いちから分かる癌転移の治療方法ガイド

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膀胱がんの症状や転移、治療法について

膀胱の内側は移行上皮細胞という膜で覆われています。膀胱がんはこの移行上皮細胞にできることが多く、2020年の人口あたりの罹患率は人口10万人に対して18.4例と言う割合(※)です。とくに40歳以上の男性に多いのが特徴です。膀胱がんになった場合の症状や治療法、転移しやすい場所について詳しく解説します。

※参照元:国立がん研究センターがん情報サービス/膀胱

膀胱がんの症状

膀胱がんの分かりやすい症状として、眼で見て確認できる肉眼的血尿があり、血尿によって受診する患者さんのうち数名は膀胱がんと診断されることがあるそうです。

また、見た目には血が出ていると分からなくても尿検査で採取した尿を調べてみると血尿だとわかる顕微的血尿があります。膀胱がんで出る血尿は痛みが出ないのが特徴で「無症候性血尿」と呼ばれることも。

症状が進んで尿管が閉塞した場合、尿を排出することができずに腎臓が腫れて尿管が拡張する水腎症の症状が現れます。

水腎症の症状が現れてくると、腎機能が低下して、排便時の違和感、直腸や子宮からの出血、痛みを感じるようになってくるのです。膀胱がんは進行が比較的遅いため、症状が出始めた頃にはがんが進行・転移している可能性があります。

膀胱がん治療法

膀胱がんの治療に有効なのが外科手術です。手術の方法には2種類あり、手術専用の内視鏡を使って腫瘍を切り取るTURBTか膀胱を摘出する膀胱全摘除術があります。

TURBTは筋層非浸潤性がんという、膀胱の筋層にがんが浸潤していない状態のがんの手術に有効。膀胱全摘除術は筋層浸潤性がんと呼ばれる、膀胱壁を超えてほかの組織やリンパ節などに転移する可能性のあるがんに適用。

膀胱温存を目指す筋層非浸潤性膀胱がんに対してBCG注入療法を行い、効果がなかった場合や浸潤が進行した場合に全摘手術を検討します。

BCG注入療法は毒を弱くした結核菌を膀胱に注入して、がん細胞を消失させる方法です。この方法で細胞障害性抗がん薬を注入する療法よりも高い治療効果が見込めます。ほかにも、抗がん剤を使った化学療法、放射線療法、免疫細胞療法などの治療があります。

膀胱がんの痛み

膀胱の出口に近い部分に腫瘍ができると、排尿時に疼痛が起こる場合があります。がんが進行して膀胱周囲に浸潤した場合は、下腹部痛・陰茎の先端の痛みが生じます。

骨盤や臀部、下肢などにつながる神経の集まりである仙骨神経叢(せんけつしんけいそう)に浸潤した場合は、太ももの後ろ側に神経障害性疼痛が起こることも。さらに進行していくと尿管が閉塞して、尿が通らなくなることで腎臓が腫れてしまう水腎症を招き背中の痛みや急な腹痛が起こります。

膀胱がんの転移先として多い部位

膀胱がんが転移しやすい部位はリンパ節、骨、肺、肝臓が挙げられます。がん細胞はリンパ液や血液の流れにのってほかの臓器にうつるため、転移が確認された場合は化学療法での治療が第一選択になるそう。

膀胱がんの手術を受けたとしても、再発や転移する可能性があります。とくに筋層非浸潤性がんは膀胱内で再発しやすいため、定期的な検査を受けて早期発見に繋げることが大切です。最低でも10年以上は定期的な検査を受ける必要があります。

膀胱がんや治療法に対する研究・論文

非筋層浸潤性膀胱がんへのゲムシタビン膀胱内注入システムをFDAが承認

2025年9月9日、アメリカの米国食品医薬品局(FDA)は、上皮内がん(乳頭状腫瘍の有無を問わず)を有するカルメット・ゲラン桿菌不応非筋層浸潤性膀胱がん(NMIBC)の成人患者に対する、ゲムシタビン膀胱内注入システムを承認しました。同システムは尿道カテーテルと、それを介して膀胱へ挿入するためのスタイレットが同梱されているものです。

承認はSunRISe-1(NCT04640623)のコホート2による評価データにもとづいており、経尿道的切除術後のカルメット・ゲラン棹菌不応非筋層浸潤性膀胱がん患者の中でも、特に上皮内がんを有する患者83人を対象として実施された単群多施設共同試験です。試験では3週間おきに半年間、患者の膀胱内へゲムシタビンが投与され、さらに12週間に1回のペースで最長18ヶ月間の投与が継続されました。

最終的な結果として、完全奏効率は82%となり、また完全奏効を達成した患者のおよそ51%において奏効期間が12ヶ月以上となりました。

参照元:海外がん医療情報リファレンス|米FDAが非筋層浸潤性膀胱がんにゲムシタビン膀胱内注入システムを承認

通常行われるCTスキャンが将来の膀胱がんリスクを高める可能性

アメリカのカリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームが、一般的に行われているCTスキャンに関して、将来的な発癌リスクにつながる懸念があるという研究結果を発表し、同研究は4月14日付の「JAMA Internal Medicine誌」にも掲載されました。

アメリカでは日常的にCT検査が行われており、CT検査による疾病などの発見が多くの治療や患者の回復に寄与していることが認められています。一方、CT検査による放射線被曝の影響から、膀胱がんを含めた複数の癌のリスクが上昇するという懸念について、研究チームは米国内の患者6,150万人に対する9,300万件の検査データを解析し、その結果、乳児などにおいて発癌リスクが大幅に増大する可能性が示唆されました。

研究チームはCT検査が現代の医療現場で不可欠と認めた上で、活用法やリスク対策についても検討していくべきと述べています。

参照元:海外がん医療情報リファレンス|一般的なCTスキャンが年間がん発症数の5%の原因となる可能性(米国)

膀胱がん治療における「マイトマイシン膀胱内注入製剤」が承認

2025年6月12日、米国食品医薬品局(FDA)において、再発低悪性度中間リスク筋層非浸潤性膀胱がん(LG-IR-NMIBC)の成人患者を対象とした、マイトマイシン膀胱内注入製剤が承認を獲得しました。

本承認は単群多施設共同試験のENVISION試験(NCT05243550)における有効性評価データにもとづいており、経尿道的膀胱腫瘍切除術の後に再発した低悪性度筋層非浸潤性膀胱がんの成人患者240名が対象となり、マイトマイシン膀胱内注入製剤の有用性が比較検討されました。

結果として、評価可能な患者223人のうち78%において完全奏効を達成し、効果を得た患者の79%は12ヶ月以上の奏効を維持したということです。

これにより、再発膀胱がんの患者の治療について選択肢が広がり、適切な治療法の検討に貢献することが期待されています。

参照元:海外がん医療情報リファレンス|米FDA、膀胱がんにマイトマイシン膀胱内注入製剤を承認

膀胱がん細胞の弱点を探し出す「金属探知機アルゴリズム」の開発

2025年4月10日付の「Nature Genetics誌」において、癌細胞の弱点を検出するための金属探知機アルゴリズム「PRRDetect」の開発成功が発表されました。

PRRDetectは、DNAエラーを修復できない癌細胞において出現する突然変異パターンを同定するためのツールであり、従来のゲノムシーケンシング(DNA解析)を進化させた手法とされています。

研究チームがおよそ5千の腫瘍細胞に関して挿入欠失変異を起こしているDNAパターンを解析したところ、「複製後修復機能障害(PRRd)」を示唆する複数の異常パターンが発見されました。これは修復メカニズムに欠陥が生じている細胞を意味しており、この結果にもとづきPRRd関連変異パターンを示すゲノム配列をターゲットとしたPRRDetect金属探知機の開発へつなげられています。

研究では、肺癌や脳腫瘍に加えて膀胱がんや胃がん、皮膚がんなどPRRdが現れやすいとされる癌についてもデータ調査が行われました。

参照元:海外がん医療情報リファレンス|がん細胞の弱点を見つける「金属探知機」を開発

一部の膀胱がんに「放射線療法+免疫療法薬2剤」の併用療法が有効

2025年2月5日付の米国がん学会(AACR)の学術誌「Clinical Cancer Research誌」において、スペインのバルセロナ大学およびカタルーニャ腫瘍学研究所の腫瘍内科教授であるXavier Garcia-del-Muro医学博士らの研究報告がありました。限局性筋層浸潤性膀胱がん患者へ放射線療法と、免疫チェックポイント阻害薬の「デュルバルマブ」および「トレメリムマブ」の併用療法を行うことで、膀胱温存につながる持続的奏効が確認されたというデータが発表されています。

限局性筋層浸潤性膀胱がんに対する標準治療は、膀胱の全摘出を前提とした根治的膀胱摘出術となっています。治療効果が認められる一方で、患者の術後の生活やQOLへ重大な永続的影響を及ぼす可能性のある点が過大となっています。

研究チームは、放射線療法に加えて、免疫チェックポイント阻害薬として2種類の治療薬を投与することで、膀胱がんの中でも限局性筋層浸潤性膀胱がんの患者に対して、外科的治療を施さなくても治療効果として好意的な結果を得られる可能性を見出しています。

臨床試験では評価可能な患者28人のうち、26人(93%)において完全奏効が示されました。中央値27ヶ月の追跡調査の結果、30人が膀胱温存で可能になったことも報告されています。

参照元:海外がん医療情報リファレンス|放射線+免疫療法薬2剤により一部の筋層浸潤性膀胱がんで膀胱温存が可能

「ctDNA血液検査」が浸潤性膀胱がんの
術後免疫チェックポイント阻害療法の指針に

2025年10月、ドイツのベルリンで開催された「欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2025)」において、アメリカのダナ・ファーバーがん研究所やドイツのミュンヘン工科大学、イギリスのロンドン大学クイーン・メアリーなどの共同研究チームが、膀胱がんの治療と循環腫瘍DNA(ctDNA)血液検査の関連研究について報告しました。同報告は国際共同ランダム化第3相試験IMvigor011の結果にもとづいたものであり、浸潤性膀胱がんの術後治療の指針にctDNAを調べる血液検査が有用であるという内容になっています。

これは、筋層浸潤性膀胱がん患者の中でも、癌の切除術を行った後に血液検査でctDNA陽性と判定された患者に対して、免疫チェックポイント阻害薬「アテゾリズマブ」を使用することで有意な効果を得られたというものです。また、逆に血液検査で陰性となった患者に対しては、免疫チェックポイント阻害薬の術後使用の必要がないと考えられる点も見逃せません。

試験の結果として、ctDNA陽性患者に術後アテゾリズマブ療法を行ったところ、生存期間の延長が示されました。また陰性患者については追加治療を行わずとも、無再発率が89%となったようです。

参照元:海外がん医療情報リファレンス|浸潤性膀胱がん術後の免疫チェックポイント阻害療法にctDNA血液検査が指針に

米国FDAが筋層浸潤性膀胱がんの「デュルバルマブ」使用を承認

2025年3月28日、アメリカの米国食品医薬品局(FDA)は、筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)の患者(成人)に対する、根治的膀胱全摘除術に先んじた「ゲムシタビン+シスプラチン+デュルバルマブ」の術前治療と、術後治療としての「デュルバルマブ」の単剤使用について承認を決定しました。

この承認は無作為化非盲検多施設共同第3相試験である「NIAGARA試験(NCT03732677)」の評価が根拠となっており、対象患者は根治的膀胱全摘除術の適応があって、かつ膀胱がんの全身療法を受けていない1,063人となりました。

試験では術後化学療法を行った上で、デュルバルマブの術後補助療法を行うグループと、手術のみのグループに分類して比較検証した結果、無イベント生存期間(EFS)や全生存期間(OS)が前者において有意に改善したことが示されています。

なお、デュルバルマブ術後療法の有害事象については、プラチナ製剤ベースの化学療法による併用療法の研究結果と一致していたこともポイントです。

参照元:海外がん医療情報リファレンス|米FDA、筋層浸潤性膀胱がんにデュルバルマブを承認

「イミフィンジ+BCG」併用療法が
ハイリスク筋層非浸潤性膀胱がんに有用

2025年10月17日付けの医学誌「LANCET」において、BCG未治療のハイリスク筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)の患者に対して、「イミフィンジ+BCG」併用療法が、BCG単剤療法よりも無増悪生存期間(DFS)を有意に改善したという臨床研究の結果が発表されました。

同研究は第3相無作為化POTOMAC試験として実施されており、対象となった患者は経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)を受けたBCG未治療のハイリスクNMIBC患者となっています。

1年間の継続治療による、イミフィンジ併用療法群とBCG単剤療法群の比較として、DFSは併用群で有意に改善を示しており、これはBCG未治療のハイリスクNMIBC患者にとってイミフィンジ併用療法が有用であることを示唆しています。なお、治療に関連する死亡はどちらのグループにおいても発生しませんでした。

参照元:オンコロ|BCG未治療のハイリスク筋層非浸潤性膀胱がんに対するイミフィンジとBCGの併用療法、DFSを有意に改善

膀胱がん治療に「術前・術後イミフィンジ」が承認取得

2025年9月19日、アストラゼネカ株式会社が膀胱がんの治療に関して、「術前・術後の補助療法としてのイミフィンジ」について承認を取得したと発表しました。

そもそも膀胱がんの中でも筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)は全体の25~30%を占める癌である一方、現在の標準治療として術前化学療法を根治目的で受けたとしても、およそ半数の患者が術後に再発することが課題となっています。

本承認についてはMIBCへの「根治的膀胱全摘除術前後の周術期治療薬」に関するデータとして、第3相国際多施設共同ランダム化非盲検試験(NIAGARA試験)の結果が根拠になっており、同試験において術前・術後の併用療法が無イベント生存期間(EFS)を有意に改善したという成果は重要です。

また、日本人をターゲットに絞った日本人サブ解析においても、筋層浸潤性膀胱がんに対する術前・術後イミフィンジは有効性を示しており、今後の国内の標準治療に関してもさらなる研究と成果が期待されています。

参照元:オンコロ|筋層浸潤性膀胱がんに対する術前・術後イミフィンジ、日本人サブ解析でも有効性を示す 参照元:オンコロ|【承認】イミフィンジ、膀胱がんにおける術前・術後補助療法としての承認取得

遺伝子治療薬「ナドファラゲン フィラデノベク」が
膀胱がんに適応承認

2025年9月5日、フェリング・ファーマ株式会社により、BCG治療が奏効しない高リスク筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)患者に対して、非複製型遺伝子治療薬「ナドファラゲン フィラデノベク」を使用する治療法が、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に受理されたと発表が行われました。なお、製造販売承認申請は同年8月27日に行われています。

ナドファラゲン フィラデノベクとは、インターフェロン・アルファ2b遺伝子と非複製型アデノウイルスベクターを活用した遺伝子治療薬であり、カテーテルによって患者の膀胱内へ直接投与することで、患者の自然治癒力を高めて癌に対抗させるというものです。また治療頻度が3ヶ月ごとの単剤投与となっており、患者にとって頻繁な投与による負担が軽減されることも無視できません。

なお、国内において高リスクNMIBC患者20名を対象として実施された試験では、初回投与から2回目の投与までの期間で完全奏効率(CR率)75%という数値を獲得しています。

参照元:オンコロ|遺伝子治療薬ナドファラゲン フィラデノベク、筋層非浸潤性膀胱がんの適応で承認を申請

ゲムシタビン膀胱内システム「TAR-200」が日本国内で承認申請

2025年9月8日、ヤンセンファーマ株式会社はBCG不応性上皮内がんを有する高リスク筋層非浸潤性膀胱がん(HR-NMIBC)の治療として、ゲムシタビン膀胱内システム「TAR-200」が日本国内で製造販売承認を申請したと発表しました。

TAR-200は膀胱内へカテーテルを使ってゲムシタビンを継続的に局所投与するためのシステムであり、2025年8月には日本で「BCG不応性の上皮内癌を有する高リスク筋層非浸潤性膀胱癌」への希少疾病用医薬品指定の通知が出されています。

申請根拠は国際共同第2b相SunRISe-1試験(NCT04640623)におけるコホート2の結果となっており、追跡期間20.2ヶ月の臨床試験の結果、TAR-200による完全奏効率は82.4%で奏効期間中央値は25.8ヶ月となりました。

同社の発表では、今後に同システムが承認を得た場合、抗がん剤を膀胱内へ局所送達する日本初の膀胱内システムになる可能性も言及されています。

参照元:オンコロ|【承認申請】ゲムシタビン膀胱内システムTAR-200、BCG不応性の上皮内がんを有する高リスク筋層非浸潤性膀胱がんに対する承認を申請