いちから分かる癌転移の治療方法ガイド

いちから分かる癌転移の治療方法ガイド » 癌の転移に負けない治療方法について » 皮膚がんの症状や転移、治療法について

皮膚がんの症状や転移、治療法について

このページでは、皮膚がんの基礎知識や症状、治療法などについて詳しく解説しています。

皮膚がんとは

皮膚がんとは、上皮(表皮)と真皮から構成される皮膚組織に発生する癌のことです。代表的なものは有棘細胞がん、基底細胞がん、悪性黒色腫、乳房外パジェット病ですが、これらの病気は上皮系のがんに分類されます。

皮膚がんには上皮系のがんの他、肉腫と呼ばれるものもあり、これには隆起性皮膚線維肉腫や血管肉腫が該当します。このように、皮膚がんは大きくわけて上皮系と肉腫系がありますが、この中間に位置するのが真皮の中に生じる生じる癌で、毛包がん、脂腺がん、汗腺がんはこれに該当します。

皮膚組織はいくつかの段階に分かれており、どの組織に発生するかで皮膚がんの種類も異なります。発症の原因ですが、詳細なメカニズムはいまもはっきり分かっていません。ただし膨大な研究の結果、複数の原因があると考えられています。

代表的なものは太陽光に含まれる紫外線ですが、これ以外にも、慢性的な炎症や刺激、ポリオーマウイルスやパピローマウイルスなどウイルスが関係している可能性もあり、一つの原因に特定することはできず、癌の種類によって原因が違うなど、詳らかではないというのが実情です。

さらに皮膚がんの原因と考えられているものには、慢性皮膚病巣や慢性完成病巣などの病変、ヒ素をはじめとする化学物質、喫煙の習慣などもあります。

皮膚がんの症状

皮膚がんの症状は、ほくろやシミ、潰瘍などの形で出現し、肉眼で見ることができるので、早期発見に繋がりやすいといわれています。ただし、悪性のものは普通のほくろとは異なる特徴を持っているので、注意深く見ておく必要があります。

皮膚がんの症状として気を付けるべきものは、

といったものです。

このうち日本人に最も多いとされているのが末端黒子型黒色腫で、最初は褐色のシミだったものが色調が変化して一部だけ濃くなったりするなど、色や形状が変容する特徴を持っています。

また一部だけ潰瘍ができたりすることもあるので、注意が必要です。表在拡大型黒色腫はもともと白人に多い病型とされていますが、最近は日本人の間でも発症が増えていると言われています。特徴は、色調がまだらで輪郭が不整なシミができること、しかもそのシミが平坦ではなくわずかに盛り上がっていることです。

結節型黒色腫は全身のどこでも発生する症状といわれ、初期段階から立体構造をしています。一方、高齢者に多いとされるのが悪性黒子型黒色腫で、こちらは色調の変化がとても激しく、日光に当たりやすい顔や首、手背などに発生するのが特徴です。このように皮膚がんの症状は、発生場所によって現れ方が異なります。

皮膚がんの治療法

皮膚がんの治療法は多岐にわたり、それぞれの症状や進行具合で最適な手法が選択されます。例えば、再発や転移が発生する可能性のある有棘細胞がんの場合に適用されるのは、外科手術によって癌を切除する「外科療法」です。

高齢者や持病を持っているなど、健康状態や体力に不安がある患者に対しては、がん細胞を凍結壊死させる「凍結療法」が用いられることもあります。また、がんがある程度進行し手術が不可能な場合に行われるのは、電子線やエックス線を照射する「放射線療法」です。

そして同じくがんがある程度進行していた場合に全身療法として行われる、ペプロマイシンやシスプラチン、アドリアマイシン、5-FUなどを使用する「化学療法」もあります。この化学療法は初期段階には行われないこと、また吐き気や発熱などの副作用を伴うのが特徴です。

そしてこれらに加えて、複数の治療を組み合わせて行う「集学的治療」もあります。その特色は、一つの治療法にこだわらず、がんの状態や具合に応じて適切な治療法を取捨選択することです。

以上が皮膚がんで行われる治療法ですが、治療の第一歩が患者による「気づき」であることは言うまでもありません。通常とは異なるほくろや潰瘍を発見した場合は、そのまま放置せず、すぐに皮膚科専門医療機関を受診する必要があります。

皮膚癌のステージ分類

病期 説明
0期 がん細胞が上皮内にとどまっている場合
ⅠA期 他の部位やリンパ節への転移がなく、がんの厚さが1㎜以下で、潰瘍がない場合
ⅠB期 他の部位やリンパ節への転移がないのが前提条件で、がんの厚さが1㎜以下であるものの潰瘍がある場合、もしくはがんの厚さが1~2mmで潰瘍がない場合
ⅡA期 他の部位やリンパ節への転移がないのが前提条件で、がんの厚さが1~2mmで潰瘍がある、またはがんの厚さが2~4mmで潰瘍がない場合
ⅡB期 他の部位やリンパ節への転移がないのが前提条件で、がんの厚さが2~4mmで潰瘍がある、またはがんの厚さが4mmを超えるが潰瘍がない場合
ⅡC期 他の部位やリンパ節への転移がないのが前提条件で、がんの厚さが4mmを超えて潰瘍がある場合
Ⅲ期 他の部位やリンパ節への転移が認められるものの、他の臓器への転移がない場合
Ⅳ期 がんの厚さなどに関係なく、他の臓器への転移がある場合

ステージの分類方法

皮膚がんのステージ分けのポイントとなるのは、リンパ節への転移があるかどうか、がんの厚さはどうか、潰瘍があるかどうか、他の臓器への転移があるかなど。これらの状況を上記項目の表などの基準に当てはめながら、総合的に判断してステージ分けが行われます。

ステージで異なる治療方針

外科療法

簡単に言うと手術で病巣を除去する方法です。原発巣だけでなく、他の部位に転移した転移巣も取り除く方法で、がんの治療法として最も基本的といえる治療法となります。皮膚がんの手術では、見えているがんの部分だけではなく、その原発巣からおよそ1~2㎝ほど離れた部分まで切除するのが一般的。切除する深さについては、ステージによって異なります。ただし、切除した部分が悪性であるかどうかの判断がつきにくい場合には、黒く変化した見えているがんの部分だけを切除し、病理医による病理診断が必要となるケースも。また、切除した範囲が大きく、皮膚を縫い合わせられない場合は、別の部位から適切なサイズの皮膚を移植することがあります。

化学療法

抗がん剤を利用してがん細胞の増殖を抑えながら、がん細胞を破壊する治療法。体のどこにがん細胞があっても攻撃することができるのが大きなポイントです。

放射線療法

腫瘍の成長を遅らせる目的や縮小させるために放射線を使用する治療法です。がんの局所療法であるため、全身への影響が少なく、高齢者にも適応できる患者にやさしいがん治療法となっています。がんに侵された臓器の機能と形態の温存ができるのも見逃せないポイントです。

免疫療法

上記で紹介した三大治療法に加えて、近年「第4の治療法」として期待されているのがこちらの免疫療法です。免疫療法は、研究が進められているものの、有効性が認められた免疫療法は免疫チェックポイント阻害剤などの一部に限られているというのが現状。自由診療で行われている免疫療法には効果が証明されていない免疫療法もありますので、慎重に確認しなければなりません。