そもそも免疫とは?
人間は、体内に侵入した異物を排除する仕組みを持っています。風邪のウイルスや、食中毒を起こす大腸菌がからだに入った時に、これらの「侵入者」を放っておいたら私たちのからだは大変なことになってしまいますよね?そんな侵入者を撃退するための仕組みが「免疫」です。
免疫が撃退する異物は、外から入ってきたものだけに限りません。体内でつくられたものであっても、からだに取って敵になるような細胞なら撃退するようになっています。たとえば、体内の細胞であってもウイルスによって変質してしまったものや、排除すべき癌細胞といったものです。
私たちのからだをつくる細胞は、自分のからだの細胞である、ということがわかる印を持っています。この印の形が少しでも違えば、それは自分のからだの細胞ではないと認識されるので、免疫システムの撃退の対象になります。もともと自分の細胞だったものも、ウイルスに感染したり、癌細胞になってしまったりすると、印が正常ではなくなるのです。
こういった免疫システムによって、わたしたちのからだは外部からの侵入者や、体内でつくられてしまった敵となる細胞から守られているのです。もちろん、癌細胞ができても、通常は免疫システムによって撃退してしまいます。ですから、私たちは癌にはならないはずです。
では、私たちはなぜ癌になってしまうのでしょうか?
癌が発生する理由
実は、健康な人間でも毎日がん細胞を体内で生み出している、ということをご存じでしたか?健康な成人男性でも、一日に3,000個ほどの癌細胞をつくり出しているそうです。
癌細胞というのは、何らかのトラブルで細胞のもつ遺伝子に異常が生じて、正常ではない細胞へと変化したもの。本来なら、こういった異常な細胞は免疫システムによってすぐに撃退されます。ですから、3,000個の癌細胞がつくられたとしても、癌の腫瘍に発展することはなのです。
ところが、癌細胞の中には悪質なものがあり、正常な細胞の印をもったまま癌化したり、癌を攻撃する細胞のはたらきを弱めるたんぱく質を分泌したりします。そうして免疫システムの攻撃をくぐり抜けた癌細胞が増殖を繰り返し、やがて癌になります。
そんな癌の悪口・暴走を食い止めるため、免疫システムを強化し、また「教育」することで、癌細胞と闘う力を取り戻すのが免疫療法です。
免疫療法は、免疫細胞を復活させて癌と闘う治療法
免疫システムの力は、加齢とともに衰えてきます。また、ストレスが多かったり、食生活や生活習慣が乱れていると、癌細胞が増殖しやすくなります。一度免疫細胞の網をくぐり抜けてしまえば、癌細胞は無限に増殖を繰り返すもの。そうなってしまうと、さすがの免疫細胞もお手上げとなってしまいます。
しかしそうなったとしても、免疫システムがなくなるわけではありませんし、異物を見つければいつでも排除しようとするはたらきは残っています。そこで、免疫システムをもう一度復活させ、またどの細胞を攻撃すればいいのか教育することで、増加した癌細胞を攻撃させる、というのが免疫システムの基本的な仕組みです。
では、免疫細胞を教育するというのはどういうことでしょうか?
2種類の免疫システム
免疫には、「自然免疫」と「獲得免疫」という2種類のシステムがあります。
自然免疫は、ウイルスや細菌といった異物を見つけたら、手当たり次第に攻撃するもの。これは生まれた時から持っている免疫なので、自然免疫と呼ばれます。一方、自然免疫では退治しきれず病気にかかってしまったりした場合、その原因となる異物が敵であるということをからだが学習します。一度敵だと認識することで、異物の情報を「獲得」し、次からは集中的に攻撃するようになります。これを「獲得免疫」と呼びます。
自然免疫、獲得免疫にはそれぞれ異なる細胞が存在します。主な免疫細胞をご紹介しましょう。
自然免疫
- マクロファージ:異物を片っ端から食べる、貪食細胞
- 樹状細胞:自然免疫の細胞から獲得免疫の細胞へ情報を伝達する
- 好中球:異物を食べるだけでなく、殺菌剤のようなものを振りまく
獲得免疫
- NK細胞:リンパ球の一種で、怪しいものを次々殺すNatural Killer(生まれつきの殺し屋)
- ヘルパーT細胞:獲得免疫の細胞に攻撃命令を出す
- キラーT細胞:強力な殺傷力を持つ、Killer(殺し屋)細胞
- サプレッサーT細胞:キラーT細胞などの終わらせる細胞
- レギュラトリ―細胞:免疫反応が過剰になるのを抑える
- B細胞:ヘルパーT細胞の指令を受けて、異物に対して武器を発射する
ふだんは、マクロファージや好中球、そしてNK細胞が体内をパトロールしており、癌細胞があれば即座に退治します。特にNK細胞は最強クラスの殺傷力があり、ふだんはどんどん癌細胞を退治します。
しかし、あまりにも癌細胞が増えすぎると、NK細胞でも対処しきれなくなります。そうなると、樹状細胞はヘルパーT細胞へと「あいつらは敵だ!」という情報を伝達します。それを受けたヘルパーT細胞は、キラーT細胞やB細胞に「あいつらを退治しろ!」という命令を出し、癌細胞へより集中的な攻撃を始めます。
このとき、キーマンになるのが樹状細胞です。樹状細胞は、T細胞たちに敵の目印を伝える、いわば教育者の役割があります。ヘルパーT細胞の中には情報伝達を受けるとサイトカインという物質を分泌するものがあります。樹状細胞は、サイトカインを受け取ると活性化する性質があり、それによってスーパー教育者へと進化を遂げます。それによって、T細胞はますます高度な教育を受けることとなり、免疫システムが強固なものになっていきます。
この教育システムを利用して、高い免疫力をもち、癌細胞と闘うのが免疫療法です。
免疫細胞を活性化する成分
最近では、食事やサプリメントで摂取できる、免疫細胞を活性化する成分も注目されています。実際に学会で効果が認められているような成分はごくわずかですが、中には、癌患者を対象にした臨床データを持つ、信頼性の高い成分もあるようです。下記サイトでは、そういった成分について詳しく紹介しているので、興味のある方はチェックしてみると良いでしょう。
自宅で行う免疫療法で取り入れたい成分(外部サイト)