脳への転移
脳への転移は、肺癌や前立腺癌から起こることがあります。このページでは脳へ転移する場合の特徴や治療方法などをまとめました。
脳に転移するケースとは
脳への転移が多いとされているのが、臓器の中でも肺癌です。血液の循環により脳に流入した癌細胞が一番外側の「硬膜」に転移することで発生し、硬膜以外の脳のどの部分でも転移は起こり得ます。また、肺癌に限らずどの臓器でも転移する可能性があります。たとえば前立腺がんであっても、末期まで進行してしまうと脳に転移する場合もあり、非常に珍しいケースと言えますが、起こらないわけではありません。
脳転移の症状
肺癌から転移した場合の症状と特徴
- 目まい、けいれん、麻痺、感覚障害
- 背中や腰の痛み
- 手足のむくみ、しびれ
- 人格への影響
脳の中で特に転移が認められやすい部位が硬膜。硬膜は、脳を保護する髄膜の一部に当たります。硬膜に転移すると、四肢の麻痺やけいれん、感覚障害、目まいといった症状が発生するケースがほとんどです。硬膜から他の部位にも転移が進んで髄液にまで達した場合、背中や腰の痛み、手足にしびれを感じることもあります。
また、肺癌が脳に転移した場合、転移した患部の周りにむくみが発生します。これにより頭蓋骨の内部が圧迫されてしまい、頭痛や吐き気を感じることも。
一口に脳転移といっても、脳のどの部位に転移するかで現れる症状は違ってきます。例えば、脳で思考や理性などの精神を司る働きを持つ前頭葉に癌が転移した場合、人格が変化して病気の発症前と別人のようになることもあり得るのです。
前立腺がんから転移した場合の症状と特徴
前立腺がんが脳に転移した場合は、頭痛や吐き気、目まい、麻痺などの神経障害をはじめ、意識障害や言語障害を生じる可能性があります。
脳転移の治療方法
肺から脳へ転移した場合の治療方法
肺から脳に転移が見つかった時は、外科手術や放射線治療がメインの治療法です。抗がん剤治療は脳に届きにくいので、あまり選択されません。病巣が10個以下で小さい腫瘍には「ガンマナイフ」という放射線を当てる治療法が行われます。ガンマナイフとは、腫瘍のある部分だけを限定して治療できる治療機械のこと。強い苦痛や痛みを伴わずに治療が可能です。脊髄まで腫瘍が転移し、病巣が10個以上あるような場合は「全脳照射」という治療が行われます。全脳照射は脳全体に放射線を当てることで腫瘍を消滅させる方法です。
前立腺から脳へ転移した場合の治療方法
前立腺がんから脳に転移が見つかった場合は、放射線治療を用いて症状を緩和させます。転移した癌の数や症状に応じて放射線の強さを変える治療法です。脳に転移した癌の数が少なければ、切除といった外科的処置が選択されます。
脳転移について
肺癌からの転移で多いケースが脳への転移です。反対に、レアなケースではありますが起こりうるのが前立腺がんです。どちらも症状としては、目まいや麻痺といった神経障害を引き起こします。癌細胞が転移した部位の周辺がむくむことで頭蓋骨の内部を圧迫するため、頭痛や吐き気などが起こることも。
治療には主に外科手術や放射線治療が行われます。病巣の数や大きさによって治療法は変わりますが、特に前立腺がんからの脳転移は珍しいため、適切な治療が施されないこともあり得るのです。
転移癌の治療は癌治療の中でも難しいとされ、実績がない医師に任せるより、転移癌の治療実績を豊富に持った医師を選んで相談することが大切です。
脳に転移してしまった人の体験談
脳への転移や再発を医師から告げられた時、大きなショックを受けたり強い不安を抱いたりする患者は少なくありません。一方で、そのような時に他の脳転移の癌患者から体験談や経験談を聞くことで、心の支えとして前向きになれることもあります。
※記載されている治療法や薬品名は、体験者が治療を受けた時点のものです。最新の医療情報については、医師にご相談ください。
患者としての生き方を沢山の人に支えてもらっている
(前略)もし、転移があり、手術で取りきれないとしたら抗がん剤治療になります。手術できるかどうかの判断も含めて、専門の大きな病院へ相談するべきだと思いました。翌日、撮影したデータを持参して、別の大きな病院に行き、精密検査を受けました。脳幹や小脳など脳にも10か所ほど転移していることがわかりました。手術ではない治療を受けることになりました。(中略)治療は同年代の信頼できる医師に担当してもらっています。自分の場合は医師として知識や経験もありますが、今は患者に徹することが大切だと感じています。がんの治療は日進月歩でどんどん進化して抗がん剤の種類も増えているので、主治医に任せたほうがいいと思いました。抗がん剤の治療の知識も2年経つと古くなるほど日々進歩しています。選択肢も増えて、治療選択が難しくなってきているので専門家の意見は大切です。
引用元:がん保険がよくわかるサイト|関本剛さん 肺がんを経験 ~いっしょにらくに長生きしましょう~
他の患者の言葉を知って一人ではないと思えた
私は肺腺がんステージⅢAと診断された後、肺上葉切除手術を受け、術後補助化学療法を4クールおこないました。しかし、5カ月で脳転移し、ガンマナイフ治療をやりました。PET検査もやる予定ですが、子供のことを考えては涙が出てきたり、先のことが不安で仕方のない日々でした。
こちらで同じ肺がんで頑張ってるみなさんのメッセージを見て、私も頑張ろうと思いました。
引用元:肺がんとともに生きる|私も頑張ろうと思いました
自分の体験談を人と共有することで得られた喜び
人生百年と言われる時代、私ががんになったのは半ば過ぎの55才でした。これから何かしようと思った矢先でした。年に一度の検診で肺がんが見つかり、翌年脳転移、8ヶ月後に新たな脳転移が見つかりました。3年間で手術、化学療法、放射線療法2回をやりました。一番ショックだったのは、脳転移でした。(中略)何回かサロンに通い気持ちに余裕が出来ると、家族の姿が頭に浮かびました。いつも温和な家族にも感情を吐き出す場所が必要だと感じたのです。私の会にも家族サロンがあると聞いていましたので、先日リモートで参加してみました。家族の思いも聞けましたし、亡くなった当事者がもし自分であったらどう思ったであろうかというお話などもできました。少しは患者として役に立てたかもしれないと実感し、プチ幸せです。がんになっても人の役に立てる喜びを感じ、新たな目標を見つけた気がします。
引用元:ちばがんなび|Vol.26 がんと私
自分の生き方と命の価値を見直すきっかけに
(前略)私は1年目に脳転移を経験しました。また、同じ病気の友達が旅立っていって、明日は必ず来るものではない、普通にできることが決して当たり前ではないということを痛感しました。そして、以前の私は「自分がやらなくては」とか「負けたくない」という気持ちでハードワークをこなしていたのですが、病気になったことで、命を削ってまでする仕事はないと思うようになりました。このことは、私の人生の大きなターニングポイントになったと感じています。(後略)
引用元:武田薬品工業株式会社|病気も包み隠さず接することで元気に
手術後の後遺症への対策
脳に転移したがんの摘出手術によって、脳の機能の一部が損なわれるケースがあります。考えられる後遺症はけいれん発作、手足の麻痺、話しにくい・聞いて理解しにくい・物が飲み込みづらいの4つです。それぞれの対策についてご紹介します。
けいれん発作
治療後、長期に渡ってけいれん発作を起こす可能性があります。そのため、発作を起こす可能性がある場合は、抗けいれん剤が処方されることも。指示された量を時間通りに飲むことで、継続的に予防効果を得られます。ただし、副作用として眠気が強くあらわれるので注意してください。
手足の麻痺
手足がしびれたり、麻痺したりして体がふらふらすることも。体の機能をサポートする装具の使用や、リハビリによって機能を回復させます。
話しにくい・聞いて理解しにくい
字を書く練習や発声練習を行ないます。もどかしいと感じることもあるかもしれませんが、家族や周囲の人と積極的に会話をするのが大切です。
物が飲み込みづらい
食べ物を細かく刻んだり、とろみを付けたりして工夫します。また、食事の際は飲み込みやすい姿勢を取るのも大切です。一般的に、あごを引くと飲み込みやすいと言われています。
日常生活を送る上で
後遺症が続く場合は、住環境を整えることが大切です。機能低下によって注意力が散漫になったり、手足の麻痺があったりすると自宅の段差で怪我をする危険性が高まります。しかし、自宅に潜む危険は住宅の整備をすることで大幅に軽減することが可能です。
例えば寝室が2階にある場合は1階へ移す、トイレが和式の場合は洋式にする、廊下や浴室に手すりを設置するといった工夫が必要になります。住宅整備には少なからず費用がかかってしまいますが、自治体によっては住宅改修の費用を補助してくれるところも。
市町村の窓口や相談支援センターに、問い合わせてみてください。そのほかに心のケアとしては、絵を描いた音楽を聴いたりするなど、自分の好きな方法でリラックスすることで、ストレスを解消できます。
患者のQOL(生活の質)に関する情報
脳転移の患者にとって、様々な症状や合併症が現れることは日常生活へ影響する重要なポイントであり、その症状によってはQOLが低下してしまうこともあります。
そのため症状に合わせた適切な対策によりQOLの向上へ努めていきましょう。
運動麻痺・失調・振戦への対策
脳転移など脳に関する疾患や病気では、しばしば脳機能の悪化や障害によって心身にマヒが生じたり、運動機能が低下したりといった問題が生じます。特にマヒなどの運動障害が生じる部位によってはスポーツを行えなくなったり、日常生活を送ることさえ困難になったりといったリスクも強まるため、状態に合わせて適切な対策やライフスタイルを考えていかなければなりません。
生活様式の変更・補助用具の活用
大前提として、運動機能の低下や身体的な障害の発生が現れた場合、自助努力も大切ですが必要に応じて介助者の支援を受けたり、補助用具を活用したりといった工夫も重要です。
例えば利き手の自由を失った場合や細かい作業が難しくなった場合、お箸を使う代わりにスプーンやフォークを使ったり、下半身の力が弱まった場合は布団や和式便所でなくベッドや洋式便所に変えたりといった工夫が考えられます。小さなボタンの付いた服は指先にマヒが生じた際は着脱が難しくなるため、ボタンのないトレーナーやベルトのないパンツなどを選ぶことも工夫のひとつです。
転倒の予防
滑りにくい床マットへ変えたり、転倒しやすいスリッパやハイヒールといった靴を避けたりすることも転倒予防になります。また車椅子や杖なども利用し、階段の移動では手すりの設置や介助者の準備も有効です。
失語症・構音障害への対策
脳機能が低下することで発音が難しくなったり、思い通りに発語できなくなったりすることもあります。
人のコミュニケーションにおいて会話によるやりとりは重要なウェイトを占めており、特に日常的に言葉で対話していた人がいきなり言語障害の問題に直面すると大きな精神的ストレスを抱くものです。失語症や構音障害といった言語機能の問題が生じた場合、例えば短文での会話を意識したり、「はい/いいえ」で応えられるような質問へ変えたりすることも工夫です。また表情や態度によるコミュニケーションも意識し、単語カードや「あいうえお表」の導入も検討してみましょう。
感覚障害への対策
感覚障害といってもその内容は患者によって様々であり、例えば温度を感じにくくなったり、痛みを感じにくくなったり、味や香りといったものを感じにくくなることもあります。
特に感覚障害の場合、そもそも本人が温度や味を感じ取れないため、自分が感覚障害に陥っていると気づけないことも少なくありません。しかし無自覚の感覚障害は日常生活において危険なものであり、QOLを低下させるだけでなく心身のリスクを増大させる可能性があります。
感覚障害への対策では、まずどのような感覚に影響が現れているのか確認することが必要です。例えば温度を感じにくくなっている場合、熱湯に触れて火傷したり、冷たいものに長く接して凍傷になったりするかも知れません。また痛覚が鈍化している場合、ケガをしていても気づかず悪化させる恐れもあるでしょう。
熱いものを直接に触らず、鍋つかみや温度計といったアイテムを使用し、顔や体の様子を鏡で定期的にチェックして異常の有無を確認してください。
記憶障害・失認・失行への対策
記憶が曖昧になっていたり、これまで当たり前に覚えていたことを忘れてしまったりすると、本人にとって大きな精神的ストレスが発生してQOLの低下へつながります。また周囲の人も不安や心配が大きくなり、人間関係やコミュニケーションに悪影響が及ぶこともあるでしょう。
記憶障害や失認、失行といった影響が認められた時は、焦ってパニックに陥るのでなく、まずは落ち着いて日々の行動を繰り返しながら自分にできる範囲を把握していくことが大切です。
記憶障害
脳転移や脳障害において記憶障害は一般的に認められる症状ですが、新しいことを覚えられなかったり、忘れてしまったりすることは患者にとって極度に強いストレスとなり得ます。
そのため、無理をして頭で記憶しようとするのでなく、メモを取ったりノートへ書いたりして覚えておくべき内容を記録することを習慣化しましょう。また情報量が過大にならないよう整理して簡潔にまとめる意識も大切です。
失認・失行
失認・失行は状況を認識できなかったり、思ったように行動できなかったりする脳機能の障害です。当たり前に行えたことができなくなった場合、焦ったり不安を強めたりしがちですが、決して慌てず、危険を回避するように努めましょう。また周囲はサポートできない範囲の行動を促さないように配慮してください。
社会行動障害
記憶障害や認識障害は日常生活や社会生活に悪影響を及ぼします。そして、それを受け入れるには相応の時間もかかります。
急に全てを上手く行おうとすると混乱が悪化するため、シンプルなコミュニケーションを心がけながら、不安があれば信頼できる人へ相談していきましょう。
脳神経障害への対策
脳神経障害としては、視力の低下や聴力の低下、嚥下障害など色々なケースが想定されます。視野障害や聴力低下は日常生活の行動でリスクを発生させ、嚥下障害は誤嚥性肺炎などの症状を引き起こしかねないため、それぞれに適した対処が必要です。
視野障害
視野障害は単に視力が低下している状態でなく、目で見える範囲(視野)が欠けたり、狭まったりしている状態です。
視野障害はすぐに自覚できないケースも多く、日常生活の中で死角が増えてしまうことは無視できません。
視野障害の程度によっては転倒や事故のリスクが増すため、まずは患者の見えない範囲を確認して、見えにくい場所へものを置くことを避け、また死角から声をかけないといった配慮も意識します。
聴力低下
聴力低下は片耳だけに生じる場合や両耳に生じる場合があり、もし片耳に発生しているのであれば、周囲の人は聞こえやすい方の耳から話しかけてあげるといった配慮が大切です。
また聴力が低下すると近づいてくる車の音を聞き取れなくなったり、インターホンの音が聞こえにくくなったりするため、外を歩く時には周囲の安全確認を心がけ、音による伝達でなく明かりや点滅など視覚へ訴えるアプローチを考えましょう。
嚥下障害
嚥下障害は食事などで口から胃へと食べものを飲み込む行為が難しくなり、食欲が低下したり、誤嚥性肺炎を引き起こしやすくしたりといった影響が生じます。固形物を食べる時にむせやすくなった場合、飲み込みやすい刻み食やおかゆなどを選択して、食べることへストレスを感じないよう工夫することが大切です。
また食欲が低下したり食事量が減少したりすると、低栄養や脱水といったリスクが増すため、栄養補助食品や定期的な飲水を意識することもポイントです。
食生活に関する障害はQOL低下を招くため、安全に配慮しながら食事を楽しめる方法を本人や介助者が一緒に考えていきましょう。
脳へ転移した癌のステージ分類
原発巣がどこであるかにかかわらず、脳にがん細胞が転移した時点でステージⅣになります。
ステージで異なる治療方針
転移性脳腫瘍の原発巣でも多いとされるのが肺がんです。そのため、ここでは、肺がんによる転移性脳腫瘍のケースについて治療方法を紹介していきます。
転移性脳腫瘍の治療には、抗がん剤や分子標的薬などの「薬物治療」や「放射線治療」、「手術」の3つがあります。
薬物治療
一般的に転移性脳腫瘍に対して抗がん剤は効きにくいと言われていますが、一部、効果のある薬もあります。特に、分子標的薬には転移性脳腫瘍に効くものが多いとされ、それのみで数ミリ程度の小さな転移性脳腫瘍は消失するケースもあるようです。そのため、小さながんであれば、まずは薬物治療で様子をみるのが一般的な治療法。
転移性脳腫瘍に効果が期待できる分子標的薬は原発がんによって異なり、例として原発巣として多いとされる肺がんでは「イレッサ」が有効です。この他、乳がんでは「タイケルブ」、腎がんでは「スーテント」などの薬が挙げられます。ただし、分子標的薬はがんの中でも一部にしか効き目がないため、分子標的薬の適応でない場合には抗がん剤と放射線での治療となるのが一般的です。
そもそも薬物治療とは?
癌の薬物治療とは、薬剤を投与して癌細胞を死滅させたり増殖を抑制させたりする治療法です。放射線治療や外科治療のような局所的治療とは違って、血液を通じて身体全体に薬剤を行き渡らせて作用させることから全身療法とも呼ばれます。この治療には抗癌剤をはじめ、分子標的薬やホルモン剤、免疫賦活剤などの薬剤が用いられます。
抗癌剤は癌細胞を死滅させる効果がありますが、正常な細胞にもダメージを与えてしまうため少なからず副作用が発生します。分子標的薬は、癌細胞に存在するタンパク質や癌細胞の増殖に影響するタンパク質をターゲットにする薬剤です。ホルモン剤は癌の増殖に関係するホルモンを阻害し、免疫賦活剤は免疫細胞を活性化させて癌に対抗することを目的とします。
放射線治療
十分な効果が期待し難い場合や腫瘍が大きめの転移性脳腫瘍には、薬物治療と併用するかたちで放射線治療を行います。治療を行う病院にもよりますが、比較的小さな腫瘍に対しては定位放射線治療装置の1つであるガンマナイフによる治療を行うことが多いようです。転移性脳腫瘍は、多発性であるケースが少なくありません。しかし「播種」とよばれるがん細胞が散らばってしまっている状況でなく、また腫瘍数が10個程度までであればガンマナイフによる1回の治療ですべての病変を治療することができます。ガンマナイフ以外の定位放射線治療装置として、リニアックメス・ノバリス・サイバーナイフ・トモセラピーなどの装置が利用されます。
脳全体に無数に散らばっている場合などには、脳全体に放射線を照射する全脳照射を行うこともあります。しかし、全脳照射は認知症を引き起こす可能性があるため、患者さんの生活の質の維持の観点から、可能な限り避ける方向性にあるのが現状です。
そもそも放射線治療とは?
癌の病巣にピンポイントで放射線を照射し、癌細胞を死滅させるのが放射線治療です。現在では治療技術の進歩により、癌のサイズや位置を正確に把握して集中的に放射線を照射できるようになったため、治療効果は格段に向上しました。照射する部位によっては、副作用として皮膚や粘膜の炎症を起こすことがあります。
一般的な放射線治療は体外から照射しますが、近年は放射性物質を密封したカプセルを癌の病巣に挿入する密封小線源治療や、注射や内服で放射性物質を投与する放射性同位元素内用療法も実用化されてきました。
放射線治療に使用される放射線はX線が一般的でしたが、粒子線を用いた陽子線治療や重粒子線(炭素イオン線)治療も先進医療として登場しています。
開頭手術
薬物治療、放射線治療でも効果がみられない場合、あるいは腫瘍が非常に大きくなって緊急性がある場合などには、全身状態が許すという条件付きで開頭手術により腫瘍を摘出します。しかし、近年は転移性脳腫瘍を手術で取り除くことは減少傾向。その理由は、開頭や全身麻酔など患者への負担が大きいことや、そしてがん細胞である播種を摘出する際などに、がん細胞がこぼれて脳脊髄液の中にばらまかれてしまうといったリスクがあるためです。このような理由から、多くの病院では転移性脳腫瘍に対して手術を実施することは少なくなっています。
ただし、小脳転移は急速に水頭症や脳ヘルニアを生じやすいので、放射線治療の前に摘出が考慮される場合もあることは知っておきましょう。
そもそも外科治療とは?
癌の病巣を手術で取り除くのが外科治療です。多くの癌の標準治療では第一選択となる治療法で、早期の癌はもちろん、ある程度進行していても切除が可能であれば積極的に外科治療が選択されています。癌のかたまりをまとめて取り除けること、転移がなければ根治の可能性が高いことが外科治療の優れている点です。
しかし、身体にメスを入れるということの負担は少なくありません。手術の傷はもちろん、全身の回復には時間がかかりますし、全身状態が良くない場合はそもそも外科治療を行なうことができません。外科治療の部位によっては身体機能に影響を及ぼすこともあります。
近年では身体的負担を軽減させるために、切除範囲を最小限に抑える方法や、内視鏡を使用した手術が普及しています。
予防やスクリーニングに関する情報
癌の発生や転移・再発に関しては、日常的な予防への取り組みはもちろんとして、定期的なスクリーニング(スクリーニング検査)によって癌の早期発見に努めたり、転移や再発を少しでも早く調べたりすることも大切です。
予防について
脳腫瘍や脳の癌に特化した予防法は見つけられませんでしたが、脳の転移癌は原発巣で発生した癌が血管を通って脳へ移動し増殖する血行性転移が主です。根本的な対策として全身のあらゆる部位において癌の予防を考えることが大切ともいえるでしょう。
国立研究開発法人国立がん研究センターでは日本人の癌予防についても研究を進めており、具体的には生活習慣の改善や感染症対策の徹底によって癌のリスクを低減できるとされています。
生活習慣の改善による予防
生活習慣は癌の発生リスクや原因と密接な関連性があるとされ、生活習慣の乱れはそれぞれ癌のリスクを高めると認められています。国立がん研究センターでは癌の原因として健康に深く関与する生活習慣として喫煙や飲酒、塩分過多の食生活、肥満やメタボリックシンドローム、運動不足など色々な要因を挙げています。見方を変えればこれらについて是正・改善していくことで癌のリスクを日常的に減らしていけることが重要です。
具体的な生活習慣の改善による癌予防としては、以下のようなものが考えられます。
- 禁煙
- 節酒(禁酒・断酒)
- 食生活の改善(塩分量の抑制)
- 身体活動(適度な運動習慣)
- 適正体重の維持(肥満・肥満傾向の解消)
例えば、喫煙は日本人の男性の癌において大きなリスク因子とされており、禁煙をすることで癌の予防へつなげて、結果的には脳転移のリスクも抑制できると考えられます。また飲酒も消化器系の臓器において様々な癌リスクを高めるため、酒量を抑える節酒や、いっそ体質的に合わない人は禁酒・断酒を心がけることもよいでしょう。
その他にも塩分過多の食生活を見直して栄養バランスの良い食事をとったり、適度な運動を続けることで代謝を高めて肥満解消を目指したりといったことも有効です。
参照元:がん情報サービス|科学的根拠に基づくがん予防
感染回避による予防
日本人の癌の中でも特に女性では感染症が癌の原因として大きなウェイトを占めており、実際問題として日本人女性の癌原因の第1位が感染症だとも言われています。癌の原因になり得る感染症には色々な種類がありますが、およそ一般的に注意すべき感染症として以下のようなものがあります。
- ヘリコバクターピロリ菌:胃癌
- B型・C型肝炎ウイルス:肝細胞癌
- ヒトパピローマウイルス(HPV):子宮頸癌
- ヒトT細胞白血病ウイルスⅠ型:成人T細胞白血病リンパ腫
例えばピロリ菌や肝炎ウイルスは消化器系の癌リスクを高めて、女性であればHPVによる子宮頸癌の問題も深刻です。また白血病リンパ腫は血液系の癌であり、脳転移の仕組みを考えれば要注意かも知れません。
参照元:がん情報サービス|科学的根拠に基づくがん予防
スクリーニングについて
スクリーニング検査とは、すでに癌が発見され診断されている人を対象とした検査でなく、まだ癌が発見されていなかったり、再発・転移の可能性をチェックしたいと考えたりしている人ための検査です。
スクリーニング検査を適切に行うことで、癌の早期に発見したり、転移癌・再発癌の速やかな治療を開始できたりする期待が高まります。また、脳転移は血行性転移として全身の様々な部位から癌細胞が血管内を移動してくることで発生するという特性を持つ癌です。全身の癌についてスクリーニング検査を実施してリスクを管理する意識が大切だといえるでしょう。
MRI検査
MRI検査は画像診断の1種として一般的に脳転移の診断へ用いられているスクリーニング検査の手法です。メカニズムとしては、まず電気によって発生させた強力な磁気を患者の体内へ照射することで水素原子を反応させ、そこから発生した電磁波を電気信号へ変化してデータ化。さらに画像として取得するという仕組みになります。
MRI検査は巨大で強力な磁石の中に入って体内を撮影するようなシステムであり、放射線による被曝ダメージのリスクを心配する必要がありません。また脳を全方向から撮影して立体的な画像として取得できるため、癌の状態を詳しく検証する上で有用性を発揮します。そのためMRI検査は色々な癌の早期発見や経過観察に使われています。
CT検査
脳転移診断に必須とされるCT検査は、患者の体へ多方向からX線を照射して、それぞれ得られたX線画像をコンピュータによって処理することで立体的な断面図の取得が可能。CT検査はMRI検査と並んで患者の体内を詳しく調べるための画像診断であり、近年ではCT検査とPET検査を組み合わせたPET-CT検査が行われています。放射線治療前に癌の詳細情報を取得するための治療計画用CTが使われたりすることもあります。
ただし、放射線による被曝のリスクを考慮しなければならず、人によってはCT検査を受けることができません。
脳血管造影検査
脳血管造影検査とは、脳の血管へ造影剤を注入して、その造影剤の動きをX線撮影機によってリアルタイムでモニタリングする方法です。脳の血管へ造影剤を注入する際には太ももの付け根にある太い動脈へカテーテルを挿入。そのまま血管内を進んで脳の血管へ薬剤を注入するという流れになります。
脳血管造影検査を行うことで脳内の血管分布を確かめたり、脳血管の閉塞や狭窄についてチェックしたりすることが可能です。
腫瘍マーカー検査
腫瘍マーカーとは特定の部位などへ発生した癌及び腫瘍に特有のタンパク質や物質であり、そのような腫瘍マーカーが血液中にどの程度存在しているか調べることで、癌の発生をチェックしたり再発・転移のリスクを検知。また、脳転移が他の原発巣からの血行性転移によってもたらされる以上、腫瘍マーカーによる癌検診も様々なケースを想定する必要があります。例えば、肺癌からの転移であるのか消化器の癌からの転移であるのかによって、対象の腫瘍マーカーが変化することもポイントです。
スクリーニング検査をするリスク
スクリーニング検査は脳転移を確認・診断する上で欠かせないものですが、一方で検査を受けることで発生するリスクもあります。スクリーニング検査によって発生するリスクやデメリットとしては、主として以下の3つが考えられるでしょう。
偽陰性によるリスク
偽陰性とは、本来は陽性(異常あり)となるべき検査結果が誤って陰性(異常なし)として診断されるリスクです。
偽陰性として診断された場合、当然ながら本来であれば速やかに対処すべき癌の存在に気づけないままとなり、癌がそのまま進行してしまい深刻化していく恐れも強まります。そのため癌の発生や脳転移が疑わしい場合、仮に1つの検査で陰性となってもさらに別の検査をするなど、ダブルチェックの意識を持つことが必要です。
擬陽性によるリスク
擬陽性とは、本来であれば陰性となるべき検査結果が、誤って陽性になってしまうリスクであり、擬陽性の状態で治療計画が作成されれば受ける必要のない手術や抗がん剤投与を受けることになるかも知れません。
そのため何らかのスクリーニング検査によって陽性反応が出たとしても、その結果のみをもって確定診断とするのでなく、複数の検査結果を総合的に判断して癌のリスクを考えるようにします。
検査による身体への負担
併発症とは検査などによって発生した症状を指しており、偶発症は詳細な原因こそ分からないものの検査後に発生した症状を指します。
例えば脳血管造影検査の場合、鼠径部の大動脈から挿入したカテーテルの操作を誤って、血管を傷つけたりいっそ患者に深刻な被害を及ぼしたりといった併発症のリスクが考えられるでしょう。また妊娠中の女性がX線を使った検査をすることで放射線被曝の被害を受けたり、血液検査の注射でミスが生じて感染症を引き起こしたりといった可能性もゼロではありません。
スクリーニング検査によって脳転移のリスクを確かめることは癌治療を適正に進めていく上で欠かせません。しかし、検査を実施は肉体的な問題やリスクがゼロではないため、身体への配慮が重要です。
脳の癌に対する研究と論文
「近赤外線免疫治療法」の開発
世界のがん研究をリードする米国立がん研究所(NCI)の主任研究員である小林久隆氏は、近赤外線を使用してがん細胞を消滅させる「近赤外線免疫治療法」を開発。近赤外線免疫治療法の特徴は、がん細胞にだけ特異的に結合する抗体を利用することです。
その抗体にIR700という近赤外線によって化学反応を起こす物質を付け、静脈注射を使用して体内へ注入。近赤外線の照射を行なうと化学反応を起こし、がん細胞を破壊します。再発頭頸部がんを患った15人を対象に治験を行なったところ、14人のがんが3割以上収縮。
そのうち7人は画像上では指摘できなくなったそうです。また副作用もほとんどなく、治療費を安く抑えられるのも魅力のひとつ。2018年の3月から国立がん研究センター東病院で、治験が開始されています。今後の展開が期待される、注目の治療法です。[注1]
参照元:mugendai:近赤外線でがん細胞が1日で消滅、転移したがんも治す ――米国立がん研究所(NCI)の日本人研究者が開発した驚きの治療とは
難治性悪性脳腫瘍の中性子捕捉治療における新しい薬剤開発
東京工業大学の科学技術創成研究院化学生命科学研究所の研究グループが、大阪医科薬科大学や筑波大学の研究グループなどと共同し、悪性脳腫瘍に対して優れた治療効果を発揮すると期待される捕捉療法用新規ホウ素薬剤PBC-IPを開発しました。
この薬剤はホウ素中性子捕捉療法(BNCT)のために使用される薬剤であり、ターゲットになる癌細胞だけを選択的に攻撃して癌治療の効果を追求してくれることが特徴です。
今回の研究では特に悪性腫瘍として知られる難治性悪性脳腫瘍をターゲットにしており、PBC-IPを用いたBNCTによって従来の臨床用ホウ素薬剤よりも高い治療効果を有することが示唆されました。
参照元:東京工業大学|難治性悪性脳腫瘍の中性子捕捉治療に有望な薬剤の開発
難治性脳腫瘍の初発膠芽腫に対するホウ素中性子捕捉療法の医師主導治験
筑波大学では令和6年2月に、治療法が確立されていない難治性悪性脳腫瘍である膠芽腫を治療対象として、加速器を使って中性子を発生させるホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)の医師主導治験をスタートさせたと発表しました。
初発膠芽腫の患者を治験対象としてホウ素中性子捕捉療法を実施することは過去に報告例がなく、手術や化学放射線療法などによって根絶することのできなかった膠芽腫についても、ホウ素中性子捕捉療法が安全かつ有用であると認められれば新しい治療法として確立される期待が高まります。
なお、令和6年2月22日の定例記者会見では同治験についての報告が行われ、多くのメディアから活発な質疑応答が行われたということも、合わせて筑波大学附属病院の公式サイトにおいて報告されています。
参照元:筑波大学附属病院|難治性脳腫瘍である初発膠芽腫に対する加速器を使ったBNCTの医師主導治験の開始(※膠芽腫の方で、放射線治療未実施の方対象)
東大発の脳腫瘍ウイルス療法の承認と実用化
東京大学医科学研究所附属病院で脳腫瘍外科に属する研究グループでは、既存の単純ヘルペスウイルスの遺伝子を人工的に改変することで、第三世代の癌治療用ウイルス(G47Δ)を開発する研究を続けていました。そして東京大学医科学研究所附属病院において、癌治療用遺伝子組み換えヘルペスウイルス「G47Δ」を使って、膠芽腫の患者を対象に行われた医師主導治験では有効性や安全性が確認され、2020年12月28日には治療薬としての製造販売承認も行われました。
同ウイルス療法薬は悪性神経膠腫を適応症として、再生医療等製品(一般名 テセルパツレブ)として厚生労働省から承認されることも合わせて報告されています。
参照元:東京大学医科学研究所|世界初の脳腫瘍ウイルス療法が承認 ~東大発のアカデミア主導創薬で新しいがん治療モダリティ実用化~
肺癌から脳へ癌が転移する仕組みを日本の研究グループが解明
金沢大学がん進展制御研究所や金沢大学医薬保健研究域医学系/金沢大学附属病院脳神経外科の中田光俊教授など、複数の研究者によって構成されている共同研究グループにおいて、2024年2月、肺癌から脳への癌転移のシステムを解明したという発表がされました。
本研究では、まず研究グループによって独自に開発された研究手法がベースとなっており、肺癌から脳への転移を促すために重大な役割を担うとされるタンパク質が同定されました。そして、このタンパク質をターゲットとして治療法を調節することにより、すでに効果が得られなかったとして判断された使用済みの治療薬においても、改めて癌治療の効果を期待できることが認められています。
肺癌から脳への癌転移のリスクを分析できるだけでなく、抗がん剤治療の品質を向上させられるというダブルのメリットにより、将来的な肺癌治療や脳転移癌治療の選択肢が広がることも期待されています。
参照元:金沢大学|肺がんが脳に転移する仕組みを解明!
アテゾリズマブ+化学療法の併用療法によって肺から脳転移した癌の治療効果が向上
世界肺癌学会(WCLC2021)では非小細胞肺癌から脳転移する癌の治療について多角的な分析や検証を行っており、その研究の一環として「アテゾリズマブ」を使った安全性評価の第II相試験ATEZO-BRAINが発表されました。その発表の結果によると、アテゾリズマブと化学療法を組み合わせた併用療法によって、脳転移を有する非小細胞肺癌への治療の有効性について期待が高まったと報告されています。
研究において、第II相試験ATEZO-BRAINの対象者は登録者40例となっており、患者の年齢中央値は62.6歳、また男性が72.5%で97.5%は腺癌患者でした。そして有効性評価対象は24例、安全性評価対象は11例となっており、無増悪生存期間(PFS)の中央値は8.9ヶ月、頭蓋内PFS中央値も6.9ヶ月となったそうです。さらに全生存期間(OS)の中央値は13.6ヶ月で、2年OS率についても32%を示しました。
参照元:Care Net|アテゾリズマブ+化学療法の非小細胞肺がん脳転移例への効果(ATEZO-BRAIN)/WCLC2021
日本発の新薬「放射性治療薬64Cu-ATSM」の悪性神経膠腫への承認を目指して
2024年6月25日、国立がん研究センターは「再発・難治性悪性脳腫瘍に対する日本発の新規放射性治療薬64Cu-ATSMの安全性・有効性を確認 -承認申請にむけて、悪性神経膠腫に対する第Ⅲ相比較試験を開始-」というタイトルで記者会見を開き、国内で開発された新しい放射性治療薬「64Cu-ATSM」について、第1相医師主導臨床試験の結果や第3相試験開始の報告を行いました。
同治療薬は低酸素環境における腫瘍細胞へ高度に集積し、優れた治療効果を期待できる新薬として、国立がん研究センターと量子科学技術研究開発機構によって開発された日本発祥の新規治療薬です。また、同治療薬は集積状況を陽電子放射断層撮影診断(PET)装置によって追跡できるため、実際の腫瘍細胞への影響や状況などをモニタリングしながら治療できる点においても優れています。
すでに標準治療を終了した悪性脳腫瘍患者に対して新薬が用いられた結果、全体の77.8%で6ヶ月以上の生存、66.7%で1年以上の生存を達成できました。
参照元:オンコロ|日本発の新規放射性治療薬64Cu-ATSM、悪性神経膠腫に対する承認を目指す
神経膠腫の疑いを人工知能(AI)を活用した画像分析技術で抽出
国立がん研究センターと富士フイルム株式会社が結成した共同研究グループは、2024年2月にMRI画像をAI技術を使って分析することにより、神経膠腫(グリオーマ)の疑いのある脳領域を抽出することに成功したと発表しました。
そもそも神経膠腫はまずMRI検査で画像を評価した後、脳機能を温存しながら手術で腫瘍を摘出してから、放射線治療や化学療法を進めることが一般的とされています。加えて神経芽腫は臨床例が限られており、特化した画像分析技術やAI技術は開発されていませんでした。
しかし本研究では富士フイルム社のAI技術開発支援サービス「SYNAPSE Creative Space」という技術を活用して、頭部MRI画像から神経膠腫領域を精密分析して抽出することを目的にAI技術が開発されました。また、SYNAPSE Creative Spaceを使って開発されたAI技術が実際に社会実装された初のケースでもあり、今後一層の活用が期待されています。
参照元:オンコロ|
脳転移のある進行性乳癌の治療法として放射線治療を含めたPyrotinib併用療法の有用性を検証
2024年1月4日付けで医学誌「JAMA Oncology」に、脳転移のあるHER2陽性進行性乳癌を対象とした治療法として、脳への放射線治療とカペシタビン、そしてHER2チロシンキナーゼ阻害薬Pyrotinibを用いた併用療法の有用性や安全性を検証した第2相試験の結果が発表されました。
同研究で検証された治療は、脳への放射線治療(分割定位放射線治療もしくは全脳放射線治療)にカペシタビンとHER2チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)であるPyrotinibを組み合わせた複合治療であり、脳転移のあるHER2陽性進行性乳癌の患者を対象に実施されています。なお対象者は合計40人の女性患者(46~59歳)であり、年齢中央値は50.5歳でした。
試験の結果として、一部において下痢(7.5%)や無症候性放射線壊死(6.0%)の副作用も認められたものの、フォローアップ期間中央値17.3ヶ月時点における1年CNS PFS(中枢神経系無憎悪生存率)が74.9%に達するなど総合的に良好な数値が得られており、同治療は対象症例に対して有効な治療法であると示唆されています。
参照元:オンコロ|脳転移のあるHER2陽性進行性乳がんに対する脳放射線治療+カペシタビン+HER2チロシンキナーゼ阻害薬Pyrotinib併用療法、良好なCSN PFSを示す
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