骨への転移は、肺癌や乳癌から多く見られます。このページでは骨へ転移する場合の特徴や治療方法などをまとめました。
骨転移が見られる臓器のうち、肺癌の場合は骨盤や大腿骨、腰椎、胸椎など体の中心部の骨に移るケースがほとんどです。乳癌が転移を起こす時は骨に移動することが最も多いと言われており、胴体部だけでなく、頭蓋骨や手足の骨にも転移します。
肝臓癌の場合、胸椎・腰椎などの椎骨や体幹の要である骨盤に転移しやすいとされています。従来は骨転移の頻度は低いと考えられていましたが、2020年以降、免疫チェックポイント阻害薬などによる治療成績向上に伴い、骨転移を経験する患者が増加しているとの報告もあります。転移癌の中には骨芽細胞を刺激して骨を硬くするものがあるため、柔軟性を失って骨折が起こりやすくなります。
転移した部分に痛みやしびれが起こるのが主な症状。骨が非常に弱くなることも分かっています。骨の中のカルシウムが血中に流れ出すことで高カルシウム血症という状態になってしまうのです。すると、少し衝撃を受けただけでも骨折してしまうようになります。
骨に転移しても痛みがすぐに強く出ることはありませんが、早急に対策できない方は十分に注意する必要があるでしょう。脊髄に転移した場合は、筋力の低下や手足にしびれを感じる方も多数。状態が悪化すると麻痺にもつながります。
骨転移が起こると腰や肩、背中あたりに痛みが生じることがあります。転移部分の骨がもろくなり、小さな衝撃を受けるだけで骨折しやすくなるというのも症状の一つです。背骨に転移した場合、大きくなった腫瘍に脊髄が圧迫されて、しびれを感じることもあります。また、しびれだけでなく痛みを感じる方も。骨転移が原因で高カルシウム血症になり、脱水症状につながることもあります。
体幹部分の骨に腫瘍ができると、麻痺やしびれなどが起こります。骨折しやすくなるのも骨転移特有の症状。特に、腰や足の骨に移りやすい肝臓癌からの骨転移の場合、骨折して一気に体力が落ちてしまうような危険性も十分に考えられます。痛みが現れることで骨への転移を知る方も多数。腰椎だと腰痛、上腕骨では腕の痛みのように、どの骨に転移したのかで痛みが現れる場所は異なります。
薬物療法が有効な治療法です。症状が安定してきたところでデノスマブやゾレドロン酸といった骨修飾薬を使用します。骨折や脊髄圧迫といった骨関連事象(SRE)の予防になり、抗がん剤と併用することも可能です。ただし、2010年代中盤以降、骨修飾薬に伴う顎骨壊死(ONJ)のリスクが広く認識されるようになり、治療開始前には歯科受診による口腔内管理が推奨されています。
骨修飾薬などを使っても痛みや麻痺が改善しない場合は放射線治療が行われます。痛みの軽減や骨折の予防に効果があり、一度の治療で長期間(半年から数年以上)疼痛緩和が得られることもあります。
主な治療法に放射線療法や抗がん剤治療、ホルモン療法があります。放射線治療は痛みの緩和や骨折予防に効果的な治療法。頚部や大腿骨の中央部、大腿骨に転移が見られた時は髄内釘を打ち込む方法や人工骨頭置換術を行い、腰髄や胸髄の場合は人工セメントを流し込むこともあります。抗がん剤やホルモン剤と一緒に「ビスホスホネート製剤」という薬を投与すると、痛みの緩和や骨折の可能性を減らすことも可能です。
抗がん剤による化学療法が一般的な治療法です。効果が薄ければ放射線治療を実施。進行が初期段階の場合、腫瘍を切除して人工骨に置き換える外科的手術も行われます。
骨転移は肺癌や乳癌、肝臓癌などを通して起こります。特に乳癌は骨に転移する場合が最も多いとされる癌。胴体部の骨だけでなく、頭蓋骨や手足の骨にも転移する危険性のある癌。肺癌は、手足の骨にはあまり転移しませんが、体の中心にある骨に転移することがあります。肝臓癌の骨転移は遠隔転移のため頻度は低いものの、椎骨や骨盤といった体幹に位置する部位に転移しやすいという特徴があります
骨転移を治療する手段は一般的に、抗がん剤・放射線・外科手術。骨の痛みが伴う場合は放射線による治療が効果的です。鎮痛薬の効果が得られない患者の7割が放射線治療によって疼痛をやわらげたという報告(※)があります。
多発性の転移が疑われる場合は、広範囲にちらばったがんに正確照射できる「強度変調放射線治療(IMRT)」や、限局した骨転移病巣に対しては「定位放射線治療(SBRT)」を行える病院を探してみましょう。強度変調放射線治療ができる機器には「トリロジー」「トモセラピー」といったものがあります。
対処の難しい転移がんを治療するためには、治療に適した治療機器とそれを使いこなす技術・経験を持った医師を見つけることが重要です。痛みや麻痺を必要以上に長引かせないためにも、信頼できる医師を探しましょう。
骨転移のリスクを少しでも下げるためには、骨転移の原因になる癌の発生を抑えられるように普段から予防に努めたり、早期発見・早期治療を実現できるようにスクリーニング検査に取り組みが大切です。
癌の骨転移リスクを下げるために特化した予防法については見つけられませんでした。しかし癌の発生原因には様々なものが考えられるものの、日本人の癌の原因として生活習慣と感染症が大きく関与しています。そこで、そもそも骨転移の原因である肺癌や乳癌、肝臓癌といった全身の癌について、国立研究開発法人国立がん研究センターの研究を参考にしながら日常で取り組める予防法をご紹介します。
国立がん研究センターの癌予防研究によれば、日本人の癌の発生原因として「生活習慣」による影響と、「感染症」による影響が大きな要因のひとつだと知られています。
中でも生活習慣は日本人男性の癌の発生原因として第1位、さらに女性でも第2位となっているなど、日頃のライフスタイルや生活様式が健康に大きく関係していることは無視できません。
国立がん研究センターによれば、癌予防の観点から生活習慣として改善すべきポイントとして、例えば以下のようなものが挙げられます。
それぞれについて詳しく紹介します。
骨転移のリスクがある癌の1つとして肺癌が知られていますが、喫煙習慣は明確に肺癌リスクを高める因子として知られています。また喫煙によってリスクが上昇するとされる癌は肺癌だけでなく色々なものが考えられており、喫煙習慣のある人はたばこの本数を減らしたり、可能であれば完全に禁煙したりすることが大切です。
なお喫煙やたばこの煙による危険性は、自分がたばこを吸っている時だけでなく、周囲にたばこを吸っている人がいる場合に生じる副流煙でも同様です。そのため日常の暮らしにおいて他の人が吸っているたばこの煙を吸わないようにすることも意識しましょう。
アルコール飲料は癌を含めて様々な病気のリスクを高める因子であり、原則としてお酒を飲むこと自体が癌のリスクにつながります。そのため、理想的にはお酒を全く飲まない生活習慣を維持することが良いでしょう。
一方、お酒を好きな人や、日常生活を送る上でお酒を飲まなければならないタイミングが訪れる人もいるでしょう。そのため、完全に禁酒・断酒できない場合、例えば飲酒量を減らしたりアルコール度数の少ないお酒を選んだりするといった工夫も効果的です。
東洋医学では「医食同源」という言葉もあるように、人の食習慣はお酒に限らず健康や病気に深く関与しています。
例えば塩分過多の食事を続けていたり、栄養の偏った食品ばかり食べていたりすると、癌を含めて色々な病気のリスクを高めてしまうことが事実です。そのため癌の予防策として減塩メニューを食生活へ取り入れてみたり、肉や油物だけでなく野菜や果物などを積極的に食べるようにしたりすることが肝要です。
その他にも、熱すぎる食べ物は消化器の粘膜を傷つけて発癌リスクや転移リスクを高めてしまうため、少し冷ましてから口に入れるといった配慮も癌予防の取り組みと言えます。
日常的に体を動かしたり運動習慣を続けたりすることは、心身の健康を保つために有効です。そのため特にスポーツなどの経験がない人であっても、意識的に歩いたり階段を上り下りしたりといった動作や運動を意識することが欠かせません。
ただし骨の癌のリスクを有している人の場合、骨の強度が低下しており、軽度の運動のつもりでも骨に負担がかかって痛みを生じさせたり骨折につながったりする恐れもあります。
そのため適度な運動習慣を取り入れつつ、下半身の骨などに痛みや違和感を覚えた場合は無理せず医師へ相談することも心がけましょう。
メタボリックシンドロームや肥満といった過体重は病気のリスクを増大させるため、癌の予防として適正体重を維持することは大切です。また体重は軽すぎても問題であり、体重が軽くなりすぎると骨の強度が低下するといったリスクも増大します。
適正体重の指標としては一般的に「BMI」が用いられ、BMI値は「体重(kg)」を「身長(m)の2乗」で割ることで求められます。
男性と女性の適正体重として考えられるBMIは通常以下のようになっており、この範囲を上回る場合も下回る場合も生活習慣の見直しなどを考えるようにしてください。
※参照元:国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス|科学的根拠に基づくがん予防(https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/evidence_based.html#anchor3)
細菌やウイルスによる感染症が一部の癌のリスクを上げることも知られており、例えば骨転移の原因を考える時に注目されやすい肝臓の癌にも感染症の影響が関与しています。
感染症と発生リスクが関係している癌としては、例えば以下のようなものがあるでしょう。
B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスに感染すると、肝炎リスクが高まって結果的に肝細胞癌などの発生率まで増大することが問題です。骨転移は肝臓からの転移でも多く発生すると考えられており、肝炎ウイルスへの感染は間接的に骨転移の発生要因になり得るといえます。そのため適切な感染症対策に努めることは、骨転移の予防や回避を目指す上でも欠かせないポイントです。
スクリーニングとはすでに判明している症状や原因について詳しく調べるための検査でなく、まだ発見されていない病気やリスクについて確かめるための検査です。骨転移はいつ発生するか分からない問題であり、スクリーニング検査を定期的かつ適切に行うことで、骨転移の早期発見を叶えられるチャンスにもつながります。
骨転移のリスクを懸念して行われるスクリーニング検査としては、CT検査やX線検査、MRI検査といった一般的な癌スクリーニングに用いられる画像診断に加えて、癌の骨転移を検出するための「骨シンチグラフィ」などがあります。
骨シンチグラフィは癌が骨へ転移しているかどうかを検出するための検査です。2020年代に入ってからは、より正確な診断のためにFDG-PET/CTと併用されるケースも増えています。骨転移のスクリーニング検査として特に重要となる検査といえるでしょう。
骨シンチグラフィで調べるのは骨の造成です。骨がどのように作られているのか、その状態やバランスを調べる検査となります。人の骨は同じ形を維持しつつも常に古い細胞が新しい細胞へ入れ替わっており、破壊と再生を繰り返していると考えられます。そのため、骨の形成に関与する栄養や身体機能の障害、骨転移のような病気が発生すると、この骨造成のバランスが崩れて骨が過剰に作られるといった現象につながります。
骨シンチグラフィでは、放射性物質を含んだ専用の薬剤を患者に投与して、およそ三時間程度が経過した後に体内の骨の状態を撮影します。すると、癌の骨転移を起こしている部分の骨に薬剤が過剰に集中することで画像にも色濃く表れ、骨転移病巣が発見されるという仕組みです。
X線検査は一般的な画像診断の1つであり、放射線(X線)によって患者の体内を撮影する手段です。X線検査は通常の骨折や骨の異常などを調べる時にも利用される画像診断であり、骨の異常をチェックして骨転移などのリスクを検証するためにも役立ちます。
ただし微少な骨転移などを調べるためにはCT検査やMRI検査といったさらに高度な画像診断が必要です。
CT検査もまたX線を使った画像診断の1種ですが、通常のX線検査と異なるポイントは、CT検査は患者の体を全方向から撮影する検査です。患者の体内を立体的に撮影した断面図を取得することで一層に精密な画像診断を行えます。
CT検査は骨転移のスクリーニング検査として重要なものの1つですが、その一方、放射線による被曝リスクが発生するため受けられない患者がいることも考えなければなりません。
MRI検査も画像診断として骨転移のスクリーニングにしばしば使われるシステムです。ただしMRI検査は放射線を使用するのでなく、磁気を使って画像を取得する点が特徴です。
MRI検査では電磁石によって強力な磁気を発生させて、それを患者の体内へと照射します。すると患者の体内にある水素原子から微少な電磁波が発生するため、それを電気信号へ変換して画像データにする仕組みです。
MRI検査は放射線による被曝リスクを心配しなくて良いため、X線検査やCT検査を受けられない人でも骨転移のスクリーニング検査を受けられる可能性があります。
骨転移や骨の癌には早期の自覚症状が乏しいという特徴があり、結果としてセルフチェックによる早期発見が難しいという課題があります。一方、骨の癌に特徴的な症状や関連する症状も存在しており、普段から自身の体の変化や違和感に注意しておくことで少しでも早く問題に気づける可能性を高められるでしょう。
ここでは骨の癌や骨転移によって想定される症状やポイントについて主なものをピックアップしていますので、ぜひセルフチェックの参考としてご活用ください。
特に思い当たる理由がないのに太ももや骨が痛くなったり、足が腫れたりといった症状は骨肉腫など骨の癌に関連している可能性がありますす。また、骨に炎症などが発生していると、それが熱として現れることもあり、熱っぽい感じや体の倦怠感などの症状として自覚されることもあるでしょう。
痛みが必ずしも骨の癌を示しているとは限りませんが、例えば最初は足を動かした時や歩いている時だけに痛みを感じていたのに、徐々に安静時でも痛みを自覚できるような場合、速やかに医師へ相談することをおすすめします。
骨の癌は肺癌などへ転移するリスクがあり、骨転移の自覚症状がなくとも肺癌の影響によって息苦しさや呼吸障害が現れることもあるでしょう。ただし一般的に早期の肺癌では自覚症状が乏しく、骨の癌と同様に明確な症状として現れている場合は癌が進行している恐れもあるため、思い当たる理由がないのに症状がある場合は、可能な限り速やかに医師の診察を受けるようにしてください。
骨の癌によって骨の状態が悪くなると、ちょっとした衝撃や動作で骨折してしまうケースも考えられます。
骨折してから痛みを感じるのではなく、これといった痛みや自覚症状がなかったにも関わらず簡単に骨折してしまったような場合、整形外科だけでなく骨転移などのリスクも想定して医師に相談することが肝要です。
癌の原因として考えられている理由の1つに、生まれつきの体質や遺伝的な影響があります。
人の肉体や生体機能は親から受け継いだ遺伝子によってコントロールされており、例えば遺伝子に変異や欠損、重複といった何らかの異常があった場合、その影響で癌を含めた様々な病気のリスクが上昇するケースもあります。
そのため、癌検診の一環として遺伝子検査を受けたり、現在治療中の癌患者の遺伝子を調べて、適切な治療法(個別化治療)の内容を検討したりすることは、医学的にも根拠が認められる重要なアプローチです。
遺伝子検査と一口にいっても複数の種類や用途があり、標準治療の一環として保険適用で受けられる検査からクリニックや市販の遺伝子検査キットなどを利用して行う自由診療の検査まで様々です。そのため、まずは遺伝子検査について主治医と話し合い、どのような選択肢があるのかきちんと考えてみることが重要でしょう。
遺伝子検査では、検査を受ける人の血液や癌組織の一部などから採取した細胞をゲノム解析によって調査し、特定の遺伝子変異(癌遺伝子)の有無といった結果から癌リスクやその人の体質といった情報を分析します。
遺伝子検査では特定の遺伝子を個別にチェックするものだけでなく、複数の遺伝子をまとめて分析する遺伝子パネル検査などもあり、それぞれの用途や目的に合わせて選択することが大切です。
なお保険適用で遺伝子検査を受けるためには、医師が癌治療のために遺伝子検査を必要と認めることが前提となります。逆に、例えば家族に癌患者がいる場合や、自身の予防意識の高まりによって遺伝子検査を受ける場合、自費診療による遺伝子検査となるため費用や効果に関しても納得できるまで医師などへ相談するようにしてください。
骨肉腫など癌に関して、特定の遺伝子の変異といったものが発症リスクへ関与していると知られており、例えばそのような癌遺伝子として「RB1遺伝子」や「TP53遺伝子」などが挙げられます。
もし遺伝子検査によってTP53遺伝子の病的変化が認められたような場合、現時点で癌を発症していないとしても将来的なリスクが想定され、またすでに骨の癌などの治療を受けている患者であれば治療法や治療薬の選定に結果を活用することが可能です。
※参照元:がんナビ|国立がん研究センター・希少がんセミナー2024(5)遺伝性骨・軟部腫瘍(肉腫)について知ろう!(https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/cancernavi/report/202406/584675.html)
※参照元:長崎大学|骨肉腫発症の根本を制御する転写因子間の相互作用の解明(https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/science/science315.html)
癌の治療薬として使用される分子標的薬などでは、癌遺伝子の有無や分子分類によって治療効果に差が生じることが分かっており、患者に対してどのような治療薬や治療法を用いるべきか検討するために遺伝子検査の結果は有用です。
骨転移などの症例においては単に骨転移の原因や特性を調べるためだけでなく、抗悪性腫瘍薬や分子標的薬などの選定を目的とした遺伝子検査を実施するために、骨転移部位から採取された組織が利用されることもあります。
どのような遺伝子変異や変異型の組み合わせが、どのような治療薬や治療法と適性があるかについては世界的に研究が進められており、患者の遺伝子検査の結果にもとづいて個別化治療や集学的治療の治療計画を策定されるケースは少なくありません。
※参照元:医学専門雑誌・書籍の電子配信サービス|遺伝子検査を目的とした転移性骨腫瘍に対する骨生検(https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.15106/j_besei79_51)
治療薬の有用性が患者の体質や癌遺伝子の有無によって変化するように、治療薬の副作用やリスクに関しても遺伝的変異の影響を無視することはできません。
例えば、骨肉腫などの治療において「イリノテカン・テモゾロミド併用療法」といったアプローチがありますが、イリノテカンは患者の体質で副作用のリスクが変化すると知られており、あらかじめイリノテカンを使用すべきかどうか遺伝子検査によって確認することも有効です。
※参照元:【PDF】難治性固形腫瘍に対するイリノテカン・テモゾロミド併用療法(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspho/52/5/52_405/_pdf)
※参照元:国立研究開発法人国立がん研究センターがん情報サービス|がん医療における遺伝子検査 もっと詳しく(https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/genomic_medicine/gentest02.html)
遺伝子検査には医学的根拠が認められ、標準治療の一環として実施されているものだけでなく、現時点で日本国内における承認を得ていなかったり、医療機関や医師が独自のメソッドにもとづいて実施しているものがあったりと、様々なものが存在しています。
そのため、自身がどのような目的や理由によって遺伝子検査を受けたいのか、また受ける遺伝子検査は保険適用なのか自由診療なのか、医学的根拠の有無なども含めてきちんと確認しなければなりません。
また家族に癌遺伝子の保有者がいる場合、予防的に遺伝子検査を受けて癌遺伝子が認められることもあるでしょう。しかし、それは即座に癌になることを意味するわけでなく、あくまでも遺伝的な体質として癌のリスクや特徴が認められるということであり、過度に不安やストレスを抱くのではなく、むしろリスクを知れたことで適切な生活習慣や予防治療への取り組みに活かすマインドが大切です。
癌治療や治療後の生活を考える際に、「QOL(クオリティ・オブ・ライフ:Quality of life)」を無視することはできません。QOLは人生の質や生活の質として日本語訳されます。単に病気を治療するだけでなく、多角的な視点で苦痛や不安を軽減し、精神的にも肉体的にもストレスを緩和して、社会活動を含めた総合的な幸せや満足度を高めていく生活の実現を目指した考え方です。
特に骨転移は骨の状態が悪化することで骨折しやすくなったり、体を支える骨の強度が低下して転倒しやすくなったりと、日常生活にも支障がでてしまいます。また首の骨や背骨の異常でマヒなど神経障害が起こる可能性もゼロではありません。少しでもQOLを高められるように、日頃から色々と注意や工夫が大切です。
ここでは静岡県立静岡がんセンターが発行しているパンフレットを参考にしながら、癌の骨転移に関して日常生活で注意すべきポイントや具体的な行動の工夫について紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
参照元:静岡県立静岡がんセンター「学びの広場シリーズ からだ編14 がんの骨への転移と日常生活」
骨転移を起こしている骨は強度が低下したり、硬くなりすぎて柔軟性を失うことで骨折しやすくなっていたりします。そのため健常者よりも転倒時の骨折リスクが高くなっており、日常的に歩く際も転倒しないよう配慮して生活することが欠かせません。
例えば、外へ出かける時には歩きやすい靴を選択し、足下をきちんと確認して段差でつまずかないように注意してください。また歩く際には太ももをしっかりと持ち上げて、かかとから接地するよう意識することも大切です。なおサンダルやスリッパといった脱げやすい履き物は避けましょう。
家や建物の中で歩く際にも段差でつまずかないように注意すると共に、カーペットや絨毯などで滑らないように気をつけます。また日頃から整理整頓や掃除を行い、足下に転倒へつながりそうなものが落ちていない状態を保ちましょう。
お風呂場など滑りやすそうな場所には滑り止めマットを敷いたり、逆にカーペットなどは取り除いたりしてリスクの軽減が肝要です。
すでに足の骨や骨盤への癌転移が生じている場合、歩行時の負荷や衝撃によって骨折するリスクもあるため、自身の体質や状態、環境などに合わせて歩行をサポートする補助具などを利用することも効果的です。
補助具として考えられるものには以下のようなものがあります。
実際にどの補助具が適しているのかは人によって異なるため、主治医などの医療従事者や介助してくれる家族とも相談して選ぶようにしましょう。
足や骨盤の骨転移を治療した後、敷き布団でなくベッドを使って生活するようにします。可能であれば医療機関で利用されているような介護ベッド(特殊寝台)を自宅にも導入できると良いでしょう。
ベッドに上り下りする際には、骨転移のある足や治療した足を両手で支えるようにしてゆっくりとベッドの上に移動したり、手でベッドの柵をつかんで体を安定させた状態で足を接地したりすることが肝要です。
立ったり座ったりする際には急に動作しないよう、ゆっくりとバランスを意識して立ち上がる、もしくは腰を下ろすようにします。またイスの高さを高めにしておくことで、移動しやすい状態にすることもポイントです。
中腰の姿勢やしゃがむといった行動は足腰に負担をかけるため、床に落ちたものを拾う時はマジックハンドのような器具を利用したり、靴を履く時には長めの靴ベラを使用したりといった方法も有効です。
掃除や洗濯、料理といった家事をする際にも、体の向きや力の方向を意識して、過度な負担や負荷がかからないよう気をつけます。重たいものを持ち上げて移動するとバランスを崩しやすくなるため、小分けにして持ち運んだり、足下の段差などでつまずかないよう注意しましょう。
腕や肘といった部位に骨転移があると、ドアを開けたり重量物を持ち上げたりする際に負担がかかって骨折しやすくなります。そのため開閉に力がいるドアについては腕だけで操作しないように注意し、自宅内であれば開け放しにできる扉は開けたままにしておくといった配慮も効果的です。またドアが急に閉まってきて反射的に手で押さえるといったことも避けましょう。
体をひねって腕を背後へ回す「ひねり動作」や、傾いた体を腕で支えることは、思いがけず腕を骨折するリスクを増大させます。そのため排便時にお尻をトイレットペーパーで拭く際には骨転移のない方の腕を使ったり、どうしても骨転移のある腕を使う際には体をひねらずに前から拭いたりといった配慮をします。また温水洗浄便座を使用して拭く回数を減らすこともポイントです。
下半身に骨転移があった場合は腕や手で足を支えるようにしますが、腕や肘といった部位に骨転移のある場合、少しでも腕に負担をかけないよう移動しなければなりません。またベッドに横たわる時に手を突いて体を支えないようにしたり、ベッドから立ち上がる時に柵を手でつかまないように注意したりします。なお、寝返りなどで体をひねって骨転移のある腕が体の下敷きにならないように気をつけます。
少しでも腕にかかる負担を軽減するため、タイトな衣類やTシャツなどを避けて、前開きのものを着用するようにしましょう。また着る際には骨転移のある腕を先に袖へ通して、脱ぐ時は骨転移のない腕から先に抜くといった順番も大切です。
その他、伸縮性のある生地の服や、ボタンの少ないデザインを選ぶといったこともチェックポイントです。一人で着替えることが難しければ恥ずかしがらずに誰かへ手伝ってもらいましょう。
背骨や首の骨に骨転移が生じると、マヒなどの神経障害が発生してQOLが著しく低下します。そのため日常生活の中でも首や背中へ負担をかけないよう安静にして、必要であればコルセットやカラーといった器具を装着して患部への負担を軽減しましょう。
家事などは頭や体をあまり傾けなくて済むように、腰の高さで作業したり、重たいものを持ち上げて腰に負担がかからないような注意も必要です。
寝返りの際には上半身と下半身をセットで動かすように意識し、ひねり動作をしないように気をつけてください。ベッドから起き上がる際にも、ゆっくりと全身を横に向けて、先に足をベッドから垂らし、ベッドの端へ腰掛けるように身を起こしてからベッドを降ります。可能であればリクライニング機能を備えた介護ベッドなどを利用する方が無難です。
癌の告知や再発・転移の告知を受けた時、頭の中を巡る不安の中に「お金の問題」が含まれることは少なくありません。
一般的に癌治療では高額な治療が必要で、悪化すれば休職や退職しなければならないといったイメージが浸透しており、経済的負担の増大への心配からQOLが低下してしまうこともあるでしょう。
しかし現代では様々な保険会社から癌保険や医療保険が提供されており、また公的支援制度としても高額療養費制度や地方自治体ごとの癌検診助成金といった支援制度が用意されています。
加えて最も有効で医学的根拠が認められる癌治療は標準治療として保険適用になっており、将来的なリスクへの対策として任意の保険に加入したり、治療法を主治医としっかり相談して適切に考えたりすることで、癌治療の品質を高めつつ経済的負担についても備えることが可能です。
骨の癌を経験した人や、骨の癌の治療を乗り越えた人など、ここでは骨の癌の患者さんによる体験談を紹介します。それぞれの患者さんがどのような思いを抱えていたのか、癌との向き合い方などと合わせてチェックしてみましょう。
念願だった看護師の国家試験の合格発表があった直後、左の大腿骨にがんが見つかりました。その半年前から足の痛みはあったのですが、レントゲンには病変がうつらず、痛み止めを飲んでやり過ごしていました。途上国で働く国際看護に興味があったので短大卒業後、4年制大学の看護学部に編入し、さらに勉強する予定でした。(中略)今は、手術を受けたがん専門の病院で自分の主治医である先生について手術室勤務の看護師として働いています。たまに手術を不安がっている人がいると、「麻酔ってこうでした」「痛みはこうでした」と私は患者としての経験を話しています。知識ではなく、経験の方を知りたい人の方が多いんですよ、本当は。(後略)
高校2年生のときに、右膝に激しい痛みを感じて整形外科を受診しました。すぐに紹介されたがん専門病院で骨肉腫と診断され、病巣が大事な血管や神経を巻き込んでいるため切断せざるを得ないと、医師に言われました。
引用元:ONCOLOGY
17歳の時から左膝に少し痛みがあり続いていましたが、若さゆえ病院には行かずに過ごしていました。初めて痛みを感じてから3ヵ月後位には痛みで歩きにくさを感じ、走る事も上手く出来ない状態に。それでも病院には行きませんでした。健康と言う言葉に全く関心が無かったからです。(中略)放置していた分、腫瘍はかなり大きくなっていて膝の9割が腫瘍でした。(中略)再発のリスクも説明を受けました。再発は5年間は要観察で退院後も2ヵ月に1度は定期検診でレントゲンと診察をうけていました。この手術から15年が経ちました。今は再発の恐れは無いとの事で、定期検診は終わっており、骨肉種で病院に掛かる事はありません。(後略)
引用元:Caloo
妊孕性の問題は、骨肉腫と診断された時よりもつらかったです。22歳で、将来、子どもを持つことができないかもしれないと知ったんです。お金の面や治療方法はパンフレットに載っていましたが、私が知りたかったのは、実際に妊孕性について考えた方がどう決断しその後をどのように生きているのかということでした。今、28歳になって、同級生が結婚したり、子どもができたりすると、やはり妊孕性について思い出すことがあって、あの時、違う決断をしていたらどうなってたんだろうと考えますね。でもあの時決断をしたのは自分ですし、いつかこの選択をして良かったと思える日が来るのかなと思っています。
引用元:AYA Life
骨転移が判明した時は、3カ月ぐらい落ち込みました。現在も寝たきりになるのと痛みが恐いのですが、精神的には大変落ち着いています。人間それなりに順応するんだと思いました。死はある程度、覚悟ができているつもりですが、ぜひ痛みだけは薬で取り除いて欲しいと願います。
引用元:サイバーシップ
再発(転移)したという衝撃は思った以上に大きく、「痛みが出るの?苦しむの?」と再発の苦しみと混乱で何も手につかず、昼間は居間でぼんやりと過ごし、夜は眠れない日々が続きました。(中略)患者会の仲間に、“何も手につかないことを医師に伝えること”と助言してもらって、再発から1ヵ月後にようやく主治医に相談しました。ちょっとした悩みも話したら、心が楽になりました。もっと早く話せばよかったと思います(後略)
引用元:オノオンコロジー
再発と肝臓への転移が発覚した時よりは落ち着いていて、治療をしながら仕事も続けています。
また治療すれば良くなるという希望がありますし、ブログを書いたりすることで気持ちを整理できるようになりました。周りから「前向きですごい」と言われますが、もう前向きになるしかない状況。現実を受け止めて最善を尽くすしかないと思っています。今は子どもの元気な姿を見たり、家族でわいわい食事をしたりするだけで、「いいな、幸せだな」としみじみ思います。がんになってからは特に、何気ない日常にすごく幸せを感じます。子どもたちにも病気のことは隠さずに話していますが、長女はまだ小学1年生で、がんにネガティブなイメージはありません。彼女が大きくなった時に、がんが怖い病名でなくなるといいですね。
引用元:株式会社Zene
1回入院、抗がん剤で入院しているときに、ズキーンとこう骨の中が、すごい痛みがきて、車いすのときもあったんですよ。1回、去年の8月かな? すごい痛くて、でも、1日経ったら治っちゃったんですけど。そんときだけは、ほんとに、何かこう骨の中が、こう骨折するようなというか、ほんとに折れちゃうんじゃないかっていうぐらい、ズキっという痛みで。座薬を使ったような気がするな、あのときは。
で、何かその痛みが気になるっていうことを言ったらば、「じゃ、放射線をあてて、痛みをとりましょう」ということで、10月からまた25クールで放射線を当てました。足の骨に。で、「これで、消えるかもしれないし、もしかしたら、消えないかもしれないけども、がんの活動性は抑えられるから大丈夫だし、痛みも取れるし」っていうことで、かけはじめたら、もう3日目ぐらい。
3回ぐらいかけたときに、もうすでに痛みがなくなってきて、今はもうほとんど痛くないですね。ただ、雨が…雨が降る前の日とかに、こう、骨の中がこううずくような感じはするんですけど。あの去年の8月のようなこうズキンズキンという痛みはないです。
大きな病院での詳細検査を経て、肺がんが骨に転移しⅣB期(ステージ4b)で手術不可との宣告。
お礼と遺言を書き始めるなど、気分はどん底に。
しかし、今回がん細胞と遺伝子の型が合う治療薬が見つかり、投薬治療と計9回の放射線治療を実施。
4週間の入院生活を終え、GWからは在宅での投薬治療とリハビリを開始。脊髄に転移した腫瘍の一部の残りが神経を圧迫していて歩行困難ですが、車椅子から杖歩行ができるまでに回復。
2週間に1回の諸検査通院で経過観察中です。
入院序盤にリンパと肝臓への転移がみられましたが、お陰様で原発の肺がん部は大きさ半減となり、医師、看護師、家族など、関係してくれた皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。
引用元:肺がんとともに生きる
乳がんで右乳房全摘から10年以上経過していましたが再発しました。全身に骨転移もありました。真面目に通院して、10年経ち次は2年後の通院で良いといわれていました。(中略)
今は注射と内服薬を試しています。現在介護認定1です。外では車いす、家の中では杖を使用して歩いています。
現在家事は料理だけしています。掃除、洗濯、買い物は主人がやってくれています。5年前に長男と2世帯住宅を建て、お嫁さんと小学生の孫に助けられています。小学2年生の孫には元気ももらっています。
引用元:がんになっても
術後7年目に骨転移が見つかりました。仕事、子育て、家事と普通の生活を送り、病気が人ごとになってきた時期でした。半年に1度の定期検査で異常はなく、再発はまったく想像していませんでした。
半年ほど前からあった背中の痛みが徐々に強くなり、ある朝、とうとう起き上がれなくなりました。脊椎から腰までの転移巣が神経に当たっていて、それはもうものすごい痛みでした。すぐに入院することになり、大量の鎮痛剤で1か月ほど疼痛コントロールを行いました。その後、放射線療法やホルモン療法を行い、痛みが和らいだので退院しました。
今は有難いことに「長いお付き合いで一緒にがんばりましょうね」と言ってくださった先生のもとで治療を続けています。最近、抗がん剤の治療を始めたのですが、普通の生活ができることを大切にして、治療を選んでいきたいと思っています。
引用元:キャンサーネットジャパン
ものすごく背中と足が急に痛くなって、「いったいこの痛みはなんだろ う?」と思って、歩くのも足を引きずるような感じで。で、病院に行って検査をしたら「骨に転移しています」と言われて、「あー、まさかの遠隔転移してしまった」と。そのときがものすごいショックでしたね。(中略)
間隔も1年ぐらいしか空いてないし、「せっかく全部取ったのに」「これで治ると思ってやったのに」って。すごくショックでしたね。(中略) 放射線治療がいちばん骨転移には効くっていわれていたので、というか放射線治療ぐらいしか有効な手段があまりないので、痛いところに当てることになりまして。もう足が何より痛かったので、足に照射。(中略)
痛いのはちょっときつくて、我慢できなくて。強烈な痛みだったんで、それで放射線を当てました。(中略) 痛みがあっという間になくなりました。「ああもう治ったんじゃないか」 っていう感じの効き目だったんで、それでとりあえず痛みは治まりましたね。(後略)
引用元:がんノート
(前略)とにかく腰が痛かったので放射線治療のために入院しました。退院後、抗がん剤治療はせず、骨転移の新薬とホルモン療法でいこうと、主治医と治療方針を決めました。前向きに頑張りましたが、肺や肝臓の検査でひっかかるたびに、もうだめだと落ち込んで。ジェットコースターのように気持ちが上へ下への繰り返しです。それでも2年3年と経過するうちに、本当に大丈夫なんじゃないかなと思えるようになりましたね。(後略)
引用元:LIFE whith...
(前略)会の代表の自宅で開かれる再発乳がんの会に参加したのですが、まずその方が素敵な人で。場の雰囲気もなんとも居心地がよくって、とにかく楽。初発の方とは悩みが違いますし、ホンネで何を言っても、「そうよね」って同感してくれる。自分の居場所を見つけたと思えました。娘には本当に感謝しています。 今は私が患者会のスタッフとして、再発患者の会を担当しています。参加される方の気 持ちが少しでも楽になってくれたらと思って。患者会は私の人生の張りになっています。(後略)
引用元:LIFE whith...
去年、肺がんの手術を受け2年を迎える目前に骨転移そして脳転移。抗がん剤治療とそれぞれの部分に対し放射線治療を受け、ようやく仕事復帰。そしたらまた半年目の今年3月に再び脳転移、2回目の放射線治療を受け、1ケ月後のMRI検査で、腫瘍の拡大が認められて、手術で切除か、しばらく様子を見るか?すごく悩んでいます。手術で取ったとしても、もうできないとわかっていれば、迷うことなく決断しますが、またできる可能性があると思うとなかなか躊躇します。(後略)
またかと思う、再々発。肺がんから始まり、胸骨転移、脳転移そして今回、再び脳転移、腰骨二か所、肝臓に。それでもほとんど腰痛位で自覚症状はなくほとんど普通に生活が送れているのに、抗がん剤治療に、がん性疼痛治療薬の服用。この先全然どうなるかわからないけれど、あきらめないで頑張りたいと。一番の心配は仕事もできず休職中が続き医療費の事ばかり。たぶん多くの同じ思いの人たちがおられると思います。
でもあきらめたくないから最後までやるっきゃないでしょう。(後略)
(前略)妻の気持ちがわかってくれる人がいるなら、それはがん患者の方だけだ。
毎日私は無力感だけが残る。どれだけ傍にいてあげても、私は妻の本当の気持ちがわからない。毎日、毎日、毎日が辛かった。妻の気持ちがわからない…。
横で寝ている妻の顔をみるのが辛かった。妻は目が覚めると、現実が待っており、また辛い時間を過ごし、そしてボロボロの精神状態のまま就寝を迎える。
そして2013年9月、予想をしなかった事態が妻の体に起こる。
背骨への骨転移が原因で下半身不随に陥る。
2度目の入院。もう子供には隠せないと思い、息子には妻の病名について初めて話をする。それを聞いた息子は何も語らず、ただただ涙を流していた。娘には話せなかった。(後略)
(前略)3月19日に転院し、詳細に診てもらいましたが、前立腺がんの治療はできるけれど、骨転移については放射線を照射することも手術することも難しいといわれました。骨転移によって痛みを覚え、 麻痺が発生してから48時間以上経過すると回復が難しいといわれています。その48時間を超えていましたし、症状が出始めてから1カ月近く経過していましたので、骨転移に対する治療は難しい、できないと言われました。私は先生に「動きたい」と伝えたところ、「では、今、足を上げてみて下さい」と言われました。しかし足は全然上がりません。「足が上がらないということは歩くのは無理です」と言われました。(中略)これからも少しずつではありますがもっと自由に歩けるようにリハビリに励んで行きたいと思っています。そして今後は体験者として、身体機能が麻痺し始めたら48時間以内に受診する事の大切さと、合わせてもし48時間過ぎていても、諦めずに治療とリハビリに取り組めば回復する可能性がある事を伝えて行きたいと思っています。(後略)
私は63歳男性、肺癌のステージ4で、がん発見後手術をして10年がたち、4年前から抗がん剤治療を続けています。最近頸椎へ骨転移したのでそのお話をします。(中略)また、放射線治療と癌の影響で首の骨がもろくなっており、あまり良い状態ではありません。頭の重みで首が重痛く来週から首にコルセットを付けることにしました。毎日仕事は普通にこなしてはいますが、それやこれやで元気のでない日々を送っています。
もろくなった骨の再生もすぐにはいかないし今後骨が神経を圧迫したり色んな問題が発生するかもしれません。と言う事でがんの転移が考えられる方は年に1~2回はペット検査で全身のチェックをお勧めします。
(前略)マラソンに興味を持ったもう一つの理由は、骨の痛みです。月1回のホルモン注射を打つようになってから骨の痛みが悪化。ホルモン療法による副作用の可能性もありましたが、乳がんの場合、骨の痛みの原因が骨転移の恐れもあるため、不安を払拭すべく、再発予防にもなると思いウォーキングから始めようと思いました。もともと私は歩くのも走るのも大嫌い。抗がん剤治療で体力がガタ落ちしていたので、次の電信柱まで走るのもやっとという状態でしたが、それでも少しずつ距離を延ばせるように頑張りました。(後略)
2010年、39歳のとき、激しい咳に襲われ、病院で調べたところ、右肺葉原発の肺がん(腺がん)と診断されました。多発造骨型骨転移があり、ステージ4、余命10カ月の告知を受けました。
肺がんのステージ4の場合、最もエビデンスがあるといわれる標準治療を行っても、当時は、生存期間の中央値は12カ月。半分の患者さんが1年以内に亡くなってしまうという状態でした。「生きたい、生き延びたい」と思っても、それは成就しないかもしれません。月刻みの命を後悔しないで過ごすためには、納得して医療を受けることが必要だと思いました。(中略)このようにして、自分が納得したさまざまな治療を受けてきて、現在、46歳。肺がんの告知を受けてから8年目に入り、治療継続中です。(後略)
※引用元:がんプラス|「ワンステップ」体験談や情報を分かち合うなかで がんと向き合う「患者力」をつける 肺がん患者の会
骨転移が判明した時は3ヵ月以上落ち込み苦しかった。最後は寝たきりになるのでは、いたみがあるのではと怖い。
腰椎と脊椎に骨転移が認められ医師から手術治療不能と告げられ、余命を考えたときこれからの生活について悩んだ。
少し胸や背中が痛くなったりすると転移しているのかなという思いが脳裏をよぎり、再発の不安はこれからもずっと続くと思う。
EGFR(上皮成長因子受容体)阻害薬を内服しているが、骨に転移があり、右脇腹のほうに痛みがある。このままの状態でどれくらい生きていられるのか悩む。
55歳女性です。12年ほど前に痛みを感じ病院を受診したところ、左右の乳房のしこりと全身に多発する骨転移が見つかり、ステージⅣの乳がんと診断されました。ホルモン療法のゴセレリン(商品名・ゾラデックス)とタモキシフェンの併用やアナストロゾールを使いましたが、病気が進行したため、診断1年後からは、内服抗がん剤のカペシタビンに変更になりました。これがよく効いていたようで、結局、10年間継続しました。(中略)両親の介護のために仕事を辞めていたのですが、最近は自分の時間も持てるようになって、フラワーアレンジメントを楽しんだり、新聞にエッセーを投稿したりしています。そういう時間も大切にしながら、できるだけ長生きしたいです。
※引用元:産経新聞|乳がんが全身骨転移 使える薬が限られて…
47歳の夏、毎年の乳がん検診結果は「異状なし」。しかし、1ヶ月もしない9月、左の胸の上にしこりを発見。左乳房温存手術をして普通の生活に戻りました。
51歳、左上腕骨にがんが転移。放射線を腕にかけた結果、痛みがとれていつもの生活に戻りました。
8ヶ月ほどしてまた腕が痛み出し、また転移?と不安に思い受診すると、放射線をかけた骨が折れていました。骨の悪い所を切り取りチタンという人工骨を入れ回りにセメントをつけ縫い合わせました。毎日の生活の中では2キロ以上のものを持てない、自分の顔まで手が届かず片手の洗顔、首に近い洋服のボタンは片手でかける、エプロンの後ろの紐が結べない、ひねる動作ができないため雑巾が絞れない等々、仕事上も支障がでて仕事を退職しました。「この腕では、もう二度と仕事に就くことはないだろう」と思っていましたが、アイリスの会の鈴木会長から身体障害者手帳の話を聞き、身体障害者3級の認定を受けました。現在は障害者就労継続支援A型事業所で毎日楽しく働いています。
がん研究会がん化学療法センター基礎研究部の高木聡研究員や片山量平部長などの研究グループによるマウス肺転移モデルを使った研究によって、骨肉腫の癌細胞が肺転移を起こす際に血小板を利用していることが解明されました。
骨の癌として知られる骨肉腫の細胞は患者の血流中で血小板を接触し、骨肉腫細胞と接触した血小板は活性化されて活性化血小板となります。そして活性化血小板から産生・放出されたリゾホスファチジン酸(LPA)によって、浸潤能が亢進されることが明らかになりました。
マウス肺転移モデルの骨肉腫細胞ではLPA受容体LPAR1の発現率が高く、血小板依存的な骨肉腫が浸潤していく働きに必須的な関与をしていることが明らかになっています。同時に、転移阻害薬としてLPAR1アンタゴニストを投与することで、骨肉腫による肺転移が抑制できる可能性も示唆されました。
※参照元:国立研究開発法人日本医療研究開発機構|骨肉腫の肺転移機構を解明し、転移阻害薬候補を発見(https://www.amed.go.jp/news/release_20210727.html)
金沢大学ナノ生命科学研究所の華山力成教授など複数の研究者らによるグループによって、骨肉腫の浸潤や転移に細胞外小胞が関与しているという進展機構の研究結果が報告されました。
同研究グループは腫瘍細胞によって分泌される細胞外小胞が、癌周辺に存在しているマクロファージへ「miRNA146a-5p」という分子を送達して破骨細胞への分化をすることにより、腫瘍細胞の浸潤や転移が起こりやすくなることを発見しています。
また骨肉腫モデルマウスを用いた実験で、細胞外小胞の産生抑制を試みた結果、骨肉腫の転移が抑制されることも発見し、将来的な骨肉腫やその転移癌に対する治療の可能性を考察しています。
※参照元:金沢大学|細胞外小胞による骨肉腫の進展機構を解明(https://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/92512/)
九州大学病院の整形外科や形態機能病理、システム情報科学研究院などが協同した研究グループによって、骨肉腫の予後診療に人工知能(AI)のアルゴリズムを用いた手法が考案されました。
骨肉腫は珍しい骨の癌であり、予後に関しては病理医による病理組織の確認と予測が必要になっていますが、評価の再現性や正確性といった課題が残っています。そこで同研究グループはAIのディープラーニングを活用して、抗がん剤治療後の骨肉腫患者から採取した細胞の情報収集や病理組織の評価を行うことにより、腫瘍細胞密度を産出して生命予後の予測の正確性が高められることを明らかにしました。これにより、今後は骨肉腫診療へAIを活用することにより、診療の適切性が向上すると期待されています。
※参照元:九州大学|⾻⾁腫診療へ⼈⼯知能を応⽤(https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/1041/)
2019年4月23日の医学誌「Journal of Clinical Oncology」において、転移性骨肉腫患者(治療歴あり)に対するスチバーガ単剤療法の有効性や安全性に関する第2相のSARC024試験結果が発表されました。
「スチバーガ」はマルチキナーゼ阻害薬「レゴラフェニブ」の商品名であり、すでに別のマルチキナーゼ阻害薬として「ソラフェニブ(商品名ネクサバール)」の第2相試験結果が示されていたことから、スチバーガ単剤療法においても有用性の確認が行われました。
結論として、研究グループのLara E. Davis氏らはスチバーガ単剤療法によって、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の結果が改善されたことを報告しています。
※参照元:Randomized Double-Blind Phase II Study of Regorafenib in Patients With Metastatic Osteosarcoma(Journal of Clinical Oncology, Published online April 23, 2019.)(https://ascopubs.org/doi/abs/10.1200/JCO.18.02374?journalCode=jco)
2024年7月24日、東京医科大学と国立研究開発法人国立がん研究センター、名古屋大学などの共同研究グループは、様々な種類の癌細胞において悪性化の要因とされる細胞外小胞(EV)の分泌を抑制する因子として、「miR-891b」とそのマイクロRNAターゲットとなる「PSAT1:Phosphoserine aminotransferase 1」を発見し、PSAT1の発現量を抑制することによってEVの分泌量も抑制できると発表しました。
PSAT1は大腸癌や肺癌、乳癌といった様々な癌腫において発現量が増大しており、それぞれの癌細胞におけるPSAT1の発現量を抑制することで、癌としての悪性度を低減して、例えば乳癌からの骨転移を抑制できるという成果が得られています。
この結果から、PSAT1の発現抑制を介してEV分泌抑制を行うことにより、骨転移癌を含めて種々の癌における新しい治療戦略立案の可能性が示唆されました。
※参照元:国立がん研究センター|がん細胞をはじめとする種々のエクソソーム分泌の新たな機序解明
2021年2月5日、国立がん研究センターと慶應義塾大学医学部の研究チームによるグループは、主に小児~青年期における太ももや膝関節周囲の骨に発生した骨肉腫に対して、新しい治療の可能性として骨肉腫細胞の増殖を抑制し、さらに骨肉腫細胞を脂肪細胞へ変化させる阻害薬(TNIK阻害薬)の効果を発表しました。なお、同研究はアメリカの機関紙「JCI Insight(電子版)」にも2021年1月5日付けで掲載されています。
同研究では、まず研究グループはタンパク質リン酸化酵素である「TNIK:TRAF2 and NCK-interacting protein kinase」が、骨肉腫細胞において高頻度で活性化していることを解明しました。またマウスを用いた動物実験により、TNIKを阻害する医薬品(TNIK阻害薬)を使用することで、骨肉腫細胞の増殖抑制効果を得られると共に、腫瘍細胞が脂肪細胞へと変化する流れを促せたことを発見。これにより、TNIK阻害薬が癌の進行を遅らせられるだけでなく、治療薬としての有用性が期待されることが示唆されています。
※参照元:国立がん研究センター|骨肉腫を脂肪細胞へ変化させることに成功
長崎大学医歯薬学総合研究科の松下准教授と、米国テキサス大学の小野博士による研究グループは、米国ミシガン大学などの研究機関と共同した国際研究プロジェクトにより、骨髄に存在する骨の肝細胞として新しい細胞を発見。それを「骨内膜幹細胞(Endosteal Stem Cells)」と命名しました。また、同研究グループは骨内膜幹細胞が骨の造成に貢献していると同時に、骨の癌の発生機序に関与していることも合わせて解明しています。
骨内膜幹細胞は、体の状態に合わせて骨の成長や再生が行われる際に、重要な役割として機能すると想定されていた肝細胞の存在を改めて明確化し、骨の再生や成長といった機序の解析に貢献すると考えられています。
さらに、骨内膜幹細胞におけるがん抑制遺伝子p53の欠損が骨肉腫の発生へつながることも発見されており、今後は骨内膜幹細胞を活用することで骨再生療法の発展や骨肉腫の病態解明、新しい癌治療の開発にもつながっていくと期待されています。
※参照元:長崎大学|新たな骨の幹細胞「骨内膜幹細胞」を発見! 〜骨の再生に貢献する「光」、骨のがんを引き起こす「影」を併せ持つクリティカルな幹細胞 〜
2024年8月22日付けの日本経済新聞において、東京大学の塚崎雅之特任准教授や高柳広教授による研究チームが、癌細胞が骨へ近づいた際に、骨がコラーゲンを主体とした「防御壁」を構築して癌細胞の骨内侵入を防いでいることを発見したと報じられました。また、同研究の成果をまとめた論文が同日にイギリスの科学誌「Nature」においても掲載されています。
今回の研究は、人の体内で骨が癌細胞の侵入を拒んで骨転移の制御に貢献していることを発見したと同時に、防御壁の形成を人為的にコントロールすることで骨転移のリスク軽減や予防治療にも活用できる可能性が示唆されています。
この防御壁はタンパク質の1つであるコラーゲンなどを主体として構成されており、また骨膜細胞における「Timp1」遺伝子が、何らかの方法で癌細胞の接近を検知した際に、タンパク質分解酵素の働きを抑制することで防御壁の形成を促していると考えられています。
※参照元:日本経済新聞|がん侵入防ぐ「コラーゲンの壁」 東大、骨で発見
2024年4月の上旬にアメリカのサンディエゴで開催された「米国癌学会(AACR 2024)」において、The Tisch Cancer Institute of Mount Sinai in New Yorkに所属するSundar Jagannath氏らの研究チームが、治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫の患者に対する治療法として「二重特異性抗体Linvoseltamab単剤療法」に関する有効性を報告しました。
そもそも再発難治性多発性骨髄腫の患者は、癌患者として高リスクのグループに属している人々であり、効果的で安全性も認められる治療法の確立が求められていた点が重要です。
同研究では、すでに治療歴のある37~91歳の再発難治性多発性骨髄腫患者(ステージⅢ期が18%)を対象として、BCMAとCD3を標的とした二重特異性抗体Linvoseltamab単剤療法の奏効率を、第1/2相のLINKER-MM1試験によって比較検証しています。
結果的に、完全奏効以上の効果を認められた症例が46%、さらに非常に良好な部分奏効が叶えられた症例を含めると全体の62%となり、同治療が高確率で有効であることが示唆されました。
※参照元:オンコロ|既治療の再発難治性多発性骨髄腫に対するLinvoseltamab、良好な奏効率を示す
2019年5月30日付けの医学誌「The New England Journal of Medicine」において、Lille. University HospitalのThierry Facon氏を中心とする研究グループが、造血幹細胞移植非適応の未治療多発性骨髄腫患者を対象とした新しい複数薬剤併用療法の有効性や安全性に関する第3相のMAIA試験の結果を発表しました。
なお、比較検証のテーマとなった併用療法は以下の3種類の治療薬による併用療法になっています。
検証試験では、造血幹細胞移植を行うことのできない、未治療の多発性骨髄腫患者737人を複数のグループに分類し、3剤併用療法を含めて複数のパターンの薬剤投与を実施しました。その結果、従来の併用療法などと比較してダラザレックス+レブラミド+デキサメタゾン併用療法は無増悪生存期間を有意に改善したことが確認されています。
※参照元:オンコロ|造血幹細胞移植非適応の未治療多発性骨髄腫患者に対するダラザレックス+レブラミド+デキサメタゾン併用療法、無増悪生存期間を統計学有意に改善する
2024年9月にスペインのバルセロナで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2024)において、スイスのOncology Institute of Southern Switzerlandの研究グループが、骨転移のある去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)の一次治療としてエンザルタミドへ「Radium-223(Ra 223)」を追加投与することにより、無増悪生存期間(rPFS)を有意に改善できたという研究データを報告しました。これはオープンラベルフェーズ3試験の「EORTC-GUCG 1333/PEACE-3試験」によって明らかとされており、治験対象は2015年11月から2023年3月までの間に無症状あるいは軽症の骨転移を有する去勢抵抗性前立腺癌の男性患者446人となっています。
研究では一次治療にエンザルタミドのみを使用するグループと、エンザルタミドにRa 223を追加投与するグループがそれぞれ分類され、rPFSを主として全生存期間や安全性など多角的な項目で比較検証が行われました。
結果的に、rPFSの中央値がエンザルタミド群で16.4ヶ月、Ra 223追加投与群で19.4ヶ月となり、Ra 223を追加投与したグループの方においてrPFSが有意に改善していることが認められています。
参照元:がんナビ|骨転移のあるCRPCの1次治療にエンザルタミドへのRadium-223追加はrPFSを有意に改善【ESMO 2024】
2023年3月、東京医科大学と東京慈恵会医科大学、国立研究開発法人国立がん研究センター、そして国立研究開発法人日本医療研究開発機構などが共同で行った研究の結果が報告され、前立腺癌由来の腫瘍細胞が骨転移する機構が新たに解明されました。なお、研究結果は2023年3月7日付の英国科学誌「Journal of Extracellular Vesicles」電子版に掲載されています。
同研究では、前立腺癌の癌細胞が分泌しているエクソソームを追跡し、それが破骨細胞への分化を誘導していることを解明しました。また、具体的にはエクソソーム膜の上に存在している分子「CDCP1」が文化を誘導する因子であることを同定しており、前立腺癌患者の血中エクソソームを検査してCDCP1の発現量を測定することで、前立腺癌から骨転移するリスクや骨転移の早期発見につながることを示しています。
加えて、今後はCDCP1をターゲットにした分子標的薬などを開発することで、前立腺癌由来の骨転移について新しい治療法を確立したり、バイオマーカーとして一層の有効活用を行ったりといった期待が報告されました。
参照元:国立研究開発法人国立がん研究センター|前立腺癌における新たな骨転移進展機構を解明
大阪大学免疫学フロンティア研究センターの石井優教授を中心とした研究グループによって、2013年に世界で初めて、破骨細胞が骨を破壊していく様子をリアルタイムでモニタリングすることに成功されています。
生きたままの骨の内部を可視化することで、破骨細胞には複数の種類が存在している事実が判明し、さらにそれぞれがどのような動きや流れで骨を破壊していくのか、また骨芽細胞と破骨細胞との関係性など様々なポイントが実際に目で観て確認できた点が重要です。
従来の研究では、骨組織を切り出して作成したサンプルを観察することで破骨細胞の状態などを調べていたものの、その状態ではすでに骨や細胞は死んだ状態にあり、動いている様子を確認することは不可能でした。しかし、今回の石井教授らによる研究では「2光子励起顕微鏡」という観察装置を利用し、骨を殺さず生存状態で確認できたことで、「骨の表面で骨を破壊する破骨細胞(R細胞)」と「骨の破壊に関与しない破骨細胞(N型)」といった複数の種類の存在が明らかとなりました。
以上の結果により、骨転移癌の治療薬の開発などを進める上でも、どの破骨細胞をターゲットにしてアプローチするかより細かなプランニングを検討できると期待されています。
参照元:科学技術振興機構|世界初 破骨細胞が骨を壊す様子のライブイメージングに成功—関節リウマチや骨粗鬆症、がんの骨転移に対する理想的治療法開発に光—
2022年10月23日の「JAMA Oncology誌(電子版)」において、アメリカのCincinnati小児病院のAnthony E. Mascia氏などによる研究報告として、陽子線を活用したFLASH療法が骨転移癌患者の疼痛管理・疼痛軽減に効果を発揮するという発表が掲載されました。
FLASH療法は、超高線量の放射線を瞬間的に照射する治療法であり、強度の放射線エネルギーをごく短時間だけ照射することで、被曝ダメージを抑えながらターゲットの腫瘍細胞に対する治療効果が期待されるものです。ただし、2022年現在、FLASH療法は臨床試験段階にあり、標準治療としては確立されていません。
概念としては半世紀以上前から存在していたものの、実際に理論通りの瞬間照射を行える放射線照射装置の開発は近年に至るまで待たなければならず、ようやく具体的な臨床研究が進められているといった状態でした。
同研究では、18歳以上の骨転移癌患者で、さらに四肢へ1~3カ所までの有痛性骨転移のある患者10人が対象とされています。そして四肢の骨転移に対するFLASH療法の結果、腫瘍周辺の正常な細胞へのダメージを抑えつつ、疼痛を軽減する効果が認められたということです。
参照元:日経メディカル|骨転移への陽子線FLASHに疼痛軽減効果を確認
第50回日本癌治療学会において、四国がんセンター整形外科の中田英二氏が主導する研究グループにより、癌が骨転移した患者の登録や骨関連事象(SRE)のリスク評価、さらにSRE発症予防のための集学的治療が、結果として脊椎転移による麻痺の発生を抑制できるという効果が報告されました。なお、SRE発症予防の集学的治療としては、骨装飾薬投与や予防的放射線療法などの併用療法が挙げられています。
そもそも近年の医療技術の発展により、癌の予後改善が進んだ一方、骨転移によるSREが増加傾向にあることが課題でした。またそのようなケースの大半で、SREが発現した後で治療が開始されており、結果的に骨転移患者の日常生活動作を健常に維持することが困難になることも問題でした。
そこで四国がんセンターは2009年10月から乳癌患者を対象として骨転移対策システムを導入し、2012年4月からは対象を全癌腫へ拡大しています。
骨転移対策システムは骨転移の判明段階でSREリスク評価を行い、その評価によって患者を分類して経過観察や予防に向けた集学的治療などを実践しています。
これらの取り組みはSRE発生リスクの予測や早期治療に活かせると考えられており、さらに高性能で高効率なシステムの確立についても期待されています。
参照元:日経メディカル|骨転移が認められた段階でSRE発症予防のため集学的治療を行えば麻痺発生を抑制できる可能性【癌治療学会2012】
独立行政法人国立病院機構京都医療センター外科と地方独立行政法人神戸市民病院機構神戸市立医療センター中央市民病院外科・移植外科の医師らによる研究チームが、肝類上皮血管内皮腫(HEHE)からの骨転移といった遠隔転移・多発転移について、手術前のFDG-PET/CT検査が転移癌の診断に有用であったという臨床研究の結果を、2024年12月1日刊行(一般社団法人日本消化器外科学会)の医学雑誌「日本消化器外科学会雑誌 57 (12), 614-624, 2024-12-01」へ発表しました。
まずHEHEは比較的レアケースとなる疾患である一方、その症例の36.6%において同時性遠隔転移が発生すると指摘されており、転移先には胸骨やリンパ節といった部位も考えられます。
本研究の症例対象は80歳の女性患者であり、偶然に肝外側区域における腫瘍が発見された後、FDG-PET/CTによる検査を実施したところ肝腫瘤や胸骨左縁におけるFDG集積が認められました。さらに胸骨生検によって類上皮血管内皮腫の診断を行い、腹腔鏡下肝左葉切除などの外科治療を実施しました。
そして術中診断と病理組織学的検査の結果、胸骨及びリンパ節への転移を伴ったHEHEだと最終的な診断が下され、またこれらの結果は術前のFDG-PET/CT検査結果と一致していることから、HEHEの遠隔転移について同術前検査が有用であると示唆されました。
参照元:CiNii Research「診断的肝切除および外科的骨生検で根治治療に至った胸骨転移を有する肝類上皮血管内皮腫の1例」
転移癌の中でも骨転移による癌が発生した場合、手術によって対象部位を切除・摘出するケースがありますが、一方で失われた骨や組織の再建方法が患者の予後やQOLの改善に重要であることも少なくありません。
旭川医科大学第一外科の中坪正樹氏を中心とした臨床チームは、甲状腺乳頭癌からの胸骨転移の治療として胸骨切除を行った後に、チタンプレートとポリプロピレンメッシュを併用した胸骨再建を実施したことを、2024年11月15日刊行の「日本呼吸器外科学会雑誌 38 (7), 640-646(日本呼吸器外科学会)」において報告しました。
患者は76歳の男性であり、胸部CTで偶発的に胸骨腫瘤の疑いが認められ、生検の結果により甲状腺乳頭癌原発の転移性胸骨腫瘍だと診断されました。しかし内科的治療に対する抵抗性が確認されたため、手術による切除が治療方針となったものの、胸骨の欠損は肉体的リスクや呼吸機能へのリスクが懸念されたため、「チタンプレート+ポリプロピレンメッシュ」を併用した再建術を実施した結果、呼吸機能を効果的に維持することに成功しています。
参照元:CiNii Research「甲状腺乳頭癌の胸骨転移に対して胸骨切除,チタンプレート及びポリプロピレンメッシュを用いて胸骨再建を施行した一例」
福島県立医科大学呼吸器外科学講座と総合南東北病院呼吸器外科の医療チームが行った臨床研究により、胸骨へ転移した骨転移癌の治療法として、吸収糸を用いた骨性胸郭の格子状固定と、大腿筋膜を活用した胸壁再建の実施結果及び有用性に関する考察が報告されました。なお、同研究は論文として日本呼吸器外科学会が刊行した「日本呼吸器外科学会雑誌 38 (7), 608-615, 2024-11-15」においても掲載されています。
胸骨腫瘍を手術によって切除した後、メッシュシート状組織などを活用した再建術が行われますが、それだけでは強度的に不十分なまま術後の胸痛や呼吸困難といったフレイルチェスト(動揺胸郭)が引き起こされることもあります。そこで研究チームは、腎細胞癌の手術後に胸骨転移を起こして放射線治療中であった76歳の男性患者に対して、感染リスクを軽減するために生体組織として大腿筋膜を使った胸壁再建を行いました。また、再建術では左右の肋骨と胸骨を吸収糸によって格子状に固定することで安定性を向上したこともポイントです。
結果的に術後フレイルチェストも発生せず、胸壁再建術として吸収糸を活用した格子状固定は有用であると示唆されています。
参照元:CiNii Research「胸骨腫瘍に対し吸収糸による骨性胸郭の格子状固定と大腿筋膜による胸壁再建を行った1例」
2024年9月25日刊行の医学雑誌「整形外科と災害外科(西日本整形・災害外科学会刊行)」において、長崎大学病院外傷センターの今西俊人氏を代表者とする研究チームが、大腿骨骨転移の患者に対する早期髄内釘手術の有用性に関する臨床データを報告しています。
まず、癌患者にとって骨転移は日常の生活動作(ADL)に大きな悪影響を及ぼす要因になり得るため、特に大腿骨のような骨に関しては、患者のADLやQOLを維持改善する目的で骨転移患者に対する早期の手術が推奨されています。そこで研究チームは実際に大体骨転移の患者に対して行った早期髄内釘手術のADL改善や長期治療成績について、長崎大学病院外傷センターの2013年8月~2023年3月の期間中における症例データをまとめて報告しました。
患者の平均年齢は71.2歳であり、原発巣としては乳癌が最多で、骨転移部位は骨幹部が最多となっています。また平均手術時間は108分で、全症例において術後平均1.7日で車椅子での移動が可能となっており、術前術後で疼痛スコアも3.4点から0.2点まで改善しました。
以上の結果から、早期の髄内釘手術は患者の疼痛緩和やADL改善に有用であると考察されています。
参照元:CiNii Research「大腿骨骨転移に対する早期手術の治療成績」
骨転移した癌に関する治療薬として、骨修飾薬「デノスマブ」が採用されていますが、一方でデノスマブのような治療薬が場合によっては患者の顎骨の一部を壊死させる副作用リスクも懸念されています。
今回の研究は、実際にどの程度の発生頻度で顎骨壊死が認められるのか、臨床現場でデータ収集されたものであり、オーストリアのインスブルック医科大学のChristine Brunner医師らによる研究チームによって発表されました。なお、同研究は2024年の「Journal of Clinical Oncology誌8月20日号」にも掲載されています。
従来の考え方としては、デノスマブによる顎骨壊死の発生や重篤な痛みを伴った副作用のリスクはレアケースとされていました。しかし、2000年~2020年のオーストリア在住の乳癌患者を対象として調査した結果、デノスマブ投与患者における顎骨壊死の発症リスクは、ビスホスホネート製剤投与患者に対して5倍近くとなっており、患者の術後QOLを考える上で無視できない要素だと指摘されています。
参照元:海外がん医療情報リファレンス|デノスマブなどの骨修飾薬に起因する顎骨壊死はそれほど稀ではない
骨転移は全身の様々な骨において発生するリスクのある疾患ですが、中でも背骨(脊椎)への骨転移癌は、多くの患者に強い痛みを感じさせる厄介な病気です。そして、そのような背景にもとづいて、2020年10月26日に開催された2020年米国放射線腫瘍学会大会において、トロント大学サニーブルック保健科学センターのArjun Sahgal医師が、標的化した放射線照射治療によって脊椎への癌転移の痛みを軽減できたという研究結果を発表しました。
まず、骨転移癌の疼痛管理や緩和治療として放射線照射はすでに行われていましたが、従来の治療法では対外照射治療が主となっていました。一方、Arjun Sahgal医師らは脊椎の転移部位に対して「体幹部定位放射線治療(SBRT)」を行い、痛みがなくなるまでの時間や痛みがなくなった患者の割合などを比較しています。
結論として、従来型照射では15%の患者で痛みがなくなったのに対して、SBRTでは患者のおよそ3分の1で、最長6ヶ月以内に痛みが解消されたそうです。
参照元:海外がん医療情報リファレンス|標的化した放射線照射は脊椎へのがん転移による痛みを軽減
臨床ガイドラインにおいて、骨転移癌の治療薬として「ゾレドロン酸」といった骨修飾薬の有用性や、その定期投与が推奨されています。一方、このような骨修飾薬では顎骨壊死といった有害事象を発生させる副作用リスクがあり、一般的にレアケースとされるものの顎骨の壊死を招いたり、顎骨の弱体化を引き起こしたりするという懸念があることも事実です。
そこで、改めてゾレドロン酸の使用がどの程度のリスクをもたらすのか、約3500人の患者を対象とした調査・研究がSWOGがん研究ネットワークによって実施されました。なお、同研究の試験結果は2021年12月17日付の「JAMA Oncology誌」でも報告されています。
ワシントン大学医学部のJulie Gralow医師を責任者とする研究チームは、ゾレドロン酸投与の1年後に患者の約1%、2年後に約2%、そして3年後に約3%が骨壊死を引き起こしたというデータを示し、また喫煙や口腔衛生不良がリスクを増大させると指摘しています。
参照元:海外がん医療情報リファレンス|がん骨転移治療薬ゾレドロン酸の使用で顎骨壊死の可能性
前立腺癌は高頻度で骨転移が発生する癌であると同時に、骨転移による骨折や骨痛は患者の日常生活やQOLを低下させてしまいます。可能な限り迅速かつ早期に骨転移の有無や状態などを確認できる方法の開発が望まれています。
名古屋市立大学医薬学総合研究院の三村佳久氏らによる研究チームは、前立腺癌による骨転移の発生リスクを踏まえて、「骨密度によって骨転移の状態が予測・予防できるのではないか」と超音波骨密度測定器を活用した研究を行いました。
前立腺癌の患者の骨密度を測定し、さらに骨転移の発生状況と骨密度の関連性について分析しました。その結果、骨転移を起こしている癌患者は骨転移のない患者と比べて骨密度が有意に低いと認められ、骨密度を指標として将来の骨転移発生や骨転移憎悪を予測できる可能性が示唆されました。また、この予防法・予測法が確立されることで、骨転移の早期発見や発症予測にもとづいた新しい治療戦略の開発につながることも期待されています。
参照元:科研|前立腺がんの新規骨転移予測法の開発-骨密度に着目した研究-
関西大学化学生命工学部の岩崎教授らによる研究チームは、骨組織へ選択的に作用する特性を持った両親媒性ポリマーを活用して、癌の骨転移巣へ抗がん剤を選択的に輸送する治療法を研究しました。骨転移巣へ選択的に作用するポリマー医薬を創出できれば、抗がん剤による治療効果を効率的に転移先の腫瘍組織へ及ぼすことが可能となり、新しい治療法の開発や患者のQOLの向上に寄与することが期待されています。
研究は複数の工程に分類されており、骨指向性と生理活性を持った両親媒性ポリマーの設計と合成、薬剤担持ポリマーに関する抗がん活性評価、骨細胞などの機能に作用するポリマー構造相関や分子生物学的理解、そして小動物骨転移モデルを活用したポリマー医薬の効果と作用機序の解明といった段階で進められました。
研究の結果、岩崎教授らは末端にコレステロールを持つポリリン酸エステル(Ch-PPE)の合成に成功しており、Ch-PPEが破骨細胞の分化抑制に効果を発揮することなども解明されています。
参照元:科研|転移性骨腫瘍の退縮と骨破壊を阻止する高分子医薬の開発
関西医科大学医学部の中村聡明教授による研究チームは、骨転移の治療として放射線治療の適応性を判断するための、新しいスコアリングシステムの開発研究を行いました。
骨転移癌に対して放射線治療の適応判断を行う場合、転移先となっている癌病巣の部位や癌のサイズ、大きさ、分類型などをベースとして、さらに全身症状や局所症状、薬物療法の既往歴といった複数の情報や条件を考慮しながら多角的に検討されます。中村教授らによるチームは、様々なチェック項目の中でも特にどの項目が客観的にスコアリングへ有用であり、どの項目の組み合わせにおいて適切な放射線治療適応が決定できるのか研究することで新スコアリングシステムの開発を進めました。また、新しいスコアリングシステムを活用したAIソフトウェアを開発し、積極的骨転移診療の土台づくりを目指したことも重要です。
骨転移に関するスコアリングシステムとしては既存の方法としてSINスコア(Spinal InstabilityNeoplastic Score)やMirelsスコアなどが知られていますが、放射線治療適応に特化したシステムではなく、骨転移に関するシステムが開発されることで学術的独自性としての価値も期待されています。
参照元:科研|積極的骨転移診療に向けた放射線治療適応スコアの開発
順天堂大学 医学部の先任准教授である高木辰哉氏らによる研究チームは、患者の血液検体を用いた低侵襲かつ高感度な骨転移診断バイオマーカーの開発研究を行いました。
バイオマーカーの開発には癌患者のCirculating Tumor Cells(CTC)と血漿中cell-free RNA、cell-free DNA (cfDNA)、そしてmicro RNA (miRNA)などが活用できると考えられ、癌患者の血液検体を用いて骨転移の発現解析が試みられています。また、癌患者の血液に含まれている骨転移関連遺伝子の解析フローを構築することで、骨転移診断マーカーの機能解析や骨転移関連遺伝子解析の臨床的有用性評価といった有用性も研究されたことが重要です。
研究テーマとして「血液で骨転移由来分子を早期かつ高感度に発見する」というものが掲げられ、従来の画像診断や血液検査といった検査システムよりも早期かつ適正な癌骨転移の発見及び治療法への寄与を目指されたことも特徴です。
研究過程において、乳癌や上咽頭癌、膵臓癌などの患者8症例をサンプルとして血液検体を採取し、miRNAアレイによる遺伝子発現解析が実施されました。その結果、全ての骨転移検体で共通するmiRNAの発現異常80種が同定されています。
参照元:科研|血液検体を用いた骨転移診断バイオマーカーの開発
東京医科歯科大学(現・東京科学大学)病院がん先端治療部・緩和ケア科の佐藤信吾講師や、同大学大学院医歯学総合研究科整形外科学分野の吉井俊貴教授らによる研究グループは、株式会社NTTデータグループと共同して、患者のCT検査の画像から癌骨転移を自動的に検出するAIモデルの開発に成功したと発表しました。なお、本研究は国際科学誌「Spine」の2024年3月15日発行号に掲載されています。
研究は、2016年から2022年の期間に東京医科歯科大学病院で撮影された骨転移患者のCT画像データをサンプルとして活用しており、骨転移のある255名の癌患者から得られた283のCT画像データ(計5991スライス)と、192名の骨転移のない癌患者に由来する192のCT画像データ(計88,799スライス)がそれぞれAIの学習モデルとして使用されています。
なお、アノテーションは複数の整形外科専門医の合意にもとづいて手作業で実施され、学習モデルにはセマンティック・セグメンテーションモデルとしては「DeeplabV3+」が利用されました。
今後は開発されたAIモデルの活用により、癌骨転移の検出効率の向上と医療現場での治療品質向上が期待されています。
参照元:東京科学大学|「 がんの骨転移をCT画像から自動で検出するAIモデルの開発 」【佐藤信吾 講師】
進行乳癌からの骨転移において、骨修飾薬「デノスマブ」の投与が標準治療として活用されているものの、デノスマブによる顎骨壊死(ONJ)や歯性感染症といったリスクは無視できないデメリットでもあります。
そのような背景を踏まえて、スイスのAndreas Muller氏らによる研究グループは、2024年12月にアメリカのサンアントニオで開催された「San Antonio Breast Cancer Symposium(SABCS 2024)」において、デノスマブを4週おきに投与する場合よりも、12週おきに投与する方がONJなどのリスクを低減し、長期安全性においても良好な結果を得られたという研究内容を発表しました。
データ解析は50施設725人の患者を対象として数年間(観察期間中央値3.4年)にわたって行われ、デノスマブの4週おき投与(標準治療)と、12週おき投与を比較した結果、後者においてONJなどの発症率が有意に抑制されたということです。
この結果はデノスマブの標準治療の内容やリスクマネジメントについて新たな知見を与えることになりました。
※参照元:がんナビ|進行乳癌の骨転移にデノスマブ12週おき投与は標準の4週おき投与よりも顎骨壊死や歯性感染症のリスクが低い【SABCS 2024】
骨転移癌の診療や治療については、早期診断や早期治療、骨関連事象(SRE)の発症予防といった複数の項目を多角的に実行していくことが重要とされています。そこでがん診療連携拠点として指定されている鹿児島市立病院の川平正博氏らによる研究チームは、骨転移の患者や症状に関して、緩和ケア医や放射線治療医、整形外科医など多職種によるチームを結成し介入することで、生存期間の延長やADL改善といった効果を期待できるかどうかに関する後方視的検討を実施しました。
解析対象となった患者は2020年8月~2022年7月の期間において、同病院で骨転移カンファレンス(BMB)が実施された進行癌患者75名となっており、SRE発症後にBMBを行った上でチーム介入別に2つのグループへ分類し、比較検証が行われました。
結果として、まず両群において原発巣として最多となったのは肺癌でした。また薬物療法は両群で80%以上実施されており、SREの発症前後によるチーム介入で患者が感じる痛みは軽減されたものの、生存期間については有意差が認められなかった点も重要です。
上記のデータは、骨転移の生存期間に関してはSRE発症の影響が大きいと考えられ、骨転移患者の生存期間延長を叶えるためにはそもそもSREを発症させないような取り組みが重要であるとまとめられました。
本検証や報告は鹿児島市立病院における単一施設での後方視的検討となっていますが、当該施設はがん診療連携拠点病院としての認定を受けており、骨転移患者の治療や予後管理などについて考える上で有用な情報の1つとして検討する価値がありそうです。
※参照元:J-STAGE|単一施設における骨転移チームによる介入の後方視的検討—がん診療連携拠点病院における骨転移カンファレンスの現状—
2025年7月16日、千葉大学大学院医学研究院の田村貴明助教らによる研究チームと、東京医科大学医学総合研究所の落谷孝広特任教授らによる研究チームの共同研究として、前立腺癌から骨に癌転移が起こるメカニズムや、骨転移した前立腺癌が悪性化していく仕組みなどを解明したという発表が公式にアナウンスされました。なお、同研究の結果については2025年6月23日付けの国際学術誌「Journal of Extracellular Vesicles」においても掲載されています。
本研究のポイントとして、前立腺癌を原発巣とする骨転移では造骨性転移が認められるものの、骨転移巣の中で腫瘍細胞が最も広がっている部位では骨を破壊する「破骨細胞」の異常活性が認められるという点がありました。
また、それらの破骨細胞は前立腺癌細胞によって「教育」が施され、炎症性物質「物質IL-1β」の生産に関与する遺伝子の発現が活性化されていたこともポイントです。加えて悪性化した破骨細胞由来の細胞外小胞(EVs)には、破骨細胞をさらに活性化して骨芽細胞の機能を抑制するマイクロRNAが多量に含まれていると判明しました。
以上の前提を踏まえて、前立腺癌骨転移マウスモデルに対して悪性破骨細胞由来EVsの特異的マイクロRNAの投与を行った所、骨転移の進展が加速して骨破壊の異常活性が認められたということであり、一連の流れが前立腺癌から骨に転移した癌の悪性化のメカニズムであると明らかにされました。