放射線治療を希望していたにもかかわらず、医師から「放射線を当てることは難しい」「放射線治療の対象にはならない」と説明されることがあります。
放射線治療を受けられないと聞くと、「もう治療法がないのではないか」「別の病院なら治療してもらえるのではないか」と不安になる方もいるでしょう。
しかし、「放射線治療ができない」という説明が、すべての病変に対して、あらゆる照射方法が使えないという意味とは限りません。
病変の位置や大きさ、転移の広がり、周囲の正常な臓器への影響、過去の放射線治療歴、患者の全身状態などによって、放射線治療が難しいと判断される理由は異なります。
定位放射線治療など希望していた方法だけが適さない場合や、根治を目的とした治療は難しくても、痛み・圧迫・出血などの症状を和らげる照射を検討できる場合もあります。
このページでは、放射線治療が難しいと判断される主な理由、主治医へ確認したいこと、別の照射方法や再照射、セカンドオピニオンについて解説します。
なお、放射線治療の適応は、患者ごとに個別に判断されます。現在受けている治療を自己判断で中止・変更せず、主治医や放射線治療を専門とする医師へ相談してください。
放射線治療では、がんの病変だけでなく、その周囲にある正常な組織にも一定量の放射線が当たります。
そのため、病変へ必要な放射線量を照射したときに、周囲の臓器へ重い障害が生じる可能性がある場合は、治療が難しいと判断されることがあります。
放射線治療は、技術的に放射線を当てられるかどうかだけではなく、治療によって期待できる利益が、副作用や身体への負担を上回るかを考えて実施されます。
がんの病変が、放射線の影響を受けやすい臓器や神経に近い場合は、必要な放射線量を安全に照射できないことがあります。
慎重な判断が必要となる部位には、次のようなものがあります。
正常な組織には、安全性を考慮して照射できる放射線量に限度があります。
病変へ十分な線量を照射すると、重い神経障害や臓器障害などが生じる可能性がある場合は、放射線治療が適さないと判断されることがあります。
病変が大きい場合や、がんが広い範囲へ広がっている場合は、放射線を照射する範囲も広くなることがあります。
照射範囲が広がるほど、周囲の正常な組織へ当たる放射線量も増えやすくなり、副作用のリスクが高くなる可能性があります。
この場合、1回で高い線量を照射する方法ではなく、複数回に分けて照射する方法が検討されることがあります。
また、先に薬物療法を行い、病変が小さくなった段階で放射線治療を再検討する場合もあります。
転移病変が多数ある場合や、複数の臓器に転移している場合は、すべての病変へ放射線を照射すると、治療範囲が広くなることがあります。
正常な臓器や骨髄への影響が大きくなると予想される場合は、放射線治療ではなく、薬物療法などの全身治療が優先されることがあります。
ただし、多発転移があるという理由だけで、すべての放射線治療ができないと決まるわけではありません。
病変の個数だけでなく、大きさ、病変全体の体積、位置、症状、原発がんの状態、患者の全身状態などを確認します。
すべての病変ではなく、強い痛みや麻痺などの原因となっている病変、生命や身体機能への影響が大きい病変を優先して照射する場合もあります。
過去に放射線治療を受けた部位へ、再び放射線を照射することを「再照射」と呼びます。
一度放射線治療を受けた正常な組織には、治療による影響が残っている場合があります。さらに放射線を照射すると、重い晩期副作用が生じる危険性が高まることがあるため、再照射は初回の治療よりも慎重に判断されます。
再照射の可否を判断する際は、主に次の項目を確認します。
過去に放射線治療を受けているという理由だけで、再照射が一律に不可能と決まるわけではありません。
一方、過去の照射記録がない場合や、正常組織への影響が大きいと考えられる場合は、安全な治療計画を立てることが難しくなることがあります。
放射線治療そのものは手術と比べて身体への負担が小さい場合がありますが、治療期間中に通院し、治療台の上で同じ姿勢を保つ必要があります。
次のような状態では、治療による負担が大きいと判断されることがあります。
この場合は、放射線治療よりも、症状を早く和らげる治療や支持療法、緩和ケアが優先されることがあります。
放射線治療が技術的に可能であっても、患者の病状に対して、ほかの治療の方が高い効果を期待できる場合があります。
例えば、次のような治療が優先されることがあります。
放射線治療を行わないという判断は、何も治療しないという意味ではありません。
病変に放射線を当てること自体は可能でも、がんを十分に制御できる可能性が低い一方で、重い副作用が生じる危険性が高い場合があります。
その場合は、放射線治療を行う利益よりもリスクが大きいと判断され、治療が勧められないことがあります。
治療を希望する際は、「放射線を当てられるか」だけでなく、次の点を確認することが重要です。
医師から「放射線治療は難しい」と説明された場合は、何が、どのような理由で難しいのかを具体的に確認しましょう。
| 受けた説明 | 確認したいこと |
|---|---|
| 放射線治療はできない | すべての病変が対象外なのか、一部の病変だけが対象外なのか |
| 定位照射はできない | 通常の分割照射や別の照射方法は検討できるか |
| 根治を目的とした照射は難しい | 痛みや圧迫などの症状を和らげる照射は可能か |
| 再照射はできない | 過去の線量、照射範囲、経過期間を確認したうえでの判断か |
| 転移が多いため難しい | 症状や危険性の高い病変だけでも治療できないか |
| 今は放射線治療を行わない | 薬物療法などを行った後に再評価する可能性があるか |
一つの病変への放射線治療が難しくても、ほかの病変は治療対象になる場合があります。
特に複数の転移がある場合は、病変ごとに大きさ、位置、正常組織との関係が異なります。
次のような点を、画像を見ながら説明してもらいましょう。
定位放射線治療や1回で行う照射が難しくても、通常の分割照射など、別の方法を検討できる場合があります。
例えば、大きな病変では、1回に高い線量を照射するのではなく、数回に分けて治療することがあります。
また、特定の装置ではなく、別の装置や照射方法を用いることで、治療計画を作成できる場合もあります。
ただし、照射方法や装置を変更すれば必ず治療できるわけではありません。
放射線治療には、がんの根治や長期的な制御を目指す治療と、痛み・圧迫・出血などの症状を和らげる治療があります。
根治を目的とした十分な線量を照射することは難しくても、症状の軽減を目的とした治療を検討できる場合があります。
治療の目的によって、放射線量、照射回数、治療範囲が異なることがあります。
「根治できない」という説明を、「放射線治療を受ける意味がない」と受け取らず、症状緩和を目的とした治療についても確認してください。
放射線治療には、さまざまな装置や照射方法があります。
装置によって、放射線を当てる方向、対応できる治療範囲、治療時の固定方法などが異なります。
また、定位放射線治療や強度変調放射線治療などでは、病変へ放射線を集中させながら、周囲の正常組織へ当たる線量を抑えることを目指します。
別の装置を使用すれば、異なる治療計画を検討できる場合があります。
一方、病変と重要な臓器との位置関係や、過去に照射された放射線量は、装置を変えてもなくなるものではありません。
また、患者の全身状態や、放射線治療によって期待できる効果も、治療の適応に関係します。
「この装置なら、他院で断られた患者でも必ず治療できる」と考えるのではなく、自分の病変に対して安全で適切な治療計画を作成できるかを確認することが重要です。
医療機関によって、導入している装置、対応している照射方法、診療体制などが異なります。
そのため、別の医療機関では、異なる照射方法や治療方針が提示される場合があります。
一方、正常組織への影響や全身状態など、医学的な理由によって、別の医療機関でも同じ判断となる場合があります。
判断が異なることは、どちらかの医師が誤っているという意味とは限りません。治療の目的、期待できる効果、副作用の捉え方などによって、提案が異なる場合があります。
がんを根治するための放射線治療が難しい場合でも、痛みや圧迫、出血などの症状を和らげる目的で照射を検討できることがあります。
骨転移による痛みに対し、症状の緩和を目的として放射線治療が行われることがあります。
骨折の危険性が高い場合は、放射線治療だけでなく、整形外科的な手術や固定などが検討されることもあります。
鎮痛薬、骨修飾薬などを組み合わせて治療する場合もあります。
脊椎転移などによって、神経や脊髄が圧迫されると、しびれ、筋力低下、歩行障害、排尿・排便障害などが現れることがあります。
神経障害が進行すると、治療後も機能が十分に回復しない可能性があります。
症状や病変の状態によって、手術や放射線治療、薬物療法などが検討されます。
がんが気道を圧迫すると、息苦しさや呼吸困難が現れることがあります。
また、食道や消化管が圧迫されると、食べ物を飲み込みにくい、食事が通らないといった症状が生じることがあります。
放射線治療のほか、ステント、手術、内視鏡治療などが検討される場合もあります。
がんからの出血を抑える目的で、放射線治療が行われることがあります。
照射できるかどうかは、出血している部位、病変の大きさ、患者の全身状態などによって判断されます。
突然の麻痺、歩行困難、排尿・排便障害、意識障害、強い呼吸困難、大量の出血などがある場合は、記事を読み続けるのではなく、速やかに医療機関へ連絡してください。
放射線治療が適さない場合でも、ほかの治療や症状を和らげるケアを検討できる場合があります。
| 選択肢 | 主な内容 |
|---|---|
| 薬物療法 | 抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などを用いて、原発巣や全身の転移病変を治療します。 |
| 手術 | 病変を切除するほか、神経や気道などへの圧迫を解除する目的で行われる場合があります。 |
| その他の局所治療 | 病変の部位や状態に応じて、焼灼、凍結、カテーテル治療などを検討します。 |
| 支持療法 | 治療による副作用や、がんによる合併症を予防・軽減します。 |
| 緩和ケア | 痛み、息苦しさ、不安などのつらさを和らげ、患者と家族の生活を支えます。 |
| 治験・臨床試験 | 参加条件を満たす場合に、新しい治療法を検証する試験への参加を検討します。 |
複数の転移がある場合や、広い範囲に病変がある場合は、全身へ作用する薬物療法が優先されることがあります。
がんの種類や遺伝子・バイオマーカー検査の結果によって、抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬、ホルモン療法などが検討されます。
薬物療法によって病変が小さくなった場合に、改めて放射線治療を検討することもあります。
病変が限られている場合や、圧迫を早急に解除する必要がある場合は、手術が検討されることがあります。
病変の部位によっては、焼灼治療、凍結治療、カテーテル治療などが選択肢になる場合もあります。
どの治療が適しているかは、病変の位置や大きさ、全身のがんの状態などによって異なります。
放射線治療ができない場合でも、痛みや息苦しさなどの症状に対する治療やケアがなくなるわけではありません。
症状に応じて、次のような対応が行われます。
緩和ケアは、積極的ながん治療が終了した後だけに受けるものではありません。薬物療法や放射線治療などと並行して利用できます。
放射線治療が難しいと説明されたときは、理由と、ほかに検討できる方法を具体的に確認しましょう。
セカンドオピニオンとは、現在の主治医とは別の医師から、診断や治療方針について意見を聞くことです。
現在の医師の判断が正しいかどうかだけを確認するものではなく、提案された治療の理由を理解し、ほかに検討できる選択肢があるかを整理する目的でも利用できます。
セカンドオピニオンは、必ずしも転院を前提とするものではありません。別の医師の意見を現在の主治医へ持ち帰り、今後の治療について相談できます。
次のような場合は、セカンドオピニオンを検討することがあります。
一般的に、次のような資料を準備します。
過去に放射線治療を受けている場合は、次の記録も準備します。
再照射の可否は、「以前に放射線治療を受けた」という情報だけでは正確に判断できません。
過去にどの範囲へ、どの程度の放射線量を照射したかを確認し、今回の治療で正常組織へ加わる放射線量を評価する必要があります。
過去の照射記録が手元にない場合は、以前治療を受けた医療機関へ記録の提供を依頼することがあります。
医療機関によって、導入している装置や対応可能な照射方法が異なるため、別の治療方針が提示される場合があります。
一方、正常組織への影響や全身状態など、医学的な理由から、別の医療機関でも同じ判断となることがあります。
セカンドオピニオンは、治療を受けられることを保証するものではありません。放射線治療が難しい理由を理解し、ほかの選択肢を整理する機会として利用しましょう。
放射線治療の適応や治療方法は、放射線治療を専門とする医師が、画像、病理検査、治療歴、患者の全身状態などを確認して判断します。
相談する医療機関を選ぶ際は、放射線治療医が実際に資料を確認し、診察したうえで意見を示す体制があるかを確認しましょう。
放射線治療には、次のような照射方法があります。
特定の装置があるかだけではなく、自分の病変に対して複数の照射方法を比較し、適切な方法を検討してもらえるかを確認してください。
転移癌の治療では、放射線治療だけでなく、薬物療法、手術、症状緩和などを組み合わせる場合があります。
必要に応じて、次のような診療科が連携できる体制があるかを確認しましょう。
治療を受けるかどうかを判断する際は、次の内容について説明を受けることが大切です。
医療機関によって、導入している装置や対応できる照射方法が異なるため、別の治療方針が提示される場合があります。
一方、病変と正常組織との位置関係や過去の照射線量など、医学的な理由によって、別の医療機関でも同じ判断となることがあります。
別の病院へ相談すれば必ず放射線治療を受けられるわけではありません。
転移の個数だけで、放射線治療の可否が決まるわけではありません。
病変の大きさ、全体の体積、位置、症状、正常組織への影響、全身状態などを踏まえて判断されます。
すべての病変ではなく、症状や危険性の高い病変を優先して照射する場合もあります。
過去に放射線治療を受けた場所への再照射が、一律に不可能と決まるわけではありません。
過去の放射線量、照射範囲、治療から経過した期間、正常組織の状態などを確認して判断されます。
再照射では、過去の照射記録を準備することが重要です。
ガンマナイフによる治療が難しくても、病変の状態によっては、リニアックなどを用いた別の照射方法が検討されることがあります。
ただし、装置を変更すれば必ず治療できるわけではありません。病変の大きさ、位置、正常組織との関係、治療目的などから判断されます。
放射線治療は、根治だけでなく、病変の増大を抑えたり、痛み・圧迫・出血などの症状を和らげたりする目的で行われる場合があります。
治療を受ける意味は患者の病状によって異なるため、期待できる効果と身体への負担を確認してください。
セカンドオピニオンは、必ずしも転院を前提とするものではありません。
別の医師の意見を現在の主治医へ持ち帰り、今後の治療について相談できます。
自由診療であっても、正常組織への影響や患者の全身状態など、医学的な安全性の問題がなくなるわけではありません。
保険が適用されないことと、医学的に治療可能であることは別の問題です。
自由診療を検討する際は、治療の科学的根拠、期待できる効果、副作用、総額費用、緊急時の対応体制などを確認してください。
「ほかの病院で断られた場合でも必ず治療できる」といった説明には注意が必要です。
放射線治療が難しいと判断される理由は、患者ごとに異なります。
病変が重要な臓器の近くにある場合、広い範囲に広がっている場合、過去の照射による影響が残っている場合、全身状態から治療の負担が大きい場合などがあります。
放射線治療を断られたと感じたときは、すべての病変が対象外なのか、希望した照射方法だけが難しいのか、根治目的だけが難しいのかを具体的に確認することが大切です。
根治を目指す照射が難しくても、痛みや圧迫などの症状を和らげる治療を検討できる場合があります。
また、放射線治療が適さない場合でも、薬物療法、手術、その他の局所治療、支持療法、緩和ケアなどを確認できます。
現在の説明だけでは判断が難しい場合や、別の照射方法・再照射の可能性を確認したい場合は、放射線治療を専門とする医師へセカンドオピニオンを求めることも選択肢です。