ここでは、大腸がんの治療法としての放射線治療(トモセラピーなど)について解説しています。トモセラピーの目的、方法、副作用などについて詳しくまとめました。
大腸がんには、結腸がんと直腸がんの2種類があります。これらのうち、結腸がんに対して放射線治療が選択されることは、ほとんどありません。通常、放射線治療は、直腸がんに対して行われます。以下、大腸がんに対する放射線治療の目的を確認してみましょう。
大腸がんの治療には手術が第一選択とされますが、術前に病巣を少しでも小さくしておく目的で放射線治療が行われることがあります。同じ目的で化学療法(抗がん剤治療)が併用されることもあります。また、2020年以降、直腸がんに対しては、手術前に放射線治療と化学療法をあらかじめ実施する「Total Neoadjuvant Therapy(TNT)」という治療戦略が採用されることも増えています。
結腸がんも直腸がんも、骨や肺に転移する例が多く見られます。これら転移先の治療を行う目的で、放射線治療が選択されることがあります。
大腸がんの手術において、病巣が完全に取り除かれる保証はありません。一部のがん細胞が残ってしまった場合、再発の恐れがあります。
術後、がん細胞の取り残しの可能性を排除し、再発を予防する目的で放射線治療が行われます。
がんの根治が難しいと判断された場合、病巣における痛みや周辺組織への影響を緩和させ、患者のQOLを高める目的で放射線治療が行われることがあります。特に骨転移における痛みの緩和に有効です。
大腸がんにおける放射線治療の具体的な方法を確認してみましょう。
CT画像をもとにして治療計画のもと、GTV(Gross Tumor Volume:画像上で明らかに腫瘍と認められる範囲)を定め、それに周囲のリスク部位を含むCTV(Clinical Target Volume)、さらには位置ずれを考慮したPTV(Planning Target Volume)を設定し、放射線を照射します。進行した直腸がんに対しては、外腸骨リンパ節領域も含めた範囲に対して放射線が照射されます。
術前照射(腫瘍を小さくする目的の放射線治療)においては、通常、40~50Gyの放射線を20~28回に分けて照射します。術後照射(再発予防など)においては、50Gyの放射線を25~28回に分けて照射します。
術後に病変が残存していた場合には、極力腸に放射線が触れないよう注意しながら、病変に対してピンポイントで60Gyまでの放射線を照射することがあります。なお60Gyの放射線照射に代わって、最初に40Gyの放射線を全骨盤に照射し、その後20Gyの放射線を病変部に照射する、という方法を選択している医療機関もあります。照射線量や範囲は、患者ごとの状態や腫瘍の進展度に応じて個別に決定されます。
放射線治療は、抗がん剤と同様、副作用が出やすい治療と言われています。主に放射線を照射させた部位に副作用が生じますが、中には全身的に副作用が生じる患者もいます。
副作用の発症時期に応じ、急性期副作用(治療期間中・治療直後に生じるタイプ)と晩期副作用(治療から半年以上経ってから生じるタイプ)の2種類の副作用がありますが、発症時期や発症の程度については個人差があると理解してください。
以下、大腸がんの放射線治療における主な副作用を確認します。
腸に放射線を照射する以上、腸の働きに何らかの副作用が生じても不思議ではありません。具体的には、放射線の影響により腸炎が生じ、下痢や軟便を自覚することがあります。副作用を感じている場合には、消化の良い食べ物を摂るようにしましょう。医師から整腸剤を処方されることもあります。
胃腸に放射線治療を施すと、食欲不振の症状が現れることがあります。治療のスピードを早めるためにはカロリーが必要なので、食欲不振の際には、たとえ少量であってもなるべくカロリーの高いものを食べることが大切。食欲が全く湧かない場合には、医師に相談をしましょう。
大腸がんや胃がんなどの放射線治療を受けた後、吐き気や嘔吐を起こすことがあります。症状が著しい場合には吐き気を抑える薬を処方してもらうなど、何らかの対策が必要かも知れません。
放射線を照射した部位に関わらず、治療中や治療後に全身の倦怠感を自覚することがあります。身体的な倦怠感のほかにも、精神的な倦怠感(無気力など)を訴える患者もいるようです。症状を自覚したときには仕事や家事などを無理せず、ゆっくりと体を休めるようにしましょう。
腹部の皮膚に炎症を生じることがあります。具体的には、赤み、かゆみ、痛みなどです。放射線の治療中や治療直後は皮膚が敏感になっているため、当該部位に直射日光を浴びたり、化粧品や香水を使ったりすることは避けるようにしてください。
アメリカで開発された放射線治療装置「トモセラピー」。トモセラピーを使った治療は2002年から行われるようになり、今では世界各国の医療機関で導入されています。トモセラピーが他の放射線治療装置と違うのは、CT検査のように患者の周りを装置が回転しながら、いくつもの細い放射線のビームを組み合わせて治療を行う点。これにより治療をしたい部分に沿った線量分布を描くことができ、影響を避けたい部分にはなるべく放射線が照射されないようにできます。
大腸がんにおける放射線治療の目的は、骨盤内の再発を抑える「予防目的」とがんの症状を抑える「緩和目的」がほとんど。予防目的とは、一度、施術でがんを除去したものの、目視では確認できないレベルのごくわずかな細胞によって再発を防ぐために行われます。そのため、切除することが可能な直腸がんに対してはトモセラピーが行われますが、結腸がんの治療ではほとんど用いられません。ただし、現在ではトモセラピー以外にも、VMATやトゥルービームなど高精度な装置が用いられることも多くなっています。
スタンフォード大学のジョン・アドラー教授によって開発された放射線照射装置が「サイバーナイフ」です。腫瘍へのピンポイント照射に特化しているのが特徴。コンピューター制御によって治療をする様子が、まるでナイフを使って手術をしているように見えることからこの名前が付けられています。もともと産業用ロボットだったのを医療用として応用したサイバーナイフ。ロボットのアーム部分に取り付けられたX線を発生させる装置がさまざまな角度から腫瘍をめがけて集中的に狙い撃ちにします。0.5mm以下という細かな精度での治療が可能です。
サイバーナイフは、脳腫瘍などの頭頸部や肺、肝臓の治療を得意としているため、大腸がんの治療で使用されることはほとんどありません。ただし、転移性腫瘍(特に脳・骨など)へのピンポイント治療には選択されることがあります。
「ガンマナイフ」とは、定位放射線治療を行う放射線照射装置の1つ。約200個ある線源をヘルメットのような形に並べ、この線源を緻密にコントロールしながら腫瘍にピンポイントでガンマ線を集中照射する方法です。1つひとつの線源から出されるガンマ線は細くてそれほどの強さはありませんが、それぞれが腫瘍をめがけて照射されるので、腫瘍には大きな効果をあげることができます。
ガンマナイフは主に脳腫瘍をはじめとする頭頸部の治療に使用され、大腸がんの治療に使われることはほとんどありません。ただし、大腸がんが脳へと転移した場合には、化学療法の効果が期待しづらいため、ガンマナイフによる定位放射線治療が行われることもあります。
「トゥルービーム」は、定位放射線治療や強度変調放射線治療などを短時間かつ高精度で行うことができるX線照射装置。以前までの放射線治療装置で肺をはじめとする呼吸で動く臓器を治療する場合、患者は呼吸を一時的に止めたりしなければなりませんでした。しかし、トゥルービームには臓器の動きを追いかけるシステムが搭載されているため、治療中に呼吸を止める必要がなく、患者への肉体的な負担を減らせます。
いくつかあるトゥルービームの機種の中でも一般的なのは「TrueBeam STx」。この装置は、放射するビームを自由な形に成形することができるため、正常な細胞へのダメージを最小限に抑えつつ、標的とするがん細胞へピンポイントの照射が可能。保険が適用されるため、コストパフォーマンスの良さも魅力です。
トゥルービームはほとんどの臓器に使用することができ、大腸がんの治療にも適用されます。