このページでは、ロボット支援手術の仕組みなどを紹介しています。ロボット支援を伴う手術を受ける際の参考としてご活用ください。
ロボット支援手術は、手術用に設計・開発されたロボットシステムを使って、医師が遠く離れた場所から患者の手術を行えるように作られた新しい治療法です。外科医が目の前にあるロボットの鉗子やカメラを操作すると、その動作が正確に遠隔地にある手術用ロボットへ伝わり、手術室のロボットに搭載されている鉗子やカメラが患者の体を施術するといった仕組みです。
ロボット支援手術は非常に精密な動きを再現できるように調整されている上、医師の手の震えなどを自動的に解消してくれる支援機能も搭載されており、腹腔鏡下手術よりも患者へのダメージを抑えながら、開腹手術のように高い手術効果を得られると期待されています。[注1]
3Dフルハイビジョンの画像を10倍に拡大して施術できるロボット支援手術は、従来の内視鏡では不可能とされていた精密手術さえ実現できるため、2009年に国内で承認されてから急速に全国へ拡大。事実、例えばがん研有明病院では2017年から2021年までの間において、原発性直腸癌の患者の99%がロボット支援手術による治療を受けています。人間の関節ではあり得ない角度で曲がる多関節機能などのおかげで、効果の高い手術が実現しているそうです。[注2]
保険適用となる癌の種類も順次拡大しており、直腸癌や胃癌、肺癌、子宮癌など合わせて2018年4月には14件の癌へ対応できるようになりました。[注3]
ロボット支援手術の最大のメリットは、医師が離れた場所から手術を行えることと、人間の目や手では実現できないレベルの精密手術を叶えられるという点です。
手術範囲を小さくして出血量も少なくして、患者に与えるダメージを可能な限り抑え、術後の回復を早められるのがメリットです。また、健康な組織をより正確に残せるようになり、合併症のリスクも抑えられるようになりました。[注4]
ロボット支援手術のデメリットは、まず医師側と患者側の両方に専用システムがなければ手術を行えないことです。
また、医師の手の動きを精密に再現できるものの、医師の手に患者の臓器へ触れている感覚がフィードバックされないため、正確な手技には医師の訓練と経験が求められます。当然ながら、手術室でロボットシステムをサポートする医療スタッフについても同様の訓練が必要です。
癌の種類や部位、患者の体質などによってロボット支援手術が適応にならないケースもあり、手術を受けられるかは必ず事前の診断で相談しなければなりません。[注4]
「da Vinci(ダヴィンチ)」は、アメリカのインテュイティブサージカル社が開発した手術用ロボットのシリーズです。世代を重ねるごとに機能やシステムがグレードアップされており、より正確な治療を行えるようになっています。
ダヴィンチは大きく3つのパーツで構成されており、「ペイシェントカート」・「ビジョンカート」・「サージョンコンソール」の3種類となります。[注4]
患者の体に触れる側のシステムであり、4本のロボットアームを搭載された専用機器です。4本のアームの内1本は高画質3Dカメラになっており、残りの3本のアームに専用鉗子を装着します。
医師はこれらの4本のアームを操作して治療部位へアプローチ可能です。
ペイシェントカートのカメラが撮影したデータをもとに、フルハイビジョンの3D画像を作成し、10倍以上に画面を拡大します。そのため、医師は小さな部位も大きく拡大して治療を進めることが可能です。
手術を担当する医師の側へ設置されるシステムです。執刀医はビジョンカートへ写し出される3D画面を確認しながらカメラを操作して、自分の希望する倍率に調整することができます。また、他3本の鉗子も自分で操作するため、執刀医は同時に合計4本のロボットアームを操作することになります。
鉗子は360度以上の回転が可能となっており、手ぶれ補正と合わせて高精細な動きを再現することが可能です。