多角的なアプローチで転移癌の患者を治療する船橋市立医療センター
千葉県船橋市にある船橋市立医療センターは、高精度放射線治療装置を活用した放射線治療や、手術支援ロボットを活用した低侵襲手術など、積極的な設備導入と専門知識を持つ医師の活躍によって高品質の癌治療を追求しています。
船橋市立医療センターの放射線治療科常勤医であり、部門を統括する部長として務めている有賀隆医師は、日本医学放射線学会放射線科専門医や日本医学放射線学会研修指導者といった資格を有する放射線治療の専門家。また医学博士として臨床研究にも尽力している医師です。
第一種放射線取扱主任者として放射線治療装置に関する専門知識も有しており、患者のために切らない治療として強度変調放射線治療や回転型強度変調放射線治療といった高精度放射線治療を実践しています。
船橋市立医療センターは千葉県の東葛南部二次医療圏における「がん診療連携拠点病院」として指定されており、地域の医療機関や医師と連携しながら癌治療ネットワークの中心的存在の役割を果たしています。
先進治療を含めた多角的な癌治療の他にも、癌患者や家族に対する心身のケアや相談サポートなど、包括的な支援体制を構築することで地域の人々の健康を支えていることが重要です。
船橋市立医療センターでは2018年に高精度放射線治療装置「リニアック」を導入しており、定位放射線治療や強度変調放射線治療といった、従来の放射線治療よりも一層に治療効果や患者への安全性が高められた放射線治療を実践しています。
また、船橋市立医療センターでは放射線治療装置を使った外照射による治療だけでなく、放射性同位元素内用療法を活用した治療プランについて、前立腺癌骨転移患者を対象として提供しており、治療プランの選択肢が広いことも重要です。
定位放射線治療は、あらかじめ癌治療計画用CTを使って患者の体内を画像診断し、癌の位置や形状、サイズなどを特定した上で、多方向から癌病巣への放射線照射を行う治療法です。1方向から照射する放射線レベルを抑えて正常組織などへの被曝ダメージを低減しつつ、癌の形状に合わせた照射をピンポイントで行えるため、従来の放射線照射よりも治療効果を期待できることがメリットとなります。
多方向から放射線をまとめて照射するため、癌病巣に対しては高レベルの放射線を集中させることが可能であり、従来の放射線照射より照射回数や治療期間を減らせることも期待できます。
定位放射線治療では特定の癌へピンポイントで放射線照射を行いますが、患者が動いてしまうと放射線照射の狙いがずれてしまって十分な治療効果を期待することができません。特に肺癌や肝癌といった臓器への癌に関しては、呼吸や臓器の動きなど患者の意識では動きを止められないため、少しでも動きを抑えて正確な照射を追求できるように取り組むことが重要となります。
体幹部定位放射線治療では専用固定具などを利用して、患者の動きを抑えながら放射線照射の精度を高めることが可能です。
強度変調放射線治療とは、癌の形状に合わせて多方向かつ放射線のレベルを調整しながら外照射を行う放射線治療です。
癌組織はそもそも綺麗な円形や球体をしておらず、歪な形状になっていることが少なくありません。そのため、強度変調放射線治療ではあらかじめ行った画像診断の結果にもとづき、癌の形状に合わせて放射線照射のレベルを調整し、より一層に癌病巣だけをターゲッティングした放射線照射を行えるように治療プランを策定します。
また、強度変調放射線治療の発展型として、船橋市立医療センターではVMATといった放射線治療も実践されていることが特徴です。
VMATとは回転型強度変調放射線治療とも呼ばれ、従来の固定型強度変調放射線治療に治療装置の回転動作を加えた治療法となります。
具体的には、治療機のガントリーが患者の周囲を回転しながら、あらかじめ策定しておいた放射線照射計画にもとづいて適切なレベルの放射線照射を行うといった方法となります。
従来の強度変調放射線治療よりも効率的に放射線照射を行えるため、短時間の照射で済むことが強みです。
VMATは、IMRT(Intensity Modulated Radiation Therapy;強度変調放射線治療)を治療機のガントリーを回転しながら行う技術です。従来の固定多門型のIMRTより短時間で分布良く治療を行えることが特徴です。
対象:前立腺癌、子宮頸癌、頭頸部癌、脳腫瘍その他、限局性固形悪性腫瘍が健康保険適用となっています。
引用元:船橋市立医療センター
https://www.mmc.funabashi.chiba.jp/radiation-therapy/shinryo.html
船橋市立医療センターでは外科的アプローチによって癌治療の精度を高められるよう、手術支援ロボット「ダヴィンチ」を導入して、内視鏡を使った低侵襲手術と開腹手術による治療効果の2つのメリットを融合させた外科手術を実践しています。
ダヴィンチによる支援下での外科手術では、執刀医が直接に患者の体へ触れるのでなく、デジタルカメラと高精細モニターによって拡大表示される病巣を観察しながら、ロボットアームを制御するコントローラーを操作して手術を行うことが特徴です。
手術支援ロボットには複数のロボットアームが搭載されており、通常の人間の体では再現できない精密かつ自由度の高い動きを実現できることがポイントです。これにより、ロボット手術では小さな術野でも効率的な手術を行えるようになるため、患者の肉体的ダメージを抑えつつ手術品質を高めることができます。
また、アームの先端に搭載されているデジタルカメラと高精細モニターが術野を拡大することで、微細な癌病巣の切除や観察が肉眼よりも行いやすくなるといったメリットも無視できません。
ダヴィンチには人間の手ぶれを抑制して、安定した手技をサポートするための機能が搭載されています。このおかげで精密な手術を実施することが可能となっており、人間の生理的な不安定さやリスクといったものが軽減されることは重要です。
また、ダヴィンチを活用するメリットとして、執刀医がリモート環境で手術を実施できるといったものもあります。
近年、消化器外科領域では、創が小さく患者さんへの負担が小さい腹腔鏡手術が急速に広がり、当院でも多くの術式で行われ、一般的な手術方法になっています。しかし高度な技術が必要となるため、その欠点を補うために、ロボット支援手術が登場しました。ダヴィンチ手術は、従来の腹腔鏡手術にロボットの機能を組み合わせて発展させた進化版といえます。創は腹腔鏡手術と基本的に同じで、お腹に小さな孔を開けてそこからカメラや手術器具がついたロボットアームを挿入し、執刀する医師が、遠隔操作で手術支援ロボット「ダヴィンチ」を操作して手術を行います。
引用元:船橋市立医療センター
https://www.mmc.funabashi.chiba.jp/digestive-organ-surgery/shinryo.html
船橋市立医療センターで放射線治療を受ける流れについてまとめました。
日本医学放射線学会の放射線治療専門医や放射線診断専門医が連携して、患者ごとの放射線治療の適応性を評価。また、必要に応じて治療計画用CTを使った画像診断などを行い、具体的な治療計画の策定へと進んで行きます。
考案した放射線照射計画の有効性や安全性などを検討した上で、問題ないと認められれば放射線照射を実施します。なお、放射線照射はリアルタイムの画像確認も併用しており、状況次第で照射計画が見直される可能性もあります。
放射線治療後に診察を行って、治療効果の確認や検証を行います。なお、治療効果が認められていないと診断された場合、改めて照射を行うか、他の治療プランへ進むかといった話し合いが行われます。
初診時にはかかりつけ医からの紹介状を持参することが必要です。
診療日は平日となっており、予約のない人や初診時は午前8時半から午前11時に診療受付を行うようにしてください。なお、診察の最後に再診の予約を行っている人は、予約時間の受付で構いません。
船橋市立医療センターでは保険適用の癌治療が提供されています。なお、紹介状を持っていない場合、別途「非紹介患者初診加算料」が必要です。
船橋市立医療センター | |
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診療科目 | 呼吸器内科、消化器内科、循環器内科、代謝内科、緩和ケア内科、腫瘍内科、脳神経内科、腎臓内科、精神科、リウマチ・膠原病部門、小児科、外科・消化器外科、乳腺外科、整形外科、形成外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻いんこう科、リハビリテーション科、放射線診断科、放射線治療科、病理診断科、麻酔科・集中治療部、歯科口腔外科、救急救命センター・救急科、内視鏡部、臨床研修センター、臨床研究部 |
診療時間 | (診療受付時間)平日午前8時30分~午前11時 |
休診日 | 土・日曜、祝休日、12月29日~翌1月3日 |
所在地 | 千葉県船橋市金杉1-21-1 |
電話番号 | 047-438-3321 |
ベッド数 | 449床(2023年5月18日調査時点) |
年間治療患者数 | 悪性腫瘍の手術件数:1,029件、がんに係る薬物療法のべ患者数:1,374人、放射線治療のべ患者数:422人(2020年1月1日~12月31日までの実績) |
対応可能な治療方法 | 手術治療、放射線治療、化学療法など |
設備 | 手術支援ロボット「ダヴィンチ」、放射線照射装置「リニアック」、治療計画用CT、MRIなど(2023年5月18日調査時点) |
URL | https://www.mmc.funabashi.chiba.jp/ |