癌の効果的な治療方法のひとつである「手術」。癌の部位別に、手術の方法をご紹介します。
癌の治療は、手術、抗がん剤などの化学療法、そして放射線療法という3つの方法を組み合わせた「集学的治療」が基本となっています。ここではそのひとつであり、癌治療の基本とも言える「手術」を取り上げています。
癌の手術とひとくちに言っても、その方法は癌の発生する部位によって異なります。そこで、このページでは部位ごとにどのような手術が行われるのか解説していきたいと思います。
肺癌が手術の対象とされるのは、ステージがI期からII期のもの、そしてIIIA期のごく一部となります。I期やII期は早期癌とされますが、II期までで発見をされるのは全体の3分の1と言われています。
肺癌手術の中心は、2020年代以降では胸腔鏡下手術(VATS)が主流です。特殊な内視鏡を使い、胸にあけた小さな穴から器具を挿入して手術をします。これが可能なのは、肺の一部を切除する肺葉切除や楔状切除、区域切除と呼ばれるものです。片肺を全摘出するような手術や、胸腔内の癒着が激しい場合は、開胸手術が行われます。また、ロボット支援手術(RATS)も広がりつつあります。
肝臓癌の手術が行われるのは、肝機能が良好で、腫瘍が3個以内の場合とされています。肝機能が低下している場合は切除手術は行われません。
肝臓の手術は、肝臓を8つのブロックに分け、原発巣や転移巣のあるブロックを切除するのが一般的です。ブロックをまたいでいる場合は、肝機能の低下によるリスクが小さい場合のみ、複数ブロックの切除を行います。切除できるブロックの範囲は、肝機能の状態や患者の健康状態によって異なります。
肝臓は再生能力があるので、切除してももとに戻ります。ただし、手術が受けられるのは初回治療時で全体の3割、再発の場合は1.5割だけと言われています。2020年代に入ってからは、再発例に対してラジオ波焼灼術(RFA)やマイクロ波凝固療法(MWA)などの局所療法も選択肢となっています。
乳癌の手術については、2020年以降、できるだけ切除範囲を小さくする傾向にあります。乳房の温存を目指すのはもちろん、手術だけでは根治が難しいこともあり、抗がん剤や放射線療法と組み合わせて小さい範囲での手術を目指すのが一般的です。
乳房を切断した場合と、放射線照射を組み合わせた乳房温存治療では長期生存率に差がないというエビデンスも得られています。乳癌は微小転移がすでに起きている可能性があるため、乳房を大きく切除しても生存率には有意な差がないと考えられます。そのため、患者に適した最小限の切除手術が行われます。
胃癌は、転移がない範囲であれば、どのステージでも切除手術の対象となります。2020年代現在、腹腔鏡手術やロボット支援手術の導入により、身体的負担が小さい手術が可能となっています。
もっとも一般的な手術は、胃の広い範囲と、胃の周りのリンパ節、胃に流れ込む血管に沿ったリンパ節を切除する定型的幽門側胃切除術で、胃の大きさが3分の1~4分の1になります。患部が小さければ、リンパ節をとらない縮小手術も可能です。胃癌が胃の入り口の近くにあり、早期であれば、噴門側胃切除術という方法も可能です。
一方、病変が大きかったり、リンパ節への転移が多い場合は、胃全摘出が行われることもあります。
大腸癌では、早期でリンパ節転移がなく、一度の切除ですべての病変が摘出できる場合に内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が行われます。これらの適応がない場合には、病変を中心として30cmほど腸を切除し、リンパ節も切り取り、腸をつなぎ合わせる外科手術が行われます。2020年代では腹腔鏡下手術が標準となっており、術後の回復が早い利点があります。
大腸癌の手術の予後は比較的良く、80%ほどの治癒率を誇ります。浸潤が軽度であったり、早期発見ができた場合は、手術が特に有効な癌だと言えます。