がん手術の費用目安

がんと診断され、さらに手術が必要だと医師から告げられると、当然ながら動揺してしまうでしょう。そして治療のことだけではなく、現実的な問題として「いったいいくらかかるのか」ということ、それがはっきりしないと心を落ち着けて治療を受けることはできないかもしれません。

そこで、さまざまながんの手術における費用の目安をまとめてみました。

がん手術の費用目安

がん手術の費用は、がんの部位や手術方法などによって大きな差があります。手術方法は従来のメスによる切開手術に加え、近年は内視鏡手術や腹腔鏡下手術、ロボット支援手術なども広く行なわれるようになってきました。高度な技術を要する手術ほど費用も高額になりますが、現在ではほとんどのがん手術に健康保険が適用されています。

がん手術の費用に含まれているもの

健康保険が適用されるがん手術であれば、診療報酬に定められた保険点数に基づき、健康保険の負担割合に応じて患者さんが支払う費用が決まります。ただし、一部のロボット支援手術などは自由診療になるため、医療機関によって費用の設定が変わってくるでしょう。

もちろん、手術を受ける場合にはそれ以外にもさまざまな費用がかかります。入院費や手術前後の検査費用、薬代などもトータルの医療費に加わっていくことになります。このほか、直接の医療費ではありませんが、入院生活上で必要な日用品や個室料金、診断書の作成料金、食事代なども考えておく必要があるのです。

がんの種類によって費用は変わるの?

それでは、がんの部位別に手術費用の目安をみていきましょう。

肺がんの場合(胸腔鏡下肺葉切除術)

胸腔鏡下肺葉切除術は、内視鏡カメラの一種である胸腔鏡を胸部から挿入し、執刀医がモニター画面に映し出された映像を見ながら、がんが発生した肺葉を切除する手術方法です。肺葉とは肺を構成する組織の単位で、右肺は3葉、左肺は2葉に分かれています。手術ではがんが発生した肺葉を周囲のリンパ節ごと切除し、転移の有無も調べます。

これまでも胸腔鏡を補助的に用いた肺がん手術は行なわれていましたが、現在は完全胸腔鏡下肺葉切除術として内視鏡主体の手術が主流になりつつあります。胸部を大きく切開する必要がないので傷口が小さく、痛みも抑えられ、手術後の回復も早いといったメリットが注目されています。

この手術を受けるために必要な入院期間は平均1週間程度で、治療費は健康保険の3割負担で約60万円程度が見込まれます。

胃がんの場合(腹腔鏡下幽門側胃切除術)

腹腔鏡下幽門側胃切除術は、お腹に4~5カ所の穴を開けて腹腔鏡を挿入し、胃の出口(幽門)を含めた下側の約2/3を切除する手術方法です。切除したあとは残された上側の胃と十二指腸をつなぎ合わせて再建します。

この手術方法は高度な技術を要することや、開腹手術と同等の治療成績を得られるかどうか不明だったことなどから、国内ではなかなか広まりませんでした。しかし、開腹手術に比べて傷が小さく痛みも抑えられるので徐々に注目されるようになり、現在では技術の進歩も相まって国内でも広く行なわれるようになりました。

この手術を受けるために必要な入院期間は平均10日程度で、治療費は健康保険の3割負担で約50万円程度が見込まれます。

大腸がんの場合(腹腔鏡下S状結腸切除術)

腹腔鏡下S状結腸切除術は、胃がんの腹腔鏡下手術と同じくお腹に4~5カ所の穴を開けて腹腔鏡を挿入し、がん病変を含むS状結腸の部分を体外に出して切除、腸と腸の切り口をつなぎ合わせてお腹の中に戻す手術方法です。開腹手術よりも傷が小さく、手術後の痛みも抑えられるほか、腹腔が空気に触れることがないので臓器や組織の癒着(くっついてしまうこと)による腸閉塞などの合併症が起こりにくいのも、腹腔鏡下手術の大きなメリットです。手術後の回復も早く、いつもどおりの食事が摂れるようになるまでの期間も短く済むでしょう。

この手術を受けるために必要な入院期間は平均2週間程度で、治療費は健康保険の3割負担で約40万円程度が見込まれます。

乳がんの場合(乳房部分切除術およびセンチネルリンパ節生検)

乳房部分切除術は、乳房のがん病変とその周辺の正常な乳腺組織を切除する手術方法です。乳房を温存することができますが、切除の範囲が大きいと乳房の変形も大きくなってしまいます。また、再発を予防するために手術後の放射線治療が必要となる場合も。

乳房のがん手術の場合、通常はセンチネルリンパ節生検を同時に実施します。センチネルとは英語で「見張り」という意味で、センチネルリンパ節とは乳房に発生したがん細胞が最初に到達するリンパ節だとされています。このリンパ節を放射性同位元素や色素の注射によって探し当て、切り取って転移の有無を顕微鏡で調べる検査をセンチネルリンパ節生検といいます。

この手術と検査を受けるために必要な入院期間は平均3日程度で、治療費は健康保険の3割負担で約30万円程度が見込まれます。

子宮がんの場合(広汎子宮全摘術)

広汎子宮全摘術は、子宮や卵管、卵巣、膣の一部や子宮の周辺組織のほか、骨盤内リンパ節を含む広範囲の切除を行なう手術方法です。従来の開腹手術のほか、腹腔鏡を挿入してリンパ節を郭清し、子宮と支持組織を切除して膣から取り出す腹腔鏡下広汎子宮全摘術という方法もあります。

腹腔鏡を用いる場合はお腹に数カ所の穴を開け、そこから器具を挿入してモニターの映像を見ながら手術を行ないます。開腹手術に比べて傷口が小さく済むので身体的な負担も軽減されますが、その反面で高い技術が求められる手術です。

この手術を受けるために必要な入院期間は平均10日間程度で、治療費は健康保険の3割負担で約40万円程度が見込まれます。

高額療養費制度が利用できることも

高額療養費制度とは、ひと月あたりの医療費の自己負担額が限度額を超えた場合、保険者に申請することで限度額を超えた分の医療費が払い戻されるしくみです。この制度は健康保険が適用される医療費が対象で、歴月内ごとに入院・外来それぞれ別枠で利用することができます。

限度額は患者さんの年齢や世帯収入によって変動します。詳しくは、加入している健康保険の保険者窓口に確認してください。

がん手術の流れ

それでは、実際のがん手術の流れについて説明しましょう。

手術前から手術後の流れは、がんの部位や手術方法によって大きく異なりますが、ここでは大腸がんを例に挙げてみます。

手術前の検査

大腸内視鏡検査・組織生検

内視鏡検査でがんの部位や大きさ、形状、そのほか病変の有無を確認します。必要に応じて組織を採取し、顕微鏡でがん組織の状態を正確に把握します。

造影CT検査・MRI検査・PET検査

手術前には造影CT検査を行ない、原発がんの状態や肺・肝臓・リンパ節などに転移がないかを確認します。直腸がんの場合はMRI検査が追加されることがあります。また、全身の検索が必要な場合はPET検査を行なうこともあります。

全身状態の精査

心電図や呼吸機能検査、胸部レントゲン撮影などを行ない、身体の状態が手術や麻酔に耐えうるかどうかを判断します。

手術当日・手術後(クリニカルパス)

通常は手術の1~2日前に入院し、オリエンテーションで手術前後の流れについての説明を受けます。手術当日は全身麻酔の準備を行ない、手術室に入室します。

近年では治療の標準的な経過を、スケジュールのようにまとめた入院診療計画を用いることが多くなっています。これを「クリニカルパス」といい、大腸がんの手術でも広く用いられています。実際のクリニカルパスの一部を挙げてみましょう。

手術直後

  • 手術の4時間後から飲水が可能になります。
  • 痛み止めを点滴で投与します。

手術翌日

  • ベッドから離れる訓練を始めます。最初はスタッフと一緒に歩きます。
  • 手術後の合併症を予防するためにも、歩くことは重要です。座っている時間もつくりましょう。

手術後2~5日目

  • 食事が開始されます。十分に食事を摂れるようであれば点滴を中止します。
  • 手術の傷は観察だけで消毒はしませんが、合併症が起きていないか随時確認します。

手術後の痛み対策

  • 手術後は点滴で持続的に痛み止めを投与します。
  • 手術の傷口の痛みは通常1週間程度で軽減し、少しずつ楽になっていきます。
  • 痛みの強い時期は点滴や内服薬で対応してもらえます。

手術後のリハビリ

  • できるだけ歩くようにしましょう。病棟を1日3週など、目標をつくるのがコツです。
  • ときどき深呼吸をして、肺を広げることを意識しましょう。肺炎の予防になります。
  • 背伸びなど、簡単なストレッチを心がけましょう。

退院後の生活

基本的には何を食べても大丈夫ですが、ゆっくりとよく噛んで食べるよう心がけてください。早食いは禁物です。軽い運動であれば支障はありませんが、激しい運動は1カ月ほど過ぎてからのほうが無難です。入浴も問題ありません。

ただし、手術を受けた後の身体の状態によっては、治療を継続するために日常生活上の制限が出てくる場合もあります。何より主治医の指示にきちんと従うことが大切です。

   
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