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上顎洞がんの症状や転移、治療法について

このページでは上顎洞がんの症状や治療方法についてまとめました。

上顎洞がんとは

上顎洞がんは、鼻腔の外側にある副鼻腔のうち、最も大きい空洞である上顎洞に発生した悪性腫瘍のことです。副鼻腔にできるがんの中では一番発症しやすいがんと言われています。他の頭頚部がんと比べてリンパ節への転移が少ないのが特徴です。

近年は、原因である慢性副鼻腔炎を抗生物質で治療できるようになったため、上顎洞がん患者数は減少傾向にあると言われています。

上顎洞がんの症状

上顎洞がんの症状は、左右どちらかの鼻や目に出ます。左右の上顎洞に同時にがんが発症する確率は低いため、基本的には左右どちらかに症状が現れるのです。

また、上顎洞がんはがんの進行方向によって症状が異なります。内側に進行すると現れる症状は、鼻閉・頭痛・出血・膿性鼻漏です。上方に進行すると、眼球突出や複視を発症。下方に進行すると、歯肉や上顎が腫れます。前方に進行すると、顔が腫れて痛みが伴うのです。後方に進行すると目の障害や頭痛、開口障害を引き起こします。

上顎洞がんの治療法

上顎洞がんは、手術と超選択的抗がん剤動注療法+放射線治療、三者併用療法の3つの治療方法があります。

手術では、メスで直接がんがある部分を除去します。がんが小さいうちに除去しないと、日常生活に影響を及ぼしかねません。例えば、歯の方に大きくなったがんを除去すると、歯ぐきや歯も無くなり大きな穴が開いてしまいます。すると、食べ物が飲み込みにくくなり、はっきりとしゃべれなくなることも。そのため、手術するにはがんの状態が小さくなければいけません。

超選択的抗がん剤動注療法+放射線治療では、がんを育てているすべての血管に抗がん剤を注入し、放射線治療を同時に行ないます。この治療法でがん細胞が減っていれば、手術で除去することはありません。

大きくなったがん細胞を除去するために、手術療法に抗がん剤動注療法と放射線療法の良いところを組み合わせた三者併用療法が用いられています。がんにつながる動脈に高濃度の抗がん剤を注入して、放射線療法によってがん細胞を小さくし、手術で除去する方法です。

上顎洞癌のステージ分類

ステージ Tカテゴリー Nカテゴリー Mカテゴリー
0期 Tis N0 M0
Ⅰ期 T1 N0 M0
Ⅱ期 T2 N0 M0
Ⅲ期 T1/2 N1 M0
Ⅲ期 T3 N0/1 M0
ⅣA期 M45.2.3 N2 M0
ⅣA期 T4a N0/1/2 M0
ⅣB期 T4b Nは関係なし M0
ⅣB期 Tは関係なし N3 M0
ⅣC期 Tは関係なし Nは関係なし M1

下記の項目で紹介しているTNM分類を上記の表に当てはめて、ステージ分けをするのが一般的です。

ステージの分類方法

上顎洞がんのステージ分けは、他の部位のがんと同様にTNM分類によって行われます。TNM分類とは、がんの広がり浸潤具合(T)やリンパ節への転移の有無(N)、遠隔転移の有無(M)などから、上の項目の表に当てはめて総合的に判断されるものです。

T、N、Mごとの分類は以下の表のとおりです。

Tカテゴリー 説明
TX 原発腫瘍の評価が不可能
T0 原発腫瘍を認めない
Tis 上皮内がん
T1 上顎洞粘膜に限局する腫瘍、骨吸収または骨破壊を認めない
T2 骨呼吸または骨破壊のある腫瘍、硬口蓋および/または中鼻道に進展する腫瘍を含むが、上顎洞後壁および翼状突起に進展する腫瘍を除く
T3 上顎洞後壁の骨、皮下組織、眼窩底または眼窩内側壁、翼突窩、篩骨洞のいずれかに浸潤する腫瘍
T4a 眼窩内容前部、頬部皮膚、翼状突起、側頭下窩、篩板、蝶形洞、前頭洞のいずれかに浸潤する腫瘍
T4b 眼窩尖端、硬膜、脳、中頭蓋窩、三叉神経第二枝以外の脳神経、上咽頭、斜台のいずれかに浸潤する腫瘍
Nカテゴリー 説明
NX 所属リンパ節転移の評価が不可能
N0 所属リンパ節転移なし
N1 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3cm以下
N2a 同側の単発性リンパ節転移で最大径が3cmをこえるが6cm以下
N2b 同側の単発性リンパ節転移で最大径が6cm以下
N2c 両側あるいは対側のリンパ節転移で最大径が6cm以下
N3 最大径が6cmをこえるリンパ節転移
Mカテゴリー 説明
M0 遠隔転移なし
M1 遠隔転移あり

ステージで異なる治療方針

治療は基本的に手術や放射線によってがんがある箇所へ直接、アプローチする治療と、投薬による全身治療を組み合わせて行うのが一般的。ただし、進行したがんや、他の臓器に転移している場合は、薬物療法も並行して行います。また病期だけでなく、患者の全身状態や治療後の生活のことも考慮して治療計画を立てていかなければなりません。

基本的に切除するのが可能であれば手術が検討されますが、上顎洞がんを含む頭頸部がんの場合は、病巣の近くに眼球等の重要な臓器や組織があるほか、顔の形態にも影響するため、広範囲の切除は慎重に、かつ治癒率を下げないように計画を検討します。

このようなケースを考慮し、上顎洞がんで行われるのが三者併用療法。手術、放射線、薬物それぞれの治療法を組み合わせた治療が広く行われています。