公開日: |更新日:

親が癌になったとき

癌は日本人にとって国民病といっても過言ではなく、家族が癌になっても不思議ではありません。癌の告知を受けると本人は動揺し、さまざまな心配事を抱えます。そして家族も同じように精神的な負担がのしかかり、押しつぶされそうになることもあるでしょう。

もし親が癌になったらどうするべきか、ここではそんな悩みにお答えします。

親が癌と告げられたときにすること

親が癌と告げられたときに大切なのは、まず味方を増やすこと、治療方法を決めること、そして親の闘病をサポートする子どもの仕事の仕方を考えることです。

詳しくみていきましょう。

自分が相談できる人・場所をつくる

味方を増やすというのは、親の癌について自分が相談できる人や場所をつくるということです。初期の癌など治療が短期間で済むならいいのですが、大がかりな治療を受ける場合はさまざまな問題を抱えることになります。

これは本人や家族にとって、精神衛生面でも望ましくありません。そんなとき、まず相談したいのが「がん相談支援センター」です。

がん相談支援センターは、全国のがん診療連携拠点病院や小児がん拠点病院、地域がん診療病院に設置されている、癌専門の相談窓口です。

癌に詳しい看護師や、生活に関すること全般を相談できるソーシャルワーカーが在籍しており、癌に対する相談を何でも無料で受け付けています。医療費や保険、公的な補助金といった経済的なこと、療養に関すること、社会復帰に関することなど、癌に関する一般的なことならおおよその情報を入手できるでしょう。相談に乗ってくれるのは医師ではないので、診断や治療に関する相談は難しいものの、主治医以外の医師の意見を聞きたい場合はセカンドオピニオンの手順を教えてくれます。

とくに癌の治療を初めて受ける場合、がん相談支援センターは力強い味方になってくれるはずです。家族の心の支えにもなりますし、癌と向き合うための知識も増えます。本人も家族も精神的に消耗しないことが大切なので、こういった味方をなるべく増やしながら癌の治療に取り組んでいきましょう。

親と一緒に治療方法を決める

治療方法を決める段階で、最初に確認したいのが「標準治療」です。癌の治療の選択肢は複数あることが多いのですが、その中でも科学的根拠に基づいた、現時点で選択できる最良の治療を標準治療と呼んでいます。まずは標準治療を第一選択肢として、本人に合った治療を選んでいきましょう。

標準治療は手術、放射線治療、薬物治療の3種類を組み合わせて行ないます。初期の乳癌のように3種類すべてを行なう場合もありますし、初期の肺癌のように手術のみ、放射線治療のみという場合もあります。詳しい内容については主治医に直接聞くのがもっとも確実でしょう。

治療方法を自分で調べてみたいというケースもあると思います。その場合は決定を急がず、いったん落ち着いて考えることが大切です。

親が高齢であれば、家族が冷静になって一緒に調べたほうがいいでしょう。近年のインターネットや書籍から得られる情報量は膨大なので、その波に飲まれてしまうとお金と時間を無駄にしかねません。中には、科学的根拠がまったくない治療法や書籍、サプリメントも後を絶たないのが現実です。医療の知識のない人にとっては、その情報の信憑性を判断するのは正直難しいかもしれません。だからこそ、まずは標準治療でどこまで治療できるのか、主治医と検討していく必要があります。

仕事の仕方を考える

癌は確かに深刻な病気ではありますが、医学の進歩によって克服できるケースも多くなっています。癌になったのが本人であれ親であれ、今後について正しい見通しを立てることが大切です。

ただ、厚生労働省の資料によると、癌の告知を受けて仕事を辞めた人は被雇用者で35%、自営業者で17%にのぼり、うち4割が治療開始を待たずに離職しています。それだけ、癌は治らないというイメージを多くの人が持っているのでしょう。

だからこそ、今後の見通しが重要なのです。治療方法を選択する際には、どういった見通しになるかを主治医に確認しておきましょう。

これは親が癌になった場合も同様で、サポートする家族としてどのくらいの介護が必要なのか、率直に主治医に確認することが大切です。大がかりな治療になりそうでも、すぐに介護離職を決断する必要はありません。

※参照元:[PDF]厚生労働省「がん患者・経験者の仕事と治療の両立支援の更なる推進について」

介護休暇や介護休業を利用する

仕事を維持しながら親の癌の治療をサポートしていくためには、介護休暇や介護休業といった制度の利用も考えられます。介護と仕事を両立するために、是非この仕組みを検討してみましょう。

詳しくは次のページをご覧ください。

親の代わりに医療費を確認しておく

親が癌になってしまったら、子どもはサポートしたいと願うのが当然ですが、経済的にすべてを支えられると自信を持って答えられる人はそれほど多くはないでしょう。ですが、利用できる公的なサービスはたくさんあります。医療費について、費用の概算とさまざまな保障について調べておくことが大切です。

医療費が高額になった場合に使える、自己負担の上限額を設定する高額療養費制度は広く知られています。医療費と介護費の両方の自己負担が高額になると、高額介護合算療養費制度が適用される場合があり、さらに自己負担を軽減できます。もし親を健康保険の扶養に入れているのであれば、追加給付を受けられる可能性もあります。

まずはひと通り調べて、その情報を親と共有しておきましょう。また、親が加入している生命保険の保障内容なども確認しておけば、あとで慌てずに済みます。

親にお金の話はしにくい…という場合

医療費や介護費の問題と向き合うにあたって、まず親がお金をどのくらい持っているのか、詳しく聞きにくいこともあるでしょう。そういうときは、たとえば「この先、○○にはこのくらいの費用がかかるらしい」など具体例を挙げて、この先の経済的な問題について一緒に考える機会をつくることです。

親を経済的な面で支える自信のある人は多くないと先ほどお伝えしましたが、ある意味では当然です。一般論ですが、現在の子ども世代よりも親世代のほうが財産を持っている可能性が高く、子ども世代に経済的援助をする余裕がないからです。

親の医療費や介護費は親の財産でまかなうのを基本として、その代わりに情報を集めて公的な制度でやりくりしていく。場合によってはそういうスタイルもとることができます。

癌になったときに親が思うこと

親が癌だと診断されたら、子としても大きなショックを受けます。どのくらい進行しているのか、どんな治療を受けるのか、どうやってサポートするべきか、どんな言葉をかけたらいいのか…戸惑う人も多いでしょう。

もちろん患者本人である親自身も、子どもの手前あまり表情や言葉に出さないかもしれませんが、心身ともにショックを受けているはずです。

静岡県立静岡がんセンターでは、過去数十年にわたって癌患者さんから寄せられた声や悩みについての調査研究を行なっています。その結果によると、癌患者さんの悩みの半数を占めるのが不安など心の苦悩であり、子どもや家族を心配する気持ち、子どもや家族に迷惑をかけたくないという思いが非常に多いことがみてとれます。いくつか挙げてみましょう。

  • 死につながる病気というイメージが強いので、子どもに話せない
  • 家族が何人も癌と診断されており、癌家系なら子どもに迷惑をかけてしまう
  • 子どもには子どもの生活があるので、迷惑をかけないようにどうすべきか悩んでいる
  • 同居している娘は子育て世代だが、大切な時期に親の世話をさせるのはかわいそう

こうした心の悩みを抱えている親に、どのように接していくべきでしょうか。

※参照元:静岡県立静岡がんセンター「心の苦悩」

子どもが家族としてできること

子どもとしては、なんとか親を元気づけたいと願うでしょう。でも、思いが上手に伝わらず、励ましやなぐさめの言葉が逆効果になってしまうこともあります。とはいえ、気をつかいすぎて腫れ物に触れるように接すると、かえって孤立感を深めてしまうかもしれません。親としてのプライドが邪魔をして、子どもに病気のことを話さない、心を開いてくれないというケースもありそうです。

癌になった親をサポートする子どもにとって、もっとも大切なのは親の心の中を理解することになります。そのうえで心に寄り添い、ともに進んでいくつもりで接するのがいちばんです。

親を心配するあまり、思わず強い口調になってしまうこともあるでしょう。よくわかりますが、親にしてみると突き放されたような気持ちになってしまいます。

心に寄り添うとは、じっくり話を聴くこと。良かれと思っても意見やアドバイスは不要です。悩みや苦しみを分け合うだけで、親の気持ちは落ち着いていくでしょう。

話を聴いて見守るだけでは、子どもは「何もしてあげられない」と感じるかもしれませんが、親にとってはそれが何より大きななぐさめになり、闘病を続けるうえでの力にもなるのです。

親が癌になったときに向き合う自分の感情

人生における大切な家族である親が癌になったことを知らされたら、どんな感情が生まれるでしょうか。きっとショックを受けたり、呆然となったり、怒りを感じたりするでしょう。人生は不公平だ、そんな思いも出てくるかもしれません。少なくとも、平静を保つことは難しいでしょう。

親が癌になったときに生まれてくる感情と、その向き合い方のコツを整理してみましょう。

  • 罪悪感
    親が癌になったのに、自分だけが元気なことに罪悪感を覚えることがあります。幸せに暮らしたり、笑ったりするのさえはばかられる、その気持ちはよくわかります。でも、子どもが幸せに暮らすことが親をないがしろにしていることにはなりません。子どもの幸せは親の喜びなのです。
  • 怒り
    親が癌になったことに、やり場のない怒りを覚えることもあるでしょう。医師や看護師のちょっとしたひと言に苛立ったり、運命を呪ったり、そんな自分にも腹が立つ、そういう負のスパイラルに陥ることもあるかもしれません。大切なのは、表に出しにくい感情の代わりとして現れるのが怒りだということです。どうして自分は怒っているのか考え、怒りの感情だけをため込まないようにしたいものです。
  • 恐怖
    親が死んでしまうのではないか、急に具合が悪くなったらどうしていいかわからない、そういう恐怖感は、親が癌になった人であれば誰もが覚える感情です。これは仕方のないことです。当たり前のことですが、恐れていることがすべて現実に起こるとは限りません。実際に起きないこともありますし、時間の経過とともに恐怖心が薄れていくこともあるでしょう。

手助けの機会を失わないために

自分の感情を表に出すことをためらう人は多くいます。親の癌によって生まれた感情であれば、なおさらそうかもしれません。

そういう人は自分の感情を抑え込んで、ひたすら耐え続けます。中には、本当に落ち込んでいるのに明るくふるまう人もいます。ですが、そういう無理は長続きできるものではないでしょう。

実際問題として、自分の気持ちを隠していると周囲の人たちが手を差し伸べようとしなくなるかもしれません。本当なら必要な手助けを受ける機会を失ってしまうことになるのです。

まずは家族や信頼できる友人に、自分の本心を伝えてみましょう。また、同じような境遇の人たちが集まるサポートグループに参加したり、カウンセラーと話してみたりするのもいいと思います。すぐに気持ちを切り替えることは難しいかもしれませんが、自分の感情を出せるということは、精神的な強さにもつながるはずです。

親に気持ちを伝える

親が癌になった子どもは、親に心配をかけないようにきちんとしなければならないと考えるものです。とはいえ、いつも完璧な姿でいられる人はいません。

癌になった親を支える子どもにも息抜きは必要で、喜怒哀楽を遠慮なく表に出すことも大切です。今の気持ちを親に伝えてみましょう。きっと親も、子どもが気持ちを伝えてくれることをうれしく思うでしょう。

癌になった親を取り巻く周りの家族もケアが必要

親が癌になった時、実は周りで支えている家族にも何らかのケアが必要なことがあります。

たとえば父親が癌になってしまったケースだと、次のような状況が考えられます。

母親は必死で看病につき、つらい思いをしながらも子どもたちには心配をかけないよう、明るく前向きに努めています。でも、本当はとても苦しんでいるのを誰にも打ち明けられないまま。

精神的なショックで眠れない夜が続き、精神安定剤や睡眠薬でごまかしながらやりくりする毎日。母親は父親の癌を治したい一心で、すべてを抱え込んで気分転換をする余裕すらありません…。

そんなとき、同じく家族である子どもが声をかけてあげることで、気持ちがふっと軽くなることがあります。

気分転換に友達と会ったり、買い物をしたり。時には自分の時間を大切にすることも必要だと、本人もわかっているはずです。頭ではわかっていてできていないことは、身近な家族が背中を押してあげることがきっかけになります。

また、家族のケアは患者本人のためでもあります。家族が心配するように、患者本人も家族のことをとても心配しているからです。その気持ちに応えるためにも、周りの家族も自分を大切にするべきなのです。

   
免責事項
このサイトでは、がん治療に対応しているクリニックの「医師」を「名医」と定義しています。
あくまでもサイト上の呼称であり、医師の実力を定義づけるものではありません。

「いちから分かる癌転移の治療方法ガイド」は、独自に調べた内容をまとめたサイトです。
治療法など詳しく知りたい場合は直接に各医療機関へお問い合わせ下さい。(2015年11月時点)

無断転用禁止(Unauthorized copying prohibited.)