いちから分かる癌転移の治療方法ガイド

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免疫治療のメリット・デメリット

癌の治療法である、免疫療法のメリットとデメリットをまとめてみました。

免疫治療のメリット・デメリットとは?

手術・放射線治療・抗がん剤治療に次ぐ第4の治療法として注目される、免疫療法。免疫治療によって体内の免疫力を高め、癌細胞に働きかけるというもの。ほかの治療法では得られないメリットが多く、優れた治療法と注目される一方で、まだ克服できないデメリットもあります。

癌の治療法を選ぶためには、それぞれのメリットとデメリットを理解する必要があります。ここでは、免疫療法のメリットとデメリットをそれぞれ解説していきたいと思います。

免疫療法のメリット

癌細胞のみに働きかけることができる

免疫療法は、免疫細胞を活性化させることで、がん細胞に働きかけるものです。

体内にある免疫細胞に働きかけるため、健康な細胞に影響がないのが特徴です。

進行がん、転移がんにも効果がある

かなり癌が進行したり、からだ中に転移をしている場合は、手術をすることができません。また、抗がん剤や放射線をもっても治療が難しいとされる場合は、これまでならお手上げとなっていました。

しかし、進行がんや転移がんであっても免疫療法は利用することができます。体力が衰えてほかの治療に耐えることができない方でも利用できるのは大きなメリットです。

早期がんなら寛解の可能性も

早期の小さな癌であれば、免疫療法だけでも寛解する可能性があります。まだ治療例が少なく、その実績もたしかなことは言えませんが、今後さらに普及が進めば早期発見の癌は免疫療法が適用されることもあるかもしれません。

もちろん早期でない癌でも、免疫治療によって寛解する可能性があります。

免疫療法がよく用いられる癌とその理由

進行性の癌や転移癌にも有効な免疫療法は、癌の治癒目的以外にも、延命治療や症状の緩和などを目的に選択されるケースがあります。まだまだ研究段階にある治療法のため、治癒効果がはっきりと認められた治療方法は多くありません。

免疫療法を採用することのあるがんと、方法、使用する薬の種類などには次のようなものがあります。

腎がん

腎がんは、免疫療法の中でも「サイトカイン療法」と言って、細胞の免疫や炎症に関係するたんぱく質(サイトカイン)に働きかける療法を長らく用いています。

細胞の免疫や炎症に関係するたんぱく質(サイトカイン)には、インターフェロンとインターキロンと呼ばれるものをはじめとし、体内には100種類以上あります。

腎がんでは、インターフェロン製剤やインターロイキン-2と呼ばれる薬を免疫療法の治療に使います。

転移を有する進行性腎癌に対する治療として,外科的切除以外にインターフェロンα(以 下IFN-α)や インターロイキン2(以下IL-2)による免疫療法が一般的に選択される. しかし免疫療法単独でcompleteresponse (CR)を得ることは極めて稀であり, 5年生存率 は10~16%と不良である

引用元:『サイトカインの変更により異なる反応を呈した進行性腎癌の1例』日本泌尿器科学会雑誌,97 (3),2006
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpnjurol1989/97/3/97_3_598/_pdf/-char/ja

腎がんに対する免疫療法(サイトカイン療法)については、2017年2月時点で国内の診療ガイドラインにも記載され、インターフェロン製剤やインターロイキン-2は承認薬となっています。

参考:がん研究センター情報サービスHP「腎細胞がん 治療」(2019年9月4日確認)
https://ganjoho.jp/public/cancer/renal_cell/treatment.html

悪性黒色腫

皮膚細胞の中でも、メラニン色素を作り出す皮膚細胞やほくろ細胞などが悪性化した悪性黒色腫に対して、免疫療法(サイトカイン療法)や、免疫チェックポイント阻害剤を用いた免疫療法が用いられます。

前者のサイトカイン療法は、体内の免疫機能を強めてがん細胞に対抗する治療法。後者の免疫チェックポイント阻害材を使った免疫抑制阻害療法は、がん細胞が細胞にかけてしまった免疫細胞のブロックを解除させ、免疫細胞が再び癌に対抗できるようにする療法です。

参考:がん研究センター情報サービスHP「悪性黒色腫(皮膚) 治療」(2019年9月4日確認)
https://ganjoho.jp/public/cancer/melanoma/treatment.html

膀胱がん

免疫療法の中でも、体全体の免疫細胞の働きに作用するBRM療法(免疫賦活剤)を用いた治療は、膀胱がんの治療として、診療ガイドラインにも記載されています。ただし、BRM療法は膀胱癌の標準治療となっているものの、他の癌に対してはまだまだ検証が必要で、科学的に他の癌の治療に有効とされている例は今のところありません。

例えば、結核菌製剤BCGを用いた膀胱がんの免疫療法は、膀胱がんの中でもハイリスク筋層非浸潤性膀胱がん、上皮内がんの治療に用いられます。

他にも膀胱がんに対する免疫療法は、ペプチドワクチンや抗体によるものがありますが、まだまだ開発・有効性の照明段階にあります。臨床試験として、こうした免疫療法を受けられる場合もありますので、詳しく知りたい方は、担当医に相談してみるといいでしょう。

参考:がん研究センター情報サービスHP「膀胱がん 治療」(2019年9月4日確認)
https://ganjoho.jp/public/cancer/bladder/treatment.html

その他の癌

免疫療法は、腎がんや膀胱癌、悪性黒色腫以外の癌に対しても、がん治療の主要な柱となりうるのではないかと期待され、研究が進んでいます。

例えば、頭頸部がんの治療に、免疫チェックポイントを標的とした免疫療法が有効ではないかと治療開発が進んでいます。

免疫チェックポイントである PD―1(Programmed cell death―1)、CTLA―4(Cytotoxic T lymphocyte―associated antigenを標的とした免疫療法が全癌腫において注目されている。これら免疫チェックポイントを標的とする免疫療法の誕生にて、頭頸部癌における治療戦略にも大きく影響を与えている。局所進行癌に対する治療開発も開始されており、がん免疫療法は手術、放射線治療、化学療法に並ぶ、がん治療の第4の柱として期待されている。免疫機構は、病原体などから生体を守る一方で、自己抗原に対する応答は起こらないように、生体防御と免疫寛容のバランスを保っている。T細胞上に発現する共刺激分子(アクセル)と共抑制分子(ブレーキ)は、免疫応答のバランス制御に重要な役割を果たしている。従来のがん免疫療法が、ブレーキがかかった状態でアクセルを踏むことばかりを考えていたのに対して、PD―1、CTLA―4 を標的とした免疫療法はブレーキを解除することでアクセルが入るように発想の転換をしたことがブレークスルーをもたらした。

出典:【PDF】『頭頸部癌に対する免疫チェックポイント阻害薬の可能性と現状』日本耳鼻咽喉科学会会報,120(4),2017
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/120/4/120_510/_pdf/-char/ja

このように、がん治療の中でも免疫療法を取り巻く環境は日々変化しています。 現在は有効性が認められていない部位の癌でも、将来免疫療法が有効と証明される可能性も大いにありますので、ぜひ、動向を注目してみましょう。

免疫療法のデメリット

治療データの蓄積がない

最大のデメリットは、いまだ治療効果があるという根拠に乏しいところです。理論的には有効であっても、それを裏付け、証明するだけの治療実績は十分ではありません。絶対に効く!と断定することはできないのが難しいところです。

先進医療として認定されてはいますが、まだ評価が定まっていない点は否定できません。

抗がん剤の効果を下げてしまう可能性がある

抗がん剤は免疫力を下げる作用がある一方、免疫療法は免疫力を上げるので、効果を打ち消し合う可能性があります。

これは、それぞれを上手に使えば回避できる問題であることもわかっていますが、まだその方法は確立されていません。