの原因となる高リスク型HPVの感染を阻害する抗体のことです。
日本では平成22年よりHPVワクチン接種の公費助成が開始され、その3年後には定期接種がスタートしました。
しかしワクチン接種後に慢性疼痛や運動障害などの副作用が現れたことから、2ヶ月後にはワクチン接種の積極的勧奨が中止されるに至り、以降、日本におけるHPVワクチンの摂取率は大幅に低下してしまいました。
しかし、WHOが平成29年7月に発表したHPVワクチンSafetyUpdateによると、世界各国における大規模な疫学調査でも、ワクチンを接種しなかった人と比べて重篤な副作用は見られなかったという結果が報告されています。
一方で、HPVワクチンの有効性は国内外で確認されており、海外では2価ワクチン、4価ワクチンともに子宮頸がんの6~7割の原因となるHPV16/18型の感染をほぼ予防したという結果が報告されています。
日本においても、平成28年度までに登録完了したワクチン有効性の中間解析において、ワクチンの非接種者のHPV16/18型の感染率が2.2%だったのに対し、ワクチン接種者の感染率は0.2%にまで抑えられていたことを確認。その有効性は94%であったという研究結果(※2)が出ています。
※2参考文献:日本医療研究開発機構研究費 革新的がん医療実用化研究事業「HPV ワクチンの有効性と安全性の評価のための大規模疫学研究」平成 27~28 年度委託研究成果報告書(研究開発代表者:榎本隆之、平成 29 年 5 月)
HPVワクチンの安全性が認められたことによって接種率が向上すれば、日本の子宮がん発生率の低下が期待できます。[注1]
かつて早期子宮頸がんの手術は開腹による広汎子宮全摘術を行うのが主流でした。
これに代わる早期子宮頸がんの手術方法として広く採用されるようになったのがロボット支援下で行われる広汎子宮全摘術です。
開腹に比べて患者の体への負担が少ないことが大きな利点と言われていましたが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者たちが主導した研究によると、低侵襲手術は開腹手術に比べて再発率が高いことが確認されました。
具体的には、開腹に比べて疾患進行が3倍となったほか、4.5年時点での無病生存率は開腹手術群では96.5%だったのに対し、低侵襲手術群では86%と10%以上低かったとのこと。
さらに3年全生存率は開腹手術群で97.1%だったのに対し、低侵襲手術群では91.2%だったことが確認されています。
この研究結果についてはハーバード大学、コロンビア大学、ノースウェスタン大学と共同で実施された調査研究によっても明らかになっており、米国内1,500以上の病院で新たに診断されたがん症例の約7割をカバーしている国立がんデータベースを解析。
その結果、開腹手術を受けた女性の4年死亡リスクが5.3%であったのに対し、低侵襲手術では死亡リスクが9.1%に上っていたことが判明しています。
子宮頸がんは早期であるほど手術によって治癒する確率が高くなりますが、一方で再発すると治療するのがかなり難しくなると言われています。
低侵襲手術による広汎子宮全摘術は国内外で広く普及されていましたが、今回の研究により、早期子宮頸がん女性の治療方法が見直されることが予測されています。[注2]
乳がんや子宮がんなどの手術を行うと、慢性リンパ性浮腫をもとに脈管肉腫を発症することがあります。これをStewart-Treves症候群と言います。
発症原因としては慢性リンパ腫が局所的な免疫不全を起こして腫瘍細胞の増殖を誘発するという説や、異常な血管増生が起こって内皮細胞に突然変異が起こるという説など、さまざまな説がありますが、全容解明には至っていません。
Stewart-Treves症候群の治療法には手術療法や放射線療法、化学療法、免疫療法などさまざまな選択肢がありますが、予後の有効な改善策には至っておらず、平均生存期間は約1年とされています。
そんなStewart-Treves症候群に対し、ドセタキセルと放射線を併用した治療法が有効性を示したという症例が報告されています。
患者さんは70代女性で、20年前に子宮がん治療のために子宮全摘術を受けた経歴がありますが、10年ほど前から右下肢に浮腫が発生。
治療を受けずに放っておいたところ、大腿部に暗紫色小結節が発生し、Stewart-Treves症候群と診断されました。
当初は放射線治療とインターロイキン2の静脈内投与や、ドセタキセルの単体投与などを行いましたが、症状は進行。
ところがドセタキセルの投与に放射線照射を追加したところ、約3ヶ月間にわたって皮疹に縮小傾向が見られたそうです。
患者さんは残念ながらその後亡くなられましたが、ドセタキセルと放射線併用治療が一時的であれ功を奏したことは、未だに予後不良の疾患とされるStewart-Treves症候群の今後の治療方針に影響を与える可能性があります。[注3]
福井大学医学部産婦人科学の研究チームの発表によると、子宮体がんの進行度を正確に予測できる可能性を秘めた診断法が開発されたとのこと。この研究がさらに進めば、手術の適応や抗がん剤投与の必要性なども検討可能で、患者さんの状態に応じた適切な治療の選択に活かされるでしょう。
子宮体がんのタイプや進行度を調べるには、がんの病巣の一部を採取して病理検査を行なうしかありません。ただ、この方法では子宮がんの全体像を把握することは不可能で、転移や再発の可能性を判断するのは困難です。
そこで研究チームは、子宮がんの転移や予後に影響するとされるたんぱく質の一種に着目しました。患者に特殊な薬剤を投与し、細胞の活動の様子がわかる画像診断「PET検査」でたんぱく質の動きを調べたところ、その動きが低下すると転移や再発の可能性が高い傾向にあることがわかったのです。病理検査よりも子宮体がんの全体像を把握しやすくなるといいます。
研究では67人の子宮体がん患者さんが対象となりましたが、信頼性を高めるため今後も症例数を増やしていく予定です。子宮体がんの手術は日常生活にも大きく影響するため、この診断法が実用化されれば患者さんにとって大きな希望になると期待されます。