いちから分かる癌転移の治療方法ガイド

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汎用型高精度放射線治療装置(トゥルービーム)

癌の三大治療の1つとして数えられる放射線治療。その中でも2010年に導入が開始された治療装置「トゥルービーム(汎用型高精度放射線治療装置)」とはどういった治療法なのか、メリットやデメリットなどに切り分けてご紹介します。

トゥルービームとは?

トゥルービームは、リニアック(直線加速器)型の放射線治療装置として開発され、高精度かつ短時間での照射が可能となるよう設計された機種です。定位放射線治療や強度変調放射線治療(IMRT)などを高精度かつ短時間に行うことができるのが特徴といえます。

ビーム発生の仕組みや患部の位置を正確に把握するためのイメージング、指示通りに稼働させる制御といった各ユニットのリアルタイム統合制御は、新たな照射技法を生み出す基盤となっています。また、標準治療、複雑な高精度治療、IGRTなども含め、すべての操作を効率良く運用できる操作性の高さとオートメーション機能を組み込むことによって、スループット(一定時間内に治療可能な患者数)の向上に大きく寄与しているのもポイントです。

また、放射線治療計画ソフトウェアを用いることで、主に転移性脳腫瘍に対する定位手術的照射を短時間で効率的に行うことができるソリューション「HyperArc」を標準搭載したモデルが新たにラインナップとして加わっています。「HyperArc」は、多発性転移性脳腫瘍のSRS(大線量を1回で照射する治療方法)に必要なノンコプラナー照射が可能で、治療計画のワークフローが簡略化され、短時間で効率的な治療計画が立てられるよう設計されています。

参照元:Varian公式サイト(https://www.varian.com/ja/products/radiotherapy/treatment-delivery/truebeam

アダプティブ放射線治療との違い

2020年代に入り注目されているのが、照射当日の腫瘍や臓器の変化に応じて線量分布をリアルタイムで調整する「アダプティブ放射線治療(ART)」です。

代表的な機種には、MR画像をリアルタイムで取得しながら治療を行う「MRIdian(ViewRay社)」や「Unity(Elekta社)」があり、トゥルービームとは異なるアプローチで腫瘍制御率の向上と正常組織保護の両立が期待されています。

メリット

トゥルービームの大きなメリットのひとつは、放射線を患部に集中させ、正常組織への照射を抑えることで、副作用の発生リスクを、従来の照射法と比較して大幅に軽減できる点です。ただし、副作用を完全になくすことはできないため、症状が出る可能性はゼロではありません。

強度変調放射線治療によって、より立体的に癌の範囲をとらえることができるため、正常組織への無駄な照射を避けることができます。また、呼吸などで動く臓器への照射精度を高めるために、呼吸同期やゲーティングといったシステムが搭載されており、患者さんの呼吸状態を考慮した治療が行いやすくなっています。ただし、実際の運用方法や治療部位によっては、深呼吸や息止め(ブレスホールド)などの工夫を行う場合もあります。

コストの面では、他の放射線治療と同様に保険診療の適用があります。ただし、自己負担割合や限度額は健康保険の種類や年齢などによって異なるため、詳細は主治医や医療ソーシャルワーカーに確認しましょう。

トゥルービームをよく使用する癌とその理由

乳癌

メリットの項目で「呼吸などで動く臓器を追尾するシステムが搭載されている」と紹介したように、呼吸をすることによって放射線をあてる部分が動いてしまう腫瘍に対して効果を発揮するのがトゥルービームの大きな特徴です。

そのため、横になっている時に呼吸をすることで上下しやすい乳癌の治療に向いています。また、温存術後の予防領域に対して放射線治療を行うのにも役立ちます。

膵臓癌

呼吸同期照射を用いた強度変調放射線治療によって、障害の起こりやすい消化器を避けながら、膵臓腫瘍部に線量を集中させる治療を行うことができます。

脳腫瘍

トゥルービームの装置「True Beam STx」は、HD(高精度)マルチリーフコリメータなどを搭載しており、より細かいリーフピッチで小さな病変への集中照射が可能です。そのため従来型より脳腫瘍や転移病変などの定位照射に特化した構成となっており、高い精度が求められる部位にも対応しやすいのが特徴です。

デメリット

トゥルービームは、さまざまな部位の腫瘍に対応することができる汎用性の高さが魅力です。一方で、腫瘍の位置や形状、周囲臓器の状態によっては、トモセラピーのようにリング型リニアックで連続回転しながら照射する装置や、より小さな範囲に特化した専用機器(サイバーナイフなど)のほうが適している場合もあります。装置ごとに特徴や得意分野が異なるため、病変部位や治療目的に合わせて選択されます。

トゥルービームの種類

True Beam

一般的なトゥルービームの装置です。従来の放射線治療装置に比べて放射線を照射する速さが2~3倍となっているため、短時間での高精度放射線治療が可能。放射線治療装置に内蔵されているX線画像装置を用いて、高い精度で放射線治療を行うことができます。

True Beam STx

True Beamと同じく、高精度放射線治療はできることはもちろん、最新の2.5mm厚マルチリーフコリメータを搭載。TrueBeamの5mm厚に比べると半分の厚さになっているので、より小さな照射野形成ができ、定位放射線治療を得意とする治療装置となっています。

また、ドイツの医療機器メーカー、ブレインラボ社製のイグザクトラックシステムとよばれるX線画像システムを搭載しているため、照射位置合わせの時間短縮が可能です。脳や肺、肝臓といった比較的、小さな腫瘍を治療するのに向いているでしょう。

治療計画のAI支援

2020年代前半からは、Varian社の「RapidPlan」など、人工知能(AI)を活用した自動放射線治療計画ソフトの導入が進んでいます。

治療プランナーの経験に依存せず、過去の優れた治療計画を学習したモデルを基に、短時間かつ高品質な治療計画の作成が可能です。TrueBeamとの組み合わせにより、スループットと精度の両立が実現しやすくなっています。

どのような癌治療に有効?

肺癌、肝臓癌、前立腺癌、頭頸部癌、乳癌、脳腫瘍など

放射線治療による副作用

放射線治療のほか、薬物療法などの癌治療を受けるうえで注目されるのが治療による副作用です。

今から20年以上前に行われていた放射線治療では、1~2方向から照射していたため、癌のそばにある健康な内臓や皮膚への照射を避けることが困難でした。ところが専用のコンピューターを使って照射野の形状を変化させたビームを複数使用し、腫瘍の形に適した放射線治療を行う新しい照射方法(強度変調放射線治療など)の3次元照射技術を積極的に利用することにより、正常組織への照射を最小限に抑えることが可能になっています。

こうして放射線治療による副作用の発現頻度は、大幅に減少しているのです。

トゥルービーム以外の放射線治療について

たとえば、定位放射線治療に用いられる代表的な装置にはサイバーナイフやガンマナイフなどが挙げられ、強度変調放射線治療にはトモセラピーが挙げられます。トゥルービームとどんな違いがあるのか、チェックしてみましょう。

強度変調放射線治療(トモセラピー)

トモセラピーは、アメリカで開発された放射線治療装置です。2002年頃からトモセラピーを使った治療が行われるようになり、今では世界各国の医療機関で導入されているメジャーな放射線治療装置の1つ。「セラピー」と名前がついているものの治療方法ではなく、他の放射線治療装置と同じく、X線によって癌の治療を行う装置となっています。

他の放射線治療装置と違うのは、CTのように患者の体の周りを回りながら細い放射線のビームを組み合わせて治療を行う点です。これにより、治療したい部位に沿った線量分布を描きながら、避けたい部位にはできるだけ放射線が軽減することが可能になります。

また、治療の前に位置合わせのための画像を撮影し、場所のずれを修正する「画像誘導放射線治療」ができるのも大きなポイント。トモセラピーの位置照合は、日常的に用いられる位置照合の中でもとくに精度の高い方法の1つとされています。

定位放射線治療

サイバーナイフ

サイバーナイフとは、X線を使った放射線治療装置の1つ。腫瘍にピンポイントで照射することに特化しているのが特徴です。コンピューター制御によって、まるでナイフで手術をしているかのように治療を行うことから、その名前が付けられています。

産業用ロボットを医療用に応用したもので、ロボットのアーム部分に取り付けられたX線発生装置がさまざまな方向から腫瘍を集中的に狙い撃ち。治療精度は0.5mm以下の精度で治療することが可能です。とくに脳腫瘍を含む頭頸部や肺、肝臓の治療で効果を発揮します。

ガンマナイフ

ガンマナイフは、脳内にある病巣部に192個の細かいガンマ線ビームを集中照射することができる放射線治療装置です。開頭手術をせずに病巣をナイフで切り取るように治療できることからこう呼ばれており、周辺の組織を痛めずに治療をすることができます。

照射する時に貫通する頭皮や骨・脳実質・血管・神経など健康な部分への影響は少なく、照射を受けた病巣のみが徐々に凝固させ壊死させることが可能。今まで手術をするのが困難だった脳の深部にある血管奇形や腫瘍への低侵襲的治療ができるため、外科的手術に耐えられない患者や高齢者でも治療を受けられます。