手術後の再発予防や、転移した病変に対する症状改善を目的として行います。
肺がんは「小細胞肺がん」と「非小細胞肺がん」の2つに分類され、組織型によって治療方針が異なります。いずれの型であっても、病期や身体状況に応じて放射線治療が重要な選択肢となる場合があります。
放射線治療には、根治を目的として行うものと、症状を緩和する目的で行うものがあります。
まず根治を目的とするケースを、小細胞肺がんと非小細胞肺がん、それぞれについて見ていきましょう。
局所型の小細胞肺がんの場合、抗がん剤と放射線治療を併用する化学放射線療法(CCRT)が標準的な治療法です。照射範囲が限定的であれば、治療はおよそ3週間で終了します。腫瘍が大きい、または照射範囲が広範囲に及ぶ場合は、まず抗がん剤で腫瘍を縮小させた後、放射線治療を実施します。腫瘍が消失または著明に縮小した場合には、脳への転移を予防するために予防的全脳照射(PCI)が推奨されます。
一方、非小細胞肺がんの場合は、早期がんと局所進行がんで治療方針が異なります。腫瘍が肺内に限局し、リンパ節や他臓器への転移が認められない早期がんでは、体幹部定位放射線治療(SBRT)が有効です。この方法は、高精度で放射線を集中させることで腫瘍制御率を高め、周囲組織への影響を最小限に抑えます。治療回数は通常4〜8回と比較的少なくて済みます。ただし、ピンポイント照射を行うため、毎回治療前に病巣の位置確認が必要です。
局所進行肺がんでは、腫瘍が肺内から周囲組織、胸部リンパ節の範囲にとどまっていることが条件です。加えて、肺や心疾患などの合併症リスクが低く、年齢や全身状態のために手術適応外である場合に治療対象となります。
臨床病期II〜III期の非小細胞肺がんに対しては、抗がん剤との併用による同時化学放射線療法が推奨されます。2020年以降、この治療により奏効が得られた患者には、免疫チェックポイント阻害薬であるデュルバルマブを用いた維持療法が標準治療とされています(PACIFIC試験に基づく)。高齢者や併存疾患のため抗がん剤の併用が困難な場合には、放射線治療単独での治療が行われることもあります。標準的な放射線治療は、週5日、約6週間にわたって実施されます。正常組織への影響を抑えるため、三次元原体照射法(3D-CRT)など、照射範囲や線量を調整する技術が用いられます。
放射線治療を受けても、多くの患者は日常生活を維持できますが、軽度な副作用が生じることがあります。代表的なものに、急性期障害と晩期障害があります。
急性期障害は治療中または治療直後に発症するもので、皮膚炎などが含まれます。これは多くの患者に認められますが、適切な処置を行えば多くは1ヶ月以内に改善します。症状が改善しない場合や不安がある際は、主治医または看護師に相談してください。
晩期障害は、治療終了後数ヶ月から数年経過してから現れることがあり、皮膚の色素沈着、硬化、発汗の減少などがみられます。これらも、医師の指導のもと適切な対処を行えば、回復が期待できます。
2009年度診療報酬改定により、トモセラピーの保険適用は前立腺がん・頭頸部腫瘍・中枢神経腫瘍(原発性)に加え、肺がん、食道がん、膵がん、直腸がん、子宮がん、膀胱がん、単発性骨転移など多くのがんに拡大されました。そのため、肺がんの治療にトモセラピーを選択する患者も増加しています。
トモセラピーは、強度変調放射線治療(IMRT)を行うための装置で、内蔵CTにより腫瘍の位置を把握し、がんの形状に応じたピンポイント照射が可能です。これにより周囲の正常組織への影響を抑え、腫瘍に対して高線量の放射線を照射できます。多くのがん種において高い治療効果が期待されています。
サイバーナイフは、フレームによる頭部固定が不要で、低侵襲かつ分割照射が可能な装置です。肺がんに対しても、特に体幹部定位放射線治療の一種として適用が可能です。
サイバーナイフは、ロボット誘導型定位放射線治療装置であり、ロボット工学、画像処理技術、小型リニアックを統合したシステムとして1994年にアメリカのアキュレイ社が開発、スタンフォード大学で治療が開始されました。日本では1997年に第1号機が導入されています。
ガンマナイフは、原則として脳などの頭頸部領域に限定された治療装置であり、肺がんそのものの治療には通常用いられません。ただし、肺がんからの脳転移がある場合には、治療選択肢となることがあります。
ガンマナイフは、開頭せずに脳の深部にある病変を除去するための装置で、200方向から微弱な放射線を集中的に照射することにより、病変部に高い線量を集約します。正常な脳組織への影響を最小限に抑える仕組みです。
トゥルービーム(TrueBeam)は、定位放射線治療(SRT)や強度変調放射線治療(IMRT)を高精度かつ短時間で行えるX線照射装置です。呼吸によって動く臓器をリアルタイムで追尾する機能を備えており、肺がんのような動きのある腫瘍に対して有効です。
従来は肺を固定するために患者に息止めを求める必要がありましたが、トゥルービームではそれが不要となりました。さらに、高線量率での照射により治療時間が短縮され、画像誘導下照射(IGRT)により照射精度も高く保つことができます。