お腹のなかにある副腎はホルモンを生産する臓器。副腎皮質と副腎髄質(ふくじんずいしつ)に分けることができ、副腎がんは副腎皮質から発生する珍しいがんです。このがんは、10歳未満の小児および30~50歳代の成人に発生しやすく、特に小児では遺伝性疾患との関連が指摘されています。このページでは、副腎がんの症状や治療方法、痛み、転移しやすい部位について解説しています。
副腎がんを発症すると腹痛や背部の痛み、腹部に体外から触ってわかるしこりができます。痛みのほかに筋力の低下や筋肉の痙攣が起こることも。副腎はホルモンの分泌を司る臓器であるため、がんができるとバランスが崩れて生殖器官や乳房の腫れ、月経周期の乱れ、閉経期を迎えた女性の膣から出血などが見られます。
男性の場合は、性欲の減退や勃起不全などが起こる人も。ほかにも、顔面・頚部・体幹の肉付きが良くなる、顔が張って丸くなり赤みをおびる、性別に関係なく声が低くなるなどの症状が現れます。これらの症状は副腎がんでも起こりますが、ほかの病気が原因で起こる場合もあるので、病院できちんと検査して判断してもらうことが大切です。
副腎がんを含むがんの治療には、手術が第一選択ですが、進行例や高リスク例ではミトタン単独療法に加え、エトポシド・ドキソルビシン・シスプラチン(EDP療法)を併用した化学療法が行われる場合もあります。副腎がんの進行状況によっては、腎臓やその他臓器を一緒に切除する場合も。
取り除くことができれば、再発する可能性が低い副腎がんに対する治療の基本姿勢は「手術が可能であれば行なうべき」となっていますが、転移や健康状態によって手術が不可能な場合、ミトタンと呼ばれる薬を使った薬物療法がおこなわれます。ミトタンはホルモンの分泌を抑制する作用があり、ホルモンバランスを調整。しかし、副作用が強くておう吐や吐き気、眠気、めまいが生じやすいのが難点です。
副腎がんは初期の段階だと特徴的な症状がありません。進行してくるとお腹の痛み、便秘や吐き気などの症状が出てきます。早期発見が難しく、発見された段階で腫瘍が5cm以上の大きさになっている場合も。
副腎はホルモンの分泌に関わる臓器のために、がんによってホルモンバランスが崩れ高血圧・糖尿病を招き、それらの検査の際に偶然発見されることも多いのです。また、健康診断や何かの病気で精密検査を行なった際に、超音波・CT検査で偶然発見されることも少なくありません。
副腎がんは進行が早く、比較的転移しやすいのが特徴。腎臓や脾臓、肝臓などの副腎に近い臓器やリンパに転移しやすいです。その他、肺や骨へも転移しやすいと言われています。
副腎がんは見つけにくいがんのため、発見された頃にはステージ2以上になっている場合が多く早急な手術が必要となります。
また再発の可能性も高いため、定期的な検査を受けることが大切です。副腎がんの5年生存率は、ステージⅢになってくるとさらに下がってくると言われています。気になる症状があれば、すぐに医師へ相談して早期の治療を行なうことが大切です。
2019年に「日本呼吸器外科学会雑誌(第33巻第7号)」へ掲載された症例報告において、肺転移を伴う副腎癌の患者に対する手術治療の結果と、それにより長期生存を叶えた事例が公表されました。
症例報告では、副腎皮質癌から肺転移(両側多発肺転移)を生じた60歳代の女性患者に関して、まず左副腎腫瘍摘出術を実施し、さらに多発肺結節に対する両側肺部分切除術が実施されました。その後、術後化学療法として「ミトタン」投与による治療が行われたものの、やがて両側肺に再び結節が認められたため、結果的に5回の肺部分切除術が行われたそうです。なお肺結節はすべて副腎皮質癌からの転移と診断されました。
手術の結果により、同症例報告が公表された時点で副腎皮質癌切除術から5年10ヶ月が経過していたものの、患者は生存中であることが発表されています。
この症例報告から、原発巣の切除と肺転移巣の積極的切除によって、長期生存へつなげられる可能性が示唆されました。
参照元:「複数回手術を施行し長期生存が得られた副腎皮質癌の両側多発肺転移の 1 例」日本呼吸器外科学会雑誌第33巻第7号【PDF】2016年に東京慈恵会医科大学附属病院泌尿器科の坂東医師らの研究チームが発表した症例報告として、副腎皮質癌の術後局所再発に対する集学的治療の結果が示されています。
そもそも原発性副腎皮質癌は100万人中0.5~2人の発症率という希少がんであり、年齢や性別にかかわらず発症リスクがあります。加えて極めて予後が不良な癌でもあり、根治療法としては外科的治療が唯一とされていることもポイントでした。
そのような中、研究チームは2009年、副腎皮質癌の患者に対して経腹式左副腎摘出術を行い、その術後1年目の腹部CTにおいて副腎皮質癌の再発を確認しました。そこで2010年3月から「ミトタン3g/日」の投与による術前補助療法を開始し、同年6月に左腎臓や膵臓などの切除術を実施しました。そして術後3年間、ミトタンとEDP療法による術後補助療法を継続し、論文が執筆された術後5年まで再発の徴候がなく良好な状態を維持していたと報告されています。
結論として、副腎皮質癌は予後不良な疾患であるものの、術前後の補助療法など集学的治療を実施することで有益な結果を導ける可能性が示唆されました。
参照元:「集学的治療が奏効した副腎皮質癌の1例」泌尿紀要 62 : 15-19,2016年【PDF】2022年のテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究ハイライトとして、「欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2022年大会」においてMDアンダーソン研究者が行った研究発表がまとめられ、その中で副腎がん患者を対象とした標的治療薬「カボザンチニブ」の第2相試験の結果が紹介されました。
副腎皮質がん(ACC)は副腎外層へ腫瘍が発生する希少がんであり、治療選択肢が限定的であることが課題です。そこでMatthew Campbell医師とMouhammed Habra医師による研究チームは、進行副腎皮質がんの患者18人を対象とした第2相試験を行い、チロシンキナーゼ阻害剤「カボザンチニブ」の有効性と安全性について検証しました。
結果として、4ヶ月時点の無増悪生存率(PFS)では72%という数値を得て、主要評価項目の達成が認められました。さらに無増悪生存期間中央値は7.2ヶ月、全生存期間中央値は23.9ヶ月となっています。
上記の結果から、副腎皮質がん患者の持続的病勢コントロールや治療を目的として、カボザンチニブの使用は有益である可能性が示唆されています。
参照元:海外がん医療情報リファレンス|欧州臨床腫瘍学会(ESMO2022)で発表されたMDA研究:皮膚がん、大腸がん、副腎がん、肉腫アメリカのテキサス大学MDアンダーソンがんセンターが発行した「MDアンダーソン OncoLog 2016年1月号(Volume 61 / Number1)」において、高確率で癌の発症へつながる遺伝性疾患「リ・フラウメニ症候群」に関する研究報告が公表されました。
リ・フラウメニ症候群はTP53遺伝子の生殖細胞系列の変異に起因する遺伝性疾患であり、これは癌細胞の増殖を招くリスクファクターとして考えられています。実際、リ・フラウメニ症候群の患者は高確率で癌を発症し、再発や転移率が高いことも問題です。また同症候群が発症する癌として代表的なものに副腎がんが含まれている点も重要です。
リ・フラウメニ症候群の原因とされるTP53遺伝子変異は血液検査によってスクリーニングすることが可能とされており、もしリ・フラウメニ症候群や該当の遺伝子変異が発見された人やその類縁者は、合わせて癌検診による検査を受けるべきと推奨されました。
なお、あわせて重要なテーマとして、単にリ・フラウメニ症候群の検査や癌検診を実施するだけでなく、同疾患や症候群への対処法もきちんと提示して、患者や家族のネガティブな感情をコントロールすることも重要であるとまとめられています。
参照元:海外がん医療情報リファレンス|リ・フラウメニ症候群