ソラマメのような形をした腎臓は、腹部の左右に1つずつあり、血液をろ過して尿を作りだす器官です。腎臓にできる腎臓がんは発見されにくいがんで、およそ2:1の割合で男性に多いといった統計があります。腎臓がんの症状や治療法、痛み、転移しやすい部位についてまとめてみました。
腎臓がんは発見されにくいがんで、小さいうちは特徴的な症状がありません。腎臓自体が厚い脂肪で包まれているため、筋肉やほかの臓器に影響が出にくいため症状が出にくいといえます。
腫瘍が大きくなるとともに、痛みがでてきてお腹や背中の痛み、血尿、貧血などの症状がでてくるのが特徴です。腎臓がんが見つかる場合は、ほかの病気で検診を受けた際に偶然発見されることがほとんど。
腎臓がんを発症した人の割合は10万人に約16人(※)で、男性が多い傾向に。50~70歳の人に多く、腎臓がんの確率は高齢になるほど高まります。
発症の要因として肥満や喫煙があり、タバコを吸っていない人に比べて吸っている人は約2倍も腎臓がんのリスクが高まると言われています。
腎臓がんの治療では、がんが発症している部位のみを切除して、ほかの部位は温存する腎機能温存手術が行われます。主に腫瘍が4cm以下の小さいがんの場合だと治療を受けることが可能ですが、がんの位置や大きさによっては選択できない可能性も。
腎機能温存手術が難しい場合は、腎摘除術が行なわれます。腎臓をすべて取り除く治療法で、がんが腎臓の周囲の臓器や血管内に広がっている場合は、一緒に切除する場合もあります。
腎臓は2つあるので、片方にがんが見つかって切除したとしても、片方の腎臓で機能を補うことが可能です。がんの転移や再発を予防するため、手術後に分子標的薬や免疫療法が行われます。
2019年頃からは、免疫チェックポイント阻害薬同士の併用療法(ニボルマブ+イピリムマブなど)が標準治療に組み込まれています。
早期の腎臓がんだと症状はほとんど感じられません。進行するにつれて、血尿やお腹のしこり、疼痛が起こります。ほかにも、足のむくみや味覚異常、疲労感、吐き気、便秘、などの不快な症状が見られることも。
また腎臓がんは細胞同士がやりとりする伝達物資サイトカインを多く生産する特徴があります。そのため、がんが進むと風邪を引いたような体の倦怠感が続くことがあるのです。
気になる症状がある場合は、すぐにかかりつけ医や専門医療機関に相談に行きましょう。
腎臓がんは肺に転移しやすく、咳や血痰、胸水が溜まることによる呼吸困難などを発症する場合があります。ほかにも骨転移による、病的骨折や骨の痛み、脳転移による頭痛、痙攣、中枢神経症状などを発症することも。
転移したがんに対して使われる治療薬には、分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬があります。分子標的薬はがん細胞しかもっていない細胞表面マーカーに反応してがん細胞を攻撃して小さくする薬。
免疫チェックポイント阻害薬は、免疫機能を増強してがん細胞を攻撃して小さくする治療薬です。
2025年5月、アメリカのオハイオ州立大学総合がんセンターのアーサー・G・ジェームズがん病院およびリチャード・J・ソロブ研究所(OSUCCC–James)の医師らによる研究グループが、がん性腎腫瘍に対する新しい非侵襲的治療としてヒストトリプシー(組織破壊)治療の3例目の成功に至ったことを発表しました。
ヒストトリプシー治療は2024年10月からOSUCCC–Jamesにおいて実施されており、2025年の4月に2例目、5月に3例目の患者に対して治療が行われています。
集束超音波エネルギーを用いた腫瘍細胞への直接的な影響に加えて、バブルクラウドを形成して腫瘍細胞を破壊するヒストトリプシー治療は、患者への負担やリスク、安全性などについての研究が続けられています。発表当時においてヒストトリプシー治療は、肝臓腫瘍のみがFDAの承認を受けていました。
参照元:海外がん医療情報リファレンス|腎臓がん腫瘍に新たなヒストトリプシー(集束超音波)治療
2025年2月、スローンケタリング記念がんセンターで行われた膵臓がん臨床試験の結果と、ダナファーバーがん研究所で実施された腎臓がん臨床試験の結果のデータが、それぞれ2月19日付のNature誌と2月5日付の同誌において発表されました。
小規模臨床試験では、膵臓がんと腎臓がんの手術中に採取した腫瘍サンプルを遺伝子的に解析して、各患者の特性に合わせた治療薬を特別に開発しています。研究チームは遺伝子解析の結果から患者の癌細胞に存在していた変異タンパク質「ネオアンチゲン」を同定しており、異常タンパク質が癌に関連して免疫系に影響を及ぼすことも認められました。
腎臓がん臨床研究において、研究チームは最大20種類のネオアンチゲンを特定しており、それらの小さなペプチドを化学合成して患者の治療薬に活用しています。
参照元:海外がん医療情報リファレンス|腎臓/膵臓がんに対する新たな免疫ベース治療法、実現の兆し?
転座腎細胞がんは、腎臓がんの中でも特に希少性の高い癌とされており、進行性が高いことでも知られています。そこで2025年3月、アメリカのダナファーバーがん研究所と、マサチューセッツ工科大学(MIT)/ハーバード大学の共同研究施設としてブロード研究所が、共同で転座腎細胞がんにアプローチする新たな患者協働型研究プロジェクトをスタートさせることを発表しました。
転座腎細胞がんは、染色体の一部において遺伝子の並び方が変わったり配置が入れ替わったりしている、特定の遺伝的変化を原因とする腎臓がんの一種であり、希少がんであるものの、発症率としては子供から若年層に多く発症することでも知られています。一方、症例数の少なさから治療研究があまり進んでおらず、未解決な課題が残されていることも事実です。
本プロジェクトでは転座腎細胞がんに関する様々な情報を総合的に収集・検証することで、新たな治療法や患者のケアに有益な洞察を促す目的で行われます。
参照元:海外がん医療情報リファレンス|転座腎細胞がんの新たな患者協働プロジェクトが始動
2025年2月28日付の「Cell誌」において、アメリカのダナファーバーがん研究所のDerin B. Keskin博士とCatherine J. Wu医師、そしてWilliam G. Kaelin Jr.医師による研究として、ヒトゲノムの中に潜伏しているウイルス遺伝子が、腎臓がんの活性や免疫反応に関与しているという可能性について発表しました。
同研究では、ヒトゲノムの中に通常は休眠状態のウイルス遺伝子があり、それらが腎臓がんの代表例である淡明型腎細胞がんにおいては活性化して、癌に対する免疫反応を誘引することを指摘しています。
腎臓がんは他の癌腫と異なり、免疫系によって根絶されるケースがあるとされていますが、明確な証拠や過程については明らかにされていません。しかし、本研究から、淡明型腎細胞がんの特徴としても知られるがん抑制遺伝子VHLの変異・不活化によって、ウイルス遺伝子が活性化してウイルスタンパク質を産生することが示されました。加えて、癌細胞がこれらの内在性レトロウイルスタンパク質を細胞の表面に現出させることも発見しており、この仕組みを活用して免疫療法薬の開発や研究に新たな可能性が生まれたと示唆されています。
参照元:海外がん医療情報リファレンス|ヒトゲノムに潜伏するウイルスが腎臓がん免疫療法薬の新たな方向性を示唆
2024年4月26日付の「Nature Genetics誌」において、アメリカの国立がん研究所のMark P. Purdue博士を代表とする国際研究チームが、腎臓がんの発症リスクに関連している新たなゲノム領域として、50のゲノム領域の特定に成功したことを発表しました。
前提として、ヨーロッパ人の子孫である人々を対象としたゲノムワイド関連解析(GWAS)により、腎臓がんリスク関連ゲノムとして13の領域が同定されていました。しかし、対象が限定的であったため、国際研究チームはより多様な遺伝的先祖を有する参加者を対象としたGWASを実施し、結果として29,020人の腎臓がん患者と、835,670人の腎臓がんでない人が研究に参加しています。
遺伝子解析の結果、腎臓細胞がんとして2番目の頻度となる乳頭状腎細胞がんの発症リスクに関連した遺伝子変異が新たに同定された他、VHL遺伝子変異は特にアフリカ系の人々に顕著であり、腎臓がんとして代表的な淡明型腎細胞がんの発症リスクに関与していることも発見されました。
参照元:海外がん医療情報リファレンス|腎臓がんリスクに関連する50のゲノム領域を新たに同定
2024年4月17日付の「New England Journal of Medicine誌」において、免疫療法薬ペムブロリズマブ(キイトルーダ)が、腎臓がんの中で発症例の多い淡明細胞型腎細胞がんの患者に対して、有効な治療法となり得る研究結果が発表されました。
臨床研究の対象となった患者は、全員が早期腎臓がんであると同時に、手術で腫瘍を取り除けるものの再発リスクが高いと懸念される人々でした。研究チームは、手術後の患者へ術後補助療法としてペムブロリズマブを最長1年投与する群と、プラセボ群を設け、両者の定期的なモニタリングを行いました。
結果として、ペムブロリズマブ投与群では術後補助療法開始から4年時点で約91%が生存している一方、プラセボ群では生存率が86%となっており、全体的に見ればペムブロリズマブ投与群は期間中の死亡リスクが約40%も低かったというデータが得られています。
これにより、腎臓がんの術後補助療法としてペムブロリズマブの有用性が示唆されました。