膀胱の内側は移行上皮細胞という膜で覆われています。膀胱がんはこの移行上皮細胞にできることが多く、2020年の人口あたりの罹患率は人口10万人に対して18.4例と言う割合(※)です。とくに40歳以上の男性に多いのが特徴です。膀胱がんになった場合の症状や治療法、転移しやすい場所について詳しく解説します。
膀胱がんの分かりやすい症状として、眼で見て確認できる肉眼的血尿があり、血尿によって受診する患者さんのうち数名は膀胱がんと診断されることがあるそうです。
また、見た目には血が出ていると分からなくても尿検査で採取した尿を調べてみると血尿だとわかる顕微的血尿があります。膀胱がんで出る血尿は痛みが出ないのが特徴で「無症候性血尿」と呼ばれることも。
症状が進んで尿管が閉塞した場合、尿を排出することができずに腎臓が腫れて尿管が拡張する水腎症の症状が現れます。
水腎症の症状が現れてくると、腎機能が低下して、排便時の違和感、直腸や子宮からの出血、痛みを感じるようになってくるのです。膀胱がんは進行が比較的遅いため、症状が出始めた頃にはがんが進行・転移している可能性があります。
膀胱がんの治療に有効なのが外科手術です。手術の方法には2種類あり、手術専用の内視鏡を使って腫瘍を切り取るTURBTか膀胱を摘出する膀胱全摘除術があります。
TURBTは筋層非浸潤性がんという、膀胱の筋層にがんが浸潤していない状態のがんの手術に有効。膀胱全摘除術は筋層浸潤性がんと呼ばれる、膀胱壁を超えてほかの組織やリンパ節などに転移する可能性のあるがんに適用。
膀胱温存を目指す筋層非浸潤性膀胱がんに対してBCG注入療法を行い、効果がなかった場合や浸潤が進行した場合に全摘手術を検討します。
BCG注入療法は毒を弱くした結核菌を膀胱に注入して、がん細胞を消失させる方法です。この方法で細胞障害性抗がん薬を注入する療法よりも高い治療効果が見込めます。ほかにも、抗がん剤を使った化学療法、放射線療法、免疫細胞療法などの治療があります。
膀胱の出口に近い部分に腫瘍ができると、排尿時に疼痛が起こる場合があります。がんが進行して膀胱周囲に浸潤した場合は、下腹部痛・陰茎の先端の痛みが生じます。
骨盤や臀部、下肢などにつながる神経の集まりである仙骨神経叢(せんけつしんけいそう)に浸潤した場合は、太ももの後ろ側に神経障害性疼痛が起こることも。さらに進行していくと尿管が閉塞して、尿が通らなくなることで腎臓が腫れてしまう水腎症を招き背中の痛みや急な腹痛が起こります。
膀胱がんが転移しやすい部位はリンパ節、骨、肺、肝臓が挙げられます。がん細胞はリンパ液や血液の流れにのってほかの臓器にうつるため、転移が確認された場合は化学療法での治療が第一選択になるそう。
膀胱がんの手術を受けたとしても、再発や転移する可能性があります。とくに筋層非浸潤性がんは膀胱内で再発しやすいため、定期的な検査を受けて早期発見に繋げることが大切です。最低でも10年以上は定期的な検査を受ける必要があります。
膀胱がんの予防に関しては、一般的な癌予防として知られているポイントに注意するだけでなく、ナフチルアミンやベンジジン、アミノビフェニルといった化学物質に対する対策も重要とされています。
ここでは膀胱がんの予防に関する情報に加えて、膀胱がんの早期発見・早期治療の可能性を高めるスクリーニングや検査についても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
膀胱がんの予防として気をつけるべきポイントは、まず「禁煙」が重要とされており、全般的な癌予防に関する取り組みを実践していくことが大切です。加えて膀胱がんの危険因子として化学物質への接触なども知られており、どのような製品や薬品に該当する物質が含まれているのか把握しておくことで、膀胱がんの予防対策への意識を高めることが可能となります。
一般的に喫煙はさまざまな健康リスクにつながる生活習慣の1つだと知られていますが、特に膀胱がんの危険因子として喫煙が注目されていることも無視できません。
そもそも日本人における癌の原因として、喫煙習慣は男性で1位、女性でも2位となっており、禁煙をすることで膀胱がんを含めた複数の癌の予防へつなげられることは重要です。
また、「がん対策基本法(平成18年法律第98号)」にもとづいて国立研究開発法人国立がん研究センターが運営する「がん情報サービス」Webサイトにおいても、膀胱がんの予防対策として「禁煙」が明確に挙げられており、日常的にタバコを吸っている人はもちろん、家族や周囲に喫煙者がいる人についても、禁煙や副流煙の回避といった点を心がけていくようにしてください。
※参照元:国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス|科学的根拠に基づくがん予防(https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/evidence_based.html)
※参照元:国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス|膀胱がん 予防・検診(https://ganjoho.jp/public/cancer/bladder/prevention_screening.html)
膀胱がんの危険因子として、喫煙と並んで注意喚起されているものが「化学物質への(長期間の)曝露」です。
化学物質などに関する「曝露」とは対象の物質などへさらされることを意味しており、例えば化学物質に触れたり、化学物質が含まれた空気を吸い込んで体内に取り込んだりすることを指します。
膀胱がんの危険因子として知られる化学物質には、ナフチルアミンやベンジジン、アミノビフェニルといったものが知られており、これらはかつて樹脂製品や染料、洗浄剤、その他いろいろな薬品に使用されていました。そのため、このような化学物質への接触を回避することは当然として、例えば仕事や普段の生活でこれらの化学物質に長期間さらされていた人については、早めに医師へ相談して検査やスクリーニングを受けることが推奨されています。
※参照元:国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス|膀胱がん 予防・検診(https://ganjoho.jp/public/cancer/bladder/prevention_screening.html)
喫煙や化学物質への曝露の他にも、膀胱や周辺の異常および疾患がトリガーとなって膀胱がんのリスクが上昇することも懸念されます。
膀胱のトラブルや病気にはさまざまなものがありますが、日常的に意識できる取り組みとしては十分な水分摂取を心がけて、定期的な排尿習慣を適正化していくことが挙げられるでしょう。一方、水分摂取量がそこまで多くないのに何度もトイレに行きたくなったり(頻尿)、水分を多めに摂っているのに尿意を催さなかったりする場合、泌尿器科を受診して医師の診察や検査を受けるようにしてください。
膀胱がんのリスクとして、ビルハルツ住血吸虫症といった寄生虫などへの感染も見逃せない要素です。ビルハルツ住血吸虫症は主にアフリカへ分布している寄生虫であり、現地の河川や湖沼での活動によって感染し、尿路系の障害や複数の癌リスクを高めることが知られています。そのため旅行や仕事などで海外へ在住していた経験のある人は、医師の診察を受ける際にそれらについても合わせて相談してください。
その他にも尿道や膀胱などの疾患は膀胱がんのリスク因子として注意すべきであり、例えば一度でも血尿を経験した人は必ず泌尿器科を受診して医師へ相談するようにしましょう。また、頻尿や残尿感、排尿時の痛みといった症状も検査を受ける理由として重要です。特に尿意があるのに排尿しづらい、力んでも尿が上手く出ないといった場合には速やかに医師へ相談してください。
なお、膀胱がんが進行すると尿の出にくさだけでなく、脇腹や背中が痛むといった全身症状が発生することもあります。
※参照元:厚生労働省検疫所 FORTH|ビルハルツ住血吸虫症(https://www.forth.go.jp/keneki/kanku/disease/dis06_03sch.html)
※参照元:国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス|膀胱がんについて(https://ganjoho.jp/public/cancer/bladder/about.html)
喫煙の他に、日常の生活習慣として膀胱がんの明確な危険因子だと認められているものはないとされています。しかし、全般的な癌リスクとして考えた場合、日常の生活習慣は医学的に癌リスクへつながることが知られており、喫煙習慣の他にも日頃の生活習慣を見直すことで、膀胱がんを含めたトータルの癌予防に取り組めることは肝要です。
喫煙以外の健全化すべき生活習慣としては、日頃の食生活や飲酒、運動習慣、体重管理などが挙げられます。
特に男性の場合、飲酒は複数の癌リスクを高めることが知られており、膀胱がん予防の観点からも禁酒・節酒を心がけることが大切です。また塩分過多の食事や野菜不足、偏食といった食生活の乱れも健康リスクへつながるため是正しましょう。
日常的な運動や身体活動は癌のみならず心疾患のリスク軽減にも有用であり、ことさらスポーツやジム通いなどをしていない人でも、積極的に歩いたり階段を利用したり、体操をするといった意識は癌予防に貢献します。
その他、肥満や痩せ過ぎといった体重の異常も癌リスクを高める要因です。日本人の適正体重は肥満度の指標である「BMI値」で測られており、男性は「21.0~26.9」、女性は「21.0~24.9」の範囲に収めることが重要です。なお、BMI値は体重(kg)を身長(m)の2乗で割った数値であり、以下の数式で求められます。
※参照元:国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス|科学的根拠に基づくがん予防(https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/evidence_based.html)
膀胱がんの治療を成功させて再発や転移を予防するためには、癌の早期発見・早期治療が重要です。スクリーニングとは、すでに癌だと診断された人が腫瘍の状態を調べるために受ける検査でなく、まだ癌が発見されていない人が予防や癌の早期発見を目的として受ける検査であり、自覚症状のない人だからこそ定期的なスクリーニング・検査を受けることで癌の早期発見の可能性を高められるようになります。また、すでに膀胱がんのリスクや腫瘍が認められている人も、適切な検査を受けることで診療方針や治療方法を検討できるようになります。
膀胱がんに関連したスクリーニングや検査には尿検査を含めて複数の方法があり、まずは基本的なものを把握しておきましょう。
膀胱がんの検査としては、まず「尿検査」が実施されます。
尿検査では尿中に血液や癌細胞が含まれているか否かをチェックしており、見た目では正常な尿であっても、検査機器や顕微鏡などで精密に調べた結果、血液が混じっている血尿や癌だと診断されるケースは珍しくありません。
腹部超音波検査(エコー検査)は、患者の体外から超音波を当てた後、体内で反響して返ってきた音波を画像化することで、患者の体内の状況を視覚的に検査する方法です。
超音波検査は痛みがないため麻酔なども不要であり、リアルタイムで患者の体内をチェックできるため、膀胱を含めた臓器の形状やサイズ、周辺組織との関係などを医師がその場で診察する上で有用です。ただし腫瘍の位置や状態によっては検出できない可能性もあります。
尿道から内視鏡(膀胱鏡)を差し込んで膀胱を観察し、癌の有無や状態を検査する方法です。また膀胱鏡検査で尿道や膀胱の粘膜に異常が認められた場合、その組織を採取して検査する生検が行われることもあります。
膀胱鏡検査は膀胱がんの治療方針の決定や確定診断のために不可欠な検査となっており、多くの癌患者において膀胱鏡検査によって膀胱がんが発見されることもポイントです。
※参照元:国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス|膀胱がん 検査(https://ganjoho.jp/public/cancer/bladder/diagnosis.html)
CT検査は、患者の体外からX線を照射して体の断面図を撮影する画像検査です。膀胱がんのスクリーニングとしては「CT尿路造影(CTウログラフィー)」というCT検査が利用されており、膀胱や尿管、腎盂といった尿路全体を立体画像として撮影することが可能となります。
CT尿路造影では造影剤を利用し、尿路へ造影剤が移動するタイミングをCT撮影することで尿路の状態をチェックします。そのためあらかじめ造影剤アレルギーの有無などを調べておかなければなりません。
なお、転移の有無を調べる目的で全身のCT検査が行われることもあります。
※参照元:国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス|膀胱がん 検査(https://ganjoho.jp/public/cancer/bladder/diagnosis.html)
MRI検査はCT検査と同様に患者の体内を撮影する画像検査ですが、放射線(X線)でなく磁気を使って撮影されることが特徴です。そのため被曝リスクを避けることが可能であり、また膀胱がんの検査としては癌の筋層浸潤の有無を調べるために小骨盤内のMRI撮影が行われることもあります。
TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)は事前のスクリーニングでなく、膀胱がんの進行を調べる検査として外科的に用いられる手術の1つであり、病理診断の方法です。なお、TURBTは一度だけでなく必要に応じて複数回の実施となることもあります。
全身麻酔や腰椎麻酔を行った上で、尿道から電気メスつきの内視鏡を挿入し、膀胱内の癌細胞を切除した後、採取した細胞を顕微鏡下で診断します。
膀胱鏡検査と並んでほぼすべての膀胱がんで実施される検査であり、基本的に短期間の入院が必要です。
※参照元:国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス|膀胱がん 検査(https://ganjoho.jp/public/cancer/bladder/diagnosis.html)
膀胱がんのスクリーニングや検査は、癌の早期発見や確定診断に不可欠なものであり、すべての癌患者において診療方針や治療方法の決定をするために何かしらの検査が実施されます。ただし、例えば膀胱鏡検査やTURBTによって患者の体にダメージが生じたり、CT検査などで被曝リスクが生じたりするように、癌のスクリーニングや検査にはリスクやデメリットが伴うことも無視できません。
適切な検査や診察を受けるためにも、膀胱がんのスクリーニングのリスクなどについても意識しておきましょう。
偽陰性とは、本来は「陽性(癌がある)」と診断されるべき患者が、検査によって「陰性(癌がない)」と誤診されてしまった状態です。癌が小さかったり、腫瘍の位置が見えにくい場所にあったりする場合、癌が発見できず偽陰性となってしまうこともあります。
偽陰性はあらゆるスクリーニング・検査で起こり得る問題ですが、偽陰性になると適正な治療を受ける時期が遅れてしまうため、基本的にスクリーニングや検査では複数の方法を実施して複合的に陰性・陽性を診断します。
偽陽性とは、癌がないにもかかわらず、癌がある(陽性)と診断されてしまった状態です。偽陽性の場合、そもそも体内に膀胱がんが発生していないため、癌治療の開始が遅れる心配はありません。しかし、本来であれば必要のない膀胱鏡検査やTURBT、CT検査などを受けることで肉体的ダメージを受けたり、自分が癌だと精神的に不安を抱いたりといったリスクにつながることも重要です。
偽陽性のリスク軽減には、偽陰性の場合と同様に複数の検査による複合診断が欠かせません。
過剰診断とは、医療技術の発達によって検査の感度や精度が高まった結果、本来は生命に危険が及ぼさず治療不要な癌まで検出し、治療が必要だと誤診してしまうことを指します。
大まかに言えば、人間の体内では日常的に癌細胞が発生しており、しかし通常、それらは体内の免疫機構によって処理されたり、そのまま成長せず停滞したりといった状態になります。そのため、そのような癌細胞について本来であれば治療を必要としないにもかかわらず、過剰診断によって「癌があるから治療が必要だ」とされた場合、患者にとってさまざまな負担が増加したり、再検査等で医療費が増加したりといったリスクへつながりかねません。
各種スクリーニングや検査によって癌が発見されても、状況によっては根治を目指せない可能性もあるでしょう。そのような場合、患者や家族にとって極めて深刻な精神的ショックが発生することも少なくありません。
そのため、癌のスクリーニングや検査を受ける場合は、同時に癌が発見された際の意識や対策についてもあらかじめ理解した上でのぞむことが大切です。
なお、仮に根治が難しい状態でも、緩和ケアや医療的な管理によってQOLを高められる可能性はあり、健康状態の改善が容易でないからといって必ずしも絶望的な状況であるとは限らない点も覚えておいてください。
膀胱がんでは標準治療として膀胱の全摘出が選択されるため、術後の生活はそれを踏まえて様々な工夫や暮らし方を考えていくことが基本となります。膀胱を摘出した場合、そのままでは通常の排尿が困難となるため、改めて尿路を構築するための手術や治療が必要となりますが、それによってライフスタイルや1日の過ごし方についても注意すべき点が生じることは無視できません。また、その他にも術後の回復力や適切なケアが生活の質(QOL)に関連することも知られており、まずは膀胱がんの患者や家族にとってQOL改善に不可欠なポイントをチェックしていきましょう。
癌治療として膀胱を摘出した場合、排尿の仕方やスタイルは術前と術後で大きく変化します。
膀胱の全摘除術を受けた患者は、術後に通常排尿ができなくなるため、新たに外科的アプローチで尿路を構築します(尿路変向術)。尿路変向術の方法としては尿の出口となるストーマを造設する「回腸導管造設術」や、ストーマを使わずに膀胱を再建する「自排尿型新膀胱造設術」、また尿管を切断して皮膚へ直接縫い付ける尿管皮膚瘻造設術などがあります。
例えば新膀胱造設術の場合、尿意を自覚できなくなるため目覚まし時計などを活用して定期的に排尿する習慣を考える必要があるでしょう。またストーマを使う場合、装具の適切な管理や皮膚トラブルの予防ケアなどがQOLへ直結します。
膀胱がんのタイプや腫瘍の状態によっては、外科治療の代わりに化学療法などを行ったり、あるいは手術と化学療法を併用したりといった選択肢も考えられます。
また化学療法の種類も様々であり、飲み薬などで経口的に服薬するものや、膀胱内へ直接に薬剤を投与する膀胱内注入療法など、治療計画にもとづいて選択されることもポイントです。
一方、あらゆる薬には副作用のリスクもあり、抗がん剤や免疫チェックポイント阻害薬にはそれぞれ薬ごとに想定される副作用があります。そのため化学療法を行う際は前もって副作用の種類やリスクを確認し、発熱や下痢、倦怠感など異常を自覚したら速やかに主治医へ相談して適切な診察を受けることが大切です。なお高熱やひどい下痢、呼吸困難といった症状を自覚した場合は夜間でも直ちに医療機関へ連絡しましょう。
術後は体力が低下するため、無理のない範囲で生活に適度な運動習慣を取り入れることが肝要です。また筋力や運動能力を向上させることで生活の疲労感を緩和し、日々の活力を得やすいこともポイントです。
ただしストーマを使用している場合、強い腹圧のかかる運動は制限されることもあり、そのような運動を行っていくべきか主治医としっかり相談してください。
膀胱がんの治療では長期的な通院や入院が必要になることもあり、また膀胱全摘除術を受けてストーマなどを利用していく場合、生涯にわたって医療的な消耗品の使用が不可欠となるためトータルコストも増大します。そのため適切な方法で経済的負担を軽減して、QOLを低下させないよう工夫することが重要です。
例えば民間の医療保険(がん保険)の他にも、「高額療養費制度」や「限度額適用認定証」といった公的支援制度は大切であり、またずっとストーマを使用する場合は障害者手帳(ぼうこう又は直腸機能障害)の取得や、税金の控除や公共料金の減免といった経済的支援を受けられる可能性もあります。
膀胱がんの治療後は、肉体的な負担や精神的なストレスが生じやすくなるだけでなく、排泄トラブルのリスクなど様々な理由で外出が億劫になったり、人とのコミュニケーション機会が減少したりしやすくなります。しかし癌治療において患者が一人で悩みや不安を抱え込まないことは最重要課題の1つであり、適切なメンタルケアや専門家のサポートを受けることは、患者だけでなく家族にとっても重要な取り組みです。
なお、ストーマの使い方や排泄ケアについては「皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)」といった専門家へ相談できる他、仕事や費用の不安については各地域の拠点病院に開設されている「がん相談支援センター」でサポートを受けることができます。
(前略)それから、すぐに生検の検査をするために、また来るように言われ後日検査をしました。幸いに癌は初期でしたので、レーザーで治療可能という事でした。一応一泊の入院で、レーザー治療を行いました。うまく、癌を焼却でき身体への負担も軽度で無事退院しました。
その後は半年から一年に一度の検査で、癌は再発なく今は元気に過ごしています。
引用元:Caloo|30代の姉がぼうこう癌に突然なった。幸い初期でレーザー治療できました。
(前略)私はタバコもお酒もまったく飲みません。
膀胱腫瘍には珍しい30歳という若さです。
ですがまったく痛みを伴わない血尿が出たら
詳しい検査をしたほうがいいと思います。
まれに排尿痛を伴う血尿、残尿感
女性には多い膀胱炎の症状。これも腫瘍が
出来ている可能性があります。
若いからといって放置せず
きちんと検査を受けてください。
引用元:Caloo|妊娠と同時に血尿が出ました。30歳の若さで膀胱腫瘍(がん)が判明。
(前略)その後、数年経ちますが3ヶ月に1度の癌検診で一度も引っかかる事はありませんし、再発もせず元気に仕事に復帰しているので良かったです。
もしも人間ドックを受けずに治療が遅れたと思うとゾっとしてしまいます。
皆さんも年に一度の定期検診は忘れずにしましょう。
引用元:Caloo|人間ドックで発覚。主人の膀胱癌の手術や経過について。
(前略)病院で精密検査をすると、膀胱ガンだと言われました。家族全員がショックを受けましたし、僕もかなりショックでした。(中略)その後は血尿も出る事がないので本当に良かったと思います。病院の先生方も凄く良いスタッフが揃っていたみたいですし、手術も的確だったので本当に助かりました。(後略)
引用元:Caloo|父の血尿。病院で検査をすると初期の膀胱がんでしたが手術で完治。
(前略)父親は、糖尿病から始まり、膀胱ガンになり、脳梗塞までになりました。糖尿病で、脳梗塞は、結び付かないかもしれませんが、有り得ない事では無いのです。
普段の、食事や、生活習慣を改善する事で、変える事が大切です。今は、簡単な検査で、糖尿病の検査を受ける事が出来ます、私も、糖尿病の検査を受けました。(後略)
引用元:Caloo|父は糖尿病から始まり膀胱がん、脳梗塞を経験。健康は日々の心がけが大事。
今から、4年前に初期の膀胱ガンと診断され手術を受けました。
元々、腰痛もちでギックリ腰も二度程やりました。そのせいで腰痛が頻繁に起きていると思っていました。(中略)発見が早ければ死に至る病気ではありませんが、5年間は病院に通わなければならず、それを断念してしまう人か多く、再発の確立が高いそうです。
私の場合、腰痛もサインだったと思います。
引用元:Caloo|初期の膀胱ガンが判明し手術。頻繁な腰痛もサインの一つかも。
(前略)過去に膀胱ガンの BCG治療,内視鏡手術を何回か受けて来た父でしたが,その検査でもまだガンが残っているので,出来るだけ早い時期に,再度 手術が必要 という結果でした。
しかし,急性心筋梗塞を発病した後は,最低でも半年は手術が出来ない,との事で,時が経つのを待つしかありませんでした。(後略)
引用元:Caloo|父が急性心筋梗塞になりステント治療。がんの治療に悪影響。
(前略)膀胱ガンはストレスや喫煙が原因と言われています。家族全員の説得で、父を禁煙させる事に成功しましたし、アルコールも多飲は控えるようになりました。その効果が出たのか、2度目の手術以降は4年間ガンは再発していません。
今回は人間ドックで早期発見が出来ました。面倒くさがらずに、定期的な検診が大切です。
引用元:Caloo|父の膀胱がんは喫煙やストレスが原因?!内視鏡手術で復帰!
(前略)治療としては,内視鏡による手術(経尿道的膀胱腫瘍切除術)を何度か受け,内服薬の服用も行いました。
しかし,膀胱内のガンを完全に取り切る事は難しかったらしく,間も無く先生から,BCG膀胱内注入療法の提案を受けました。(中略)しかし,この治療法を実施後,父はトイレ(排尿)が極端に近くなりました。
また,膀胱内のガンは消滅せず,再発,転移し,約6年後に亡くなりました。
引用元:Caloo|膀胱ガンでBCG膀胱内注入療法。効果はあったが完治には至らず。
20年前、膀胱がんの腫瘍を取りましたが、その後普通の生活を送ってきて、すっかり忘れていました。先日、血尿が出たときも、最初はほかの内臓の病気を疑ったぐらいです。検査しても原因が見つからず泌尿器科へ行くと、なんと以前に手術をしてもらった担当医に再会。その日のうちにMRI、CT、超音波、内視鏡検査を受け、腫瘍が見つかりました。(中略)今回も腫瘍切除だけで済み、今は定期的に内視鏡検査をしてもらっています。
この病気をした人は、まず血尿にショックを受けるでしょう。でも恐れることはありません。私のように、普段通りの生活を送っている人がたくさんいます。早くお医者さんに行ってと伝えたいですね。
引用元:認定NPO法人キャンサーネットジャパン|Patient’s Voice ~膀胱がん患者さんの声~
2025年9月9日、アメリカの米国食品医薬品局(FDA)は、上皮内がん(乳頭状腫瘍の有無を問わず)を有するカルメット・ゲラン桿菌不応非筋層浸潤性膀胱がん(NMIBC)の成人患者に対する、ゲムシタビン膀胱内注入システムを承認しました。同システムは尿道カテーテルと、それを介して膀胱へ挿入するためのスタイレットが同梱されているものです。
承認はSunRISe-1(NCT04640623)のコホート2による評価データにもとづいており、経尿道的切除術後のカルメット・ゲラン棹菌不応非筋層浸潤性膀胱がん患者の中でも、特に上皮内がんを有する患者83人を対象として実施された単群多施設共同試験です。試験では3週間おきに半年間、患者の膀胱内へゲムシタビンが投与され、さらに12週間に1回のペースで最長18ヶ月間の投与が継続されました。
最終的な結果として、完全奏効率は82%となり、また完全奏効を達成した患者のおよそ51%において奏効期間が12ヶ月以上となりました。
参照元:海外がん医療情報リファレンス|米FDAが非筋層浸潤性膀胱がんにゲムシタビン膀胱内注入システムを承認
アメリカのカリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームが、一般的に行われているCTスキャンに関して、将来的な発癌リスクにつながる懸念があるという研究結果を発表し、同研究は4月14日付の「JAMA Internal Medicine誌」にも掲載されました。
アメリカでは日常的にCT検査が行われており、CT検査による疾病などの発見が多くの治療や患者の回復に寄与していることが認められています。一方、CT検査による放射線被曝の影響から、膀胱がんを含めた複数の癌のリスクが上昇するという懸念について、研究チームは米国内の患者6,150万人に対する9,300万件の検査データを解析し、その結果、乳児などにおいて発癌リスクが大幅に増大する可能性が示唆されました。
研究チームはCT検査が現代の医療現場で不可欠と認めた上で、活用法やリスク対策についても検討していくべきと述べています。
参照元:海外がん医療情報リファレンス|一般的なCTスキャンが年間がん発症数の5%の原因となる可能性(米国)
2025年6月12日、米国食品医薬品局(FDA)において、再発低悪性度中間リスク筋層非浸潤性膀胱がん(LG-IR-NMIBC)の成人患者を対象とした、マイトマイシン膀胱内注入製剤が承認を獲得しました。
本承認は単群多施設共同試験のENVISION試験(NCT05243550)における有効性評価データにもとづいており、経尿道的膀胱腫瘍切除術の後に再発した低悪性度筋層非浸潤性膀胱がんの成人患者240名が対象となり、マイトマイシン膀胱内注入製剤の有用性が比較検討されました。
結果として、評価可能な患者223人のうち78%において完全奏効を達成し、効果を得た患者の79%は12ヶ月以上の奏効を維持したということです。
これにより、再発膀胱がんの患者の治療について選択肢が広がり、適切な治療法の検討に貢献することが期待されています。
参照元:海外がん医療情報リファレンス|米FDA、膀胱がんにマイトマイシン膀胱内注入製剤を承認
2025年4月10日付の「Nature Genetics誌」において、癌細胞の弱点を検出するための金属探知機アルゴリズム「PRRDetect」の開発成功が発表されました。
PRRDetectは、DNAエラーを修復できない癌細胞において出現する突然変異パターンを同定するためのツールであり、従来のゲノムシーケンシング(DNA解析)を進化させた手法とされています。
研究チームがおよそ5千の腫瘍細胞に関して挿入欠失変異を起こしているDNAパターンを解析したところ、「複製後修復機能障害(PRRd)」を示唆する複数の異常パターンが発見されました。これは修復メカニズムに欠陥が生じている細胞を意味しており、この結果にもとづきPRRd関連変異パターンを示すゲノム配列をターゲットとしたPRRDetect金属探知機の開発へつなげられています。
研究では、肺癌や脳腫瘍に加えて膀胱がんや胃がん、皮膚がんなどPRRdが現れやすいとされる癌についてもデータ調査が行われました。
参照元:海外がん医療情報リファレンス|がん細胞の弱点を見つける「金属探知機」を開発
2025年2月5日付の米国がん学会(AACR)の学術誌「Clinical Cancer Research誌」において、スペインのバルセロナ大学およびカタルーニャ腫瘍学研究所の腫瘍内科教授であるXavier Garcia-del-Muro医学博士らの研究報告がありました。限局性筋層浸潤性膀胱がん患者へ放射線療法と、免疫チェックポイント阻害薬の「デュルバルマブ」および「トレメリムマブ」の併用療法を行うことで、膀胱温存につながる持続的奏効が確認されたというデータが発表されています。
限局性筋層浸潤性膀胱がんに対する標準治療は、膀胱の全摘出を前提とした根治的膀胱摘出術となっています。治療効果が認められる一方で、患者の術後の生活やQOLへ重大な永続的影響を及ぼす可能性のある点が過大となっています。
研究チームは、放射線療法に加えて、免疫チェックポイント阻害薬として2種類の治療薬を投与することで、膀胱がんの中でも限局性筋層浸潤性膀胱がんの患者に対して、外科的治療を施さなくても治療効果として好意的な結果を得られる可能性を見出しています。
臨床試験では評価可能な患者28人のうち、26人(93%)において完全奏効が示されました。中央値27ヶ月の追跡調査の結果、30人が膀胱温存で可能になったことも報告されています。
参照元:海外がん医療情報リファレンス|放射線+免疫療法薬2剤により一部の筋層浸潤性膀胱がんで膀胱温存が可能
2025年10月、ドイツのベルリンで開催された「欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2025)」において、アメリカのダナ・ファーバーがん研究所やドイツのミュンヘン工科大学、イギリスのロンドン大学クイーン・メアリーなどの共同研究チームが、膀胱がんの治療と循環腫瘍DNA(ctDNA)血液検査の関連研究について報告しました。同報告は国際共同ランダム化第3相試験IMvigor011の結果にもとづいたものであり、浸潤性膀胱がんの術後治療の指針にctDNAを調べる血液検査が有用であるという内容になっています。
これは、筋層浸潤性膀胱がん患者の中でも、癌の切除術を行った後に血液検査でctDNA陽性と判定された患者に対して、免疫チェックポイント阻害薬「アテゾリズマブ」を使用することで有意な効果を得られたというものです。また、逆に血液検査で陰性となった患者に対しては、免疫チェックポイント阻害薬の術後使用の必要がないと考えられる点も見逃せません。
試験の結果として、ctDNA陽性患者に術後アテゾリズマブ療法を行ったところ、生存期間の延長が示されました。また陰性患者については追加治療を行わずとも、無再発率が89%となったようです。
参照元:海外がん医療情報リファレンス|浸潤性膀胱がん術後の免疫チェックポイント阻害療法にctDNA血液検査が指針に2025年3月28日、アメリカの米国食品医薬品局(FDA)は、筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)の患者(成人)に対する、根治的膀胱全摘除術に先んじた「ゲムシタビン+シスプラチン+デュルバルマブ」の術前治療と、術後治療としての「デュルバルマブ」の単剤使用について承認を決定しました。
この承認は無作為化非盲検多施設共同第3相試験である「NIAGARA試験(NCT03732677)」の評価が根拠となっており、対象患者は根治的膀胱全摘除術の適応があって、かつ膀胱がんの全身療法を受けていない1,063人となりました。
試験では術後化学療法を行った上で、デュルバルマブの術後補助療法を行うグループと、手術のみのグループに分類して比較検証した結果、無イベント生存期間(EFS)や全生存期間(OS)が前者において有意に改善したことが示されています。
なお、デュルバルマブ術後療法の有害事象については、プラチナ製剤ベースの化学療法による併用療法の研究結果と一致していたこともポイントです。
参照元:海外がん医療情報リファレンス|米FDA、筋層浸潤性膀胱がんにデュルバルマブを承認2025年10月17日付けの医学誌「LANCET」において、BCG未治療のハイリスク筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)の患者に対して、「イミフィンジ+BCG」併用療法が、BCG単剤療法よりも無増悪生存期間(DFS)を有意に改善したという臨床研究の結果が発表されました。
同研究は第3相無作為化POTOMAC試験として実施されており、対象となった患者は経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けたBCG未治療のハイリスクNMIBC患者となっています。
1年間の継続治療による、イミフィンジ併用療法群とBCG単剤療法群の比較として、DFSは併用群で有意に改善を示しており、これはBCG未治療のハイリスクNMIBC患者にとってイミフィンジ併用療法が有用であることを示唆しています。なお、治療に関連する死亡はどちらのグループにおいても発生しませんでした。
参照元:オンコロ|BCG未治療のハイリスク筋層非浸潤性膀胱がんに対するイミフィンジとBCGの併用療法、DFSを有意に改善2025年9月19日、アストラゼネカ株式会社が膀胱がんの治療に関して、「術前・術後の補助療法としてのイミフィンジ」について承認を取得したと発表しました。
そもそも膀胱がんの中でも筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)は全体の25~30%を占める癌である一方、現在の標準治療として術前化学療法を根治目的で受けたとしても、およそ半数の患者が術後に再発することが課題となっています。
本承認についてはMIBCへの「根治的膀胱全摘除術前後の周術期治療薬」に関するデータとして、第3相国際多施設共同ランダム化非盲検試験(NIAGARA試験)の結果が根拠になっており、同試験において術前・術後の併用療法が無イベント生存期間(EFS)を有意に改善したという成果は重要です。
また、日本人をターゲットに絞った日本人サブ解析においても、筋層浸潤性膀胱がんに対する術前・術後イミフィンジは有効性を示しており、今後の国内の標準治療に関してもさらなる研究と成果が期待されています。
参照元:オンコロ|筋層浸潤性膀胱がんに対する術前・術後イミフィンジ、日本人サブ解析でも有効性を示す 参照元:オンコロ|【承認】イミフィンジ、膀胱がんにおける術前・術後補助療法としての承認取得2025年9月5日、フェリング・ファーマ株式会社により、BCG治療が奏効しない高リスク筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)患者に対して、非複製型遺伝子治療薬「ナドファラゲン フィラデノベク」を使用する治療法が、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に受理されたと発表が行われました。なお、製造販売承認申請は同年8月27日に行われています。
ナドファラゲン フィラデノベクとは、インターフェロン・アルファ2b遺伝子と非複製型アデノウイルスベクターを活用した遺伝子治療薬であり、カテーテルによって患者の膀胱内へ直接投与することで、患者の自然治癒力を高めて癌に対抗させるというものです。また治療頻度が3ヶ月ごとの単剤投与となっており、患者にとって頻繁な投与による負担が軽減されることも無視できません。
なお、国内において高リスクNMIBC患者20名を対象として実施された試験では、初回投与から2回目の投与までの期間で完全奏効率(CR率)75%という数値を獲得しています。
参照元:オンコロ|遺伝子治療薬ナドファラゲン フィラデノベク、筋層非浸潤性膀胱がんの適応で承認を申請2025年9月8日、ヤンセンファーマ株式会社はBCG不応性上皮内がんを有する高リスク筋層非浸潤性膀胱がん(HR-NMIBC)の治療として、ゲムシタビン膀胱内システム「TAR-200」が日本国内で製造販売承認を申請したと発表しました。
TAR-200は膀胱内へカテーテルを使ってゲムシタビンを継続的に局所投与するためのシステムであり、2025年8月には日本で「BCG不応性の上皮内癌を有する高リスク筋層非浸潤性膀胱癌」への希少疾病用医薬品指定の通知が出されています。
申請根拠は国際共同第2b相SunRISe-1試験(NCT04640623)におけるコホート2の結果となっており、追跡期間20.2ヶ月の臨床試験の結果、TAR-200による完全奏効率は82.4%で奏効期間中央値は25.8ヶ月となりました。
同社の発表では、今後に同システムが承認を得た場合、抗がん剤を膀胱内へ局所送達する日本初の膀胱内システムになる可能性も言及されています。
参照元:オンコロ|【承認申請】ゲムシタビン膀胱内システムTAR-200、BCG不応性の上皮内がんを有する高リスク筋層非浸潤性膀胱がんに対する承認を申請2025年10月20日付の医学誌「New England Journal of Medicine」において、筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)の患者を対象とした術後療法の判断方法として、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)の状態にもとづいたアプローチに関する臨床試験(無作為化第3相IMvigor011試験)の結果が報告されました。
この試験は、MIBC患者の中でも、膀胱全摘術を行った後に画像診断で病変が認められなかった患者を対象として、術後1年間の逐次的なctDNA検査を実施し、ctDNA検査の結果に応じて治療を行った結果をまとめたものとなります。
ctDNA検査によって陽性と認められた患者群(高リスク群)に対してはテセントリクの静脈投与(最長1年間)を行い、非投与群(プラセボ群)との効果比較が検証されました。またctDNA検査で陰性となった患者群は無治療の経過観察となりました。
結論として、高リスク群で治療を実施した患者の無病生存期間(DFS)はプラセボ群と比較して有意に改善されており、ctDNA検査の結果にもとづいて術後治療を行うことが有用であると示唆されています。
参照元:オンコロ|筋層浸潤性膀胱がんに対する血中循環腫瘍DNAに基づく術後免疫療法の判断、個別化アプローチとして有用な可能性を示す2025年10月24日、アストラゼネカ株式会社は同年9月に「膀胱がんにおける術前・術後療法」として「イミフィンジ」が承認されたことを受けて、膀胱がんの治療や予防に対する意識啓発・理解促進を目的としたメディアセミナーを開催しました。
セミナーでは富山大学学術研究部医学系腎泌尿器科学教授である北村寛先医師が登壇し、膀胱がんの治療の方法を選択する際の判断基準や、予後に大きく影響するポイントなどが具体的に解説されました。
北村医師いわく、現在の標準治療では、転移が認められないII-III期の筋層浸潤性膀胱がんに対して膀胱全摘が行われていますが、今回のイミフィンジの承認を契機として、今後は新たな標準治療の策定が進むと考えられているという点は重要でしょう。また膀胱がんの死亡リスクを軽減するためにも、転移の抑制や予防、早期発見を重視すべきであり、違和感があれば速やかに医師へ相談することが推奨されました。
参照元:オンコロ|膀胱がんの早期発見から治療まで:周術期免疫チェックポイント阻害剤の登場を機に理解を深めよう2025年8月18日、アメリカのNatera社から、筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)の患者を対象としたランダム化第3相二重盲検多施設共同ランダム化試験(IMvigor011試験)の結果が報告され、高リスクMIBC患者に対する術後療法として「テセントリク」の投与が有用であったというデータが示されました。
同研究には日本も参加しており、膀胱切除術後に血中循環腫瘍DNA検査(ctDNA検査)で陽性と認められた、およそ760例の高リスクMIBC登録患者を対象として、術後療法として「テセントリク」を投与した結果がまとめられています。
試験では患者をテセントリク投与群とプラセボ群にランダムに割り振り、その後の状態を比較検証しました。その結果、ctDNA陽性テセントリク投与群では、プラセボ群と比較して無病生存率や全生存率が有意に向上しており、医学的に意義があるという可能性が示唆されています。
参照元:オンコロ|ctDNA陽性の筋層浸潤性膀胱がんに対する術後療法としてのテセントリク、無病生存期間と全生存期間を有意に改善2025年8月12日、アステラス製薬株式会社は米国ファイザー社と共同開発しているネクチン-4を標的とした「抗体薬物複合体パドセブ」と、米国メルク社の「抗PD-1抗体キイトルーダ」の併用療法が、シスプラチン不適応の筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)患者に対して有用であったという第3相EV-303試験(KEYNOTE-905試験)の結果を発表しました。
臨床試験は、シスプラチンをベースとした化学療法で不適応となったMIBC患者を対象として、術前・術後療法に「パドセブ+キイトルーダ」の併用療法を行った群と、キイトルーダ単剤療法を行った群、そして現在の標準治療である膀胱全摘除術(手術単独)を行った群が比較され、無イベント生存期間(EFS)や全生存期間(OS)、病理学的完全奏効(pCR)率などがそれぞれ検証されました。
結果として併用療法群は手術単独群よりもEFSやOS、pCR率などを有意に改善しており、安全性についても以前の報告と同等であったということです。
参照元:オンコロ|シスプラチン不適応の筋層浸潤性膀胱がんに対するパドセブ+キイトルーダ、生存期間を有意に改善2025年4月26日、米国ファイザー社はBCG療法未治療の高リスク筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)の患者に対して、抗PD-1モノクローナル抗体薬「ササンリマブ」とBCG療法を組み合わせた「ササンリマブ+BCG併用療法」が有効であり、また安全性においても有用であると示唆する臨床試験の結果を発表しました。
同試験は併用療法の有効性と安全性を比較検証する第3相CREST試験(NCT04165317)として実施されており、高リスクNMIBC患者を対象として、ササンリマブ+BCG併用療法(導入療法・維持療法)を行った群、併用療法でBCGを導入療法としてのみ使用してその後の維持療法は行わない群、そして導入療法および維持療法としてのBCG単独療法群の、計3グループがランダムに割り振られました。
試験の結果、併用療法を行った群は、導入療法のみでBCGを用いた群やBCG単独療法群よりも無イベント生存期間(EFS)が有意に改善されており、「ササンリマブ+BCG導入療法および維持療法」の併用療法が、高リスクNMIBC患者にとって有用であると示唆されています。
参照元:オンコロ|BCG療法未治療の高リスク筋層非浸潤性膀胱がんに対する導入/維持療法としてのササンリマブ+BCG、無イベント生存期間を有意に改善2026年2月18日、医学誌「New England Journal of Medicine」において、シスプラチンを含む化学療法不適応の膀胱がん患者、または当該治療を希望しない手術可能な筋層浸潤性膀胱がんの患者を対象として、「パドセブ+キイトルーダ」併用療法を手術前後に使用した場合の安全性や有効性に関する研究結果が報告されました。
研究は「第3相KEYNOTE-905試験」の結果にもとづいて分析されており、対象患者はシスプラチンによる化学療法が不適応あるいは治療を希望しない手術可能な筋層浸潤性膀胱がん患者344人となり、さらに患者は術前術後に「パドセブ+キイトルーダ」併用療法を行うグループ170人と、根治的膀胱全摘除術のみの174人に分類されました。
結果的に無イベント生存期間(EFS)や全生存期間(OS)といった複数の評価項目において、併用療法群が有意に改善しており、今後の治療選択肢になり得ることが示唆されました。
参照元:オンコロ|シスプラチン不適応の筋層浸潤性膀胱がんに対する根治的手術前後のパドセブ+キイトルーダ、EFSおよびOSを有意に延長2026年1月30日、MSD株式会社とアステラス製薬株式会社は、抗PD-1抗体薬「キイトルーダ」と抗体薬物複合体(ADC)「パドセブ」の併用療法について、シスプラチンを含んだ化学療法不適格な筋層浸潤性膀胱がんに対する術前・術後の補助療法として、製造販売承認事項一部変更の承認申請を行ったことを公表しました。
全ての膀胱がんにおいて筋層浸潤性膀胱がん患者はおよそ4分の1となっており、転移のない患者に対してはシスプラチンを含む術前化学療法と膀胱全摘除術が標準治療の1つとして認められています。一方、筋層浸潤性膀胱がん患者のおよそ半数はシスプラチン不適格であり、より適切な治療法が求められていました。
研究の結果、膀胱全摘除術と周術期療法を目的とした「キイトルーダ+パドセブ」併用療法は、全摘除術のみの場合と比較して無イベント生存期間(EFS)や全生存期間(OS)が改善しており、申請承認による治療選択肢の拡大が検討されています。
参照元:オンコロ|【承認申請】キイトルーダ+パドセブ、筋層浸潤性膀胱がんに対する術前・術後の補助療法としての承認を申請2026年1月28日、中外製薬株式会社は、MRD(分子的残存病変)陽性の膀胱がんにおける術後補助療法として、抗PD-L1ヒト化モノクローナル抗体「テセントリク」の適応拡大を厚生労働省へ申請したことを発表しました。本申請はctDNA(血中循環腫瘍DNA)検査によってMRD陽性となった筋層浸潤性膀胱がん患者を対象として、術後補助療法にテセントリク単剤を使ったグループと、プラセボ群を比較したグローバル第3相臨床試験「IMvigor011試験」の結果にもとづいています。
試験の結果、テセントリクを使用した群は、プラセボ群に対して無病生存期間(DFS)が有意に改善しており、全生存期間(OS)についても統計的・臨床的に意義のある改善結果が示されました。
なお中外製薬株式会社の社長である奥田修氏は、個別化医療の高度化や患者に合わせたオーダーメイドケアの承認取得へ取り組んでいくと表明しています。
参照元:オンコロ|抗PD-L1抗体薬テセントリク、MRD陽性筋層浸潤性膀胱がんの術後補助療法として適応拡大を申請2025年10月22日から同月26日にかけて開催された「AACR-NCI-EORTC(米国がん学会、米国国立がん研究所、欧州がん治療研究機構)分子標的国際会議」において、ハーバード大学医学部の助教授らによる研究チームが、進行尿路上皮がん患者に対する経口低分子阻害薬「FX-909」の有効性に関する研究結果を発表しました。
アメリカにおいて膀胱癌は6番目に患者数の多い癌であり、さらにその9割以上は尿路上皮がんであるとされています。また進行尿路上皮がんの約3分の2の患者で転写因子の「ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPARG:peroxisome proliferator-activated receptor gamma)」が発現していることもポイントです。
「FX-909」はPPARGに対する経口低分子阻害薬であり、臨床研究として尿路上皮がん患者にFX-909を投与した結果、PPARG高発現の患者20人のうち14人に腫瘍縮小が認められました。
参照元:海外がん医療情報リファレンス|進行膀胱がんに新たな標的療法薬(FX-909)が有望