転移癌に対する放射線治療を調べると、リニアック、ガンマナイフ、サイバーナイフ、トモセラピーなど、さまざまな治療装置や病院が見つかります。
そのため、「最新の装置がある病院を選べばよいのか」「有名ながんセンターへ行くべきか」「症例数が多い病院なら治療を受けられるのか」と迷う方もいるでしょう。
しかし、転移癌の放射線治療は、病院の知名度や装置の新しさだけで選ぶものではありません。
転移した臓器、病変の数・大きさ・位置、症状、原発がんの種類、これまでに受けた薬物療法や放射線治療、患者の全身状態によって、適した治療方法は異なります。
また、放射線治療だけを行うのではなく、抗がん剤などの薬物療法や手術、症状を和らげる治療と組み合わせる場合もあります。
そのため病院を選ぶ際は、特定の装置があるかだけでなく、放射線治療を専門とする医師が病変を評価し、ほかの診療科と連携しながら治療方針を検討できるかを確認することが大切です。
このページでは、転移癌の放射線治療を相談する病院を選ぶ際に確認したいポイント、照射方法や装置の見方、初診・セカンドオピニオンで聞きたいことを解説します。
なお、突然の麻痺、歩行困難、排尿・排便障害、けいれん、意識障害、強い呼吸困難、大量の出血などがある場合は、病院を比較するよりも早急な診察が必要です。現在の主治医や救急医療機関へ速やかに連絡してください。
転移癌とは、最初にがんが発生した臓器から離れた場所へ、がん細胞が移動して増殖した状態です。
同じ「転移癌」であっても、患者によって次のような違いがあります。
そのため、ある患者に適している治療が、別の患者にも適しているとは限りません。
病院を選ぶ際は、「転移癌に対応している」と記載されているかだけでなく、自分の原発がん、転移部位、治療歴を踏まえて評価してもらえるかを確認する必要があります。
放射線治療は、主に特定の病変を対象とする局所治療です。
一方、抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などの薬物療法は、全身のがんへ作用させることを目的とします。
転移癌では、薬物療法によって全身の病変を治療しながら、一部の病変へ放射線を照射することがあります。
また、病変の位置や症状によっては、放射線治療より手術やその他の局所治療を優先する場合もあります。
そのため、放射線治療科だけでなく、原発がんを担当する診療科、腫瘍内科、外科などが連携できる体制も病院選びのポイントです。
転移癌への放射線治療には、複数の目的があります。
病変の長期的な制御を目指す場合と、症状緩和を目指す場合では、照射する範囲、放射線量、治療回数などが異なることがあります。
病院へ相談する際は、単に「放射線を当てられるか」ではなく、「何を目的として、どの病変へ治療するのか」を確認しましょう。
| 確認するポイント | 主な確認内容 |
|---|---|
| 放射線治療医 | 放射線治療を専門とする医師が画像や治療歴を確認するか |
| 診療科の連携 | 腫瘍内科、外科、緩和ケア科などと治療方針を検討できるか |
| 照射方法 | 通常照射、定位放射線治療、IMRTなどを比較できるか |
| 難しい病変への対応 | 多発転移、再照射、重要臓器に近い病変を相談できるか |
| 症状緩和 | 痛み、圧迫、出血などを和らげる照射に対応するか |
| 説明と意思決定 | 効果、副作用、代替治療、治療しない場合について説明するか |
| 通院・緊急対応 | 治療回数、通院負担、急変時の対応が現実的か |
放射線治療を行うかどうかは、放射線治療を専門とする医師が、画像やこれまでの治療経過などをもとに判断します。
主に次の情報が確認されます。
紹介状に「放射線治療を検討してください」と記載されているだけで適応が決まるわけではありません。
放射線治療医が画像や資料を実際に確認し、病変と正常な臓器の位置関係を評価する体制があるかを確認しましょう。
放射線治療を受けられるかどうかだけでなく、次の内容を説明してもらえるかも重要です。
「放射線を当てられる」という説明だけでなく、治療によって何を目指すのかを確認してください。
放射線科の医師には、CTやMRIなどの画像を読み取り診断する放射線診断医と、放射線を使ってがんを治療する放射線治療医・放射線腫瘍医がいます。
病院に「放射線科」があっても、放射線治療を行っているとは限りません。
病院の公式サイトなどで、次の診療科や部門があるかを確認しましょう。
転移癌の治療では、転移した病変だけでなく、原発がんの状態や全身の治療方針も考える必要があります。
放射線治療を行う時期や範囲は、現在使用できる薬物療法や、ほかの病変の状態によって変わる場合があります。
原発がんを担当する診療科と放射線治療科が、次の内容を共有できるかを確認しましょう。
抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などと放射線治療を組み合わせる場合があります。
一部の病変だけが進行している場合には、現在の薬物療法を続けながら、その病変へ局所的に放射線を照射することもあります。
一方、使用している薬剤や照射部位によっては、副作用が重なる可能性があります。
薬物療法をどの時期に休み、いつ再開するのかを含めて連携できる体制が重要です。
転移病変の状態によっては、放射線治療より手術を優先する場合があります。
例えば、次のような場合です。
放射線治療と手術のどちらが適しているか、またどの順番で行うかを複数の診療科で検討できるか確認しましょう。
放射線治療の効果が現れるまでに、一定の時間が必要となる場合があります。
その間の痛み、息苦しさ、吐き気、不眠、不安などを和らげるためには、緩和ケア科や緩和ケアチームとの連携も重要です。
緩和ケアは、放射線治療や薬物療法を終了した後だけに受けるものではありません。積極的ながん治療と並行して利用できます。
脳転移への放射線治療では、病変の個数、大きさ、位置、脳以外の病変、患者の全身状態などによって治療方法が検討されます。
病院へ確認したい内容には、次のようなものがあります。
骨転移への放射線治療は、痛みを和らげる目的で行われる場合があります。
脊椎転移では、脊髄や神経が圧迫されているか、骨折の危険性があるかなどを確認する必要があります。
次のような体制を確認しましょう。
肺や肝臓などに限られた転移病変がある場合、病変の数・大きさ・位置などによって定位放射線治療が検討されることがあります。
肺病変では呼吸によって病変の位置が動くため、その動きを考慮した治療計画が必要になる場合があります。
また、正常な肺や肝臓へ当たる放射線量を抑えられるかを確認します。
放射線治療だけでなく、手術、焼灼治療、薬物療法などと比較したうえで提案してもらえるかも重要です。
転移病変が多い場合でも、病変の個数だけで放射線治療ができないと決まるわけではありません。
すべての病変へ照射するのではなく、症状や危険性の高い病変を優先して治療する場合があります。
病院へ相談する際は、次の点を確認しましょう。
過去に放射線治療を受けた場所へ、再び放射線を照射することを再照射と呼びます。
再照射では、前回と今回の照射範囲や、正常組織へ加わる累積的な影響を確認する必要があります。
再照射を相談する場合は、次の点を確認しましょう。
| 治療方法 | 主な特徴 |
|---|---|
| 通常の外部照射 | 病変や治療目的に応じて、1回または複数回に分けて身体の外から照射します。 |
| 定位放射線治療 | 比較的小さな病変へ放射線を集中させる方法です。 |
| 定位手術的照射 | 1回または少ない回数で、病変へ集中的に照射します。 |
| 強度変調放射線治療 | 方向ごとに放射線の強さを調整し、病変の形状に合わせて照射します。 |
| 症状緩和を目的とした照射 | 痛み、圧迫、出血などの症状を和らげることを目指します。 |
| 再照射 | 過去の照射範囲や線量を確認したうえで、再び放射線を照射します。 |
外部照射は、身体の外にある装置から病変へ放射線を当てる方法です。
転移病変の位置、治療目的、患者の状態などに応じて、1回で照射する場合や複数回に分ける場合があります。
高精度放射線治療だけが、転移癌に有効な照射方法とは限りません。
骨転移の痛みなど、症状緩和を目的とする治療では、通常の外部照射が適している場合もあります。
定位放射線治療は、画像を用いて病変の位置を確認し、病変へ放射線を集中させる方法です。
脳、肺、肝臓、脊椎などの病変に対して検討されることがあります。
ただし、病変の大きさ、個数、位置、周囲の正常組織などによって適応が異なります。
定位放射線治療が、通常の外部照射より常に優れているわけではありません。
強度変調放射線治療は、照射する方向ごとに放射線の強さを細かく調整し、病変の形状に合わせて放射線を当てる方法です。
複雑な形の病変へ照射しながら、周囲の正常組織への放射線量を抑える目的で使用されることがあります。
IMRTに対応しているかだけでなく、病変に対してIMRTを選ぶ理由と、別の方法との違いを説明してもらいましょう。
放射線治療は、がんを完全になくすことだけを目的とするものではありません。
次のような症状を和らげる目的で行われる場合があります。
症状の緊急性が高い場合は、通常の予約枠とは異なる対応が必要になることがあります。
症状緩和を目的とした放射線治療へ、どの程度迅速に対応できるかも確認しましょう。
放射線治療には、次のような装置が使用されます。
それぞれ照射方法や対応する病変などに特徴があります。
装置によって、放射線を当てる方向、治療できる範囲、患者の固定方法、病変の動きへの対応などが異なります。
一方、病変の位置や大きさ、周囲の正常組織との関係によっては、その装置が治療に適さない場合があります。
装置があることと、その患者が治療対象になることは別です。
放射線治療では、装置の性能だけでなく、次の要素が治療の安全性や適切さに関係します。
「最新の装置があるから治療効果が高い」「特定の装置なら他院で断られた患者も必ず治療できる」と判断しないことが大切です。
病院や治療法を比較するときは、次のような説明に注意してください。
放射線治療の効果や副作用は、病変や患者の状態によって異なります。
治療の利益だけでなく、副作用、代替治療、治療しない場合についても説明してもらいましょう。
放射線治療の症例数は、病院の経験を確認する一つの材料になります。
ただし、放射線治療全体の件数だけでは、自分と同じ原発がんや転移部位に対する経験が分からないことがあります。
確認できる場合は、次の内容も見ておきましょう。
症例数が多いことだけで、自分に適した病院とは限りません。
放射線治療医の中でも、主に診療しているがんや病変が異なる場合があります。
例えば、次のような専門領域があります。
病院名だけではなく、実際に相談する医師の専門領域を確認しましょう。
放射線治療に関する専門医資格や認定施設であるかは、診療体制を確認する一つの材料になります。
ただし、資格や認定だけで治療の良し悪しが決まるわけではありません。
自分の病状への対応、複数診療科との連携、医師の説明内容なども合わせて確認してください。
病院が公開している治療成績を比較する場合は、対象となる患者の条件を確認する必要があります。
条件が異なる数字を並べても、病院の治療成績を正確に比較することはできません。
現在の治療方針について別の医師の意見を聞きたい場合は、セカンドオピニオンを利用する方法があります。
セカンドオピニオンは、現在の主治医のもとで治療を続けることを前提として、別の医師から診断や治療方針について意見を聞くものです。
原則として、相談先では新しい検査や治療は行いません。
相談先の病院で診察、検査、治療を希望している場合は、通常の初診や転院として予約する必要があります。
申し込み時に、意見を聞きたいのか、治療を受けたいのかを明確に伝えましょう。
病院へ相談する際は、次の資料を準備します。
過去に放射線治療を受けている場合は、前回の照射範囲と線量が分かる資料が重要です。
放射線治療は、1回で終了する場合もあれば、複数回または数週間にわたって通院する場合もあります。
遠方の病院を選ぶ場合は、次のような負担も考える必要があります。
遠方の有名病院でなければ受けられない治療なのか、地域の病院でも対応できるのかを確認しましょう。
放射線治療だけ別の病院で受け、その後は紹介元の病院へ戻ることがあります。
その場合は、次の点を確認してください。
放射線治療後は、画像検査や症状の確認によって効果や副作用を評価します。
経過観察を放射線治療を受けた病院で行うのか、紹介元の病院で行うのかを確認しましょう。
治療後しばらくして現れる副作用への対応についても、相談先を確認しておくことが大切です。
病状によっては、放射線治療後も痛みや息苦しさなどへの継続的な対応が必要です。
次のような支援との連携も確認しましょう。
新しい装置にはさまざまな機能がありますが、すべての病変に適しているわけではありません。
病変の位置や大きさ、正常な臓器との関係によっては、別の照射方法が適している場合があります。
装置名ではなく、自分の病状に対してその方法を選ぶ理由を確認しましょう。
放射線治療の可否は、画像、病理検査、治療歴、全身状態などを確認して判断します。
診療情報や画像を確認する前から、治療できると断言する説明には注意が必要です。
治療による利益だけでなく、副作用や治療が適さない可能性についても説明があるか確認してください。
口コミでは、医師やスタッフの対応、待ち時間などを知ることができる場合があります。
一方、口コミを投稿した患者と、自分のがんの種類、病変、治療目的が同じとは限りません。
接遇に関する評価と、医学的に放射線治療が適しているかは別の問題です。
口コミだけでなく、医療機関が公開する診療体制や専門領域、実際に受けた説明をもとに判断しましょう。
大学病院やがんセンターでは、複数の診療科や専門職による治療体制が整っている場合があります。
一方、地域の総合病院にも放射線治療を専門とする医師や必要な設備があり、同様の治療を受けられる場合があります。
遠方の病院を選ぶ際は、治療内容だけでなく、通院負担、緊急時の対応、紹介元との連携も比較しましょう。
自由診療であっても、病変と正常組織の位置関係や患者の全身状態など、医学的な安全性の条件がなくなるわけではありません。
保険が適用されないことと、放射線治療が安全に実施できることは別です。
自由診療を検討する場合は、科学的根拠、考えられる副作用、総額費用、緊急時の対応体制などを確認してください。
大学病院やがんセンターでは、複数診療科の連携や、難しい病変を検討する体制が整っている場合があります。
一方、地域の総合病院でも、患者の病状に必要な治療を受けられることがあります。
病院の種類だけで決めず、自分の病変、治療目的、必要な診療科に対応しているかを確認してください。
装置によって機能や得意とする照射方法は異なります。
ただし、装置が新しいことだけで、治療効果や安全性が決まるわけではありません。
放射線治療医による適応判断、治療計画、品質管理、ほかの診療科との連携なども重要です。
症例数は病院の経験を判断する参考情報の一つです。
ただし、放射線治療全体の症例数だけでは、自分と同じ原発がん、転移部位、治療目的の経験が分からない場合があります。
件数だけで病院の優劣を判断しないようにしましょう。
多発転移がある場合でも、放射線治療について相談できます。
病変の個数だけでなく、大きさ、位置、全体の体積、症状、全身状態などを確認して適応を判断します。
すべての病変ではなく、症状や危険性の高い病変を優先して治療する場合もあります。
過去に治療を受けた病院とは別の医療機関へ相談できます。
ただし、再照射を検討する際には、過去の照射部位、総線量、治療回数、線量分布図などの資料が重要です。
別の病院へ相談すれば、必ず再照射できるわけではありません。
紹介状が必要かどうかは、医療機関や受診方法によって異なります。
セカンドオピニオンでは、診療情報提供書や画像データの提出を求められることが一般的です。
通常の初診でも、紹介状がない場合は追加の費用がかかることがあります。予約前に確認してください。
現在の治療方針について別の医師の意見を聞きたい場合は、セカンドオピニオンを利用します。
相談先で診察、検査、治療を受けたい場合は、通常の初診または転院として申し込みます。
セカンドオピニオンで治療可能と判断されても、自動的に転院になるわけではありません。
医療機関によって導入している装置や対応できる照射方法が異なるため、別の治療方針が示される場合があります。
一方、病変の位置や正常組織への影響など、医学的な理由によって、別の病院でも同じ判断になることがあります。
まずは、現在の医療機関で何が理由となって放射線治療が難しいのかを具体的に確認しましょう。
転移癌への放射線治療は、原発がん、転移部位、病変の数・大きさ・位置、症状、これまでの治療、全身状態などから個別に判断されます。
病院を選ぶ際は、知名度や特定の装置の有無だけでなく、放射線治療医が画像と治療歴を評価し、治療全体を検討できる体制があるかを確認することが大切です。
また、原発がんの担当科や腫瘍内科、外科、緩和ケア科などと連携し、薬物療法や手術を含めて治療方針を検討できるかも確認しましょう。
多発転移、過去に照射した場所への再照射、症状を和らげるための照射など、自分が相談したい内容に対応しているかも重要です。
治療を受けるか判断する際は、期待できる効果だけでなく、副作用、通院負担、代替治療、治療しない場合の見通しについても説明を受けてください。
現在の病院で示された治療方針について別の意見を聞きたい場合はセカンドオピニオン、相談先で検査や治療を希望する場合は通常の初診として申し込みます。
相談前には、紹介状、画像データ、病理検査結果、薬物療法歴、過去の放射線治療記録などを準備し、確認したいことを整理しておきましょう。