癌の治療法である、免疫療法のメリットとデメリットをまとめてみました。
手術・放射線治療・抗がん剤治療に次ぐ第4の治療法として注目される、免疫療法。免疫治療は体内の免疫機構を活性化させてがん細胞に働きかける治療法で、従来の治療法とは異なる特徴があります。2025年現在、有望な治療法として注目されている一方で、効果や適応に課題も残されています。
がんの治療法を選ぶためには、それぞれのメリットとデメリットを理解する必要があります。ここでは、免疫療法の長所と短所をそれぞれ解説していきます。
がん細胞を標的にする働き
免疫療法は、免疫細胞を活性化させてがん細胞に働きかける治療です。
正常な細胞を攻撃しにくい特性を持ちますが、免疫チェックポイント阻害薬では自己免疫疾患様の副作用(肺炎、腸炎など)が起こることもあります。
一部の進行がん・転移がんにも有効
手術不可能な進行がんや転移がんでは、免疫チェックポイント阻害薬(例:ニボルマブ、ペムブロリズマブなど)が治療選択肢となる場合があります。2024年時点で、非小細胞肺がん、腎細胞がん、メラノーマ、ホジキンリンパ腫などが適応対象です。
体力の低下が著しい患者でも副作用が比較的軽い薬剤を選ぶことで治療が可能な場合もあります。
新しい治療選択肢としての可能性
早期がんに対しては外科手術が主な治療となりますが、今後の研究によっては免疫療法が早期段階でも補助療法として活用される可能性があります。
免疫療法は2025年現在も発展途上の分野であり、治癒目的の標準治療として確立されているがん種は限られていますが、一部のがんでは延命や症状緩和を目的として用いられています。
かつてはサイトカイン療法(インターフェロン、インターロイキン-2)が主流でしたが、これらは奏効率が低く、副作用も強いため、現在ではあまり使用されていません。
2023年の日本腎癌学会『腎細胞癌診療ガイドライン』では、免疫チェックポイント阻害薬が進行性・転移性腎細胞がんの第一選択治療として推奨されています。
主な治療レジメンは以下の通りです:
これらの併用療法により、過去には得られなかった長期生存や完全奏効(CR)も報告されています。特にNivo+Ipi併用は、CheckMate-214試験の長期フォローアップ(60か月時点)においても有効性が持続しており、5年生存率が50%前後に達する症例もあります。
ただし、免疫チェックポイント阻害薬には、免疫関連有害事象(irAE)として自己免疫性の副作用(例:腸炎、間質性肺炎、甲状腺炎など)が現れる可能性があり、早期発見と対応が極めて重要です。
引用元:『腎細胞癌診療ガイドライン2023年版』日本腎癌学会、CheckMate-214試験結果(2023年更新)
悪性黒色腫には、免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体や抗CTLA-4抗体)が標準治療として使用されています。これらは、がん細胞によって抑制されていた免疫反応を回復させ、がん細胞の排除を促進します。
参考:国立がん研究センターがん情報サービス「悪性黒色腫(皮膚)」治療情報(2024年確認)
https://ganjoho.jp/public/cancer/melanoma/treatment.html
膀胱がんに対しては、BCG(結核菌製剤)を用いた膀胱内注入療法が、非筋層浸潤性膀胱がんの標準治療として2024年現在も推奨されています。その他、ペムブロリズマブなどの免疫チェックポイント阻害薬も筋層浸潤性膀胱がんや転移性膀胱がんで使用されます。
参考:国立がん研究センターがん情報サービス「膀胱がん」治療情報(2024年確認)
https://ganjoho.jp/public/cancer/bladder/treatment.html
免疫療法は現在も研究が進んでおり、頭頸部がん、胃がん、肝がん、食道がんなどにも免疫チェックポイント阻害薬が適応拡大されています。
2024年時点では、がん種によっては臨床試験段階にとどまるものも多いため、主治医とよく相談して適応や副作用について把握することが重要です。
科学的根拠の確立が限定的
免疫療法全体としての治療成績はがん種によって大きく異なります。2025年現在も、効果を示す十分な臨床データが得られていないがん種もあり、すべての患者に有効というわけではありません。
一部の治療は保険適用されていますが、未承認の治療法については慎重な判断が必要です。
他の治療法との併用の難しさ
抗がん剤(化学療法)は免疫を抑える作用がある一方、免疫療法は免疫を活性化させるため、両者の作用が相反することがあります。2025年現在では併用療法の設計が進んでおり、非小細胞肺がんや胃がんなどでの併用も一般的になっていますが、依然として副作用管理が課題です。